67 / 70
第二章 マリーハイツ公約編
第四十二話 怪しき符号(1)
しおりを挟む
マリーハイツ役場二階の会議室。
午前中の議論で積み上がっていた紙束は、今や一枚の「決定文」になってシュアラの前に置かれていた。
「……以上をもって、北方海路再編に関する試験運用覚書を締結とする」
海務院の士官が、疲れを隠しきれない丁寧な声で読み上げを締めくくる。
机の中央には、他の紙とは質の違う羊皮紙が一枚。
その最下行に、新しく書き足された一文が黒々と浮かんでいた。
『第一便(帝都案)および第二便(比較案)をもって、安全性および損耗率の検証を行う』
午前の議論で決めた帝都案に対して、自分たちの案を実際に使って比較できるところまでこぎつけた証拠だ。
ここまで持ち込めただけでも、本来なら大きい。
ただ、そのすぐ下の一文が、喉に引っかかっていた。
『なお、緊急時においては、航行継続のため必要な措置を認める』
シュアラの目には、その言葉が「穴」として見える。
何でも入る箱のような文言は、後から起きた事象に対して、どこまでも言い訳に使える。
そうなれば、比較も検証も形だけになってしまう。
本来なら、今この場で指摘すべきだ。
だがシュアラは、ひと呼吸おいてからその言葉を飲み込んだ。
下手に揉めれば、そもそもの「比較」自体が流れる。その危険の方が大きい。
彼女が黙っていると、「町として、異存は?」と海務院士官がクラウスを見る。
クラウスは机の端を指先でとんと叩き、短く息を吐いてから頷いた。
「……試験運用、受け入れましょう」
一拍置いて、視線を士官へ戻す。
「どちらの案が有効か。我々も、知りたいですしな」
椅子の背がきしむ。
町側の人間たちは、敗戦処理を引き受ける兵のような顔で、次々と頷いた。
「ありがとうございます。帝都としても、責任をもって記録と検証を──」
コルネリウスが決まり文句を並べる。
シュアラは、その横顔をじっと見ていた。
(検討と、検証は、別)
午前中、無理やり条文にねじ込んだ自分の言葉。
帝都案を「試験航路」として受け入れる代わりに、比較検証を紙の上に縫い付けた。
同じ条件で、二便。
第一便は帝都案。第二便は、自分が引いた航路案。
先手を相手に譲るのは仕方がない。そう理解していても、胸の奥の引っかかりは消えない。
「では、署名を」
ほとんど埋まりきった署名欄の紙が回ってくる。
自分たちの項目だけが空いている場所に羽ペンを取り、インクを含ませる。
(負けてる)
素直にそう思った。
今日この場で結ばれる覚書は、帝都案を背骨にしたものだ。
マリーハイツもヴァルムも、その骨にぶら下がる枝に過ぎない。
それでも──。
シュアラは、署名欄を確認し、静かにペン先を滑らせた。
シュアラ。
死人文官として、生きている今の名前。
(負けたままでもいい。帳簿の上での「勝ち負け」は後回しにする。
とにかく、比較で勝てればいい。どんな手段を持ち込まれようと、自分たちの案に価値があると示せればいい)
帳簿の中だけで殴り返すのをやめる。
帳簿そのものを海の上に引きずり出す。
今、選べるのは、そのやり方だけだ。
朱肉の赤が乾いていくのを横目で見ながら、シュアラは椅子から立ち上がった。
港の風は、会議室の空気よりずっとまっすぐだ。
坂道を下りきると、潮の匂いと、ロープのきしむ音が一度に押し寄せてきた。
マストを叩く帆布。甲板を走る足音。海鳥の鳴き声。
そのざわめきが、彼女の疑念を、いったん雑踏の奥へ押し流そうとしていた。
*
マリーハイツの桟橋には、三隻の船が並んでいた。
一番外側には、帝都の紋章旗を掲げた船。
艫には海務院の印。舷側の新しい板材は、まだ木目の色が鮮やかだ。
その内側には、幅広で腹の低い地元漁師の船。
波に揉まれ続けた木肌は、ところどころ銀色に擦り減っている。
さらに内側の桟橋に、ヴァルムから持ってきた軍用船。
氷とぶつかり合ってきた船首の鉄板には、無数の傷が刻まれていた。
並べて見れば一目瞭然だった。
軍用船が一番大きく、作りも重い。
背後にある「資金源」の差が、そのまま船体の厚みに現れている。
カイが手すりにもたれ、腕を組んだまま三隻を見比べた。
「ふーん……揃いも揃って、いい面構えしやがる」
今日の三隻は、どれも「試験」のために並べられた実験器具だ。
「お前の船は?」
「真ん中」
カイは短く顎をしゃくり、漁師たちの船を示した。
「港の連中と一緒に乗る。ヴァルムの連中は、あっちの軍用船だ」
剣帯を直しながら、帝都船へ視線を送る。
その視線が、一瞬だけ固まった。
「零札も半分はそっちだ」
「残り半分は──」
シュアラも言葉を切る。
二人の視線が同じものに吸い寄せられていた。
「──帝都船ですね」
帝都船の甲板には、灰色の制服を着た零札たちが整列していた。
鎖はない。けれど、腰帯の金具には同じ刻印が光っている。
その列の中央に、白が刺さっていた。
儀礼用に仕立てられた白い衣。
首元には細い金属の輪。
背中には、布越しにも分かる刻印の線。
「……リリーシア」
名前を口にする代わりに、喉の奥で呼ぶ。
彼女は護衛の士官たちに囲まれ、桟橋と甲板の境目に立っている。
足首には細い帯。
それでも、その足元の板の揺れ方は、他の誰よりも海に馴染んでいるように見えた。
背後から、リュシアの声がする。
「深海契約の器は、帝都側の船に」
振り向くと、リュシアは計算用母を片手に、数値を確認していた。
「比較するには、出力を一定にしないと」
「出力」
シュアラが繰り返すと、リュシアは顔を上げず、数字を弾きながら答えた。
「ええ。あの子を、どのくらい使うか。そういう意味です」
さらりと告げて、計算用母を腰袋にしまう。
帝都船のタラップへ向かいながら、肩越しにちらりと振り返った。
「ヴァルム側とマリーハイツ側には、契約なしで。公平な比較のために」
シュアラは、羽根ペンの軸を握り直し、一瞬だけ言葉を探した。
「……公平、ですか」
思っていたより小さな声になった。
その横から、フィンが大きな紙束を抱えて駆け寄ってくる。
見出しだけが、太い字で書かれていた。
『第一便(帝都案)』
『第二便(比較案/マリーハイツ・ヴァルム)』
フィンは冗談めかして敬礼しながら、紙束を広げて見せた。
「記録係、フィンであります」
シュアラは苦笑しながら、ログ用紙の見出しに指を滑らせる。
その指先が、わずかに震えていた。
「一便ごとに枠を分けました。時刻、位置、波、遅延、損耗、貨物」
指を止め、端の欄を軽く叩く。
こつ、と小さな音がする。
「あと、人的被害の欄も」
その言葉のあと、短い沈黙が落ちた。
「ありがとうございます」
シュアラは紙面を確認し、顔を上げる。
「……"検証する"顔になってきましたね」
「そっちがそういう顔して歩き回るから」
フィンは肩をすくめた。
その動きは軽口の割に、どこか重い。
ログ用紙を板箱の上に広げ、四隅を石で押さえる。
風に飛ばされないようにする、その手つきは妙に慎重だった。
その向こうを、海務院の士官が封のある書類袋を抱えて通り過ぎていく。
革ひもを十字に掛けた、帝都式の封筒だ。
「それは?」
フィンがつい好奇心で尋ねると、士官は「規定書類です」とだけ答えた。
返事は短く、抑えた調子だった。
「緊急時対応の命令書。……開けずに済むのが一番いいんですがね」
そう言いながら、袋の角を指先で確かめる。
押された封蝋には、帝都の紋章と、見慣れない番号が刻まれていた。
(番号……段階か、何か)
シュアラは一瞬だけ目で追い、それから視線をログ用紙に戻した。
しかしその番号は、頭の隅に小さな棘のように残り続ける。
「そろそろ乗り込みましょうか」
カイが軍用船の方へ歩き出す。
シュアラも、フィンとともにタラップを上がった。
甲板に足を踏み入れた瞬間、下から海の力が押し上げてくる。
会議室の木の床とは違う、決して紙には写らない揺れ方だ。
(ここから先は──紙を、現場に追いつかせる)
シュアラは、青い航路帳をマントの内側に収め、ロープの匂いのする風を一度深く吸い込んだ。
*
「第一便、出航準備完了!」
帝都船の甲板から、声が風に乗って届く。
旗が掲げられ、信号旗が上がる。
マリーハイツの船長が、その合図をちらりと見てから舵輪の前で腕を組んだ。
「こっちは合わせて動くだけだ。勝負は“様子見”の顔してる連中の方だな」
カイが笑う。
「俺たちは沈まないようにする。お前は、ちゃんと見とけよ」
「見ますよ。……全部」
シュアラは、フィンの横で板箱の上のペンを取った。
ログ用紙の「第一便」の欄に、最初の数字を書く準備をする。
帝都船の舳先が、ゆっくりと港の外を向いた。
同時に、三隻の船体を包む波のリズムが、少しだけ変わる。
「第一便、帝都案。──出航」
海務院の士官が、定型句を読み上げる。
それに合わせ、フィンのペン先がさらりと動いた。
「時刻、第三時一刻。波高、低。風向、北東。遅延──なし」
舵が切られ、帆が張られる。
港町が、ゆっくりと船尾側へ遠ざかっていく。
海は、奇妙なほど素直だった。
うねりはある。風も吹く。
だが、波の山も谷も、帝都船の進路に合わせて、わずかに形を変えているように見える。
(……潮の癖が、いつもと違う)
マリーハイツの漁師が小さくぼやく。
シュアラはそれを耳の端で聞きながら、海図と位置を照らし合わせた。
予定どおりの位置。予定どおりの時刻。
それを証明する数字が、フィンの手で次々と埋められていく。
「損耗、ゼロ。貨物損傷、なし。──はい、ここまでも“問題なし”っと」
フィンが呟くたび、ログ用紙の上に綺麗な列が伸びていく。
途中、一度だけ、海面に薄い輪が浮かんだ。
墨を落としたような白い泡の輪。
帝都船の船底から何かが広がったように、そこだけ水の色が変わる。
「おい、今の……」
カイが眉をひそめる。
だが、次の瞬間には輪は波に紛れて消えていた。
「水温、一瞬下がったな」
漁師の一人が、手を浸した指先を振る。
顔に、小さな違和感だけが浮かんでいた。
「だが、まあ──」
彼は肩をすくめる。
「船は進んでる。魚も逃げちゃいねえ」
事実、その通りだった。
だからこそ、その「事実」がどこか薄気味悪い。
進路上に魚の群れが見え、一羽のカモメが帝都船のマストに止まり、羽づくろいをしている。
何も起きない。何も沈まない。
だから、ログ用紙は、美しかった。
「第一便、折り返し地点通過。遅延──なし。人的被害──なし」
フィンの声は、どこか乾いて聞こえる。
数字だけ見れば、教科書に載せたくなるような「実績」だ。
その理想的な整い方が、かえって冷たかった。
(“許容損耗”の欄が全部ゼロなら、本来なら歓声を上げるところなんでしょうけど)
シュアラは紙の端を指で押さえた。
帝都船の甲板では、リュシアが双眼鏡を下ろしている。
遠目にも、その顔は満足げだ。
リリーシアは、その少し後ろで、ただ静かに立っている。
(静かすぎる)
一瞬、喉の奥で言葉が形になりかける。
だが、その言葉の輪郭は、次の数字の読み上げに上書きされた。
「第一便、帰投。──損耗ゼロ、遅延ゼロ。ログ完了」
港が再び近づいてくる。
三隻は順番に桟橋へ戻り、ロープが飛び交った。
上陸するとすぐ、海務院の士官がログ用紙を覗き込む。
「……見事なものですね」
口元に、わずかな笑みが浮かぶ。
「第一便の時点では、帝都案に軍配が上がる、というわけですか」
数字を見た士官の口元が、また少しだけ上がった。
「帳簿の上では、そうなります」
シュアラは、正直に答えた。
その正直さが、喉の奥で石のように引っかかる。
第一便(帝都案)──紙の上の評価:安全、迅速、損耗なし。
青い航路帳に、そのまま転記する。
今日のページの中央に、「第一便/帝都案:帳簿上は勝利」と細い字で書き込んだ。
(それでも、まだ終わりじゃない)
ページの下半分は、まだ空白だ。
そこに、第二便の数字が並ぶはずだった。
(こっちが、本当の勝負)
検討と検証は別。
検証には、最低でも二つの数字がいる。
帝都案の数字が美しいほど、比較する意味が出てくる──そのはずだった。
*
二便目の準備は、想像より早く始まった。
昼食の湯気がまだ消えきらないうちに、港に再び号令が飛ぶ。
帆が巻き上げられ、ロープが解かれ、船員たちの足音が桟橋を駆け抜けていく。
「第二便。比較案による試験航路に移る」
海務院士官の声は、第一便のときと同じ事務的な響きだった。
ただ、「事前の確認事項」がいくつか増えている。
「安全基準の再確認を行います」
「計測方法の統一のため、ログ用紙を差し替えます」
士官たちが甲板の各所で、それぞれの役目を声に出して確認していく。
「さっき統一したばかりじゃなかったか?」
カイがぼそりと漏らす。
その声には、苛立ちが混じっていた。
シュアラも眉をひそめる。
額の真ん中に、深い皺が刻まれる。
「ログ用紙、差し替え、ですって」
フィンの手元から、さきほどまで数字で埋まっていた紙が回収される。
代わりに、同じ項目が並んでいる──はずの新しい紙が渡された。
ぱっと見は、確かに同じだ。
ただ、行間の幅がわずかに違う。
「備考」の欄が一段増え、そのぶん他の項目の枠が小さくなっている。
(……枠が変わる)
枠が変われば、数字の見え方も変わる。
シュアラの指先が、紙の端を強く押さえた。
「出航合図のタイミングも、潮に合わせて調整を」
別の士官がそう言う。
結果として、一本分だけ潮の切り替わりが遅れることになった。
(“条件を揃える”って、そういう意味でしたか)
胸の内で、かすかな苦笑が浮かぶ。
海務院の士官の一人が、また例の封書を手にしていた。
彼は封を切らず、袋の角を指先でなぞる。
「段階二……第七符号……」
小さな声で、そう呟いた。
符号のような単語だけが、風に紛れず耳に残る。
午前中の議論で積み上がっていた紙束は、今や一枚の「決定文」になってシュアラの前に置かれていた。
「……以上をもって、北方海路再編に関する試験運用覚書を締結とする」
海務院の士官が、疲れを隠しきれない丁寧な声で読み上げを締めくくる。
机の中央には、他の紙とは質の違う羊皮紙が一枚。
その最下行に、新しく書き足された一文が黒々と浮かんでいた。
『第一便(帝都案)および第二便(比較案)をもって、安全性および損耗率の検証を行う』
午前の議論で決めた帝都案に対して、自分たちの案を実際に使って比較できるところまでこぎつけた証拠だ。
ここまで持ち込めただけでも、本来なら大きい。
ただ、そのすぐ下の一文が、喉に引っかかっていた。
『なお、緊急時においては、航行継続のため必要な措置を認める』
シュアラの目には、その言葉が「穴」として見える。
何でも入る箱のような文言は、後から起きた事象に対して、どこまでも言い訳に使える。
そうなれば、比較も検証も形だけになってしまう。
本来なら、今この場で指摘すべきだ。
だがシュアラは、ひと呼吸おいてからその言葉を飲み込んだ。
下手に揉めれば、そもそもの「比較」自体が流れる。その危険の方が大きい。
彼女が黙っていると、「町として、異存は?」と海務院士官がクラウスを見る。
クラウスは机の端を指先でとんと叩き、短く息を吐いてから頷いた。
「……試験運用、受け入れましょう」
一拍置いて、視線を士官へ戻す。
「どちらの案が有効か。我々も、知りたいですしな」
椅子の背がきしむ。
町側の人間たちは、敗戦処理を引き受ける兵のような顔で、次々と頷いた。
「ありがとうございます。帝都としても、責任をもって記録と検証を──」
コルネリウスが決まり文句を並べる。
シュアラは、その横顔をじっと見ていた。
(検討と、検証は、別)
午前中、無理やり条文にねじ込んだ自分の言葉。
帝都案を「試験航路」として受け入れる代わりに、比較検証を紙の上に縫い付けた。
同じ条件で、二便。
第一便は帝都案。第二便は、自分が引いた航路案。
先手を相手に譲るのは仕方がない。そう理解していても、胸の奥の引っかかりは消えない。
「では、署名を」
ほとんど埋まりきった署名欄の紙が回ってくる。
自分たちの項目だけが空いている場所に羽ペンを取り、インクを含ませる。
(負けてる)
素直にそう思った。
今日この場で結ばれる覚書は、帝都案を背骨にしたものだ。
マリーハイツもヴァルムも、その骨にぶら下がる枝に過ぎない。
それでも──。
シュアラは、署名欄を確認し、静かにペン先を滑らせた。
シュアラ。
死人文官として、生きている今の名前。
(負けたままでもいい。帳簿の上での「勝ち負け」は後回しにする。
とにかく、比較で勝てればいい。どんな手段を持ち込まれようと、自分たちの案に価値があると示せればいい)
帳簿の中だけで殴り返すのをやめる。
帳簿そのものを海の上に引きずり出す。
今、選べるのは、そのやり方だけだ。
朱肉の赤が乾いていくのを横目で見ながら、シュアラは椅子から立ち上がった。
港の風は、会議室の空気よりずっとまっすぐだ。
坂道を下りきると、潮の匂いと、ロープのきしむ音が一度に押し寄せてきた。
マストを叩く帆布。甲板を走る足音。海鳥の鳴き声。
そのざわめきが、彼女の疑念を、いったん雑踏の奥へ押し流そうとしていた。
*
マリーハイツの桟橋には、三隻の船が並んでいた。
一番外側には、帝都の紋章旗を掲げた船。
艫には海務院の印。舷側の新しい板材は、まだ木目の色が鮮やかだ。
その内側には、幅広で腹の低い地元漁師の船。
波に揉まれ続けた木肌は、ところどころ銀色に擦り減っている。
さらに内側の桟橋に、ヴァルムから持ってきた軍用船。
氷とぶつかり合ってきた船首の鉄板には、無数の傷が刻まれていた。
並べて見れば一目瞭然だった。
軍用船が一番大きく、作りも重い。
背後にある「資金源」の差が、そのまま船体の厚みに現れている。
カイが手すりにもたれ、腕を組んだまま三隻を見比べた。
「ふーん……揃いも揃って、いい面構えしやがる」
今日の三隻は、どれも「試験」のために並べられた実験器具だ。
「お前の船は?」
「真ん中」
カイは短く顎をしゃくり、漁師たちの船を示した。
「港の連中と一緒に乗る。ヴァルムの連中は、あっちの軍用船だ」
剣帯を直しながら、帝都船へ視線を送る。
その視線が、一瞬だけ固まった。
「零札も半分はそっちだ」
「残り半分は──」
シュアラも言葉を切る。
二人の視線が同じものに吸い寄せられていた。
「──帝都船ですね」
帝都船の甲板には、灰色の制服を着た零札たちが整列していた。
鎖はない。けれど、腰帯の金具には同じ刻印が光っている。
その列の中央に、白が刺さっていた。
儀礼用に仕立てられた白い衣。
首元には細い金属の輪。
背中には、布越しにも分かる刻印の線。
「……リリーシア」
名前を口にする代わりに、喉の奥で呼ぶ。
彼女は護衛の士官たちに囲まれ、桟橋と甲板の境目に立っている。
足首には細い帯。
それでも、その足元の板の揺れ方は、他の誰よりも海に馴染んでいるように見えた。
背後から、リュシアの声がする。
「深海契約の器は、帝都側の船に」
振り向くと、リュシアは計算用母を片手に、数値を確認していた。
「比較するには、出力を一定にしないと」
「出力」
シュアラが繰り返すと、リュシアは顔を上げず、数字を弾きながら答えた。
「ええ。あの子を、どのくらい使うか。そういう意味です」
さらりと告げて、計算用母を腰袋にしまう。
帝都船のタラップへ向かいながら、肩越しにちらりと振り返った。
「ヴァルム側とマリーハイツ側には、契約なしで。公平な比較のために」
シュアラは、羽根ペンの軸を握り直し、一瞬だけ言葉を探した。
「……公平、ですか」
思っていたより小さな声になった。
その横から、フィンが大きな紙束を抱えて駆け寄ってくる。
見出しだけが、太い字で書かれていた。
『第一便(帝都案)』
『第二便(比較案/マリーハイツ・ヴァルム)』
フィンは冗談めかして敬礼しながら、紙束を広げて見せた。
「記録係、フィンであります」
シュアラは苦笑しながら、ログ用紙の見出しに指を滑らせる。
その指先が、わずかに震えていた。
「一便ごとに枠を分けました。時刻、位置、波、遅延、損耗、貨物」
指を止め、端の欄を軽く叩く。
こつ、と小さな音がする。
「あと、人的被害の欄も」
その言葉のあと、短い沈黙が落ちた。
「ありがとうございます」
シュアラは紙面を確認し、顔を上げる。
「……"検証する"顔になってきましたね」
「そっちがそういう顔して歩き回るから」
フィンは肩をすくめた。
その動きは軽口の割に、どこか重い。
ログ用紙を板箱の上に広げ、四隅を石で押さえる。
風に飛ばされないようにする、その手つきは妙に慎重だった。
その向こうを、海務院の士官が封のある書類袋を抱えて通り過ぎていく。
革ひもを十字に掛けた、帝都式の封筒だ。
「それは?」
フィンがつい好奇心で尋ねると、士官は「規定書類です」とだけ答えた。
返事は短く、抑えた調子だった。
「緊急時対応の命令書。……開けずに済むのが一番いいんですがね」
そう言いながら、袋の角を指先で確かめる。
押された封蝋には、帝都の紋章と、見慣れない番号が刻まれていた。
(番号……段階か、何か)
シュアラは一瞬だけ目で追い、それから視線をログ用紙に戻した。
しかしその番号は、頭の隅に小さな棘のように残り続ける。
「そろそろ乗り込みましょうか」
カイが軍用船の方へ歩き出す。
シュアラも、フィンとともにタラップを上がった。
甲板に足を踏み入れた瞬間、下から海の力が押し上げてくる。
会議室の木の床とは違う、決して紙には写らない揺れ方だ。
(ここから先は──紙を、現場に追いつかせる)
シュアラは、青い航路帳をマントの内側に収め、ロープの匂いのする風を一度深く吸い込んだ。
*
「第一便、出航準備完了!」
帝都船の甲板から、声が風に乗って届く。
旗が掲げられ、信号旗が上がる。
マリーハイツの船長が、その合図をちらりと見てから舵輪の前で腕を組んだ。
「こっちは合わせて動くだけだ。勝負は“様子見”の顔してる連中の方だな」
カイが笑う。
「俺たちは沈まないようにする。お前は、ちゃんと見とけよ」
「見ますよ。……全部」
シュアラは、フィンの横で板箱の上のペンを取った。
ログ用紙の「第一便」の欄に、最初の数字を書く準備をする。
帝都船の舳先が、ゆっくりと港の外を向いた。
同時に、三隻の船体を包む波のリズムが、少しだけ変わる。
「第一便、帝都案。──出航」
海務院の士官が、定型句を読み上げる。
それに合わせ、フィンのペン先がさらりと動いた。
「時刻、第三時一刻。波高、低。風向、北東。遅延──なし」
舵が切られ、帆が張られる。
港町が、ゆっくりと船尾側へ遠ざかっていく。
海は、奇妙なほど素直だった。
うねりはある。風も吹く。
だが、波の山も谷も、帝都船の進路に合わせて、わずかに形を変えているように見える。
(……潮の癖が、いつもと違う)
マリーハイツの漁師が小さくぼやく。
シュアラはそれを耳の端で聞きながら、海図と位置を照らし合わせた。
予定どおりの位置。予定どおりの時刻。
それを証明する数字が、フィンの手で次々と埋められていく。
「損耗、ゼロ。貨物損傷、なし。──はい、ここまでも“問題なし”っと」
フィンが呟くたび、ログ用紙の上に綺麗な列が伸びていく。
途中、一度だけ、海面に薄い輪が浮かんだ。
墨を落としたような白い泡の輪。
帝都船の船底から何かが広がったように、そこだけ水の色が変わる。
「おい、今の……」
カイが眉をひそめる。
だが、次の瞬間には輪は波に紛れて消えていた。
「水温、一瞬下がったな」
漁師の一人が、手を浸した指先を振る。
顔に、小さな違和感だけが浮かんでいた。
「だが、まあ──」
彼は肩をすくめる。
「船は進んでる。魚も逃げちゃいねえ」
事実、その通りだった。
だからこそ、その「事実」がどこか薄気味悪い。
進路上に魚の群れが見え、一羽のカモメが帝都船のマストに止まり、羽づくろいをしている。
何も起きない。何も沈まない。
だから、ログ用紙は、美しかった。
「第一便、折り返し地点通過。遅延──なし。人的被害──なし」
フィンの声は、どこか乾いて聞こえる。
数字だけ見れば、教科書に載せたくなるような「実績」だ。
その理想的な整い方が、かえって冷たかった。
(“許容損耗”の欄が全部ゼロなら、本来なら歓声を上げるところなんでしょうけど)
シュアラは紙の端を指で押さえた。
帝都船の甲板では、リュシアが双眼鏡を下ろしている。
遠目にも、その顔は満足げだ。
リリーシアは、その少し後ろで、ただ静かに立っている。
(静かすぎる)
一瞬、喉の奥で言葉が形になりかける。
だが、その言葉の輪郭は、次の数字の読み上げに上書きされた。
「第一便、帰投。──損耗ゼロ、遅延ゼロ。ログ完了」
港が再び近づいてくる。
三隻は順番に桟橋へ戻り、ロープが飛び交った。
上陸するとすぐ、海務院の士官がログ用紙を覗き込む。
「……見事なものですね」
口元に、わずかな笑みが浮かぶ。
「第一便の時点では、帝都案に軍配が上がる、というわけですか」
数字を見た士官の口元が、また少しだけ上がった。
「帳簿の上では、そうなります」
シュアラは、正直に答えた。
その正直さが、喉の奥で石のように引っかかる。
第一便(帝都案)──紙の上の評価:安全、迅速、損耗なし。
青い航路帳に、そのまま転記する。
今日のページの中央に、「第一便/帝都案:帳簿上は勝利」と細い字で書き込んだ。
(それでも、まだ終わりじゃない)
ページの下半分は、まだ空白だ。
そこに、第二便の数字が並ぶはずだった。
(こっちが、本当の勝負)
検討と検証は別。
検証には、最低でも二つの数字がいる。
帝都案の数字が美しいほど、比較する意味が出てくる──そのはずだった。
*
二便目の準備は、想像より早く始まった。
昼食の湯気がまだ消えきらないうちに、港に再び号令が飛ぶ。
帆が巻き上げられ、ロープが解かれ、船員たちの足音が桟橋を駆け抜けていく。
「第二便。比較案による試験航路に移る」
海務院士官の声は、第一便のときと同じ事務的な響きだった。
ただ、「事前の確認事項」がいくつか増えている。
「安全基準の再確認を行います」
「計測方法の統一のため、ログ用紙を差し替えます」
士官たちが甲板の各所で、それぞれの役目を声に出して確認していく。
「さっき統一したばかりじゃなかったか?」
カイがぼそりと漏らす。
その声には、苛立ちが混じっていた。
シュアラも眉をひそめる。
額の真ん中に、深い皺が刻まれる。
「ログ用紙、差し替え、ですって」
フィンの手元から、さきほどまで数字で埋まっていた紙が回収される。
代わりに、同じ項目が並んでいる──はずの新しい紙が渡された。
ぱっと見は、確かに同じだ。
ただ、行間の幅がわずかに違う。
「備考」の欄が一段増え、そのぶん他の項目の枠が小さくなっている。
(……枠が変わる)
枠が変われば、数字の見え方も変わる。
シュアラの指先が、紙の端を強く押さえた。
「出航合図のタイミングも、潮に合わせて調整を」
別の士官がそう言う。
結果として、一本分だけ潮の切り替わりが遅れることになった。
(“条件を揃える”って、そういう意味でしたか)
胸の内で、かすかな苦笑が浮かぶ。
海務院の士官の一人が、また例の封書を手にしていた。
彼は封を切らず、袋の角を指先でなぞる。
「段階二……第七符号……」
小さな声で、そう呟いた。
符号のような単語だけが、風に紛れず耳に残る。
11
あなたにおすすめの小説
働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』
鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。
だからこそ転生後に誓った――
「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。
気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。
「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」
――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。
なぜか気づけば、
・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変
・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功
・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす
・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末
「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」
自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、
“やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。
一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、
実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。
「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」
働かないつもりだった貴族夫人が、
自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。
これは、
何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~
水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。
彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。
失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった!
しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!?
絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。
一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)
藤原 柚月
恋愛
(週一更新になります。楽しみにしてくださる方々、申し訳ありません。)
この物語の主人公、ソフィアは五歳の時にデメトリアス公爵家の養女として迎えられた。
両親の不幸で令嬢になったソフィアは、両親が亡くなった時の記憶と引き替えに前世の記憶を思い出してしまった。
この世界が乙女ゲームの世界だと気付くのに時間がかからなかった。
自分が悪役令嬢と知ったソフィア。
婚約者となるのはアレン・ミットライト王太子殿下。なんとしても婚約破棄、もしくは婚約しないように計画していた矢先、突然の訪問が!
驚いたソフィアは何も考えず、「婚約破棄したい!」と、言ってしまう。
死亡フラグが立ってしまったーー!!?
早速フラグを回収してしまって内心穏やかではいられなかった。
そんなソフィアに殿下から「婚約破棄はしない」と衝撃な言葉が……。
しかも、正式に求婚されてしまう!?
これはどういうこと!?
ソフィアは混乱しつつもストーリーは進んでいく。
なんとしてても、ゲーム本作の学園入学までには婚約を破棄したい。
攻略対象者ともできるなら関わりたくない。そう思っているのになぜか関わってしまう。
中世ヨーロッパのような世界。だけど、中世ヨーロッパとはわずかに違う。
ファンタジーのふんわりとした世界で、彼女は婚約破棄、そして死亡フラグを回避出来るのか!?
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体などに一切関係ありません。
誤字脱字、感想を受け付けております。
HOT ランキング 4位にランクイン
第1回 一二三書房WEB小説大賞 一次選考通過作品
この作品は、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
お飾り結婚だからと自由にしていたら、旦那様からの愛が止まらない
よどら文鳥
恋愛
父親が管理している領地運営の手伝いをして、領民が喜ぶ姿を見ることが大好きなレイチェル=ヴィニア。
少しでも領地のためにと、自らがヴィニア伯爵家の家事や料理を率先して行って、それもまた楽しんでいるレイチェル。
しかしレイチェルは、悪い噂が目立つ相手から求婚され続け困っていた。
そんなとき、隣国との紛争を止めて国の救世主となって絶大な人気を誇るハイド=ラフィーネ公爵第二令息から突然の求婚。
互いに恋愛感情がないからという理由でお飾り結婚と堂々宣言。
しかし男性に全く興味をもたないレイチェルとしては、自由を約束された結婚は大変ありがたい提案だったため、婚約成立して結婚。
ラフィーネ公爵家で生活が始まると同時にハイドは隣国へ遠乗り。
本当に興味がないことに安心してレイチェルは公爵家でマイペースに過ごしていく。
ところが、肝心の公爵家内部事情は暗かった。レイチェルが使用人たちと仲良くなることをキッカケに公爵家の雰囲気も変わっていく。
ハイドが帰還したときにはすっかりと雰囲気の変わった公爵家。
レイチェルが来たからだと確信したハイドは徐々にレイチェルのことが気になってきて……?
いっぽう、レイチェルに無理強いで求婚ばかりしていたガルム=バケットは、公爵家に嫁いだことを知ってもまだ諦めきれていなかったようで……?
これは互いに興味のなかった二人が、いつのまにか大事な存在へと変わっていくお話。
※全25話、恋愛要素は物語中盤からとなります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる