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09.【番外編】文官と騎士、一人遊びの次の日 *

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 リーヴァイが夜勤後の仮眠から目を覚ましたのは、そろそろ夕刻になろうかという頃のこと。
 さすがにまだルカは帰っていないか、と広い寝室を見渡す。夜勤明けの次の日は休みと決まっているが、ルカの明日の仕事はさて、どうだったか。
 寝台を下りながら風呂場に向かい、寝汗を流す。身体を拭いている時に、外から馬車の音が聞こえてきた。ルカだ。昨夜から恋焦がれたルカが帰ってきた。
 ゆるい普段着を身に着けてホールへと向かうと、ちょうどルカが執事にいざなわれ入ってきた所で。

「おかえりなさい、ルカ」
「……リーヴァイ……」

 ルカは潤んだ瞳で出迎えのリーヴァイを見つめる。
 それは、多分、二人にしかわからない感情の揺れというやつで、ルカは他人には変わらぬ無表情で「今日は軽く食べてきたから、夜食はいらないよ。明日は午後からの登城になるから、朝食も用意しなくて大丈夫だ。昼を食べたら出かける予定だよ」そんなことを淡々と伝える。
 じゃあ、下がっていいよ。おつかれさま。
 そんな言葉を聞いてリーヴァイはルカをエスコートするために、背中にそっと手を置いた。性的な接触でもないのに、ルカはほんの少しだけびくりと動く。
 その動きに気づかないふりをして、リーヴァイはルカを寝室まで連れて行く。寝室に入り、鍵をかけて……。

「ちょっと、湯をつかってくるから……リーヴァイ、待っててくれるか……?」

 うつむき気味のルカのまつげの長さに、リーヴァイは高鳴る動悸をとめられないままに「はい、どうぞごゆっくり」なんて言うのだから。
 本当はそのままでもいいんですよ、と言ってやりたいが、そういうわけにもいかないだろう。ルカにはルカの事情があるのだ。
 そう思い、寝台にゆるく腰掛けたリーヴァイはルカを待つ。
 ふ、と、ルカのディルドコレクションの棚を見ると、珍しく鍵が刺さったままだった。
 リーヴァイの喉がなる。昨夜、久しぶりにコレクションを使ったということだ。そのうえで、今朝あった時に「リーヴァイがいなくて、気持ちも……身体も、両方、何か欠けたようで寂しかった。今夜、欠けた部分を埋めてもらえるだろうか」そんなことを言ってでかけたルカ。
 それは、贅を尽くして集めてきた慣れ親しんだディルドよりも、リーヴァイの方が良いということで……。

「はーー……勃っちまった……下穿きがきつい……」

 少し落ち着こうと深呼吸をしたときのこと。
 風呂場から、細く高い声が聞こえる。特に助けを呼ぶような緊急時ではなさそうだが、それでもそんな声が出るようなことが風呂場で……?
 自分の目の前でこれから行われるなら理解できるが、自分のいない風呂場で?

 リーヴァイは立ち上がり、風呂場の扉に顔を寄せた。

「……は、あぁ、あ、……ん…………リーヴァイ……」

 扉を一枚隔てたところでなぜかルカがあえいでいる。自分の名前を呼びながら。なぜ。どうして。意味がわからないながらも、リーヴァイは思わず扉をコンコンと叩いた。

「ルカ、……大丈夫ですか? なんか、声が……」
「……リーヴァイ……助けて……」
「え?! 失礼します!」

 あえいでいると勝手に解釈して来てしまったが、まさか助けを求められるような事態に陥っていたとは……!
 リーヴァイは己の妄想を深く反省しながら、風呂場へと続く扉を勢いよくあけた。倒れていたらどうしよう。血を流していたら、吐いていたら……瞬時に頭の中を色々な良くないことが目まぐるしくめぐり、いや、大丈夫だ、何があっても良いように騎士たるもの心構えはいつでもできている、などと思ったが。

「……ルカ……?」
「……リーヴァイ……、たすけてよ……」

 肌着もつけずに、全裸のまま右腕を後ろに回して自身の後孔を広げるルカ。
 その姿はどんな美しい神よりも、リーヴァイの目には美しくうつり……ではなく。

「はい、ええと、何を助ければ……よろしいでしょう……」
「あの、っ……! 後ろを、きれいにしてたんだけど、やってるうちに……気持ちよくなっちゃって……もうちょっと奥……弄りたいんだけど……! 届かないよ、リーヴァイ、……っ! たすけて!」
「は、はい、承知しました!」

 いや。
 待て。
 思わず階級制度に則って、良い返事をし、助けようかと反射的に身体は動いたが一体何を助けろというのだ。
 だいたいこれからリーヴァイとルカはそういうことをするはずで……? そのためにリーヴァイは、馬並みと言われる自分の陰茎をはしたなくも勃たせた状態でルカを待っていたはずだが……?
 上気し、潤んだ瞳でリーヴァイを見上げながら尻をゆらゆらと揺らすルカ。今にも涙がこぼれそうで、本当に助けて欲しいのだろうが……。

「もう、ルカ、……あなた、これから何をしようとしていたか、忘れました……?」

 小柄で細いルカを片手で持ち上げた。自分の指がどこか良いところをかすったらしく、耳元で「ああっ」と声がする。

「大丈夫、助けます。でもそれはここではなく寝台で。いいですか」
「ん、うん、いい、いいよ、早く……そのおっきくて太い指で奥まで……!」
「……くっ」

 リーヴァイにしてはいささか乱暴に、ルカを寝台に落とした。
 この人をどこまで気持ちよくしてやろう。そんなことばかりが頭を駆け巡るリーヴァイの瞳は普段以上にギラギラしていたことだろう。


◇◇◇◇


 本当は、すぐにリーヴァイと一緒に寝台に飛び込んであの大きな唇を味わいたかった。
 分厚い舌を吸って、自分の口の中を舐め回してほしかった。

 だけど、自分の身体は一日仕事をしてきたわけで、その上後ろもきれいにしておかないとすんなりとコトには及べないだろう、と、ルカは聡明な頭で考えたのだ。
 それ自体は間違ってはいなかった。
 計算を間違えていたのは、ルカは後ろを弄ると自分の指でも余裕で気持ちよくなれるという部分だ。
 きれいにしなくては、と熱を入れて開いて流したりしているうちに、どんどん自分の気持ち良い部分を弄ってしまう。止めなくては、と思うのに、そこで止められるぐらいなら、今まで一人で散々自身の身体を開発してきたりしていないだろうが! という言葉すら頭に浮かんでくる。
 扉を一枚隔てた向こう側には、自分よりも太い指を持つリーヴァイが控えている。リーヴァイのあの太くて長い指でもっと奥まで弄ってほしい。もう自分だけでは無理だ。
 そこまで考えてリーヴァイは、助けを求めた。

 リーヴァイはすぐに来てくれた。
 さすが優秀な騎士。優秀で、優しくて、ルカのことが大好きな、リーヴァイだ。

 抱え上げられて寝台へと仰向けに放り出された。
 この少しの乱暴さに、ルカはゾクゾクしてしまう。いつもいつも自分を壊れ物のように大事に扱うリーヴァイが、ほんの少し乱暴にしてくるとき、それはリーヴァイの理性がギリギリのところにあるということで……。

「ど、どうするの、リーヴァイ……」
「ルカは、奥まで、この指を入れてほしいんでしょう?」

 リーヴァイは香油を塗りながら、指の長さをルカに見せつけるようにしてきた。

「そ、そう、それ早く……」
「しますよ。でも、私もしたいことがあるので」
「なに、したいこと、んあぅっ……!」

 指が入る。
 さっきまでルカが弄っていた場所に、太くて長い指が。二本慎重な動きで入れながら「ここまで広げちゃったんですか。私にやらせてくれたらよかったものを」そうつぶやきながら、リーヴァイはゆっくりゆっくりと指を動かしていく。

「んんんんっ……! もどかしい、りーゔぁい、もっとぎゅってはやく、……!」
「ちょっと待って……」

 ルカの細く長い両脚を肩に乗せるようにして、リーヴァイは後孔に指を入れたまま、大きく口を開いた。

「待って、君、りーゔぁい、なに、あああああああああああああああっ! あああああ、や、やだすごい! あああああ!」

 後ろを優しくいじられながら、ルカの小さな陰茎と陰嚢はまとめてリーヴァイの口の中へとおさめられた。吸い、舐めて、唾液でべとべとにしながら、形を確かめるように、味わうようにねっとりと舌を這わせる。
 ルカは想定以上の気持ちよさを与えられて完全に混乱してしまった。

「ちょっと、待って、それ……! ちが、ちがう、前で、前でイッちゃう、精液でちゃう、でちゃうから! リーヴァイ」
「ろうぞ」

 多分、どうぞ、と答えたリーヴァイは更に刺激を強くする。
 自分の陰嚢がきゅっと上に上がる感覚がする。これ以上勃ちあがれないルカの小さな陰茎は、ふるふると震えながら先走りをこぼし続ける。が、それも全てリーヴァイが吸い取ってしまう。

「や、やだ、後ろも、後ろも……!」

 ルカは懇願する。どっちも気持ちよくなりたい。貪欲に、正直に、自分の気持を告げると、リーヴァイは指を三本へと増やしてくれた。少しだけ指を曲げて腹側を押すように刺激する。
 もちろん、口も休まず、ルカにはもはや快楽しかなく……。

「や、ああ、んんんんぁ、っりーゔぁ、い、ごめ、ああああ、でるっ……!」

 ルカはそう叫ぶと腰を震わせて精液を出す。
 ああ、出てしまったと思うまもなく、リーヴァイは更に吸い付いてくるのだから……。

「ああああ、やああ、ああ、出たばっかりだから、出た、ばっかりんんんんん……! す、吸わないで、なんか他の、他のなにか、出ちゃいそうになるっ……! それよりもう入れて、リーヴァイの、おっきいの、早く、早くお願い……!」

 涙目どころか涙を流して、ルカは懇願する。
 ルカは知らないが、リーヴァイだって意地悪したいわけではないし我慢は限界にきているのだ。リーヴァイは今朝方行った簡素な自慰では全く満足できていない。だから、お願いされれば待たせるつもりもなく突っ込みたい。
 ルカだって、同じだ。昨晩行ったディルドでの一人遊びでは何かが足りなかった。それは考えるまでもなく、リーヴァイが足りないとわかってる。

 ルカは、リーヴァイに向かって腕をのばす。
 抱きしめて、そして、挿入してほしい。

 リーヴァイはそのお願いを正確に汲み取ると、ルカの身体を抱きしめるようにしながら、大きな陰茎をゆっくりと挿入しはじめたのだった。
 
 
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