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08.【番外編】強大な騎士の趣のない一人遊び *
しおりを挟むリーヴァイ、という名の若く身体の大きな騎士は、四つある騎士団の一つ、赤騎士団――通称叩き上げ騎士団に所属している。
幼い頃、父も母も亡くしたリーヴァイは縁あって赤騎士団の団長に育てられた。
その養親である団長に、初めて国政に関わる人達の慰労会に連れて行かれた時、リーヴァイはこれ以上深くは落ちられないほどの恋に落ちた。
相手は、宰相の息子であるルカ。
誰より美しく、笑顔がきれいで、王族から貴族から、揃いも揃ってみんながルカに夢中と言ってもおかしくないほどに人気のあったルカ。
一介の騎士見習いである自分がルカとどうこうなれるなんて思ってはいなかったが、そうは言っても夢見るぐらいは良いだろうと、まだ十代前半の頃はルカとの未来をうっすらと思い描いたりもしていた。
そう、リーヴァイの身体が、本格的な成長期に入るまでは。
実父の身体が人より大きかったこと、赤騎士団長の養育が適切だったこともあり、リーヴァイの身体も健やかに育っていった。
それは騎士としては悪いことではなかったが、……騎士に叙任する前、見習いだったころ、訓練が終わりみんなで風呂を使いに行った時のことだ。
先に入っていた騎士団員の一人が「でかいな」と言った。別の騎士が「なにが」と返し、指で示した先にあったのは、まだ十代半ばを越えた頃のリーヴァイの股間だった。
途端、風呂場が騒然とした。「でかい」「まだ成長期終わってないだろ」「すごい」「やばい」「成長しきったらどうなるんだ」様々な、称賛……というか、多分みな思ったことがそのまま口から出てしまった言葉を浴び、リーヴァイはその時、初めて気がついたのだった。
――自分の陰茎は人よりも、かなり大きい。
幸いだったのは、リーヴァイ自身が、それぐらいのことでひねくれるような境遇になかったことと、赤騎士団の中で「リーヴァイはでかい」が普通のこととなり、皆が全く気にかけなくなったことだ。
周囲からすると、馬の陰茎が大きいからといっていちいち人間である自分のものとは比べないだろう、という心境だったのだろうが……ともかく、リーヴァイはその後もすくすくと大きく育っていった。
その後、無事に赤騎士団に入団し、城内で極稀にすれ違うルカに劣情を覚えながらも、それでもただ見ているだけで良かった。そもそも、相手は貴族だ。宰相の息子で、優秀な文官だ。そのうちどこぞのお姫様と結婚してもおかしくないような、そんな立場の人に対して、何か行動を起こそうとは思ってもいなかった。
見るぐらいは良いだろうと、水浴び中に渡り廊下を通るルカを瞬きも忘れて見続けていたのは、叶うわけもない恋心……だった、はずが、ある日突然そんな相手と結婚することになるなんて、夢どころか、リーヴァイの妄想ですら及ばない現実だ。
リーヴァイは自身の陰茎が人より大きいことをきちんと理解している。だから、誰とも結婚するつもりはなかった。多分、リーヴァイ以外の赤騎士団員も皆、身体はさておき、ちんぽが馬と結婚する人間はいないだろう、と思っていたように思う。
その考えは全く間違っていない。誰だって、人間のちんぽと結婚したいはずだ。
ただ、宰相からの申し出は、政治的な配慮から、ということだったから、リーヴァイもそれを理解してそのつもりで結婚したはずだったのに、……まさか、ルカが自分を想っていたとは。その上、あんな楚楚とした見た目で真面目そうなルカの……ルカの……。
「おい、リーヴァイ、そろそろ交代するぞ」
城壁から外を見回る職務は二人一組で行われ、待機所にいたリーヴァイに同期が声をかけてきた。
「ああ」
立ち上がり、同期に続く。見回りを行っていた別の騎士に声をかけ、決められた城壁から外に異常がないか見ていると同期が声をかけてきた。
「なあ、……個人的なことを聞くが……」
「なんだ……」
「俺は、お前とルカ様の婚姻が……最初は、政治的なつながりだと思って見ていたんだ。だが、……違うだろう? 鍛錬が終わって水浴び場に行くと、渡り廊下を通りかかるルカさまが、嬉しそうな表情でお前を呼ぶだろう」
「……そうだな……」
そう、結婚以来、城内でも、水浴び場でも、どこであってもルカは嬉しそうにリーヴァイの名を呼ぶ。そして、リーヴァイに時間がありそうな時は、小走りにかけてきて、周囲に聞こえないぐらいの声で耳元で言うのだ。
「リーヴァイ、今日も、かっこいい」
それを聞くとリーヴァイは思わず笑ってしまう。
リーヴァイ本人半分、それから、水浴び時は、もしかしたら、リーヴァイの陰茎半分、……半分ならいいが……それ自体を「今日もかっこいい」と言っている可能性もある。
あなたもいつもすてきです、と返したいが、そうする前に忙しそうなルカは「じゃあまたね!」と走って仕事に戻っていってしまうが……。
「あんなルカ様、今まで見たことがなくてな、……実は、結婚って良いものかもしれない、と思いはじめてな」
「へえ……」
特に爵位を持つわけではないその同期は、リーヴァイが独身時代は一緒に春を売るような店に行ったこともあり「結婚なんてしない、一生一人で生きて一人で死ぬ」なんて言っていたものだが。
「……いいんじゃないか。……少なくとも、俺は、結婚できて毎日夢を見てるような心地がする」
「はは、それはいいな、……夢を見てる心地か……」
それきり同期は黙り、二人は朝まで交代しながら見回りの任を終えた。
リーヴァイは、ルカに会いたくてたまらなかった。
同期の言葉が胸に来た。一人で生きていくと言っていた男が、結婚は良いものかもしれない、そう思ってしまうほどにルカは変わった。いつも嬉しそうに、どこで会っても、リーヴァイを呼び、声をかけられない時は嬉しそうに見つめてくる。
身体中から、好きが溢れているのは誰の目にも明らかで、もしかしたらあまり表情が変わらないなどと言われているリーヴァイも同じように好きが溢れているのかもしれない。
急いで帰ればルカの登城前にひと目会えるかもしれない、と宰相から結婚祝いにもらった庶民には考えられないような大きさの邸宅へ馬を走らせたところ、ちょうどルカが仕事へ出かける所だった。
いつどこで見ても美しいルカ。輝くような髪に、美しい宝石のような瞳と唇、背筋を伸ばして歩くさまはとてもかっこよく、思わず見惚れてしまうほどに。それが。
リーヴァイを見つけた瞬間、へにゃ、と表情が崩れた。リーヴァイは馬から下りて走り、近づく。ルカも「リーヴァイ!」と声をかけながら走ってきた。
「早い、もう戻ったのか……? 昨夜は、大丈夫だった? 大事はなく、怪我もなく、職務を終えたのだろうか……?」
「はい、おかげさまで。どこも怪我はなく、何も起こらず一晩を終えました。……ルカ、気遣いをありがとう」
「ふふ、……それならよかった、……あの、疲れただろう? ゆっくり休んで……」
「はい、……ルカは、昨日は何か困ったことは?」
「困ったこと……は、……」
頬から耳に、さっと紅を引いたようにルカは顔を赤くする。
「困ったことは、あった、ような、なかった、ような……あの、あの、リーヴァイ」
馬車の音が聞こえる。そろそろルカは登城せねばならぬ時刻だ。あ、いかなきゃ、とルカが小さくつぶやく。そして……。
「リーヴァイがいなくて、気持ちも……身体も、両方、何か欠けたようで寂しかった。今夜、欠けた部分を埋めてもらえるだろうか、……疲れてるかもしれないけど、考えておいて……」
そのままリーヴァイの返事を聞かず、ルカは迎えの馬車に乗って行ってしまった。
気持ちも身体も欠けたようで、……欠けた部分を埋めて。そんな、口説き文句を言うだけ言って、行ってしまった。
どこかぼんやりしたまま、屋敷へ入る。召使いが「おかえりなさいませ」と現れ、食事をするか、風呂を使うかと確認してきたので「風呂のあと、食事を、……その後仮眠を……」つぶやくように伝えながら、風呂へ向かい服を脱ぐ。寝室の隣についている風呂の洗濯物を入れる籠には、軽く洗ったであろう敷布が几帳面に入れてあるのが見える。その上に着ていた服を放り込み思った。
――ああ、もしやあれを寝台に敷いて、昨夜ルカは……。
突如、身体に血が巡りだした。
一人で楽しむルカが頭の中でこちらを見ながら微笑む。
「リーヴァイ、この、ディルドを使って、ここを……広げてもらえないだろうか……?」
妄想の中のルカが語りかけてくる。
一瞬の妄想で、リーヴァイの「馬の陰茎の大きさに嫉妬する人はいない」ブツはぐんと更に大きくなった。血管が浮き、ばきばきに硬くなったリーヴァイのものは一度出さないことには落ち着かない事態に陥っている。
「くそっ……」
両手で掴んで乱暴にしごいた。亀頭から、根元まで、まんべんなく擦りながら思った。この陰茎を根本まで受け入れてくれたのは、この世界でルカ一人だ。
と、いうことは、リーヴァイの童貞はルカに捧げたも同義で、これから一生自分は全てをルカに捧げて生きていこう。
そんな……他人が聞いたら、童貞の定義から聞かせろ、と怒られそうなことを思いながら、ルカの痴態を思い出しつつ乱暴に扱く。掴んで、扱いて、最後はルカが「リーヴァイ、好き、好きだよ、ねえ、もうイく、もう……っ!」そう言って震えながら絶頂するさまを思い浮かべて、妄想のルカと同時に絶頂へとたどり着いた。
「は、はあ、っ……はあ、……」
息が荒い。身体が熱い。
しかし、一度出したことで頭の中は酷く冷静になった。
放出しても対して小さくならない陰茎に湯をかけながら、リーヴァイは身体を洗い始めた。
今日の夜。
ルカが帰ってきたら、一体何を話して、何をしようか。
ついさっき会ったばかりなのに、もうルカに会いたい。食事をとったらとっとと寝てしまおう。眠ればその分早くルカに会える。
同期に言ったのは間違いじゃない。本当に、リーヴァイは今でも夢をみているように幸せだ。
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