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第九章「海神編」
背徳の夜 ☆
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暑い……。
ぼんやりとした意識の中、それを感じた。
艶かしくドロリとした熱が肌にまとわりついている。
しっとりと濡れた感覚。
ぐちゅりと奥を弄られる。
その刺激にピクリと体が反応した。
甘い痺れのような弱い快楽に頭の中が満たされる。
行為中の口づけに似た高揚感に、だらしなく開いた口から唾液が流れ落ちた。
その舌をいやらしく弄ばれる。
「……ふぅ……ん……。」
妙な声が口から漏れる。
それを意識したら、息がうまくできなくてむせそうになった。
暑い……。
ぬめりと全身がその熱に溺れている。
それに拍車をかけるように、手のひらが肌を悩ましく撫でる。
まとわりつく淡い刺激。
ぞわぞわとした感覚が腰から頭に向け駆け上る。
ピリピリと弱く脳内が痺れる。
あぁ……気持ちいい……。
柔らかな快楽に溺れる。
その感覚に目眩がする。
一度は落ち着いても、弄られる体は波打つように刺激を脳に送り続ける。
そしてまた、ぞわりと快楽が走った。
頭の中が淡く弾ける。
(……ウィル…………。)
ぼんやりする頭で恋人の名を呼んだ。
身体に篭った熱。
それが放たれることなく腹の奥を蠢いている。
気だるさ。
いいようのない情緒。
「……あ……あぁ……っ。」
それに飲まれて甘い息を吐き出す。
身を捩っても粘液のようにまとわりつくそれを払う事はできない。
意識のない間、だいぶ焦らされていたようだ。
開放できずに蓄積した熱が全身の情線を燻らせている。
そのまどろっこしい感覚が体の内側を甘く痺れさせる。
もっと長く、この焦らされた甘い快楽を味わっていたい。
いや早く溜まりに溜まった熱を開放して、訳もわからないような突き抜ける感覚を味わいたい。
相反する欲求がジレンマを起こす。
熱に溺れる身体はジリジリとその快楽に痺れる。
それにしても寝込みにこんな事してくるなんて、随分大胆だ。
よほど欲求不満だったようだ。
スイッチが入っちゃうとろくでもなくエロいからなぁ……ウィル。
普段なら絶対しないような事とか、させてくれないような事とか、ノリノリというか積極的にやってくるから悩ましすぎて翻弄される。
それにしても、いつ、ウィルは帰ってきたんだろう?
………………………………。
……………………?!
ウィル?!
はっと我にかえる。
違う、ウィルはボーンさんのところに行ったきり。
それに気づいて目をきちんと開いて見えた、見慣れぬ部屋。
「?!」
ビクッと体を強張らせると、それを押さえ込むように腕の中に閉じ込められた。
反射的にそれが誰が横目で見る。
「!!」
体が硬直した。
理解できずにフリーズする。
「……あ……っ!……ゃ……っ!!」
しかし胸元を弄られ、体が跳ねた。
焦らされ続けていたらしい身体は敏感に快楽を拾う。
ビリビリと皮膚が痺れ、腰から下の力が抜ける。
どうにかしようと緩慢によじったウエストラインを、大きな手がなだめるように撫でる。
皮膚に吸い付く指の感触。
ぴりり……と脳内が淡く痺れる。
……何で?!
熱にまとわりつかれすぎて自由にならない身体。
その腕の中で与えられる刺激に小さく跳ねる。
意味がわからない。
混乱する頭。
どうしてこうなっているのかわからない。
そこにないはずの記憶が押し寄せる。
「……っ!!」
ギクッと肩が震える。
自分ではない、ミチルの記憶。
そして何がどうしてこうなっているのかを思い知らされる。
サークは後ろから抱きかかえられるようにしてギルの腕の中にいた。
辛うじて服は着ているが、サークのパジャマは前ボタンを全て外され胸元を曝している。
「あ……っ!!」
逃れたくて体を動かそうとしたが、与えられる刺激に思わず声が漏れる。
グチリ……と指が。
奥に入り込み中を弄ばれる。
熱に……。
快楽に……。
意識とは関係なく体が溺れる。
意識は戻ったのに、ビリビリと走る緩慢な痺れに抵抗できない。
熱が腹の奥底から競り上がってくる感覚。
不味い、と思った。
なのにその甘いしびれとまとわりつく熱に身体はすでに溺れている。
逃れようと身をよじる自分の動きでさえ、刺激として脳に信号を送り続けている。
「~~~っ!!」
嫌だ。
やめてくれ。
なのに快楽に抵抗できない。
熱のせいか悔しさか、目が潤んで涙が頬を伝う。
……何でだよ!!
そう叫びたかった。
相手に、いや自分自身に。
ずっと不感症だった。
何をしてもこの身体は快楽を感じなかった。
だから性欲研究をしたし、色々性具を作ったりもした。
なのに性欲が芽生える事も、快楽を感じる事もできなかった。
やがてそれを諦めた。
それがない事を理解した上で、自分の全てを愛してくれる人に出会ったからだ。
なのに……なのに何で今更……っ!!
やっと愛する人と生々しい愛を共にできるようになってきたが、それはこんな事の為にその感覚を覚えた訳じゃない。
ウィルは愛してくれた。
性欲があろうとなかろうと関係なく、強く愛してくれた。
そして何より、サークに性欲がないからと言って、自分の性欲を押さえ込んだりしなかった。
ないまま、それが当たり前の事として愛し合った。
多分それが良かったのだ。
ウィルはサークの体が快楽を得られない事をそのまま受け入れたが、それに合わせて自分の欲求を殺さなかった。
自分の性欲は隠さずサークの前に曝け出した。
そんなウィルをサークは愛した。
ない事をそのままに、自分達の形で愛し合った。
なければおかしい。
なければ愛し合えない。
そんな考えがいつしか消えていた。
そのままのサークを受け入れ、そしてありのままの性をサークに晒したウィル。
それはお互いにとって、何も偽る事のないありのままで生々しい性の形だった。
性欲がなくても、性行為はできる。
性欲がなくても求めてもらえる。
愛し合う事ができる。
それは心の奥底で性欲のない自分を無意識に蔑んでいたサーク自身を癒やし、人間としての尊厳を回復させ自信を持たせた。
何より、たとえどんな形であろうとも、人と違おうとも、人でなかろうとも、どんな事であってもウィルがサークの全てを受け入れ深く愛してくれる事がサークを満たしてくれたのだ。
それがきっかけなのかはわからない。
けれどサークはウィルに衝動を感じ、欲求を感じ、そして快楽すら覚えたのだ。
「……んっ…………ああぁぁ……っ!!」
ぐちゅり、と弄られる。
意志とは裏腹に快楽が脳に走る。
ビリビリと白くなる感覚にサークは焦っていた。
それは酷くサークを追い詰めた。
……不味いっ!!
その感覚に覚えがあった。
そしてそれだけば絶対に避けたかった。
抵抗しようと身をよじる。
その身体を男の腕が逃さないとばかりに包む。
「…………ファルシュ……。」
「!!」
掠れた声。
自分の身を抱きとめる腕の力強さ。
汗の匂い。
その言葉にサークは愕然とした。
それは呪いのように二人を雁字搦めにした。
耳元に低く囁かれたハスキーな声。
欲望に魘された熱い呼吸。
それを聞いた瞬間、囚われた。
何かの術にはまったように自由が奪われる。
自分はもう、成す術なくこの男の情熱に翻弄されるしかない。
動けない。
逃げられない。
そして思った。
どこからかはわからないが、ギルは今、この身体を支配している意識が「ファルシュ」ではなく「サーク」なのだと気づいている。
なのにあえて「ファルシュ」と呼ぶのだ。
体が震える。
お互いが付いた「嘘」。
その「嘘」に騙されてしまいたいという激しい衝動。
意識がない間に溜め込まれた腹の奥の熱が跳ねる。
知られてはいけない。
そう思った。
「あっ……がっ……っ!!」
ぐち……と奥に指が入り込む。
途端に目の前がぼやける。
それが涙のせいかのか快楽からなのかわからない。
知りたくもない。
ギルの指が、サークの口腔内を弄る。
唾液の溢れる口の中、数本の指が舌を弄ぶ。
ぞくぞくした痺れが背筋を走る。
艶めかしい感覚が全身を支配した。
毎度毎度……俺の口の中に拘りやがって……この変態……っ!!
白くぼやける意識の片隅でそんな悪態をつく。
いったいどれくらいの間、口の中を弄られていたのだろう?
高まる疼きに身をよじった。
ギルは何故かいつもサークの口の中に拘る。
初めて向き合ったあの忌まわしい時間でも、ギルは口の中を見せろと迫ってきた。
その他にもエクレアを食べさせてきたりと、とにかく妙に口の中に拘っていた。
だがこうなってみて、それはギルの野性的な本能が嗅ぎ取っていた何かなのだと思えた。
「……あっ!…………んんん……っ!!」
ビクッと激しく体が震える。
緩慢だった甘い痺れは今や激しい波に変わっている。
快楽を逃すように身体をくねらせた。
頼む……これ以上……これ以上しないでくれ……でないと……っ!!
身体を震わせ、熱の溜まった目からは涙が流れる。
弱々しい抵抗として押し込まれた指を噛んだが、更に奥に押し込まれ、耳の中に舌を入れられた。
「~~~~っっ!!」
溜まりに溜まった熱が正常な思考を壊そうとしている。
このまま快楽に身を委ねてしまえばいいと思う。
駄目だ……それだけば駄目だ……。
弄ぶ指を舌で押し返したが、遊んでいると思ったのかフッと笑うような吐息が聞こえた後、指がそれをいやらしく摘んで引っ張った。
「……んぐっ……っ!!」
体が跳ねる。
普通なら触られる事のない口腔内は、弄られれば意志とは関係なく濡れる。
はしたないほど溢れて漏れ出すそれは陰部を彷彿とさせる。
「……気持ちいいか……?随分濡らしている……。」
その声に狂わされる。
熱に魘される。
耐え難い痺れが全身を走る。
頭のどこかで口なんだから当たり前だろうという反抗心を持つが、それはあってない抵抗みたいなものだった。
なぜなら、その言葉を否定できないほど口の中を弄られる刺激が快楽に繋がっていたからだ。
自分でも驚いていた。
不感症だった自分の中でそれを感じとれる場所があった事に。
そしてそれが、ギルが拘り続けていた口の中である事も、何かを見透かされ、あられもなく赤裸々に暴かれたような気持ちにさせた。
認めたくなくてギリリと強く指に噛み付く。
「……力むな、ファルシュ……食い千切られそうだ……。」
「ゃ……駄目っ…………あぁ……っ!!」
「感じているならそれに身を任せろ……力を抜いて何も考えるな……このまま……思うまま快楽に溺れればいい……。」
甘い誘惑。
絶対にそれは駄目だと否定する理性と、溜め込んだ熱を吐き出してしまいたいという激しい欲求がせめぎ合う中、耳元に囁かれた掠れた声は腰の奥の方にズンッと響く。
わなわなと体が震える。
「……あっ!やっ……やめ……っ!!」
そして追い込むようにぐちぐちと激しく掻き回される口腔内。
もう自分がわからなくてサークはもがいた。
けれどギルはガッチリとその身を押さえ込むと、今まで溜め込んできた欲望の全てをこの行為に注ぎ込むように、なりふり構わずサークの口の中を指で犯した。
「うっ……あぁ……っ!!……あぁ……っ!!」
「……予想以上にクるな……お前のその声……っ!」
「やめ……っ!!」
「……何を恐れる?ファルシュ?お前は今、ファルシュなのだろう……っ?!」
「!!」
「……俺に溺れろ……ファルシュ……お前は俺とこうしたかったんだろう?」
「~~~~っ!!」
絶え間なく刺激を与えられ、限界までせり上がって来る快楽に理性が焼き切れる。
それでも抵抗する意思を「ファルシュ」という嘘が揺らがす。
追い詰められる感覚が、今、自分はサークではないのだと、ファルシュなのだと言い訳をする。
耐え難い誘惑に体が震える。
もう訳がわからなかった。
チカチカと頭の中が白く弾ける。
駄目だ……っ!
これ以上……これ以上は……っ!!
堪らえようと強くギルの指を噛む。
しかしその指は容赦なくサークの喉奥を犯した。
「~~~っっ!!あああぁぁぁ……っ!!」
サークの身体が大きく反り返った。
そして激しく痙攣させる。
「…………え……?」
ギルの微かな声とともに、ガクンとサークは脱力した。
意識が戻るに連れ、チカチカしていた目を何度か瞬きさせた。
一度激しく真っ白になった頭の中に、段々と暗い闇が降りてくる。
ギルは唖然としていた。
こんな事をしておいてなんだが、まさか、と思った。
そして頭に浮かんだ事を確かめる為にそっと動けないサークの股間に触れる。
その瞬間、バシッとその手が払われる。
「…………サーク……か?」
さっきまでとは違う、戸惑った声。
それにサークは何も言わずに頷いた。
ギルは少し混乱していた。
サークは不感症で有名だった。
本人もそう言っていた。
ウィルとそういう関係だとはわかっていたが、身体は機能を取り戻した訳ではないと聞いていた。
それに確かめた股間は濡れていなかった。
機能不全と言う言葉通り、膨らんでさえいなかった。
それはこの行為中、何度か確かめたのだ。
けれども……。
肩で息をするサーク。
その様子は快楽に果てたものに酷似していた。
「……サー……。」
「触んな!!」
ギルはドンッと押され、距離をとられた。
サークは口を何度も腕で拭い、俯いたまま顔をあげようとはしなかった。
心臓が早鳴っている。
それが闇の中から絶望を運んでくる。
狂った熱にうなされていた室内は、嘘のように静まり返っていた。
ぼんやりとした意識の中、それを感じた。
艶かしくドロリとした熱が肌にまとわりついている。
しっとりと濡れた感覚。
ぐちゅりと奥を弄られる。
その刺激にピクリと体が反応した。
甘い痺れのような弱い快楽に頭の中が満たされる。
行為中の口づけに似た高揚感に、だらしなく開いた口から唾液が流れ落ちた。
その舌をいやらしく弄ばれる。
「……ふぅ……ん……。」
妙な声が口から漏れる。
それを意識したら、息がうまくできなくてむせそうになった。
暑い……。
ぬめりと全身がその熱に溺れている。
それに拍車をかけるように、手のひらが肌を悩ましく撫でる。
まとわりつく淡い刺激。
ぞわぞわとした感覚が腰から頭に向け駆け上る。
ピリピリと弱く脳内が痺れる。
あぁ……気持ちいい……。
柔らかな快楽に溺れる。
その感覚に目眩がする。
一度は落ち着いても、弄られる体は波打つように刺激を脳に送り続ける。
そしてまた、ぞわりと快楽が走った。
頭の中が淡く弾ける。
(……ウィル…………。)
ぼんやりする頭で恋人の名を呼んだ。
身体に篭った熱。
それが放たれることなく腹の奥を蠢いている。
気だるさ。
いいようのない情緒。
「……あ……あぁ……っ。」
それに飲まれて甘い息を吐き出す。
身を捩っても粘液のようにまとわりつくそれを払う事はできない。
意識のない間、だいぶ焦らされていたようだ。
開放できずに蓄積した熱が全身の情線を燻らせている。
そのまどろっこしい感覚が体の内側を甘く痺れさせる。
もっと長く、この焦らされた甘い快楽を味わっていたい。
いや早く溜まりに溜まった熱を開放して、訳もわからないような突き抜ける感覚を味わいたい。
相反する欲求がジレンマを起こす。
熱に溺れる身体はジリジリとその快楽に痺れる。
それにしても寝込みにこんな事してくるなんて、随分大胆だ。
よほど欲求不満だったようだ。
スイッチが入っちゃうとろくでもなくエロいからなぁ……ウィル。
普段なら絶対しないような事とか、させてくれないような事とか、ノリノリというか積極的にやってくるから悩ましすぎて翻弄される。
それにしても、いつ、ウィルは帰ってきたんだろう?
………………………………。
……………………?!
ウィル?!
はっと我にかえる。
違う、ウィルはボーンさんのところに行ったきり。
それに気づいて目をきちんと開いて見えた、見慣れぬ部屋。
「?!」
ビクッと体を強張らせると、それを押さえ込むように腕の中に閉じ込められた。
反射的にそれが誰が横目で見る。
「!!」
体が硬直した。
理解できずにフリーズする。
「……あ……っ!……ゃ……っ!!」
しかし胸元を弄られ、体が跳ねた。
焦らされ続けていたらしい身体は敏感に快楽を拾う。
ビリビリと皮膚が痺れ、腰から下の力が抜ける。
どうにかしようと緩慢によじったウエストラインを、大きな手がなだめるように撫でる。
皮膚に吸い付く指の感触。
ぴりり……と脳内が淡く痺れる。
……何で?!
熱にまとわりつかれすぎて自由にならない身体。
その腕の中で与えられる刺激に小さく跳ねる。
意味がわからない。
混乱する頭。
どうしてこうなっているのかわからない。
そこにないはずの記憶が押し寄せる。
「……っ!!」
ギクッと肩が震える。
自分ではない、ミチルの記憶。
そして何がどうしてこうなっているのかを思い知らされる。
サークは後ろから抱きかかえられるようにしてギルの腕の中にいた。
辛うじて服は着ているが、サークのパジャマは前ボタンを全て外され胸元を曝している。
「あ……っ!!」
逃れたくて体を動かそうとしたが、与えられる刺激に思わず声が漏れる。
グチリ……と指が。
奥に入り込み中を弄ばれる。
熱に……。
快楽に……。
意識とは関係なく体が溺れる。
意識は戻ったのに、ビリビリと走る緩慢な痺れに抵抗できない。
熱が腹の奥底から競り上がってくる感覚。
不味い、と思った。
なのにその甘いしびれとまとわりつく熱に身体はすでに溺れている。
逃れようと身をよじる自分の動きでさえ、刺激として脳に信号を送り続けている。
「~~~っ!!」
嫌だ。
やめてくれ。
なのに快楽に抵抗できない。
熱のせいか悔しさか、目が潤んで涙が頬を伝う。
……何でだよ!!
そう叫びたかった。
相手に、いや自分自身に。
ずっと不感症だった。
何をしてもこの身体は快楽を感じなかった。
だから性欲研究をしたし、色々性具を作ったりもした。
なのに性欲が芽生える事も、快楽を感じる事もできなかった。
やがてそれを諦めた。
それがない事を理解した上で、自分の全てを愛してくれる人に出会ったからだ。
なのに……なのに何で今更……っ!!
やっと愛する人と生々しい愛を共にできるようになってきたが、それはこんな事の為にその感覚を覚えた訳じゃない。
ウィルは愛してくれた。
性欲があろうとなかろうと関係なく、強く愛してくれた。
そして何より、サークに性欲がないからと言って、自分の性欲を押さえ込んだりしなかった。
ないまま、それが当たり前の事として愛し合った。
多分それが良かったのだ。
ウィルはサークの体が快楽を得られない事をそのまま受け入れたが、それに合わせて自分の欲求を殺さなかった。
自分の性欲は隠さずサークの前に曝け出した。
そんなウィルをサークは愛した。
ない事をそのままに、自分達の形で愛し合った。
なければおかしい。
なければ愛し合えない。
そんな考えがいつしか消えていた。
そのままのサークを受け入れ、そしてありのままの性をサークに晒したウィル。
それはお互いにとって、何も偽る事のないありのままで生々しい性の形だった。
性欲がなくても、性行為はできる。
性欲がなくても求めてもらえる。
愛し合う事ができる。
それは心の奥底で性欲のない自分を無意識に蔑んでいたサーク自身を癒やし、人間としての尊厳を回復させ自信を持たせた。
何より、たとえどんな形であろうとも、人と違おうとも、人でなかろうとも、どんな事であってもウィルがサークの全てを受け入れ深く愛してくれる事がサークを満たしてくれたのだ。
それがきっかけなのかはわからない。
けれどサークはウィルに衝動を感じ、欲求を感じ、そして快楽すら覚えたのだ。
「……んっ…………ああぁぁ……っ!!」
ぐちゅり、と弄られる。
意志とは裏腹に快楽が脳に走る。
ビリビリと白くなる感覚にサークは焦っていた。
それは酷くサークを追い詰めた。
……不味いっ!!
その感覚に覚えがあった。
そしてそれだけば絶対に避けたかった。
抵抗しようと身をよじる。
その身体を男の腕が逃さないとばかりに包む。
「…………ファルシュ……。」
「!!」
掠れた声。
自分の身を抱きとめる腕の力強さ。
汗の匂い。
その言葉にサークは愕然とした。
それは呪いのように二人を雁字搦めにした。
耳元に低く囁かれたハスキーな声。
欲望に魘された熱い呼吸。
それを聞いた瞬間、囚われた。
何かの術にはまったように自由が奪われる。
自分はもう、成す術なくこの男の情熱に翻弄されるしかない。
動けない。
逃げられない。
そして思った。
どこからかはわからないが、ギルは今、この身体を支配している意識が「ファルシュ」ではなく「サーク」なのだと気づいている。
なのにあえて「ファルシュ」と呼ぶのだ。
体が震える。
お互いが付いた「嘘」。
その「嘘」に騙されてしまいたいという激しい衝動。
意識がない間に溜め込まれた腹の奥の熱が跳ねる。
知られてはいけない。
そう思った。
「あっ……がっ……っ!!」
ぐち……と奥に指が入り込む。
途端に目の前がぼやける。
それが涙のせいかのか快楽からなのかわからない。
知りたくもない。
ギルの指が、サークの口腔内を弄る。
唾液の溢れる口の中、数本の指が舌を弄ぶ。
ぞくぞくした痺れが背筋を走る。
艶めかしい感覚が全身を支配した。
毎度毎度……俺の口の中に拘りやがって……この変態……っ!!
白くぼやける意識の片隅でそんな悪態をつく。
いったいどれくらいの間、口の中を弄られていたのだろう?
高まる疼きに身をよじった。
ギルは何故かいつもサークの口の中に拘る。
初めて向き合ったあの忌まわしい時間でも、ギルは口の中を見せろと迫ってきた。
その他にもエクレアを食べさせてきたりと、とにかく妙に口の中に拘っていた。
だがこうなってみて、それはギルの野性的な本能が嗅ぎ取っていた何かなのだと思えた。
「……あっ!…………んんん……っ!!」
ビクッと激しく体が震える。
緩慢だった甘い痺れは今や激しい波に変わっている。
快楽を逃すように身体をくねらせた。
頼む……これ以上……これ以上しないでくれ……でないと……っ!!
身体を震わせ、熱の溜まった目からは涙が流れる。
弱々しい抵抗として押し込まれた指を噛んだが、更に奥に押し込まれ、耳の中に舌を入れられた。
「~~~~っっ!!」
溜まりに溜まった熱が正常な思考を壊そうとしている。
このまま快楽に身を委ねてしまえばいいと思う。
駄目だ……それだけば駄目だ……。
弄ぶ指を舌で押し返したが、遊んでいると思ったのかフッと笑うような吐息が聞こえた後、指がそれをいやらしく摘んで引っ張った。
「……んぐっ……っ!!」
体が跳ねる。
普通なら触られる事のない口腔内は、弄られれば意志とは関係なく濡れる。
はしたないほど溢れて漏れ出すそれは陰部を彷彿とさせる。
「……気持ちいいか……?随分濡らしている……。」
その声に狂わされる。
熱に魘される。
耐え難い痺れが全身を走る。
頭のどこかで口なんだから当たり前だろうという反抗心を持つが、それはあってない抵抗みたいなものだった。
なぜなら、その言葉を否定できないほど口の中を弄られる刺激が快楽に繋がっていたからだ。
自分でも驚いていた。
不感症だった自分の中でそれを感じとれる場所があった事に。
そしてそれが、ギルが拘り続けていた口の中である事も、何かを見透かされ、あられもなく赤裸々に暴かれたような気持ちにさせた。
認めたくなくてギリリと強く指に噛み付く。
「……力むな、ファルシュ……食い千切られそうだ……。」
「ゃ……駄目っ…………あぁ……っ!!」
「感じているならそれに身を任せろ……力を抜いて何も考えるな……このまま……思うまま快楽に溺れればいい……。」
甘い誘惑。
絶対にそれは駄目だと否定する理性と、溜め込んだ熱を吐き出してしまいたいという激しい欲求がせめぎ合う中、耳元に囁かれた掠れた声は腰の奥の方にズンッと響く。
わなわなと体が震える。
「……あっ!やっ……やめ……っ!!」
そして追い込むようにぐちぐちと激しく掻き回される口腔内。
もう自分がわからなくてサークはもがいた。
けれどギルはガッチリとその身を押さえ込むと、今まで溜め込んできた欲望の全てをこの行為に注ぎ込むように、なりふり構わずサークの口の中を指で犯した。
「うっ……あぁ……っ!!……あぁ……っ!!」
「……予想以上にクるな……お前のその声……っ!」
「やめ……っ!!」
「……何を恐れる?ファルシュ?お前は今、ファルシュなのだろう……っ?!」
「!!」
「……俺に溺れろ……ファルシュ……お前は俺とこうしたかったんだろう?」
「~~~~っ!!」
絶え間なく刺激を与えられ、限界までせり上がって来る快楽に理性が焼き切れる。
それでも抵抗する意思を「ファルシュ」という嘘が揺らがす。
追い詰められる感覚が、今、自分はサークではないのだと、ファルシュなのだと言い訳をする。
耐え難い誘惑に体が震える。
もう訳がわからなかった。
チカチカと頭の中が白く弾ける。
駄目だ……っ!
これ以上……これ以上は……っ!!
堪らえようと強くギルの指を噛む。
しかしその指は容赦なくサークの喉奥を犯した。
「~~~っっ!!あああぁぁぁ……っ!!」
サークの身体が大きく反り返った。
そして激しく痙攣させる。
「…………え……?」
ギルの微かな声とともに、ガクンとサークは脱力した。
意識が戻るに連れ、チカチカしていた目を何度か瞬きさせた。
一度激しく真っ白になった頭の中に、段々と暗い闇が降りてくる。
ギルは唖然としていた。
こんな事をしておいてなんだが、まさか、と思った。
そして頭に浮かんだ事を確かめる為にそっと動けないサークの股間に触れる。
その瞬間、バシッとその手が払われる。
「…………サーク……か?」
さっきまでとは違う、戸惑った声。
それにサークは何も言わずに頷いた。
ギルは少し混乱していた。
サークは不感症で有名だった。
本人もそう言っていた。
ウィルとそういう関係だとはわかっていたが、身体は機能を取り戻した訳ではないと聞いていた。
それに確かめた股間は濡れていなかった。
機能不全と言う言葉通り、膨らんでさえいなかった。
それはこの行為中、何度か確かめたのだ。
けれども……。
肩で息をするサーク。
その様子は快楽に果てたものに酷似していた。
「……サー……。」
「触んな!!」
ギルはドンッと押され、距離をとられた。
サークは口を何度も腕で拭い、俯いたまま顔をあげようとはしなかった。
心臓が早鳴っている。
それが闇の中から絶望を運んでくる。
狂った熱にうなされていた室内は、嘘のように静まり返っていた。
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そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。
水凪しおん
BL
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。
※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。
「君はもう、頑張らなくていい」
――それは、運命の番との出会い。
圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。
理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!
年下幼馴染アルファの執着〜なかったことにはさせない〜
ひなた翠
BL
一年ぶりの再会。
成長した年下αは、もう"子ども"じゃなかった――。
「海ちゃんから距離を置きたかったのに――」
23歳のΩ・遥は、幼馴染のα・海斗への片思いを諦めるため、一人暮らしを始めた。
モテる海斗が自分なんかを選ぶはずがない。
そう思って逃げ出したのに、ある日突然、18歳になった海斗が「大学のオープンキャンパスに行くから泊めて」と転がり込んできて――。
「俺はずっと好きだったし、離れる気ないけど」
「十八歳になるまで我慢してた」
「なんのためにここから通える大学を探してると思ってるの?」
年下αの、計画的で一途な執着に、逃げ場をなくしていく遥。
夏休み限定の同居は、甘い溺愛の日々――。
年下αの執着は、想像以上に深くて、甘くて、重い。
これは、"なかったこと"にはできない恋だった――。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
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