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第九章「海神編」
天然に勝るものなし
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それぞれが殿下を救う為に情報などを収集し、再び揃ったテーブル。
緊張感からなのか、その場に静寂が落ちた。
でもって……。
「……ケテ……タ……テ………。」
静寂が降りたせいで聞こえなくていいものが聞こえてしまった。
微かなその音は所々しか聞き取れない。
だがその穴埋め問題!
どう考えたって、一つしか答えがないだろうが!!
隣のアレックのシッポと耳がザワザワザワッと毛を逆立て、ヒシッと俺の方に身を寄せた。
何なんだよ~?!
初っ端からパンチが効きすぎてるっての!!
「……………………。」
その場にいた全員が微妙な顔でそれを直視する事を避けた。
それってのは……言わずもがな、ファーガスさんの抱いている変な人形だ。
それなりの大きさがあるんだけど、全く精巧になんて作られておらず、細い体にとりあえずとばかりに四肢と顔がついている。
一体何なの?!それ?!
めちゃくちゃ聞きたいが何と言うか聞けない。
それを聞いてしまったら終わりな気がするのだ。
なのに、だ。
「………アイビス魔法医、それは何ですか??」
のほほんとしたその声に、声の主とファーガスさん以外はギョッとした。
バッと顔を向ける。
こんな状況でそういう事を何も考えずに口に出してしまう人間なんて一人しかいない。
「義父さんっ!!」
「何だい?サーク??」
「いや!それは……っ!!」
ツッコんだら駄目なヤツだからっ!!
俺が目で必死に訴えるが、義父さんは目をぱちくりさせるだけだ。
ダメだ、全くわかっていない。
俺は諦めて項垂れた。
さすが天然、破壊力が抜群だ。
「よくぞ聞いてくれました!!神仕え殿!!」
そしてそれによって嬉々として語りだす変人……。
オワッタ……。
だから誰もツッコまなかったのに……。
持ってるもの以上に、この人がヤバそうなんだって。
何しろこの場にこれを、平然と顔色一つ変えずに持参したんだから……。
義父さんとファーガスさん以外はげんなりとした顔で事の成り行きを見守る。
だがファーガスさんはそんな事はお構い無しに意気揚々と話し出す。
「これは身代わり人形と言われる物で、もしかしたらこれに殿下を苦しめるものを移せたりはしないかと思いまして……。」
自信有りげにファーガスさんは言う。
立ち上がり、得意げに変な人形を俺達に見せつけた。
その途端、変な人形が小刻みに震え出した。
ギャッと小さい悲鳴を上げて、アレックが俺の腕にしがみつく。
カタカタ震えるそれから、ボソボソとした声がさっきよりはっきりと「……ケテ…タ……ケ………タス………テ……」と聞こえてくる。
何なの、この地獄絵図……。
身代わり人形と言うより、呪いの人形だろ?!それ?!
て言うか、身代わりにされるの全力で拒否ってるから!その人形!!
半ばカオスと化し、収拾がつかなくなった状況をどうするべきか俺とブラハムさんは顔を見合わせる。
しかしここでまた別の爆弾が炸裂する。
「いや、その程度のものに移せるなら、私が擬態式神を作り移しておりますよ。」
得意満面で人形を紹介していたファーガスさんを、ケロッとした顔で義父さんが一刀両断する。
さすがは天然。
いやもう本当この人、容赦ない。
「……その……程度………。」
義父さんの言葉に硬直するファーガスさん。
俺なんかがそんな事を言ったらガンガンと反論もするんだろうけど、憧れの名のない神仕えの義父さんにそう言われたら思考も停止するよな……。
あれだけドヤ顔で持ってきた人形だ。
多分、それなりに苦労して見つけてきたんだと思う。
だと言うのにこれである。
あっさり何の議論の余地もなく切り捨てられた。
変人とて例外なく、天然に勝てたりはしないのだ。
ファーガスさんは変人だが、流石にこれは気の毒になってくる。
なのに義父さんは、のほほんとしたいつもの感じでトドメまでしっかりぶっ刺した。
「はい。それに移すなら、私が作る擬態式神に移す方が安全かなぁと思いますよ??」
きょとんとした顔でそう言った。
悪気がない分えげつない……。
ファーガスさんはしばらくフリーズした後、何も言わずにトスンと椅子に座った。
あ~可哀想……。
さすがの変人も、天然の容赦ない攻撃を受けて燃え尽きている。
ライフ0だよ……、可愛想すぎる……。
俺は流石に気の毒になって、苦笑いのままファーガスさんに話を振った。
「あ、あはは……。それはそうと、その呪いの人形はどうしたんですか??」
「……呪いの人形ではない……身代わり人形だ……。」
「あ、すみません……。思わず本音が……。」
「……まあいい。これはある魔法医療師が、治療の際の患者の痛みを抑えたりするのに使用していたものだ……。」
「治療の際の痛み??」
「ああ。麻酔魔法が効き辛かったりした場合にな。……歯の治療とかな。」
「うっわ、それやってた奴、鬼じゃん?!」
俺にしがみついていたアレックが思わず言った。
俺もそう思うよ……。
歯の治療の際の痛みを身代わりに移すとか、移された方の身になってやってくれよ……。
そりゃこの人形がこれだけ怯えている訳だよ……。
怖くて気持ち悪いと思っていた人形に、俺とアレックは同情の視線を向けるしかなかった。
「………タス…ケテ……。」
とりあえず、いきなり痛い目に合わされない事を状況的に理解したのだろう。
カタカタ震えるのはやめた人形が、泣きそうな小さな声でそう言った。
その瞬間、俺は思わずグリンっと義父さんに顔を向けた。
「義父さん、あれ何?!」
そう言われ、義父さんはきょとんと首を傾げて人形を見つめ、そして言った。
「……擬態式神に似たものだね。ん~??……ああ、なるほど……そういう事か……。」
今までも様々な怪異を見てきた義父さんだ。
それを観察しておおよその検討はついたようだった。
「上手く説明するのが難しいんだけど……人工精霊??……って言えばいいのかな……??」
「人工精霊??」
「うん。元々は……どうやって手に入れたのかわからないんだけれども……死んだ精霊の核の欠片……それを魔術なのか魔法なのかわからないけど、魔力的に加工した核の欠片を埋め込まれた人形だよ。おそらく身代わりにするためには核が必要だった。でも生きている精霊や生き物の魂を用いると、それはそれで倫理に反するだろう??本当に他の存在を身代わりにする事になるからね。だから死んで壊れている精霊の核の欠片を使ったんだ。それならその核の持ち主は存在していないし、何よりもうそれが宿る精神体は死んでいるし、欠片だから完全なものじゃない。だから意識などは持たないから、一時的な身代わりとして使ったんだろうね。」
「でもおじさん。俺にはこいつには意志があって、きちんと存在しているみたいに見えるんだけど??」
義父さんの話を聞いてアレックが訪ねた。
それに義父さんはゆっくりと頷く。
「そこが問題なんだよね~。この子は今現在は個としての意識がある。元々はなかったのだけれども、沢山の人の身代わり、主に痛みだったみたいだけど感覚と感情を一時的に受け入れその身に持つ事で、ゆっくりと自分と言う意識を持つようになったんだと思う。そしてそこに不完全とはいえ精霊の核の欠片があった。新しく生まれた意識と不完全な核が共鳴してしまい、精霊みたいなものができてしまったんだよ。」
「精霊みたいなもの……ですかな……??」
ブラハムさんも興味深そうに義父さんの話を聞いている。
義父さんは頷いた。
「精霊は基本的にはとても長い時間を経て生まれます。人の一生の何倍もの時間の中で仄かな意思を持ち、その不確かな意志が気の遠くなる程の時を経て核を持ち精霊となるのです。ただ、付喪神などのように、祈られたり人に大切にされりした事により、その期間が完全自然発生的なものより早いものもあります。それでも、それはあるがままに時の流れの中で生まれたものです。でもその人形のものは違います。偶然が重なったとはいえ、意識を持ったのも、欠片とはいえ魔力処理された核があった事も、全て人為的な作用によるものです。その結果、生まれた精霊のようなもの。なので人工精霊と表現してみました。」
義父さんはいつも通り、何でもない事のように話した。
そう、義父さんにとっては何でもない事なのだ。
だが俺達にしてみれば未知の世界の話だ。
誰も何も言わなかった。
いや、言う言葉が何も見つからなかった。
義父さんの見ている世界。
感じている世界が、自分たちとは大きく違う気がした。
人の世と精霊の世、その薄い境に常にいられる。
ブラハムさんがそう言った意味がわかった気がした。
「神仕えも状況により、意志のない精霊に似たものを一時的に作って使う事があります。ですがそれには決まりがあって、一時限りできちんと処理をします。特に疑問も持たずにそうしてきたのですが、この子を見てその理由がわかりました。……同じものを長期に渡り使用した結果がおそらくこの子なのです。」
義父さんが言っているのは、多分紙様、つまり式神の事だと思った。
昔、お祈りの(俺に封をしていた)時に義父さんはたまに式神を使った。
紙でできた人形みたいなものだったり、ただ半紙に1文字書かれているだけだったり、形は様々だった。
共通しているのは、紙でできている事。
これは何?と聞いた俺に、義父さんは笑って言った。
これは式神って言ってね、紙様だよって。
神様と紙様で音が同じだから、一時的にだけど似たような性質を持たせられるんだと。
でも神様と違って紙だからね、すぐに破けてしまうんだよ。
そう言って義父さんは使った式神をいつも破いた。
神仕えの技については詳しくはわからない。
でも神仕えが紙様を使っていて、そして必ず燃やしたり破ったりしているのは知っている。
義父さんや他の神仕えが普通にやっていた事だから見慣れていたが、あれを紙で作り、終わったら破くなり焼くなりしていたのは、式神、いわば疑似精霊を作り出してもすぐに処分する決まりがあったからなのだろう。
そしてその決まりは、長期に渡り同じ疑似精霊を使い続けた場合、この身代わり人形の様な事が起こる事を知っていてそれを防ぐ為だったのだろう。
「……私にこれを譲った医療魔法師は言っておりました。はじめはただの人形で、痛みを移しても何もなかったと。しかし長年使っているうちに、これが微かな声を発するようになったと……。気のせいだと思いたかったが怖くなり、処分に困っていたと……。」
「どういった経緯でその人形を?」
「はい。今回の事で私は精神魔法の使えるものとの面接を行いながら、何か使えそうな情報はないか聞いておりました。その際、痛みを人形に移して治療をする者の話を聞き、見に行ったのです。」
「それでこの子と会ったのですね?」
「はい。所有していた者は先に申した通り、これを怖がって今はもう使用しておらず、厳重に魔法印で封じ込めておりました。中々その話もしたがらなかったのですが、一度話し始めると、自分ではどうしていいのかわからないから持っていって欲しいと懇願されました。私も殿下の苦痛を移すには利用できると思い、譲り受けて持ってきたと言うところです。」
意気込んで持ってきたは良いが、義父さんにダメ出しをされた上、それについてるものに問題があると言った流れにファーガスさんは萎んだ朝顔みたいになってしまった。
勢い良く花開いていただけに、しおしおになって項垂れている落差がなんか可愛そうだ。
けれどそんなファーガスさんに、義父さんはにっこりと笑いかける。
「それは良い巡りでした。」
明るい声で、そう言った。
皆が「え?!」という顔で義父さんを見る。
ファーガスさんに至っては、信じられないと言った顔だった。
「……良い巡り??」
「ええ。アイビス魔法医がこの子を連れてきて下さったので、私とこの子が出会えました。ありがとうございます。」
いつも通りニコニコして義父さんはファーガスさんにお礼を言う。
半ば怒られてるみたいになっていたファーガスさんは、そう言われても状況が上手く頭に入らないみたいだ。
「それって……。」
俺が義父さんの顔を覗き込むと小さく頷かれる。
良かった、このよくわからない精霊もどきは義父さんが何とかしてくれるようだ。
ホッとした俺の横からアレックが声を上げる。
「おじさん、こいつを助けてやれるのか?!」
「助けられると言う表現が合っているかはわからないけどね。力にはなれると思うよ。サク、何か人形みたいな物を持ってないかい??」
「人形って……義父さん、俺が持ってると思う?!」
「だってお前、小さい時からもふもふしたぬいぐるみとか大好きだったじゃないか??」
アレックに笑って答えた義父さんは、唐突に俺に人形を要求してきた。
その上、子供の頃の話まで暴露してくれる。
ブラハムさんがおやおやと微笑ましそうに俺を見る。
本当やめて?!
子供の頃の事はトップシークレットだから!!
こんなホイホイと人に暴露しないでよ!義父さん!!
俺は真っ赤になって義父さんを睨んだ。
「ちょっと!そういうの話さないでよ!!それに俺ももう大人だよ?!いくら小さい時にぬいぐるみが好きだったからって!!この歳で持ち歩いてる訳ないだろ?!」
「サーク、仕方がないさ。親にとって子どもは、いつまでも小さい時と変らないものなんだよ。」
ポワポワとブラハムさんが義父さんに同調する。
ブラハムさんだけでなく、ヘーゼル医務官長も、壁側に控えているパスカル執事長もメイド長も、微笑ましそうな視線で俺を見ている。
うわぁ~!やめてぇ~っ!!
微笑ましそうに俺を見るのはやめてぇ~っ!!
わかるけど!そうなんだろうけれども!!
いきなり晒される俺の身にもなって下さい!!
「……人形って、ぬいぐるみでも良いのか??おじさん??」
俺が子供時代をバラされてテンパっている横から、アレックがボソリと呟いた。
そう言えば真っ先に俺を馬鹿にしてきそうなアレックがおとなしかったな??
俺は驚きながら横を見た。
アレックは妙に考え込んだ顔をしていた。
「ぬいぐるみでも大丈夫だよ?」
「……後で返してくれる??」
「うん。急ぐなら今日中に返すよ。」
「今日中じゃなくていいよ。ただ、人に貰ったものだから、いずれは返して欲しいってだけだし……。」
アレックはそう言うとポケットをあさり、キーホルダーになっている大きめの黒いぬいぐるみを出した。
随分長い事使われているのかそれなりにボロいが、なんかめちゃくちゃ精巧な作りなんだけど??このぬいぐるみ……。
「アレック、その黒猫のぬいぐるみ……。」
「ガキん頃、師匠が作ってくれた。ちなみに姉ちゃんは茶トラの持ってるぞ。」
「え?!何それ?!俺も三毛とかサビとか欲しい……。たくさん揃えて並べたい……。」
そう、アレックが出してきたのは、思わず欲しいと言ってしまうほど精巧な作りの黒猫の小さなぬいぐるみだった。
ぬいぐるみ的にデフォルトされていて可愛いのに、妙に細部まで作り込まれている。
さすが物作りのプロ種族、ドワーフだよな……。
ボーンさんは決して道具などを作るプロではないが、片手間に作るものが物凄く精巧なのだ。
「ありがとう、アレック君。お借りしても?」
「うん。」
アレックはそう言うと鍵をぬいぐるみから外し、手を伸ばして義父さんに渡した。
義父さんはそう言ってぬいぐるみを受け取ると、今度はファーガスさんから身代わり人形を受け取る。
そしてではちょっと席を外しますと言って、隣の仮眠室にしている控室に入っていった。
皆、どうして良いのかわからず、黙ってお茶を飲んでいる。
アレックだけがお茶菓子に出てきた桜餅をくんくん嗅いだ後、俺を突いて「この葉っぱ、取るの?食べんの?」と聞いてきたので、取っても良いしそのまま食べても良いと話すとちょっと悩んでからそのまま口に放り込んだ。
モゴモゴして、口からズルズルっと桜の葉の筋だけ口から引っ張り出したので、慌てておしぼりを渡す。
「味はいいけど、筋が噛みきれないぞ??」
「わかったわかった。お行儀悪いから、ペーパーに包んで皿の隅に置けって。」
そんな事をしているうちに、義父さんは隣の部屋から顔を出した。
出てきた義父さんは、何故か満面の笑みだ。
とりあえず人工精霊の方は上手く行ったようだ。
そしてめちゃくちゃ嬉しそうにこう言った。
「アイビス魔法医!!これは凄いです!!きっと今回、殿下のお役に立ちますよ!!」
そして不気味な身代わり人形と小躍りしながらテーブルに戻ってくる。
この際、俺とアレックの前に黒猫のぬいぐるみが置かれた。
黒猫のぬいぐるみは何かキョドりながら俺達を見上げ、ちょこんと座り込む。
スゲェ、作りが精巧だから動けるんだ……。
俺は感動してしまった。
アレックもびっくりしながら凝視している。
「いやぁ~、長くこの仕事をしていますが、この様に珍しいものは初めてです!!」
猫のぬいぐるみを凝視する俺とアレックをよそに、少し興奮気味にそう言って義父さんは身代わり人形だった変な人形を高々と抱き上げて眺めている。
どうやら義父さんを興奮させているのは、身代わりだった人工精霊の方ではなく、それを抜いた変な人形の方のようだ。
「これは凄いですよ?!長い間その子を宿していたからなんですかね?!無機物なのに器としての機能があるんです!!殿下の中のものを納められる程ではありませんが!ある程度のものなら入れられます!今回は大きすぎるものを受け入れている殿下の負担軽減として使ったり、何かあった際の緩衝材として用いたり、色々利用できるのではないかと思いますよ!!」
「……そ、それは良かったです。」
いつもは自信過剰なファーガスさんも、状況がわからず褒められているのに目を白黒させている。
「さすがは中央王国を代表する魔法医でいらっしゃいますね!アイビス魔法医!!いやはや!私も今回、海神様のいらっしゃる殿下の中に入るのは流石に緊張していたのですが、緊急避難所としてこの器を繋げた状態にしておくなどすれば、思ったよりも安全に事が行えるかもしれません!」
変な人形をキラキラした目で見つめる義父さん。
よくわからないが、ファーガスさんの持ってきたその人形は義父さん的にかなり凄いものらしい。
ただ、興奮する義父さん以外はその人形の凄さが今ひとつ理解しきれず、テンションの高い義父さんを呆然と見つめている事しかできなかった。
緊張感からなのか、その場に静寂が落ちた。
でもって……。
「……ケテ……タ……テ………。」
静寂が降りたせいで聞こえなくていいものが聞こえてしまった。
微かなその音は所々しか聞き取れない。
だがその穴埋め問題!
どう考えたって、一つしか答えがないだろうが!!
隣のアレックのシッポと耳がザワザワザワッと毛を逆立て、ヒシッと俺の方に身を寄せた。
何なんだよ~?!
初っ端からパンチが効きすぎてるっての!!
「……………………。」
その場にいた全員が微妙な顔でそれを直視する事を避けた。
それってのは……言わずもがな、ファーガスさんの抱いている変な人形だ。
それなりの大きさがあるんだけど、全く精巧になんて作られておらず、細い体にとりあえずとばかりに四肢と顔がついている。
一体何なの?!それ?!
めちゃくちゃ聞きたいが何と言うか聞けない。
それを聞いてしまったら終わりな気がするのだ。
なのに、だ。
「………アイビス魔法医、それは何ですか??」
のほほんとしたその声に、声の主とファーガスさん以外はギョッとした。
バッと顔を向ける。
こんな状況でそういう事を何も考えずに口に出してしまう人間なんて一人しかいない。
「義父さんっ!!」
「何だい?サーク??」
「いや!それは……っ!!」
ツッコんだら駄目なヤツだからっ!!
俺が目で必死に訴えるが、義父さんは目をぱちくりさせるだけだ。
ダメだ、全くわかっていない。
俺は諦めて項垂れた。
さすが天然、破壊力が抜群だ。
「よくぞ聞いてくれました!!神仕え殿!!」
そしてそれによって嬉々として語りだす変人……。
オワッタ……。
だから誰もツッコまなかったのに……。
持ってるもの以上に、この人がヤバそうなんだって。
何しろこの場にこれを、平然と顔色一つ変えずに持参したんだから……。
義父さんとファーガスさん以外はげんなりとした顔で事の成り行きを見守る。
だがファーガスさんはそんな事はお構い無しに意気揚々と話し出す。
「これは身代わり人形と言われる物で、もしかしたらこれに殿下を苦しめるものを移せたりはしないかと思いまして……。」
自信有りげにファーガスさんは言う。
立ち上がり、得意げに変な人形を俺達に見せつけた。
その途端、変な人形が小刻みに震え出した。
ギャッと小さい悲鳴を上げて、アレックが俺の腕にしがみつく。
カタカタ震えるそれから、ボソボソとした声がさっきよりはっきりと「……ケテ…タ……ケ………タス………テ……」と聞こえてくる。
何なの、この地獄絵図……。
身代わり人形と言うより、呪いの人形だろ?!それ?!
て言うか、身代わりにされるの全力で拒否ってるから!その人形!!
半ばカオスと化し、収拾がつかなくなった状況をどうするべきか俺とブラハムさんは顔を見合わせる。
しかしここでまた別の爆弾が炸裂する。
「いや、その程度のものに移せるなら、私が擬態式神を作り移しておりますよ。」
得意満面で人形を紹介していたファーガスさんを、ケロッとした顔で義父さんが一刀両断する。
さすがは天然。
いやもう本当この人、容赦ない。
「……その……程度………。」
義父さんの言葉に硬直するファーガスさん。
俺なんかがそんな事を言ったらガンガンと反論もするんだろうけど、憧れの名のない神仕えの義父さんにそう言われたら思考も停止するよな……。
あれだけドヤ顔で持ってきた人形だ。
多分、それなりに苦労して見つけてきたんだと思う。
だと言うのにこれである。
あっさり何の議論の余地もなく切り捨てられた。
変人とて例外なく、天然に勝てたりはしないのだ。
ファーガスさんは変人だが、流石にこれは気の毒になってくる。
なのに義父さんは、のほほんとしたいつもの感じでトドメまでしっかりぶっ刺した。
「はい。それに移すなら、私が作る擬態式神に移す方が安全かなぁと思いますよ??」
きょとんとした顔でそう言った。
悪気がない分えげつない……。
ファーガスさんはしばらくフリーズした後、何も言わずにトスンと椅子に座った。
あ~可哀想……。
さすがの変人も、天然の容赦ない攻撃を受けて燃え尽きている。
ライフ0だよ……、可愛想すぎる……。
俺は流石に気の毒になって、苦笑いのままファーガスさんに話を振った。
「あ、あはは……。それはそうと、その呪いの人形はどうしたんですか??」
「……呪いの人形ではない……身代わり人形だ……。」
「あ、すみません……。思わず本音が……。」
「……まあいい。これはある魔法医療師が、治療の際の患者の痛みを抑えたりするのに使用していたものだ……。」
「治療の際の痛み??」
「ああ。麻酔魔法が効き辛かったりした場合にな。……歯の治療とかな。」
「うっわ、それやってた奴、鬼じゃん?!」
俺にしがみついていたアレックが思わず言った。
俺もそう思うよ……。
歯の治療の際の痛みを身代わりに移すとか、移された方の身になってやってくれよ……。
そりゃこの人形がこれだけ怯えている訳だよ……。
怖くて気持ち悪いと思っていた人形に、俺とアレックは同情の視線を向けるしかなかった。
「………タス…ケテ……。」
とりあえず、いきなり痛い目に合わされない事を状況的に理解したのだろう。
カタカタ震えるのはやめた人形が、泣きそうな小さな声でそう言った。
その瞬間、俺は思わずグリンっと義父さんに顔を向けた。
「義父さん、あれ何?!」
そう言われ、義父さんはきょとんと首を傾げて人形を見つめ、そして言った。
「……擬態式神に似たものだね。ん~??……ああ、なるほど……そういう事か……。」
今までも様々な怪異を見てきた義父さんだ。
それを観察しておおよその検討はついたようだった。
「上手く説明するのが難しいんだけど……人工精霊??……って言えばいいのかな……??」
「人工精霊??」
「うん。元々は……どうやって手に入れたのかわからないんだけれども……死んだ精霊の核の欠片……それを魔術なのか魔法なのかわからないけど、魔力的に加工した核の欠片を埋め込まれた人形だよ。おそらく身代わりにするためには核が必要だった。でも生きている精霊や生き物の魂を用いると、それはそれで倫理に反するだろう??本当に他の存在を身代わりにする事になるからね。だから死んで壊れている精霊の核の欠片を使ったんだ。それならその核の持ち主は存在していないし、何よりもうそれが宿る精神体は死んでいるし、欠片だから完全なものじゃない。だから意識などは持たないから、一時的な身代わりとして使ったんだろうね。」
「でもおじさん。俺にはこいつには意志があって、きちんと存在しているみたいに見えるんだけど??」
義父さんの話を聞いてアレックが訪ねた。
それに義父さんはゆっくりと頷く。
「そこが問題なんだよね~。この子は今現在は個としての意識がある。元々はなかったのだけれども、沢山の人の身代わり、主に痛みだったみたいだけど感覚と感情を一時的に受け入れその身に持つ事で、ゆっくりと自分と言う意識を持つようになったんだと思う。そしてそこに不完全とはいえ精霊の核の欠片があった。新しく生まれた意識と不完全な核が共鳴してしまい、精霊みたいなものができてしまったんだよ。」
「精霊みたいなもの……ですかな……??」
ブラハムさんも興味深そうに義父さんの話を聞いている。
義父さんは頷いた。
「精霊は基本的にはとても長い時間を経て生まれます。人の一生の何倍もの時間の中で仄かな意思を持ち、その不確かな意志が気の遠くなる程の時を経て核を持ち精霊となるのです。ただ、付喪神などのように、祈られたり人に大切にされりした事により、その期間が完全自然発生的なものより早いものもあります。それでも、それはあるがままに時の流れの中で生まれたものです。でもその人形のものは違います。偶然が重なったとはいえ、意識を持ったのも、欠片とはいえ魔力処理された核があった事も、全て人為的な作用によるものです。その結果、生まれた精霊のようなもの。なので人工精霊と表現してみました。」
義父さんはいつも通り、何でもない事のように話した。
そう、義父さんにとっては何でもない事なのだ。
だが俺達にしてみれば未知の世界の話だ。
誰も何も言わなかった。
いや、言う言葉が何も見つからなかった。
義父さんの見ている世界。
感じている世界が、自分たちとは大きく違う気がした。
人の世と精霊の世、その薄い境に常にいられる。
ブラハムさんがそう言った意味がわかった気がした。
「神仕えも状況により、意志のない精霊に似たものを一時的に作って使う事があります。ですがそれには決まりがあって、一時限りできちんと処理をします。特に疑問も持たずにそうしてきたのですが、この子を見てその理由がわかりました。……同じものを長期に渡り使用した結果がおそらくこの子なのです。」
義父さんが言っているのは、多分紙様、つまり式神の事だと思った。
昔、お祈りの(俺に封をしていた)時に義父さんはたまに式神を使った。
紙でできた人形みたいなものだったり、ただ半紙に1文字書かれているだけだったり、形は様々だった。
共通しているのは、紙でできている事。
これは何?と聞いた俺に、義父さんは笑って言った。
これは式神って言ってね、紙様だよって。
神様と紙様で音が同じだから、一時的にだけど似たような性質を持たせられるんだと。
でも神様と違って紙だからね、すぐに破けてしまうんだよ。
そう言って義父さんは使った式神をいつも破いた。
神仕えの技については詳しくはわからない。
でも神仕えが紙様を使っていて、そして必ず燃やしたり破ったりしているのは知っている。
義父さんや他の神仕えが普通にやっていた事だから見慣れていたが、あれを紙で作り、終わったら破くなり焼くなりしていたのは、式神、いわば疑似精霊を作り出してもすぐに処分する決まりがあったからなのだろう。
そしてその決まりは、長期に渡り同じ疑似精霊を使い続けた場合、この身代わり人形の様な事が起こる事を知っていてそれを防ぐ為だったのだろう。
「……私にこれを譲った医療魔法師は言っておりました。はじめはただの人形で、痛みを移しても何もなかったと。しかし長年使っているうちに、これが微かな声を発するようになったと……。気のせいだと思いたかったが怖くなり、処分に困っていたと……。」
「どういった経緯でその人形を?」
「はい。今回の事で私は精神魔法の使えるものとの面接を行いながら、何か使えそうな情報はないか聞いておりました。その際、痛みを人形に移して治療をする者の話を聞き、見に行ったのです。」
「それでこの子と会ったのですね?」
「はい。所有していた者は先に申した通り、これを怖がって今はもう使用しておらず、厳重に魔法印で封じ込めておりました。中々その話もしたがらなかったのですが、一度話し始めると、自分ではどうしていいのかわからないから持っていって欲しいと懇願されました。私も殿下の苦痛を移すには利用できると思い、譲り受けて持ってきたと言うところです。」
意気込んで持ってきたは良いが、義父さんにダメ出しをされた上、それについてるものに問題があると言った流れにファーガスさんは萎んだ朝顔みたいになってしまった。
勢い良く花開いていただけに、しおしおになって項垂れている落差がなんか可愛そうだ。
けれどそんなファーガスさんに、義父さんはにっこりと笑いかける。
「それは良い巡りでした。」
明るい声で、そう言った。
皆が「え?!」という顔で義父さんを見る。
ファーガスさんに至っては、信じられないと言った顔だった。
「……良い巡り??」
「ええ。アイビス魔法医がこの子を連れてきて下さったので、私とこの子が出会えました。ありがとうございます。」
いつも通りニコニコして義父さんはファーガスさんにお礼を言う。
半ば怒られてるみたいになっていたファーガスさんは、そう言われても状況が上手く頭に入らないみたいだ。
「それって……。」
俺が義父さんの顔を覗き込むと小さく頷かれる。
良かった、このよくわからない精霊もどきは義父さんが何とかしてくれるようだ。
ホッとした俺の横からアレックが声を上げる。
「おじさん、こいつを助けてやれるのか?!」
「助けられると言う表現が合っているかはわからないけどね。力にはなれると思うよ。サク、何か人形みたいな物を持ってないかい??」
「人形って……義父さん、俺が持ってると思う?!」
「だってお前、小さい時からもふもふしたぬいぐるみとか大好きだったじゃないか??」
アレックに笑って答えた義父さんは、唐突に俺に人形を要求してきた。
その上、子供の頃の話まで暴露してくれる。
ブラハムさんがおやおやと微笑ましそうに俺を見る。
本当やめて?!
子供の頃の事はトップシークレットだから!!
こんなホイホイと人に暴露しないでよ!義父さん!!
俺は真っ赤になって義父さんを睨んだ。
「ちょっと!そういうの話さないでよ!!それに俺ももう大人だよ?!いくら小さい時にぬいぐるみが好きだったからって!!この歳で持ち歩いてる訳ないだろ?!」
「サーク、仕方がないさ。親にとって子どもは、いつまでも小さい時と変らないものなんだよ。」
ポワポワとブラハムさんが義父さんに同調する。
ブラハムさんだけでなく、ヘーゼル医務官長も、壁側に控えているパスカル執事長もメイド長も、微笑ましそうな視線で俺を見ている。
うわぁ~!やめてぇ~っ!!
微笑ましそうに俺を見るのはやめてぇ~っ!!
わかるけど!そうなんだろうけれども!!
いきなり晒される俺の身にもなって下さい!!
「……人形って、ぬいぐるみでも良いのか??おじさん??」
俺が子供時代をバラされてテンパっている横から、アレックがボソリと呟いた。
そう言えば真っ先に俺を馬鹿にしてきそうなアレックがおとなしかったな??
俺は驚きながら横を見た。
アレックは妙に考え込んだ顔をしていた。
「ぬいぐるみでも大丈夫だよ?」
「……後で返してくれる??」
「うん。急ぐなら今日中に返すよ。」
「今日中じゃなくていいよ。ただ、人に貰ったものだから、いずれは返して欲しいってだけだし……。」
アレックはそう言うとポケットをあさり、キーホルダーになっている大きめの黒いぬいぐるみを出した。
随分長い事使われているのかそれなりにボロいが、なんかめちゃくちゃ精巧な作りなんだけど??このぬいぐるみ……。
「アレック、その黒猫のぬいぐるみ……。」
「ガキん頃、師匠が作ってくれた。ちなみに姉ちゃんは茶トラの持ってるぞ。」
「え?!何それ?!俺も三毛とかサビとか欲しい……。たくさん揃えて並べたい……。」
そう、アレックが出してきたのは、思わず欲しいと言ってしまうほど精巧な作りの黒猫の小さなぬいぐるみだった。
ぬいぐるみ的にデフォルトされていて可愛いのに、妙に細部まで作り込まれている。
さすが物作りのプロ種族、ドワーフだよな……。
ボーンさんは決して道具などを作るプロではないが、片手間に作るものが物凄く精巧なのだ。
「ありがとう、アレック君。お借りしても?」
「うん。」
アレックはそう言うと鍵をぬいぐるみから外し、手を伸ばして義父さんに渡した。
義父さんはそう言ってぬいぐるみを受け取ると、今度はファーガスさんから身代わり人形を受け取る。
そしてではちょっと席を外しますと言って、隣の仮眠室にしている控室に入っていった。
皆、どうして良いのかわからず、黙ってお茶を飲んでいる。
アレックだけがお茶菓子に出てきた桜餅をくんくん嗅いだ後、俺を突いて「この葉っぱ、取るの?食べんの?」と聞いてきたので、取っても良いしそのまま食べても良いと話すとちょっと悩んでからそのまま口に放り込んだ。
モゴモゴして、口からズルズルっと桜の葉の筋だけ口から引っ張り出したので、慌てておしぼりを渡す。
「味はいいけど、筋が噛みきれないぞ??」
「わかったわかった。お行儀悪いから、ペーパーに包んで皿の隅に置けって。」
そんな事をしているうちに、義父さんは隣の部屋から顔を出した。
出てきた義父さんは、何故か満面の笑みだ。
とりあえず人工精霊の方は上手く行ったようだ。
そしてめちゃくちゃ嬉しそうにこう言った。
「アイビス魔法医!!これは凄いです!!きっと今回、殿下のお役に立ちますよ!!」
そして不気味な身代わり人形と小躍りしながらテーブルに戻ってくる。
この際、俺とアレックの前に黒猫のぬいぐるみが置かれた。
黒猫のぬいぐるみは何かキョドりながら俺達を見上げ、ちょこんと座り込む。
スゲェ、作りが精巧だから動けるんだ……。
俺は感動してしまった。
アレックもびっくりしながら凝視している。
「いやぁ~、長くこの仕事をしていますが、この様に珍しいものは初めてです!!」
猫のぬいぐるみを凝視する俺とアレックをよそに、少し興奮気味にそう言って義父さんは身代わり人形だった変な人形を高々と抱き上げて眺めている。
どうやら義父さんを興奮させているのは、身代わりだった人工精霊の方ではなく、それを抜いた変な人形の方のようだ。
「これは凄いですよ?!長い間その子を宿していたからなんですかね?!無機物なのに器としての機能があるんです!!殿下の中のものを納められる程ではありませんが!ある程度のものなら入れられます!今回は大きすぎるものを受け入れている殿下の負担軽減として使ったり、何かあった際の緩衝材として用いたり、色々利用できるのではないかと思いますよ!!」
「……そ、それは良かったです。」
いつもは自信過剰なファーガスさんも、状況がわからず褒められているのに目を白黒させている。
「さすがは中央王国を代表する魔法医でいらっしゃいますね!アイビス魔法医!!いやはや!私も今回、海神様のいらっしゃる殿下の中に入るのは流石に緊張していたのですが、緊急避難所としてこの器を繋げた状態にしておくなどすれば、思ったよりも安全に事が行えるかもしれません!」
変な人形をキラキラした目で見つめる義父さん。
よくわからないが、ファーガスさんの持ってきたその人形は義父さん的にかなり凄いものらしい。
ただ、興奮する義父さん以外はその人形の凄さが今ひとつ理解しきれず、テンションの高い義父さんを呆然と見つめている事しかできなかった。
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