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4章
64 3日目夜 決戦の時②
しおりを挟むしばらくの間、その場で静かに待機をして。
「行くぞ!」
頃合いを見て、移動を開始した。
目指したのは西側の見張り櫓
その下に後宮に繋がる地下道が繋がっているのだ。
櫓の上と、その下にも近衞の見張りがいるのがその証拠である。
と、そのタイミングで祝いの空砲が三発夜空に響く。
昼間も爆竹やら空砲があちこちで鳴らされているから、さほど珍しいものではない。
しかしこれは、仲間内の合図である。
すぐに手振りで部下を二人やって、櫓の下に配置されている近衞を鎮めさせる。
櫓の上の見張り達は、空砲の音に気を取られ気づいてはいない。
素早く床板を外して、中を確認した部下がサインを送ってくる。
パンパンパンとまた空砲が鳴り響く。
音に乗じて、床穴に滑り込む事に成功した。
おそらく他の場所でもこの音に乗じて仲間達が侵入を測っているだろう。
作戦開始だ。
地下通路の中は、有事に皇帝や貴妃、子どもまでが逃げられるように整備されている。
その通路を進みながら注意深く地上の様子も確認していく。
恐らく出口にも近衞が見張りでいるはだ。
ここからは上にどの程度の敵がいるのかは未知だ。
「俺が行きます」
そう言って前に出たのは至湧で、彼は階段を駆け上がると、上の気配を探るように耳を欹てると、一気に飛び出した。
次の瞬間には、バタバタと2人分の崩れ落ちる音が響いた。
部下の一人が、先に頭を出してこちらに向かって、前進のサインを送ってくる。
順に飛び出して、辺りを見渡せば、そこは見覚えのある後宮の内部の庭園の外れだった。
どうやら侵入には成功したらしい。
「こちらです」
押し殺した至湧の声に誘われ、庭園の生垣に分け入れば
「懐かしいな」
「殿下も思い出しましたか?」
至湧と顔を見合わせて笑んだ。
後宮には有事の際に隠れて移動ができるような秘密の通路なる物が多く存在する。
昔からこうしたものは、格好の冒険場所となっていて、よく兄や翠玉と、あちらこちらの通路を見つけてはいたずらに使っていたものだ。
自分達にしてみれば遊び場みたいなものだ。
当然近習として一緒にいた至湧も知っているわけで、瞬時に昔の記憶から、ここが使えると判断したのだろう。
生垣に紛れて通路を進む。
記憶が正しければ、ここから目的の広間まで出られる筈だ。
その証拠に少しずつ、辺りが賑やかになってきた。
女の笑い声に、酔っ払った高笑い。
楽士の奏でる音楽に、囃し立てる声。
「やはりここか、、、なるほど、楽しんでるようだな」
小さく微笑んで生垣の隙間から辺りを窺う。
すぐに目的の男の姿を見つけた。
まるで吸い寄せられるように視線が彼に向いたのだ。
自身を蹴落として皇帝の座についた一つ年下の弟。
口の中が乾いて行くのを感じた。
「伯央もいるなククッ」
隣で、義兄が自身の獲物を見つけて喉を鳴らしている。
それぞれ、獲物は捕捉した。
その時、この浮かれた状況に場違いな大きな足音が響く。
「お楽しみのところ失礼いたします!何者かが南門付近より侵入!」
近衞の叫ぶ声に、音楽はとまり、ザワリと一同がざわめく。
「なんだと!どう言う事だ!」
立ち上がって声を上げたのは、皇帝の側近の一人その男にも見覚えがあった。
「現在確認中でございます。ひとまず、ご要人の方は兵の指示にしたがって避難を!陛下、奥方様方は奥殿へお逃げください!」
そう指示があるやいなや、先程までは酒宴に浮かれていたその場は、蜂の巣を突いたような騒ぎになった。
その中でも、側近と近衛に囲まれて逃げていく皇帝の姿は一瞬たりとも見逃すことはなかった。
「さて、ここからは別行動だ!」
隣では、同じように董伯央から目を離さない義兄が今か今かと機を見てウズウズしている。
「ご武運を。」
短く言葉をかければ
「あぁ、行くぞ!」
次の瞬間には剣を抜いた黒い影が茂みを飛び出して行った。つづいて出て行く彼の部下達を見送り、こちらも足早に生垣を先に進んだ。
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