孤児が皇后陛下と呼ばれるまで

香月みまり

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4章

66 3日目夜 決戦の時④

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「生き、、、ていただと?」

まるで幽霊でも見ているとでも言うように信じられない様子で呆然とこちらを見る丈淵とその側近達を一瞥する。
どれもこれも、見覚えのある弟の近習達である。

「お前達親子の高笑いが聴こえてな。地獄から甦ってきてやったぜ」

そう不敵に微笑んでやれば、丈淵は肩で息をしながらも、こちらを睨み返してきた。

「まさか、これは、、、そうか、湖紅の手を借りたか?」

昔に比べて随分と頭の回転は早くなったらしい。すぐに翠玉に考えが行き着いたようだ。

しかし、それを鼻で笑う。

「ははっ、半分は正解だが、半分は違う」

「半分、、、だと?」

低く唸った丈淵に頷いてやる。

「まさか、、、本当に蓉皇子殿下でいらっしゃるのか!?」

近衛の1人が、事実を問うように声を上げる。

わずかだが、皇帝を守るように囲う近衛達にも動揺が見られた。


「まだ顔を知っている者も残っているのか。ならばこちらの目的も分かるな?
誰が本物の皇帝たるかも!」

そう威圧を込めて問えば、動揺を見せていた近衛達、、主に年嵩の高めの者達がビクリと肩を震わせた。

その時、後方の回廊をバタバタ追いついてくる足音が響く。

こちらが確認する前に、近衛と丈淵が唖然とその一団を見たのが分かった。

禁軍の一団が一斉に脇を通り抜け、彼らを包囲する。

「禁軍が、、なぜ!」

「あなたは!壁将軍!!なぜ!?」

彼らの行動が、自身の援護でない事を理解した、近衛達が悲痛な声を上げる。

宮廷の警護は近衛の管轄であり、ここは近衛の庭である。しかし、そんな彼らも警護を生業とする自分達と、戦場での実戦を生業とする禁軍とでは天と地ほどの実力差がある事を理解している。

禁軍の先頭に立った卓牙が、帯刀した剣を抜き取り、真っ直ぐに彼らへ突きつけた。

「お忘れですか?私は蓉殿下が行方不明になったあの時、蓉殿下の下におりました。
あの頃から我が主人は蓉殿下お一人。」


「禁軍が、、、下っただと!?」

誰ともなく、丈淵側から歯噛みする声が上がる。
絶望的な状況をようやく認識したらしい。


「皇太子以下皇子3名、皇后、側室についても捕縛を完了している。あとは皇帝陛下、貴方様だけです」

淡々と告げる卓牙の言葉に近衛が息を飲む。

「流石だな、卓よ。仕事が早い」

まさかこんな短時間でやってのけるとは、、、これには蓉芭自身も感心した。

「もう、足を引っ張るわけには参りませんのでね」

憮然と答える卓牙に苦笑する。まだ15年前のあの日を彼は悔いているらしい。
そんなものは帳消しになるほどに、よくやっていると言うのに。

ゆっくりと丈淵に向き合う。


「これくらいの事をやり遂げるんだ、準備は抜かりない。なにしろ15年時間があったからな。観念するんだな」


「くっ!誰の許しがあって!!お前など、認められるわけがない!正式な皇帝はこの私だ!」

簡単に納得するものでもない事は分かっていたが、あまりにも哀れな言い分にため息が漏れそうだった。

彼が王座についたのも、皇帝でいられたのも、彼の母の卑劣な行為によって作られた道だ。決して彼が努力で手に入れたものではない。

せめて、10年分の実績で示せばまだ救いようがあるものの。


「たしかに、俺1人の志では認めぬ者もいよう。これではただの私怨に狂った逆賊と言われても文句は言えない。」

そう言って、胸元から2通の書簡を取り出すと、彼等の前に広げて見せる。

「こちらは湖紅国皇帝、もう一つは碧相皇帝からの親書だ。現皇帝退位の後、俺が皇帝の座につく事を認め、支援を惜しまないという証明だ」


「なんだと!!湖紅だけでなく碧相も?」

狼狽えた、側近の1人が呟いて、そしてはっとしたように丈淵を窺った。

「陛下、、伯央殿は!?」

どうやらそこでようやく伯央の事を思い出したらしい。


「董伯央をここに留めておいてもらえて助かったぜ、奴は湖紅にも碧相にも因縁のある相手だ。今頃奴を消したくて仕方なかった、碧相の狂人にいたぶられているだろうよ」

そう冷ややかに告げれば、「碧相の狂人!?」と敵味方関係なく息を飲んだのが分かった。


「そう言うわけでな、、、董伯央は消える。奴のいない紫瑞と同盟を組んでも大した利はない。逆に、南の大国碧相と、隣国湖紅の後ろ盾と強固な関係だ。どちらが我が国に利があり大きな益を産むのか、バカでもわかるだろう?」

一度言葉を切って、丈淵を囲む者達を睨みつける。

「さて、お前達が皇帝を選べ、誰がお前の主人に相応しいか」
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