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愚かな姉(ナポリ公ルネ)
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フランス王妃である姉マリーは窓際で椅子に座り、虚ろな目をして、外を見ていた。
全身から哀しみが煙のように立ち昇っている。
「…姉上…」
声をかけると、姉はゆっくりとこちらを振り向いた。
思わず慰める言葉をかけたくなるほど、姉は窶れ、憔悴していた。
「お呼びと聞き、急ぎ参りました。」
「ルネ…貴方何てことを…」
途中まで言って、姉は唇を噛み締めた。
「何てことって…」
「貴方があんな女、シャルル様に紹介したから……」
姉は耐えきれないというように泣き崩れた。
侍女が慌てて抱きとめ、慰める。
姉は励まされながらまた椅子に座り直した。
胸を苦しそうに押さえている。
侍女が4人がかりで世話していた。
そのある意味劇の舞台のようなシーンを見て私は舌打ちしたくなった。
いつもこうだ。
そのず太い心臓は少々のことじゃ傷まないだろうに。
姉は誰かに慰められるように仕向けるのが死ぬほどうまい。
こうなったら、しばらくマリー劇場が続く。
慰められて悲劇のヒロインのように打ちひしがれる姉を冷たく見つめる。
そう、私は、世界で一番不幸です。という顔したこの女が大嫌いだった。
私が慰めないせいか、姉のすすり泣きが一層激しくなってきた。
いつもならこの女の望むようなセリフを吐いて慰めるが、もうそんなことしてやらなくてもいい。
義兄上は最愛を手に入れた。
公にその存在を知らしめた。
この女がどうすることはまずできない。
私は面白くなってきて姉に問いかけた。
「何言ってるんですか?姉上。」
姉は自分のシナリオにない返事が来たからだろう、口をあんぐりしてこちらを見た。
(おいおい。素が出てるぞ)
私は笑いたくなりながら、なおも問いかけた。
「私が義兄上に誰を紹介したから、どうだと仰るのですか?」
姉はひ弱な演技も忘れたのか、カッとした顔をして立ち上がって叫んだ。
「知らないとは言わせないわよ!貴方があんな女紹介したから、シャルル様が誑かされて、変わってしまったじゃない!あんなにわたくしを愛してくれてたのに!」
侍女たちは下を向く。
「…愛してねぇ…」
含み笑いをした私を姉は睨みつける。
「愛されてたわ!」
「おい。姉上にこんな勘違いさせたままなのは何でだ?お前ら全員職務怠慢で罰するぞ。」
笑いながら姉上の侍女にそう告げると、侍女たちはいっせいに下を向いた。
姉は鯉のように口をパクパクさせている。
私は酷く嗜虐的な気分になり、さらに姉に畳み掛けた。
「ねえ…誰が誰に愛されてるんですか?姉上?」
全身から哀しみが煙のように立ち昇っている。
「…姉上…」
声をかけると、姉はゆっくりとこちらを振り向いた。
思わず慰める言葉をかけたくなるほど、姉は窶れ、憔悴していた。
「お呼びと聞き、急ぎ参りました。」
「ルネ…貴方何てことを…」
途中まで言って、姉は唇を噛み締めた。
「何てことって…」
「貴方があんな女、シャルル様に紹介したから……」
姉は耐えきれないというように泣き崩れた。
侍女が慌てて抱きとめ、慰める。
姉は励まされながらまた椅子に座り直した。
胸を苦しそうに押さえている。
侍女が4人がかりで世話していた。
そのある意味劇の舞台のようなシーンを見て私は舌打ちしたくなった。
いつもこうだ。
そのず太い心臓は少々のことじゃ傷まないだろうに。
姉は誰かに慰められるように仕向けるのが死ぬほどうまい。
こうなったら、しばらくマリー劇場が続く。
慰められて悲劇のヒロインのように打ちひしがれる姉を冷たく見つめる。
そう、私は、世界で一番不幸です。という顔したこの女が大嫌いだった。
私が慰めないせいか、姉のすすり泣きが一層激しくなってきた。
いつもならこの女の望むようなセリフを吐いて慰めるが、もうそんなことしてやらなくてもいい。
義兄上は最愛を手に入れた。
公にその存在を知らしめた。
この女がどうすることはまずできない。
私は面白くなってきて姉に問いかけた。
「何言ってるんですか?姉上。」
姉は自分のシナリオにない返事が来たからだろう、口をあんぐりしてこちらを見た。
(おいおい。素が出てるぞ)
私は笑いたくなりながら、なおも問いかけた。
「私が義兄上に誰を紹介したから、どうだと仰るのですか?」
姉はひ弱な演技も忘れたのか、カッとした顔をして立ち上がって叫んだ。
「知らないとは言わせないわよ!貴方があんな女紹介したから、シャルル様が誑かされて、変わってしまったじゃない!あんなにわたくしを愛してくれてたのに!」
侍女たちは下を向く。
「…愛してねぇ…」
含み笑いをした私を姉は睨みつける。
「愛されてたわ!」
「おい。姉上にこんな勘違いさせたままなのは何でだ?お前ら全員職務怠慢で罰するぞ。」
笑いながら姉上の侍女にそう告げると、侍女たちはいっせいに下を向いた。
姉は鯉のように口をパクパクさせている。
私は酷く嗜虐的な気分になり、さらに姉に畳み掛けた。
「ねえ…誰が誰に愛されてるんですか?姉上?」
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