特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第01章 -王都アスペラルダ城下町編-

†第1章† -06話-[訓練・試行・確立]

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 シャインィィィィン!シャインィィィィン!シャイィン!シャインィィィィン!

 その独特な音はお昼を少し廻った頃から響き始め、
 幼い子供が遊んでいる程度にゆっくり聞こえていたその音は、
 夕方を過ぎる頃には小学生高学年がチャンバラを演じている程度の速さへと変わっていた。

 訓練方針会議終了後すぐにこの訓練を始めた。
 俺の訓練のメインは当然ポルトーによる武器対策に対応するための打ち合い、
 その他にもセリア先生の魔法講座、メリーの遠距離攻撃対策、
 これらをアルシェとのローテーションで1日中訓練していく。
 これはもう合宿と言えるレベルの集中訓練だ、内容が濃密過ぎる。

 シャインィィィィン!シャイィン!シャインィィィィン!シャイィン!
 すでに何時間この音を聞いているのかわからんぞっ!
 ポルトーは俺のソードパリィの完成度を見てから速度を徐々に速めているようだ。
 クッソ!さっきから頭の中で、
 デコアイドルの「Shine 光り輝け光」の部分がずっとループしている。
 変な集中の仕方をしているようだが、
 なんとか目は付いて行けているし体も快調に動くから無視だ無視!
 シャイィン 光り輝け光!

 訓練を開始する前にメリーさんから[さん付け]はやめて下さいと言われてしまった。

「年齢的にも私はアルシェ様より5つ上の18歳ですので、
 水無月みなづき様より年は下のはずです。
 基本的にメイドがメイン職業でサブ職業にボディーガードもしております。
 とはいえ、ステータスはSTRに少しとAGIに振り込んでいますので、
 アルシェ様を抱えて逃げることに特化しております。
 立場としましても、
 王妃様が息子と発言し始めております事から、
 この国で王子扱いされるまで時間の問題になります。
 ですので姫様の兄君ならば呼び捨てにてお願いいたします。
 あと敬語もなしで」

 まず、血の繋がりのある兄ではないんだから、
 身内になるのが時間の問題とか言わないでいただきたい。
 そして王妃の暴挙がヤバイ。
 メリーさんは年下だったのかぁ、
 落ち着いた雰囲気とかおちょくってくる辺りで同い年か少し上かと思っていた。
 女は見た目で判断できないから本当に怖い。

「了解だ。まぁ俺も基本的には呼び捨てが楽だし、
 その提案は喜んで受け入れさせてもらうよ。
 しかし、年下だったとはな・・・また妹が出来たようなものだな(笑)」

 冗談半分で妹扱いして頭を撫でてみたら思いのほか受け入れてくれる。
 なんか猫みたいだな。

「私も今後は宗八そうはち様と御呼びさせていただきますのでよろしくお願いします」

 どこか機嫌よさそうな新しい妹(仮)はアルシェの元へと向かった。
 メリーが離れたと同時に今度はポルトーさんが近づいてくる。

宗八そうはち様、ぜひ私の事も呼び捨てでお願いします」
「いやまぁ、それはいいんですが・・・」
「敬語もなしでおねがいします」
「それもいいんだが・・・、
 ポルトーとは出会いが格式ばった所ではなかったから対等でいたいんだけど。
 年だってそう変わらないでしょ?」
「初めては姫様の御前だったので格式はあったかと思いますが、
 確かに年は22歳ですのでそこまでは変わらないでしょうね。
 対等というと私も同じように呼び捨てでため口を使えという事でしょうか?」
「そうそう、訓練中にさんとか様とか敬語とかいちいち気にしてられないって。
 剣技に集中するなら余計な物は省いて行こうよ」

 こいつ、記憶がまだ戻らないのか・・・。
 始まりはお風呂場ですよ!

「メリーさんと姫様に確認してきます!」

 アルシェはまぁわかるが、メリーの許可も必要なのか?実はかなりえらい?
 普通に考えればメイドと新兵なら差なんてないと思うけど、
 メリーはアルシェ専属メイドだから階級とかが上なのかもしれない。
 あの年で年下の上司か・・・本当に苦労人だなポルトー。

 ポルトーの説明を受けて、
 2人が視線を向けてこちらを伺ってくるので手を上げてポルトーの言うとおりと伝える。
 アルシェは気にしていない様子なのにメリーがお小言を言っている。

「お兄様が言われたからには許可しますが、
 しっかりと励みなさいとお言葉をもらってしまった。
 いつの間にかメリーさんとも兄妹になっていたんだね」

 何を吹き込まれてるんだこいつは。
 俺の妹は一人でメリーは冗談で言っただけだぞ。


 * * * * *
「基本的に魔法を撃たれると近接主体の方は避けるしか選択肢はございませんわ。
 ですが、それでは一手行動が遅れる意味であり、
 致命的な一瞬になることだってあります。
 その手助けが出来るように魔法使いは敵の撃つ魔法の兆候を敏感に感じ取り、
 発動の妨害もしくは相殺を常に意識する必要がありますわ」

 魔法を撃ちながら言葉を飛ばすセリア先生。
 その魔法はアルシェに届く前に地面から突き出してきた氷の刃で潰される。

「そのアイシクルエッジの結界は非常に厄介ですわね。
 コントロールと魔力消費を度外視すれば優秀な魔法ですから、
 私も風魔法で同じような結界を作れないものかしら」

 アルシェから半径3mの地面が凍りつき、
 魔法や遠距離攻撃が来た場合にのみ刃が飛び出して術者へ届く前に相殺する。
 現在はアルシェが制御しているが、
 いずれ迎撃は自動発動するように昇華させるのが目標である。
 そこまで変質してしまえば[アイシクルエッジ]とは言えなくなる。

 相殺した直後にセリア先生とは別方向から飛んでくる矢を、
 アルシェは氷上を少し滑って回避する。
 魔法と違って目に入ってくる情報が少なく、
 弓から放たれる速度も速い矢は回避をしなければ迎撃が間に合わない。

 大きく回避しては固定砲台としては失格。
 それはセリア先生からご教授を受け始めてからずっと言われ続けている事なので、
 すでに無意識に体を動すことができる。
 飛来物によっては回避した直後に爆発する物もあると聞いているので、
 出来れば地面からの迎撃だけでなく中空もカバーできる魔法が欲しいところ。

 イメージと方向性は話し合いで決まっているとはいえ、
 一朝一夕では出来ないのは当たり前なので、
 いまは出来る事を全力で極めることを目標に、
 魔法と飛来物の対処を続ける。
 それでも足手まといにはなりたくないので、
 イメージを浮かべながら浮遊精霊にお願いをしてみる。

(矢が飛んできたら薄い氷の壁を精製したいので協力してください・・・)

 魔法を相殺した瞬間を狙って矢が飛んでくるが結界に侵入を果たした瞬間に、
 パリンッ!と何かが壊れる音と共に勢いを失いアルシェの足元に突き刺さる。
 成功はしたけれど、精霊へ捧げた魔力は思っていた以上に多かった。
 これでは使い物にならないし、
 訓練を受け続ける為の魔力配分が狂ってしまい、
 最後まで立っている事が出来なくなる。
 それだけは認められないっ!

(凄まじい集中力ですわね。
 一国の、それも13歳の姫様が・・・ここまで・・・)

「いま魔力はどれほど残っておられますか?」
「15%ほど残っております」
「遠距離訓練はこの辺にして、近距離対策に移りましょうアルシェ様。
 私は水無月みなづき君の訓練に参加してきますわ」
「わかりました。では、メリーよろしくおねがいします」
「かしこまりました。
 私は基本的に片手剣のナイフやダガー類を使いますので、
 訓練期間のうちに宗八そうはち様かポルトーにもう少し長い武器の対策をしていただきましょう」

 インベントリから訓練用の槍を取り出して構える。
 槍と意識すると扱い方がわからなくなると、
 先にアドバイスをポルトーから貰っていたので杖の延長と意識して手にした槍を握りメリーと対峙する。

 明確な武器を持った人間を相手にすることなどなかったし、
 必要ではなかったアルシェの緊張が体に影響して動きが固くなる。

 カイィィィィィィィン!

「アルシェ様、貴女はいま全く知らない武器を手にしております。
 巧く扱おうとしても扱えないのは必然ですので気負い過ぎないでください。
 ひとまず、わざと槍に攻撃しますので防御をしつつ槍の握り方を確立してください。
 初めの目標は槍を持てるようになる事です」

 槍に一撃入れてきたメリーからお小言と目標を言い渡されて、
 アルシェは目を見開く。

「そうですね。お兄さんに追いつこうと意識し過ぎていたようです。
 ありがとう、メリー」


 * * * * *
「そういえば、水無月みなづき君。
 アルシェ様との模擬戦で[ヴァーンレイド]を斬り付けていたけれど、
 何を考えてあんなことを?
 普通に考えれば盾で防ぐのが常套手段だと思うのですけれど」
「あ、話題の模擬戦ですね。
 俺は終わった頃に城に戻ってきたので観戦できなかったんですよねぇ。
 で、宗八そうはちは魔法を斬ろうとしたんだい?」

 セリア先生と合流した俺達は、
 次の訓練前に一息入れることにして休憩していた。

「俺のいた世界では魔法とか矢とか、
 遠距離攻撃を剣だけで対処する創作物があってね。
 そんなわけで、
 ひとまず物は試しと思って斬り付けてみたんですけど結果は失敗でしたね。
 ただ、方針会議前にセリア先生とアルシェの話を聞いて、
 いずれは可能かもしれないと思えました」
「模擬戦では気体、炎の塊である[ヴァーンレイド]でしたけれど、
 あれが固体であれば現時点で対処は可能ですわ。
 ただし、武器の強度と魔法の密度によってはですけれど」
「目指す形は武器をエンチャントする従来のものではなく、
 武器に各種魔法をエンチャント出来る様になることです。
 属性の相互関係を利用して、
 いろんな方面で対応できるようになりたいです」
「よくわからない話になっているけど、
 ひとりで魔法にも対応できれば動きやすくなって戦闘の構築も思ったとおりに出来るだろうね」

 魔法の先や浮遊精霊の話を知らないポルトーは、
 前衛としての感性のみで納得している。

「ステータスも低い現在、可能性があるのは水属性のみですわね。
 イメージと制御、親密度のいずれかが不足している場合は、
 如何に強力でも収束が上手くいかず威力は落ちますし、
 範囲も広がって被害を出す可能性がありますから、
 使う場面はお選びになるようにお願いしますわ」
「はい。イメージはありますから、
 あとは制御訓練と水遊びだけですね」
「そろそろ訓練を再開しましょうか。
 セリア先生は回復に専念して、
 俺達はとにかくダメージを気にせず打ち合いで良いんでしたっけ?」
「そうですわね。私もMPが回復しましたし始めましょう。
 ポルトー君が言ったとおり私は二人の回復を担当しますから、
 好きなように打ち合ってくださいな」
「武器は?」
「今日は片手剣しか訓練してないからなぁ。
 片手剣でよろしく頼むわ」
「はいよー」
「いつでも始めて下さいな」

 こうして、会議をしたその日。
 午後のみとはいえ充実した訓練を俺とアルシェは行うことが出来た。


 * * * * *
 翌日、アルシェと俺はお互いの部屋で起き、
 軽い朝食を一緒に食べてセリア先生と合流。
 修練場でポルトーと合流して準備運動をみんなで行う。
 今日の午前中はセリア先生が俺に精霊操作を教え、
 メリーとアルシェは軽い打ち合い、
 ポルトーはアルシェに槍術のアドバイスをする体制で組まれた。

 俺はまず、精霊を認識しなければ話にならないので、
 セリア先生は俺が纏う浮遊精霊にちょっかいを出す。
 すると、浮遊精霊がざわめき始めるからその波を感じる訓練をする。
 何かを感じる気もするが精霊の起こす波なのか、
 セリア先生のちょっかいの余波なのか、
 ただの風なのか判断がつかない。先は長いなぁ。
 そうだ、精霊契約が存在するのかあとで聞いておこう。

 ポルトーから槍術だけでなく杖術や棒術も教わりつつ、
 メリーとの攻防で自分に染み付かせる作業をアルシェは行っていた。

「そういえば昨日の話なのですが、
 宗八そうはちが武器をエンチャントする従来のものではなく、
 属性魔法を武器にエンチャントしたいと言っておりましたが、
 姫様はその方法を思いつきますか?」
「お兄さんが?そうですね・・・、
 従来のエンチャントとは[ウェポンエンチャント]のことだと思います。
 あれは武器に魔力をエンチャントして斬れ味を増すといった魔法ですが、
 お兄さんは魔力ではなく魔法をエンチャントしたいのでしょう。
 まったく、難しい事を考えますね」
「・・・・」
「メリー、どうしました?」
宗八そうはち様はその先に何を見ているのか気になりまして。
 ウェポンエンチャントは完成された魔法です。
 唱え、付与し、固定する。
 あれは唱えるだけで一定時間効果が続く魔法ですが、
 ただ斬れ味が増すだけですから、
 魔法をエンチャント・・・というより属性魔法をエンチャントという行為は、
 いったいどんな効果を想定して何をするための魔法になるのでしょうか」
宗八そうはちは魔法が斬りたいと言っておりましたよ」
「は?」
「アルシェ様との模擬戦開始直後にヴァーンレイドを撃たれたと聞きました。
 その時に宗八そうはちが何をしたか覚えておられますか?」
「いえ、私は戦闘に必死でしたしヴァーンレイドを連射していたので見えなかったわ」
「確か、地面に刺した剣を振り抜いて斬りつけてましたね。
 なるほど、あれは非エンチャント状態で可能かどうか試されたのですね」
「レイボルトは防がれたのに、
 なんでヴァーンレイドが当たったのか不思議だったけどそんなことしてたんだ・・・。
 もし完成すれば前衛はさらに強固になりますね」
「ですが、セリア先生は武器が持たないし制御が難しいと言っていましたよ」
「確かに魔法も使えないといけませんし、
 使える人材もなかなか居ないでしょう」

 宗八そうはちの目指す先を憂いながら訓練は続く。
 午後は教官人がローテーションして、
 宗八そうはちはポルトーと別武器でソードパリィの続きを。
 アルシェは魔法のバランスを変えて同じく迎撃戦を始めるのであった。


 * * * * *
 その翌日もその翌々日もその翌翌々日も濃密な訓練は続き、
 俺は精霊を感じられるようになった。
 といっても、アルシェの様に即席で魔力を捧げて何かを成すことは無理。
 魔力持たないよ。

 出来るのは事前に打ち合わせて捧げる魔力と効果を、
 契約した浮遊精霊に手伝ってもらって無理なく使えるようになった水属性のエンチャント。

 ただし、効果は一秒しか持たない。
 何故か?俺が未熟で制御出来ないからだよ!言わせんな恥ずかしい。
 無理したら暴走して割とマジで死を覚悟するレベルでやばいことになった。

 アルシェは俺と違って改変も浮遊精霊の扱いも長けているため、
 手数を増やすのではなく効率化を進めたようだ。
 近接も攻撃ではなく俺と同じパリィを優先して訓練をしたらしい。
 まぁ、それだけでは終わらないだろうなぁ。
 あの子は素直な分、真っ直ぐ最短を歩けるから兄貴分として負けたくない。

 お互いそれなりに手応えを感じているようなのでここいらで手合わせと洒落込みたい・・・。

「んだが、どうかね?アルシェ」
「そうですね。
 基礎の基礎は出来ているとポルトーとメリーからもお墨付きをいただいているので、
 魔法と近接どちらも試してみたいですね」
「それってお二人だけなんでしょうか?
 俺も参加して自分の力量とか対応力とか知りたいんですが」
「私だっていつも教えている立場ですから、
 どれほど実践で扱えるようになっているか自分で相対して知りたいですわね」

 近接担当と魔法担当の教師が模擬戦に参加するのか・・・、
 面白そうだしいいだろう!

「私は審判をさせていただきますので存分に戦ってくださいませ」

 こうして、2人だけの模擬戦は強化チーム4人でのリーグ戦へ変更が決まった。
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