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07.【番外編】小さき文官の強大なディルドコレクション
しおりを挟むたまたま公休が重なったある日の朝。
前日から散々に身体を重ね、……重ねというか、極太で長大な自身の陰茎を愛する人の体内に挿入して――毎度毎度よくこの大きなブツが全部入るな、と感心するが本人の身体はいたって平気そうだ――その極太を受け入れている本人であるルカの身体は、昨夜からのあれやこれやで全身がちょうど良い具合に温まり、それでいて充足感に満ちているようで、現在はぴくりとも動かず休息していた。
眠りについているルカの顔をじっと見ながら、リーヴァイは幸せを噛みしめる。
結婚してからはや数ヶ月、国内外にもルカの結婚は知れ渡り、当然ながらルカに対する結婚の引き合いはこなくなった。と、義父である宰相が言っていたのを耳にしたことがある。おかげで無駄なことに気を取られることがなくなって、仕事が捗るようになったと喜んでいた。
ルカ本人に色目を使っている輩は未だにいるのを何度か目撃してはいるが、当のルカがリーヴァイ以外に全く興味を示していないので、その視線に気づくことはないようだ。
それにしても、と、リーヴァイは思う。
いつどんな時でもリーヴァイの結婚相手であるルカは美しい。
口を半開きにして寝惚けていてもその美しさが損なわれることはなく、昨夜の痴態のあれやこれやを思い出してみるが、どれだけ乱れても彼の全ては美しい。幼い頃からの片思いが、まさか自分がコンプレックスに思っていた極太長大ちんぽで叶うなんて。
口元に笑みを浮かべながら隣で眠るルカの髪を撫でた。サラサラと流れるような薄い金色の髪。それから、髪と同じ色の長いまつ毛。このまつ毛が動くと宝石のような薄紫の瞳が覗くのを知っている。
見たいなぁ、なんて思いながら柔らかく頭を撫で続けていたら、薄金色のまつ毛が震えてリーヴァイの愛してやまない薄紫色が見えた。
「……ルカ……起きました……?」
「……ん……いま、なんじ……?」
「まもなく10時です。朝食は要らないと言ってあるので運んで来ませんでしたが……何かお持ちしますか?」
「んーん、……今はまだいらない……それより久しぶりだっただろう? お互い忙しくて……」
「そうですね、会うのも3日ぶり……でしたか? 同じ部屋に暮らしているのに」
「ん、だから、もっと……」
細く長い指をのばし、ルカはリーヴァイを求める。
ああ、本当にリーヴァイのルカは心底からかわいい。
頬を緩めながらルカを受け入れて、腕に抱きしめて、あ、そういえば。と思い出す。
「……ルカ、すみませんちょっと話が……私は来月家には戻れません。年に一度の騎士団の実地演習があり、国境付近にいる白騎士団に私の所属する隊が合流します」
「国境付近? 合流……?」
まだ眠そうなルカはそれでもぱっと目を開いて、抱きついていた腕を緩めてリーヴァイを見あげた。
「そうだ。僕としたことが完全に失念していた。どうしよう、リーヴァイ。僕は騎士団がそれぞれの団と実地演習を通して交流をはかっていることを知っていたのに、この幸せな生活に浮かれてしまっていて頭から抜けていた……なんてことだ……」
「大丈夫ですよ、一ヶ月もすれば戻ります」
「一ヶ月!! ど、……どうしたらいい、……僕はもう……君がいないと……」
「大丈夫、ルカ様は優秀なお方だと私だけではなくみな存じています。私がそばにいなくとも、今まで問題もなく仕事をこなしてきたでしょう。だから大丈夫です」
「……いや……そうじゃない、大丈夫じゃない……」
リーヴァイは、ほんの少し口元が緩むのを感じた。普段は一部の隙もないような仕事ぶりを周囲に見せつけているような想い人が、リーヴァイがいないと大丈夫じゃない、なんて、かわいいことを言ってくるのだから。
「リーヴァイ、……君……僕のディルド棚を見たことあるかい……?」
「ディルド棚……? いえ……私は鍵のかかっている場所を勝手にあけて見るような真似はいたしませんが……」
「君は僕と結婚したんだから、いつ見たっていいんだ」
「いえ、……見ませんが」
「そうか、じゃあ、今見てくれ、僕が一緒に見て欲しいんだ」
わかりました、とリーヴァイが答えるとルカが両手を伸ばしてくる。そのまま口に出さないルカの要求を受け入れて、横抱きに抱き上げた。華奢なルカを抱き上げることなんて造作もない。最近のルカは身体を重ねた翌日は甘えるように抱き上げて運んでもらうことを要求してくるのだから、リーヴァイはますますルカに夢中になっていく。
ルカがディルド棚と呼んでいる意匠の凝らされた棚に鍵を差し込み、両開きの扉をあける。「見てくれ」ルカが言うより早く、リーヴァイの目に飛び込んでくる様々な形、様々な材質のディルド。圧巻だ。下衆なことを考えると、一体これらの疑似ちんぽにいくらの金額がかかっているのだろうか。
さすが宰相の息子。さすが貴族。さすができる文官。金のかけどころが庶民とは違う。
「これらをどう思う?」
「ええと……たくさん、ありますね……?」
「違う! 全部! どれもこれも! 君のものより小さいんだよ!」
「はあ?」
「僕は今まで、これらで満足して生きてきたんだ。それなのに、恋い焦がれていた君という存在が僕の手に入ったんだ。身体はすっかり君の大きさに慣れて、君の人肌も、君の匂いも、全部好きだ。大好きなんだ。それが……一ヶ月も……」
なぜか涙までにじませてルカは熱弁を振るう。リーヴァイは自分が思っていた以上に、愛されていることを自覚した。自分自身も、それから、このルカ以外からは大きすぎると引かれ続けてきた陰茎も。
「それは……大変、ですね、ええと、どうしましょうか、まさかコレだけ切っておいていくわけにはいきませんし」
自分で言っておいて、背筋に寒いものが走る。切ってどうする。そもそも使い物にならなくなるだろうが。
「いや……君と同じ大きさのものを作ればいいのだ……陶器は……だめだな、乾かすのに十日はかかる。乾かして焼き上がる前に君がいなくなってしまう。角や水晶も削るのに時間がかかる……木製なら……急がせれば間に合うか……? いやだめだ、実際に誰かに見せるのは嫌だ、コレは僕だけのものだというのに……!」
「ルカ、ルカ、落ち着いて……」
ルカはリーヴァイの首筋に抱きついてきた。
そして小さな声で「どうすればいい、リーヴァイ……」とつぶやく。
正直、一ヶ月性交できないのはリーヴァイとしても残念ではあるが、だからといって自分と同じ形のディルドを作ってルカに預けるのも面白くない。
「私は今まで体験したことがないのでわかりませんが、……我慢に我慢を重ねた上での性交は大層気持ちがいいものだそうですよ。一ヶ月、自慰を我慢しろとは言いませんが、私との性交は、戻ってきた時のご褒美にとっておいてもらえませんか? 私も一ヶ月経った後久しぶりにあなたにお会いして抱き合うことを楽しみにしておきますので……」
「……そうだな……取り乱してしまった……。それが、とても良い案のように思う……!」
腕の中で、憂いなく微笑むルカはかわいい。
「どうします? このまま、朝食を食べにいきますか? それとも、ベッドに戻っ」
「今すぐ戻ろう!」
リーヴァイが全てを言い終わる前に、元気に答えたルカは少し悪戯っぽい笑みを浮かべながらリーヴァイの頬に唇を寄せてきた。
そんな些細なことで簡単にその気になってしまうリーヴァイは、はい、と言いながら足早に元いたベッドへと戻る。
朝食どころか、昼食もまだ先になりそうな二人の休みはまだ始まったばかり――。
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