孤児が皇后陛下と呼ばれるまで

香月みまり

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4章

65 3日目夜 決戦の時③

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生垣沿いに走り、ある程度人の多い辺りを抜けると、庭側にせり出した露台から、建物に飛び移る。

回廊を皇帝が逃げた方向に向かって走れば、幾人かの近衛がこちらの姿に気づいた。

「何者だ!」
「こんな所にも!」

目視でざっと10人ほどがこちらに向かって剣を突きつけて牽制しているが、向かっていくそのままのスピードで彼らに突っ込む。

出会い頭に、1人の腹に突きを入れて、その後ろにいたもう1人の顎下に拳を入れる。


「3名残れ」

「承知!」

部下に告げて自身は前に進む。
すでに前方の兵は至湧が片付けていた。

バタバタと後方で足音が響く。増援か?とヒヤリとしたのも束の間。

「き、禁軍!?なぜここに!!」

驚きとも希望とも取れる近衛の声が上がる。

どうやら禁軍の面々も侵入に成功してきたらしい。

「残りは禁軍に任せよう!」

部下達に声をかけて、回廊を左に折れる。
自身の記憶が正しければ、ここはすでに後宮の奥殿近く。
大小の部屋が点在しているため、どこかに隠れ込まれたら厄介だ。

姿を見失わないように、近衛に囲まれながら逃げてゆく皇帝の背中に目を細める。


途中、皇帝を囲んでいた近衛がこちらに向かって方向を変えた。
どうやら時間稼ぎのつもりらしいが、ここ10年平和な後宮を守ってきた彼らと、戦場で叩き上げてきた自身の部下ではレベルが違いすぎる。至湧と並び走っていた2名が、難なく斬り伏せた。

「殺すなよ」
「わかってますって」

通りがかりに部下に言えば、部下は悪戯めいた笑みで応じてきた。

不意にそんな彼に斬り伏せられ、それでも意識のある近衞と目があった。

遠い昔だが、なんとなく見覚えのある顔で、恐らく近衞の方も同じことを思ったのだろう。

「あ、、貴方様は!」

まるで信じられないものを見るようなその反応。自分が何者であるのか彼は気づいたのだ。

それを一瞥して再び走り出す。

「悪いな、眠っててくれ」

後方で先程の部下が、彼を鎮めた鈍い音が響いた。

急いで速度を上げれば、皇帝の背を真っ直ぐ追う至湧に追いつく。

「この方角は、、、」

「あぁ、おそらくあの野郎、母親の所に逃げ込むつもりらしい」

馬鹿なやつだ。結局最後まで母の力を頼るのだ。
どこまでも腑抜けた甘ちゃんで、そんな奴に出し抜かれて15年という歳月を不意にした、己の不甲斐なさにも反吐が出そうだ。


「至湧!覚えているか?」

短く声を掛ければ、隣で至湧がクスリと笑った気配がする。

「えぇ、懐かしいですね。私が行きます」

「頼む!」

そう伝えれば、至湧は部下2人に手で合図を送り、直後の角を曲がった。


北殿に向かうのならば、少し狭いが近道がある。

至湧はそちらから彼等の前方に回り、足止めをするつもりだ。

狙い通り角を曲がれば、そこには足止めにあって近衛と数人の側近に囲まれた皇帝の姿があって。

そこでようやく、こちらを振り返った。異母弟おとうとと目が合う。

「っ、、、お前は!」

「蓉、、、でん、か」


一瞬にして、彼とその隣にいる側近達の顔色が蒼白になったの見て。

自然と口角が上がった。

「覚えていてくれて光栄だな。丈淵じょうえん。」
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