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第16章 -勇者 VS 魔王-
†第16章† -36話-[神霊核へ至る道のり]
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「もう嫌な感じはないから、屋敷内の奴らに安心していいと伝えてくれ。粗相があった奴は今日は休みで良い」
宗八の命令を聞いた諜報侍女隊隊長ミアーネが、目線で指示を出しナルシアが退出する。
入れ替わりに入室して来たのは、獣人の娘。
毛量の多いフワフワの髪の隙間から見え隠れする羊耳が、温室内の音を探りながら父と母の様子を伺いに来たようだ。
「お兄ちゃん、もう大丈夫?」
「メイフェル……。わかっていて入って来たんだろうが、こっち来い」
お茶会の前に自室待機を伝えていた養女が、魔神族の気配が消えた事を察して勝手に抜け出して来たのだ。
宗八は呆れながらも手招きすると、嬉しそうに駆けて来る。
その隣でアルカンシェが目線とハンドシグナルで侍女に椅子の用意を指示して、すぐさま二人の間にメイフェルの席が用意された。
「アルシェ母様、サーニャ母様、クレア様。御歓談中お邪魔致します」
牧場から引き取り貴族令嬢としての教育を受けたメイフェルは、綺麗なカーテシーで四人に挨拶をしてから席に着いた。
「まだ話の途中だったから静かにしておいてね」
口の前に人差し指を当てながらアルカンシェが伝えると、元気に頷いて用意されたお菓子を食べ始める。
「慣れませんね、アルシェがお母さんしている姿は……。なんだか置いて行かれた気分になります」
その様子を見守っていたクレシーダが感傷的な雰囲気を醸しながら言葉を溢す。
年齢で言えば、クレシーダは齢十一歳の男の子でメイフェルは八歳の女の子で歳も近い。
男でありながら聖女という特殊な立場であったクレシーダにしてみれば、突然現れた女の子に友達を取られたみたいな気分なのだろう。
「私も母になった、という自覚はあまり沸いていないわよ。ただ、お母さまを真似ているだけ」
「私も、アルカンシェ様やお兄ちゃんをお母様とかお父様ってまだ呼べないよ。無理に呼ぶ必要は無い、俺達だけの家族の形を作っていこうってお兄ちゃんも言ってたよ」
貴族籍となるのでパーティーに御呼ばれする事も、人目に晒される機会も増える為、公式の場では呼び方を指定する必要はあるが、普段の生活においてはメイフェルを第一に考え呼び方については無理に強制はしていないのだった。
メイフェルがクレシーダに説明をする中で言ってしまった個人的には若干恥ずかしい台詞に宗八はそっぽを向いて耐えるしかない。
「じゃあさっそく話を戻しますけど、神霊核の件を教えてもらえますか?」
シュティーナが現れる前に話は戻り、改めてクレシーダが質問する。
今後の決戦に不可欠であろうと考えたクレシーダの予想に反し、彼が決戦に参加したい意思を認識した宗八は苦い表情を浮かべている。
「まずはそうだな……。神力については理解は追い付いているか?」
何かある度に情報共有は各国にしているので、おそらく理解はしていると想像しつつ確認をするとクレシーダは頷く。
「魔神族は魔力の代わりに瘴気を使った魔法を使用するが、魔神となった後は神力を使用する。この神力をナユタ戦の時に俺は闇魔法を介して吸収、利用したことで子供達の核もその影響で成長したんだ。それが神霊核だ」
「その神霊核が神力を人間が扱える様になる鍵というわけですね……」
渡していた資料に目を素早く通したクレシーダが納得しながらつぶやく。
いくら魔法の化身である精霊と一緒とはいえ、元は同じ魔力であっても高濃度魔力までが限界であり、神力に至っては精霊王であろうとも精霊の域を逸脱しない限り扱う事は叶わない。
ならば、何故宗八達に少量とはいえ神力が扱えたのか?
「アクアちゃん達が核を持つ逸脱した精霊だったから?」
クレシーダの答えに宗八は頷きで返す。
今思い返して見れば、精霊王達は何かを察していた節があった。
水精王シヴァ———宗八を早くから特別な存在と認識して接して来た。
次期風精王セリアティア———精霊との特殊な契約方法を仄めかした。
闇精王アルカトラズ———寝込むアクアーリィを見て「誰もが知らない精霊の道を歩き始めている」と断言した。
その全ての鍵を握る人物に宗八は心当たりがあった。
「そうだ。そして、俺の知り合い全員がその前提条件を満たしているからこそ、同じ過程を経れば核が進化する可能性が非常に高い」
そもそも、この世界の名を冠する彼女こそ”物語綴”。
登場人物たちがどのような過程で目的へ辿り着くのか、その行く末を今も静かに見守っている。
ただし、設定された目的を達成できる確約は無い。
彼女が用意したのはあくまで———救世主と手段だけだ。過程のほとんどの期間を彼女はチカラを失っている為、自身が当事者として参加出来る様に眷族を乗っ取り、時にアドバイスやサポートをしながらこの世界を守る為に力を貸してくれている。
「はぁ~~……。もう面倒くせぇからお前から説明してくれよ、アニマ」
ごちゃごちゃ考えながら説明をしていた宗八だったが、説明序盤にして面倒になって来た為、愛娘の一人に声を掛けた。
その愛娘こそ宗八の物語を始めた黒幕。”物語綴”であり、元神のアニマ=アルストロメリアであった。
『もう、お父様ったら仕方ないですね。長らく忘れていた無精王モードでご説明して上げましょう』
呼び出されて宗八から分離して姿を現したのは、加階して十二歳程に成長した無精アニマだ。
頼られた事を嬉しく思い口角の上がったアニマの台詞は前半が子供っぽく、後半が神聖味を帯びた声音であった。
テーブルの前に立ち、コホンとわざとらしく一息入れると流暢に語り始める。
『まず、改めまして。私の名前はアニマ=アルストロメリア。この世界、アルストロメリアの統治神を務めておりました』
創造神ではなく、上位神が創りっぱなしの世界を統治する立場が統治神アニマであった。
もちろん、精霊を起源に持つ神である。
『約八百年前の人魔大戦が過ぎた頃の私は多くの力を失っており、力を取り戻す為に眠りにつくことにしたのです。その際にチカラを七等分に致しました。六つは無精を各属性に選り分け大精霊を精霊王として私の代わりに大陸を守護する役割を、そして残る一つが分御霊として今回の様な事態が訪れた時に備えた救世主の捜索と召喚を実行する為に異世界に飛びました』
ここで疑問を持ったクレシーダが挙手をした。
アニマも説明を一旦止め、手振りで促す。
「今の話から無精王アニマ様が神であったのは理解しました。では、その時代の精霊は皆無精で光精なども居なかったのでしょうか?」
この世界の住人にとって寝耳に水な衝撃をクレシーダは受け止めつつ、アニマに問いかけた。
何しろユレイアルド神聖教国に保管されていたはずの昔の資料が何故か紛失している事で、正確な情報が残っていない。
故に、この世界は初めから七属性であると信じられてきたのだった。
『良い質問ですね。その通り、無精は本来全属性を扱う事が出来ました。その力を分け与えられたのが今の精霊達です。異世界に飛んだ分御霊も闇精の空間を操る力を使って、宗八を迎えに行く事が出来ました』
この事実にクレシーダは勿論の事、同じく初耳のトーニャもメイフェルも目を見開いて驚きを隠せない。
メイフェルに至っては少々鼻息荒く興奮して、振り返って宗八に「ほんと!?ほんとう!?」と視線で訴えて来たほどだ。
耳もピコピコ動いて可愛い。
『異世界で精霊と親和性の高い水無月宗八を見つけた分御霊は、自身を魔素にして彼の情報を元にそこに居る”水無月宗八”を構築したのです。なので、お父様には神力に耐える基礎が出来ている訳です』
神であるアニマの一部で宗八が創り出された結果、精霊核が進化する前であったナユタの世界でも宗八は神力を取り込み討伐せしめることに成功したのだった。
その結果、神力に触れた精霊核が成長刺激され、神霊核へと至る事となった。
「だから水無月さんとアルシェは結婚を決めたんですねっ!?」
その時、クレシーダの脳内に電流が走り全てが繋がった。
あれだけラブラブでイチャイチャな癖に何故か浮いた話に発展しなかった二人がいつの間にか婚約していたのだ。
宗八がこの世界の為に産み出された存在である以上、この世界に留まることが確定した結果、婚約に踏み切ったのだ、と点と点が結び付いた瞬間だった。
「今はそこじゃないだろうがっ!精霊核を進化させるにはまず人間の方が神力に慣れる必要があるって話だろっ!」
椅子から立ち上がり興奮しながら友を祝福するクレシーダの姿に、宗八は大声で話を修正することで赤面を誤魔化そうとする。
『ともかく。精霊核を神霊核させて、神力を扱える様になり、魔神と戦える様になるまでの必要な事は二つ。一つ目が宗八の言った通り人間が神力に慣れる為にゆっくりと少量ずつ宗八や私達姉妹が手伝う必要がある事。そして二つ目が精霊核も十分な経験値を溜め込んでいる必要がある事』
純粋な精霊はレベルアップする事はなく、時間を掛けて自身を拡張し魔力量を増やして加階する。
しかし、精霊核を持つ精霊は例外的に核に成長要素が入り、そのおかげで加階の速度も段違いで加速しているのだ。
精霊姉弟を筆頭に、関係者の精霊も常に何かしら魔法を使用し続けさせることで経験値を稼ぎどんどんと加階していっている。
「つまり、アルシェが神力に慣れてもポシェントの核が成長していなければ扱えないって事だ」
水精ポシェントとアルカンシェが契約をしたのは約八ヶ月前の話。
暇があれば高ランクダンジョンに潜り経験値を荒稼ぎしてはいるものの、精霊姉弟が今まで獲得した核経験値に到達するに未だ至っていない。
当然、光精ベルトロープ以外に光精フローライトと契約していたサーニャ以外のマリエル、メリー、リッカ、タルテューフォの四名もアルカンシェと同様に八ヶ月前から連日ダンジョンに入り浸っていた。
「と言う事は?」
クレシーダは嫌な予感に震えつつ宗八に答えを求める。
「流石にクレアを魔神戦に引っ張り出す気はないが、戦力として参加するなら足りない経験値稼ぎを行わないといけないな。神力を扱えるかどうかは、戦況を大きく左右するからな」
鍛錬冒険者の多くは無精と契約させている手前、彼らが神力を扱えるようになっても程度が知れている。
だったら破滅特攻の光精と契約しているクレシーダを今からでも育てた方が良い結果に繋がりそうだ。
「明日からトーニャと一緒にダンジョンタイムアタック参加な」
「えっ!?」
いつの間にか巻き込まれていた護衛役トーニャの戸惑いの声が、温室内に響き渡ったのは言うまでもない。
宗八の命令を聞いた諜報侍女隊隊長ミアーネが、目線で指示を出しナルシアが退出する。
入れ替わりに入室して来たのは、獣人の娘。
毛量の多いフワフワの髪の隙間から見え隠れする羊耳が、温室内の音を探りながら父と母の様子を伺いに来たようだ。
「お兄ちゃん、もう大丈夫?」
「メイフェル……。わかっていて入って来たんだろうが、こっち来い」
お茶会の前に自室待機を伝えていた養女が、魔神族の気配が消えた事を察して勝手に抜け出して来たのだ。
宗八は呆れながらも手招きすると、嬉しそうに駆けて来る。
その隣でアルカンシェが目線とハンドシグナルで侍女に椅子の用意を指示して、すぐさま二人の間にメイフェルの席が用意された。
「アルシェ母様、サーニャ母様、クレア様。御歓談中お邪魔致します」
牧場から引き取り貴族令嬢としての教育を受けたメイフェルは、綺麗なカーテシーで四人に挨拶をしてから席に着いた。
「まだ話の途中だったから静かにしておいてね」
口の前に人差し指を当てながらアルカンシェが伝えると、元気に頷いて用意されたお菓子を食べ始める。
「慣れませんね、アルシェがお母さんしている姿は……。なんだか置いて行かれた気分になります」
その様子を見守っていたクレシーダが感傷的な雰囲気を醸しながら言葉を溢す。
年齢で言えば、クレシーダは齢十一歳の男の子でメイフェルは八歳の女の子で歳も近い。
男でありながら聖女という特殊な立場であったクレシーダにしてみれば、突然現れた女の子に友達を取られたみたいな気分なのだろう。
「私も母になった、という自覚はあまり沸いていないわよ。ただ、お母さまを真似ているだけ」
「私も、アルカンシェ様やお兄ちゃんをお母様とかお父様ってまだ呼べないよ。無理に呼ぶ必要は無い、俺達だけの家族の形を作っていこうってお兄ちゃんも言ってたよ」
貴族籍となるのでパーティーに御呼ばれする事も、人目に晒される機会も増える為、公式の場では呼び方を指定する必要はあるが、普段の生活においてはメイフェルを第一に考え呼び方については無理に強制はしていないのだった。
メイフェルがクレシーダに説明をする中で言ってしまった個人的には若干恥ずかしい台詞に宗八はそっぽを向いて耐えるしかない。
「じゃあさっそく話を戻しますけど、神霊核の件を教えてもらえますか?」
シュティーナが現れる前に話は戻り、改めてクレシーダが質問する。
今後の決戦に不可欠であろうと考えたクレシーダの予想に反し、彼が決戦に参加したい意思を認識した宗八は苦い表情を浮かべている。
「まずはそうだな……。神力については理解は追い付いているか?」
何かある度に情報共有は各国にしているので、おそらく理解はしていると想像しつつ確認をするとクレシーダは頷く。
「魔神族は魔力の代わりに瘴気を使った魔法を使用するが、魔神となった後は神力を使用する。この神力をナユタ戦の時に俺は闇魔法を介して吸収、利用したことで子供達の核もその影響で成長したんだ。それが神霊核だ」
「その神霊核が神力を人間が扱える様になる鍵というわけですね……」
渡していた資料に目を素早く通したクレシーダが納得しながらつぶやく。
いくら魔法の化身である精霊と一緒とはいえ、元は同じ魔力であっても高濃度魔力までが限界であり、神力に至っては精霊王であろうとも精霊の域を逸脱しない限り扱う事は叶わない。
ならば、何故宗八達に少量とはいえ神力が扱えたのか?
「アクアちゃん達が核を持つ逸脱した精霊だったから?」
クレシーダの答えに宗八は頷きで返す。
今思い返して見れば、精霊王達は何かを察していた節があった。
水精王シヴァ———宗八を早くから特別な存在と認識して接して来た。
次期風精王セリアティア———精霊との特殊な契約方法を仄めかした。
闇精王アルカトラズ———寝込むアクアーリィを見て「誰もが知らない精霊の道を歩き始めている」と断言した。
その全ての鍵を握る人物に宗八は心当たりがあった。
「そうだ。そして、俺の知り合い全員がその前提条件を満たしているからこそ、同じ過程を経れば核が進化する可能性が非常に高い」
そもそも、この世界の名を冠する彼女こそ”物語綴”。
登場人物たちがどのような過程で目的へ辿り着くのか、その行く末を今も静かに見守っている。
ただし、設定された目的を達成できる確約は無い。
彼女が用意したのはあくまで———救世主と手段だけだ。過程のほとんどの期間を彼女はチカラを失っている為、自身が当事者として参加出来る様に眷族を乗っ取り、時にアドバイスやサポートをしながらこの世界を守る為に力を貸してくれている。
「はぁ~~……。もう面倒くせぇからお前から説明してくれよ、アニマ」
ごちゃごちゃ考えながら説明をしていた宗八だったが、説明序盤にして面倒になって来た為、愛娘の一人に声を掛けた。
その愛娘こそ宗八の物語を始めた黒幕。”物語綴”であり、元神のアニマ=アルストロメリアであった。
『もう、お父様ったら仕方ないですね。長らく忘れていた無精王モードでご説明して上げましょう』
呼び出されて宗八から分離して姿を現したのは、加階して十二歳程に成長した無精アニマだ。
頼られた事を嬉しく思い口角の上がったアニマの台詞は前半が子供っぽく、後半が神聖味を帯びた声音であった。
テーブルの前に立ち、コホンとわざとらしく一息入れると流暢に語り始める。
『まず、改めまして。私の名前はアニマ=アルストロメリア。この世界、アルストロメリアの統治神を務めておりました』
創造神ではなく、上位神が創りっぱなしの世界を統治する立場が統治神アニマであった。
もちろん、精霊を起源に持つ神である。
『約八百年前の人魔大戦が過ぎた頃の私は多くの力を失っており、力を取り戻す為に眠りにつくことにしたのです。その際にチカラを七等分に致しました。六つは無精を各属性に選り分け大精霊を精霊王として私の代わりに大陸を守護する役割を、そして残る一つが分御霊として今回の様な事態が訪れた時に備えた救世主の捜索と召喚を実行する為に異世界に飛びました』
ここで疑問を持ったクレシーダが挙手をした。
アニマも説明を一旦止め、手振りで促す。
「今の話から無精王アニマ様が神であったのは理解しました。では、その時代の精霊は皆無精で光精なども居なかったのでしょうか?」
この世界の住人にとって寝耳に水な衝撃をクレシーダは受け止めつつ、アニマに問いかけた。
何しろユレイアルド神聖教国に保管されていたはずの昔の資料が何故か紛失している事で、正確な情報が残っていない。
故に、この世界は初めから七属性であると信じられてきたのだった。
『良い質問ですね。その通り、無精は本来全属性を扱う事が出来ました。その力を分け与えられたのが今の精霊達です。異世界に飛んだ分御霊も闇精の空間を操る力を使って、宗八を迎えに行く事が出来ました』
この事実にクレシーダは勿論の事、同じく初耳のトーニャもメイフェルも目を見開いて驚きを隠せない。
メイフェルに至っては少々鼻息荒く興奮して、振り返って宗八に「ほんと!?ほんとう!?」と視線で訴えて来たほどだ。
耳もピコピコ動いて可愛い。
『異世界で精霊と親和性の高い水無月宗八を見つけた分御霊は、自身を魔素にして彼の情報を元にそこに居る”水無月宗八”を構築したのです。なので、お父様には神力に耐える基礎が出来ている訳です』
神であるアニマの一部で宗八が創り出された結果、精霊核が進化する前であったナユタの世界でも宗八は神力を取り込み討伐せしめることに成功したのだった。
その結果、神力に触れた精霊核が成長刺激され、神霊核へと至る事となった。
「だから水無月さんとアルシェは結婚を決めたんですねっ!?」
その時、クレシーダの脳内に電流が走り全てが繋がった。
あれだけラブラブでイチャイチャな癖に何故か浮いた話に発展しなかった二人がいつの間にか婚約していたのだ。
宗八がこの世界の為に産み出された存在である以上、この世界に留まることが確定した結果、婚約に踏み切ったのだ、と点と点が結び付いた瞬間だった。
「今はそこじゃないだろうがっ!精霊核を進化させるにはまず人間の方が神力に慣れる必要があるって話だろっ!」
椅子から立ち上がり興奮しながら友を祝福するクレシーダの姿に、宗八は大声で話を修正することで赤面を誤魔化そうとする。
『ともかく。精霊核を神霊核させて、神力を扱える様になり、魔神と戦える様になるまでの必要な事は二つ。一つ目が宗八の言った通り人間が神力に慣れる為にゆっくりと少量ずつ宗八や私達姉妹が手伝う必要がある事。そして二つ目が精霊核も十分な経験値を溜め込んでいる必要がある事』
純粋な精霊はレベルアップする事はなく、時間を掛けて自身を拡張し魔力量を増やして加階する。
しかし、精霊核を持つ精霊は例外的に核に成長要素が入り、そのおかげで加階の速度も段違いで加速しているのだ。
精霊姉弟を筆頭に、関係者の精霊も常に何かしら魔法を使用し続けさせることで経験値を稼ぎどんどんと加階していっている。
「つまり、アルシェが神力に慣れてもポシェントの核が成長していなければ扱えないって事だ」
水精ポシェントとアルカンシェが契約をしたのは約八ヶ月前の話。
暇があれば高ランクダンジョンに潜り経験値を荒稼ぎしてはいるものの、精霊姉弟が今まで獲得した核経験値に到達するに未だ至っていない。
当然、光精ベルトロープ以外に光精フローライトと契約していたサーニャ以外のマリエル、メリー、リッカ、タルテューフォの四名もアルカンシェと同様に八ヶ月前から連日ダンジョンに入り浸っていた。
「と言う事は?」
クレシーダは嫌な予感に震えつつ宗八に答えを求める。
「流石にクレアを魔神戦に引っ張り出す気はないが、戦力として参加するなら足りない経験値稼ぎを行わないといけないな。神力を扱えるかどうかは、戦況を大きく左右するからな」
鍛錬冒険者の多くは無精と契約させている手前、彼らが神力を扱えるようになっても程度が知れている。
だったら破滅特攻の光精と契約しているクレシーダを今からでも育てた方が良い結果に繋がりそうだ。
「明日からトーニャと一緒にダンジョンタイムアタック参加な」
「えっ!?」
いつの間にか巻き込まれていた護衛役トーニャの戸惑いの声が、温室内に響き渡ったのは言うまでもない。
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