特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第16章 -勇者 VS 魔王-

†第16章† -33話-[破滅からの使者①]

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 勇者プルメリオが魔族領の旅を再開して、更に四ヶ月が経った頃——。
 アスペラルダ城下町に超特急で建築されたミナヅキ公爵家の屋敷。
 その敷地内にある大きな温室に据えられたティーテーブルの一席に宗八そうはちの姿はあった。
 ————。
 決戦準備の為に各地を飛び回る一方で、貴族家の公爵となることになった宗八そうはちは貴族としての教育をかなり厳しめに受けて急成長を遂げていた。
 カップに口を付けても以前のような飲み方は鳴りを潜め、音も立てず、泰然とした姿で紅茶を楽しむ。

 この温室には、宗八そうはちの他にも人の姿があった。
 同じテーブルに着く正室アルカンシェ王女。そして同じくテーブルに着く側室サーニャ。
 更に四人目には、最近聖女からやっと解放された元聖女(♂)クレシーダの姿もある。

 それぞれの背後には、側近としてアルカンシェには風精使いマリエル。サーニャには火精使いリッカ。クレシーダにはサーニャの姉のトーニャが控えていた。その周りではお茶会の為に侍女のメリーと闇精クーデルカなどのメイドが幾人も指示を待って植物を背に並んでいる。
 全員が静かにティータイムを楽しむ傍らで会話はなく妙に空気は張り詰めていた。
「クレア。うちに身を寄せて良かったのか?」
 聖女クレシーダはの役を下りたのだが、新米聖女に選ばれた女性はまだまだ聖女勉強に忙しく、時折聖女としての姿を見せるのはクレシーダが引き受けていた。
 ユレイアルド神聖教国も他国の貴族制の見直しと時を同じくして、宗八そうはちの介入により光精霊との契約者が多くなった結果、再生魔法の効果が国全体で底上げされたのだった。
 その結果、今まで健気に働き続けて来た聖女という立場も象徴とするに留め、忙しく働く必要が無いのではないかと内部改革が行われている。

 そんな背景もありユレイアルド神聖教国に居る必要性が薄くなった元聖女が頼ったのは、友人であるアルカンシェと宗八そうはちの拠点となるミナヅキ公爵家だった。
「光精王ソレイユ様には強く引き留められたけど、教皇様もディー様も快く送り出してくれましたから大丈夫です。それよりも私は今のところ蚊帳の外なので、詳しい状況を教えて欲しいのですが?」
 ディーとは、白竜クラウディーナの愛称だ。
 彼女たち竜達も今回の戦いにおいては人の側で戦う約定を宗八そうはちが橋渡しをして各国と交わしているので、避難予定の各地にはそれぞれの竜達が昼寝をしながら戦いの時を待っている。

「今は戦力を整えつつ、魔道具の広範囲結界と広範囲聖域の開発と改良と竜の魔石の貯蔵、各地に諜報侍女を派遣して異世界の亀裂を探っているところだ」
 宗八そうはちの淡々とした説明とは裏腹に、闇精クーデルカが影から取り出しクレシーダに渡した資料には戦力や魔道具の現時点での完成度や進捗。オベリスクや瘴気モンスターの発見情報の記録などが事細やかに記載されていた。
 その資料の中でクレシーダの目に止まった文言に彼は興味を示す。
「この神力エーテルの取り扱い検証と神核への成長について。凄くそそられる内容なのですが、どういうものなのか説明してくだ———」

「———あらあら、私もその話は気になるわねぇ」

 クレシーダの言葉が途中で別の声に塗りつぶされる。
 己が主を護る為に前へ出た護衛役のマリエル達は、凄まじい殺気と寒気を伴う不快感の混じった魔圧を全身で受け止める様にアルカンシェ達を背に隠し、声の主が現れるのを見守る。
 逆にテーブルに着いていた四人は堂々としたものだった。

 空間に鋭利な切っ先が見えたかと思うと、スゥーっと縦に空間が斬り裂かれて声の主は姿を現す。
「お久しぶり、でいいのかしら? イクダニムゥ~♪」
 朝から嫌な予感がしていた宗八そうはちの発案でこのお茶会は開かれていた。
 ここ最近は平和が続いていたこともあり、この予感が気の所為であることを祈りながら事が起こるのを待つ事にしたのだが……。
 破滅ヴィネア襲来が目下の緊急事態を考えていた事もあり、意識の端からの存在を忘れていて少し予想外な再会ではあった。
苛刻かこくのシュティーナ———。何しに来たんだ……」
 嫌な予感が彼女の到来なのか、それとも彼女が持ち込んだ情報なのか……。
 シュティーナが現れる度に宗八そうはちは、大怪我させられたり情報爆弾を受けたりとロクな目に合っていないので、あまり出会いたくはない存在であった。

「今日の私はメッセンジャーよ。邪険にするのは良くないのではなくて?」
 全身を現したシュティーナは靴音を立てながら大鎌を肩に乗せ宗八そうはちに問いかける。
「なら、その殺気を抑える努力をしろよ」
「無理に決まっているじゃないの、私は魔神族よ。瘴気に蝕まれて生者は全て敵なのよ」
 宗八そうはちの文句に対し、やれやれと言った仕草で悲し気な表情を一瞬浮かべたシュティーナは言葉を続ける。
「以前とは状況が違う事を貴方は理解しているのでしょう。こうして堂々と私が貴方の下へ訪れた。話を聞くに損はないはずよ?」
 彼女は自身をメッセンジャーと呼んだ。
 そして、言葉通りに以前はこそこそと周囲の時を止めてまで接触して来たのに対し、今回はアルカンシェ達もシュティーナの登場を認識出来ていた。

「クレアとトーニャは下がれ」
「冗談でしょう? 私達は水無月さんの駒とは認めてもらえないのですか?」
 年若い彼の身を案じての発言だったが、クレシーダからすれば仲間外れにされたかの様に思ったのか反発して来る。
 いや、初めて会ったフォレストトーレですでに共闘しているのだ。
 すでに仲間ではあったものの聖女の立場がクレシーダと宗八そうはち達を今まで引き離していたに過ぎない。その瞳の力強さと退かぬ覚悟を認めた宗八そうはちは、溜息一つを溢して視線をシュティーナに戻した。

「茶の用意は必要か?」
 お茶会の継続を決定した宗八そうはちの判断に仲間は異を唱えない。
 逆に質問されたシュティーナの方がこれには意外性を表情に浮かべた。
 確かに掴んでいる情報から、宗八そうはち達がすでに自分達と比肩するステータスになっている事は認識していたが、それでも敵側であるというのに同じテーブルに着く事に納得したのだ。彼に対する信頼がそうさせるのか、負けないという覚悟がそうさせたのか。シュティーナにしてみれば全員が眩しい存在であった。
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