特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第01章 -王都アスペラルダ城下町編-

†第1章† -07話-[結局、模擬戦 VSアルシェⅡ]

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「ふむ、なんでこんな事になってる?」
「お父様とお母様が悪ノリした結果だと聞いていますが、
 実際は皆が悪ノリした結果ですね」
「前回行った模擬戦の評判が独り歩きして話が大きくなったのは確かですが、
 臣民に、その・・・配慮するのが面倒になったので一気に知らしめてしまえと」
「これって俺とセリア先生は戦わない方がいいですよね?」
「こんな舞台を用意されては致し方ありませんわ。
 ここは辞退すべきですわね」

 ちょっと予想外の急展開過ぎて着いて行けてない。
 話は少しだけ遡り・・・

 俺達は午前中にいつもの軽い運動を終え、
 予定通りに模擬戦を始めようかという所で・・・。

「申し訳ございませんアルシェ様、宗八そうはち様。
 本日の模擬戦の舞台はこの修練場ではなく、
 もう少し整った場でやって頂くことになりました」
「なりましたって・・・、
 模擬戦は俺らが訓練の成果を試すため勝手に行う事なんだけど、どういうこと?」
「それは私が説明しよう」

 俺達が勝手に行う予定だった模擬戦は、勝手に豪華な舞台を用意されていた。
 疑問を話を持ってきたメリーへぶつけると背後から王様が現れた。
 王様がホイホイ歩き回らないでいただきたい。

「王様が噛んでいらっしゃるのですか?」
「まぁ、結論から言うと噛ませてもらった。
 アルシェのダンジョン入りに伴った臣民の混乱を抑える情報操作だが、
 思いの外大変でなかなか進行しなくてね。
 この模擬戦で大々的に発表してしまえとなったわけだ」
「説明が雑過ぎてわからないのですが、本末転倒なのでは?」
「アルシェの頼みを叶える事とは別に王族としての思惑もある。
 これ以上遅れを出す訳には行かないのだよ」

 笑いながらもどこか陰のある表情をしているが、
 何か悪い状況が起こっているのだろうか?
 俺は異世界人でこの世界ともこの国の問題とも本来関係がなく、
 関わらせないように王様達が気を使ってくれているのは分かっている。
 なんと言っても世界を救うために旅立った勇者の話すらしないからなっ!
 どんな奴なのかも男なのか女なのかも知らない。

 もう少し頼ってくれてもいいのにと思わなくもないが、
 国の王が決めた事だから無下にしたくないという想いもあるため、
 事情を説明してくれるまでは待っているつもりだ。
 いまの俺に何が出来るわけでもないし。

「これから決戦の舞台へ招待しよう」

 決戦ではなくて模擬戦だし、相手は貴方の娘なのですが。
 そして、決戦のバトルフィールドに着いた俺達の感想が冒頭の会話になる。


 * * * * *
「さぁ、やってまいりました!
 本日はここ、アスペラルダ王国闘技場!
 年に数回しか使われる機会が無い闘技場が今日は嬉しさに泣いている!
 見よ!この観衆を!沸け観衆っ!!!」

 わああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!

 解説席みたいなところから声を飛ばすテンションが高い新キャラがいる。
 やめろ!これ以上は頭のアドレス帳に登録出来ないから新しいヤツを出すな!

「実況は私!いつも元気なギルドマスター、アイリス=ヴォロートです!
 解説に近接担当、新米兵士ポルトー=サンクスさん!
 魔法担当、宮廷魔導師セリア=シルフェイド様に来ていただいております!
 本日はよろしくお願いします!」
「「よろしくお願いします」」

 知らない人ではなかった事に安堵した。
 あぁ、確かに居たねノリが良くて元気なハーフフェアリーがいたね。
 いつの間にか実況席に移動してノリの良い挨拶をしている知り合い2人。
 参加出来なくなって暇になったからお呼ばれしたのだろう。

「今回も私の声を皆様にお届けできるのは、
 セリア様の風魔法によるものです!一同感謝いたしましょうっ!!」

 わあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!!

「そして!本日!本闘技場の主役の2名に入場していただきましょう!
 まずは、我等がアスペラルダ王国の宝!至高の結晶!
 シヴァ神からも寵愛を受けるこの方こそ本日の主役の一人だあぁぁぁぁ!!!」

 アルカンシェ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 少しオドオドとしながら登場したのはアルカンシェ=シヴァ=アスペラルダ。
 人見知りな所は改善を見たが、
 こういった大勢の場に出るのはまだ不慣れみたいだ。
 その小動物チックな動きがさらに臣民の心を鷲掴みにする。

「アーーーールカンシェェェェェエ!!!
 シヴァァァァァァァァ!!!
 アスペラァァァァァァァァルダーーーーーーー姫殿下ぁーーーーーーーー!!!!」

 あ、姫殿下まで言うんだ(笑)

「まだまだ居るぞおおおおお!本日のもう1人の主役ぅぅぅ!
 幼い姫様に兄扱いを強要し!妖精が仕事で仕方なく行なった悪事をネチネチ復讐し!
 さらには対人戦経験のない姫様に模擬戦を挑む鬼畜っぷり!!!
 この世にはこれ程のクズがいたのかぁぁぁぁ!!!そうなのかー!!!!」

 めっちゃ好き勝手に言ってやがる。
 立ち位置が違う発言だが、本当の事を言っているので否定出来ない。
 クッソ!あとで酷いことしてやる!
 エロ同人みたいにっ!エロ同人みたいにっ!

「みなづきぃぃぃぃぃぃぃぃーーー!
 そーーーーぉぉぉはぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁちぃぃぃぃぃ!!!!!」

 頑張れよ鬼畜ぅーーー!(笑)

 城下町で暮らしている内に知り合った名も知らぬ冒険者たちが声援を送ってくれる。
 ありがとう、名は知らないが一緒に夕飯を食べた冒険者。
 ありがとう、名は知らないが武具の善し悪しを語り合った冒険者。
 俺はいま!猛烈に!熱血している!

「審判には当主役二人の従者でもある、筆頭メイド!
 メリー=ソルヴァ!!!!!」

 筆頭だったとか、苗字がソルヴァとか始めて知った。
 今更なのでメリー呼びをするけど、確か18歳だったはず・・・それで筆頭??
 もしかして、人手不足なのかな?
 そういえば、城で下地作りしていた時でさえ将軍とか見なかったな。
 いくら魔族前線から一番離れた国とはいえ薄過ぎやしないかな?

 この国の在り方に疑問を抱きつつ、入場する。
 今は目の前の魔法使い・・・いや、魔導師に専念しよう。
 今回は回避しかしないなんて舐めプは出来ないから必死に抵抗しないとなぁ。

「では、始めたいと思います。
 治癒術が扱えるものが多数いますので、
 怪我など気にせず思う存分に力を出し切ってください。
 始まりの掛け声はありませんので、
 タイミングはお二人にお任せいたします」

 そう言って、下がっていくメリー。

「今回は回避だけするなんて言わない。
 こちらからも攻撃して行くからな」
「はい。お兄さんに負けないように全力を出します」

 言葉少なく交わされた会話を最後に二人は距離を取る。
 十分な距離を離れた二人が向き合い、
 アルシェが掌を前へ向けて言葉を発する。


 * * * * *
「≪アイシクルエッジ!≫」

 俺の足元まで地面が凍りついていく。
 これでアルシェの機動力が確保されたことになるが、
 最初は[レイボルト]か[ヴァーンレイド]で来るかと思っていたけど、
 足場作りを先にしたか。
 まぁ、接近されたら後手後手に回りかねない魔導師なんだから、
 賢いアルシェなら後顧の憂いは先に経つか。
 先に魔法で攻められる前に足場の確保をしないとな。

 インベントリから[イグニスソード]を出しながら用意していた技をお披露目する。

「≪ヴァーンレイド≫セット:イグニスソード」

 炎属性を持つイグニスソードが[ヴァーンレイド]を中空に浮かぶ炎球を徐々に吸い込み、
 勢いが強くなった剣芯は赤い輝きをさらに煌めかせる。
 炎を溜め込みながらゆったりと腰を捻りつつ左耳の傍まで振りかぶり、
 テンションが上がるように技名を言い放つ。

擬似ぎじ火竜一閃かりゅういっせんっ!!」

 [イグニスソード]を横一線に振り切ると、
 剣先から溢れ出た炎が波状に伸びてアルシェがいる場所へ走っていく。
 この技は単純に属性一致の武器と魔法をひとつにして、
 という所までは巧くいくんだけど、
 溜めきった後は1秒しか制御できないから振り切ってしまう。
 すると炎が開放されて勝手に振った範囲を一閃となって走っていくという力技なのだ!

 足元の氷が融けたと同時に走り出し、
 先を走る炎に合わせてアルシェへと接近する。

「っ!?≪アイスブロック!≫」

 実は訓練中でもアルシェには秘密にしていたこの技を初めてみた姫様は、
 慌てて火竜一閃かりゅういっせんを防ぐ手段として咄嗟の詠唱を挟むと、
 アルシェの目の前に大きな四角い氷が出てくる。
 防御魔法にしてもいきなりこの質量出すとかどんだけ魔力を捧げたんだ!?

 氷塊に炎がぶつかり白煙が一気に周囲も見えないほど発生する。

「≪エアースラッシュ≫」

 融け切らなかった氷塊の左右にカマイタチを放ち動きを制限、
 視界を塞ぐ白煙の除去を目的に放った魔法は後半の役目を果たして彼方に消えていった。

「≪アイスランス!≫シフト:フルスタム!
 ≪アイシクルウェポン!≫シフト:セイバー!」

 二つの魔法名が聞こえたと思ったら真上をアルシェが飛び越えていく。
 はぁ!?初めに唱えた魔法で自分を打ち上げたのかっ!
 空中にいるアルシェへ目を向けると、
 彼女の背後に氷で出来た5本のショートソードが放射状に浮き上がり従っていた。

 アルシェの着地と俺の振り向きは同時だった。
 本来なら自分の身長以上に中空を飛んだのだから衝撃ですぐ動けない状態のため、
 振り返っただけの俺が先に動き出して肉薄できるはずだった・・・

「≪エレメンタルコントロール!≫シュート!」

 まだ飛ぶ前の詠唱には続きがあったらしい。
 5本の氷剣が俺目掛けて飛んでくる。
 近距離戦用かと思ったが、遠距離用だったか?
 いや、近接にも使えると考えておいた方がいいな。
 飛来する氷剣を[イグニスソード]でパリィするが、
 Uターンして戻ってくる。

「ええええぇぇぇぇ!?くっ!戻ってくるぅ!?
 ほっ!もしかしてぇ、んっ!浮遊精霊かっ?うおっ!」

 シャイィン!シャインィィン!シャイィン!シャインィィィィン!
 シャイィン 光り輝け光!
 キタコレ!これで勝つる!調子出てきた!
 パリィで接触を続ける氷剣は徐々に[イグニスソード]の熱で融けていく。

「≪アイシクルウェポン!≫シフト:ランサー!」

 最後の氷剣を解かしきったところへアルシェの次の詠唱が耳に届く。
 アルシェへ目線を合わせると今度は氷で出来た槍が彼女の背後左右に1本ずつ、
 計2本展開している。
 その内の1本を持って肉薄してくるアルシェに対抗してこちらも隠し玉を出すべきかと悩む。

「≪エレメンタルコントロール!≫」

 悩んでいる場合ではなくなった。
 残っていた氷槍がひとりでに動き出して、
 こちらも俺に向かって槍術を繰り出そうとしている。
 未だに振り方の基礎を覚えた程度でも、
 それが2人分あればお互いをカバーし合って攻撃の隙を少なくすることは出来るだろう。
 数の暴力には勝てないので俺も奥の手を出さざるを得なくなってしまった。

 カアイィィィィィィン!シャッカアァァァァン!
 シャイイィィィィィンシャン!カアァァァァァァァン!

 [イグニスソード]とぶつかった氷槍は先の氷剣とは違い、
 パリィでも直接弾いても融ける様子を見せない。
 先ほどは5本精製した魔力を2本に集約して強度を上げたのか?
 あとは、不純物が少ないとかそんな理由だろうけどなっ!!
 クッソー!やっぱりこのままじゃ、2人分はいずれ対処できなくなるなぁ。
 覚悟を決めて意識を分ける。

「≪氷質ひょうしつ宿やどした大気たいきあつめ・・・≫」

 カアァカアァァァァァン!シャッカアァァァァン!
 カアァァンカアァンカアァァァァァン!
 詠唱を始めた途端に捌ききれなくなって、直受けを何度も繰り返す。

「≪いま一時ひとときしずくりて、もとよ・・・≫」

 カアァンカン!ガンッ!カンカアァァァァン!
 ガアァァァン!カァンカアァァァァァン!
 インベントリからとある宝玉を取り出しながら魔力を込めていく。
 これの為にあまり魔法を無駄遣いできないんだよなぁ。
 現最大魔力の50%近く持っていくからなぁ。
 ってか、受け損なった槍の一撃が本当に痛いっ!!

「≪蒼天そうてん穿うがて!精霊加階せいれいかかいよ!・・・アクアーリィ!!!!≫」

 ボロボロになりながらようやっと、
 完成した詠唱に反応して手元の宝玉が輝きを放ち、
 大気中に存在する水分が宝玉を核に集まり始める。

 そのまま水晶玉程の大きさの球体になったかと思えば、
 すぐに割れ始めると同時に中からそれは姿を現す。

 大きさは手の平サイズ。
 身体と衣服を構成するのは核となる宝玉以外は全て水、
 髪は短めに切り揃えられ、何故かドレスのような格好をしている。

「あれは!精霊召喚!?
 まさか本当に成功させるとは・・・凄まじいほどのセンスですわね」

 そう、俺がしたのは[スライムの核]を媒介に魔力を捧げて、
 契約した浮遊精霊を一時的に加階させるオリジナル魔法。
 俺が可能性に気付いてから詠唱の研究を進めて、
 発動自体はイメージさえあればなんとか形には成ったけど、
 効率や効果に差が出てしまっていた。
 で、一番効果が高かったのが元の世界の厨二病なセリフ回しだった。
 声に出す恥ずかしさがやばいので今はこの程度の効率に甘んじている。

「精霊召喚とは何のことでしょうか!」
「あの精霊の正体は、いま冒険者の間で話題の浮遊精霊の1体なのですわ。
 その浮遊精霊と契約を交わしてあの謎のアイテムを核として捧げる事によって、
 本来は数年掛かる加階を一時的に付与しているのですわ。
 それだけではなくて、
 本来の加階ではないのであの進化は少し違った成長をしているようですわ」
「まったくわかりませんね。
 それと、2人の近接戦闘は素晴らしかったですね」
「近接担当さんは静かにしていてください!
 センスがどうと言っていたのはどういうことでしょうか!」
「確かに以前水無月みなづき君に、
 精霊と契約してもっと力を貸してもらう事はできるのかと聞かれたときは、
 不可能ではないけれど対話が成立しなければ契約は出来ないし、
 身体を構成出来なければ魔法の軽いアシストしか出来ない、
 外に出る精霊も少ないし居るのはお願いを聞くことは出来るけれど、
 対話が出来ず身体も持ち合わせていない浮遊精霊くらいだと伝えましたわ」

 驚くセリアの台詞は一旦の途切れを見せたあと、
 さらに続きの言葉を漏らし始めた。

「それをあのようにしっかりとクリアした結果を見せられては・・・、
 センスが凄いとしか私は言い用がありませんわ・・・」
「なるほど。超高度な魔法講座でした!」

『ふわぁ~~~!』

 可愛らしく欠伸をする契約精霊に、
 さっそく自身の窮状きゅうじょうを助けてもらうべく救援を求める。

「助けてアクア!」
『はいな~。あうぅぅ~剣変えてぇ~』
「今は無理!」
『むぅ~。≪あいしくるうぉーる≫』

 なんとも気の抜けそうな詠唱をしたアクアの魔法は[アイシクルウォール]。
 氷の壁を出現させる魔法だが、
 当然発動位置は・・・俺とアルシェの間!!

「っく!?
 精霊に頼んで制御するのではなく精霊自身が魔法を使うのですかっ!?
 2対1ですっ!反則ですっ!」
「助かったぞぉアクア!」
『はいな~』
「さっきまで2本槍で俺を襲っていたじゃないかぁ!これでお相子あいこだろ!」

「美しい兄妹喧嘩ですわね貴方」
「そうだね。早く正式に息子にしないとな」

 ゾクッ!なんかよくわからない寒気が走ったけど、
 いまは一旦距離を開けたがあの[ランサー]を出されると今後近接の俺の立場が危うい。
 出来れば正面から勝ちに行きたいから、アクアに頑張ってもらおう!

 あのランサーは浮遊精霊が操作していたはず。
 であれば頭はそれほど良くない・・・。
 アクアは位階が上がった存在なので思考力も上がっているから、
 あっちの相手して欲しいなぁ。出来るかなぁ。
 こいつ掌サイズだからなぁ。

「アクア、あっちのお仲間が操ってる氷の槍の対処任せても良いか?」
『はいな~、まかせろぉ~!なんかぶき、かしてぇ~』
「槍相手だからなぁ、念のために入れておいた[スピア]でいいか。
 装備できるのか?」
『よゆう、よゆう♪』

 インベントリから[スピア]を取り出してアクアへ渡すと、
 アクアの目の前で浮遊し始める。
 まるで持っているかのように構えるアクアの動きに応じて浮遊している槍も自在に動いている。これは戦えそうだ!

「魔力が切れそうになったら俺のところに来るんだぞ」
『はいな~』
「んじゃ、行くぞ」
『いくぞ~』

 時間が来て、厚い氷の壁が静かに地面に解けていく。
 その向こう側には当然アルシェが待ち構えていた。
 槍を4本浮遊させて。

 あ、これは駄目だわ。
 アルシェの制御とか残り魔力とか、
 浮遊精霊の技量とか氷槍の強度とかそんなの考えてられないわ。
 勝ちの目がもうアレしか見えなくなった。
 インベントリに[イグニスソード]を収めて、
 両手剣の[バスタードソード]を取り出す。

 両手剣 :バスタードソード
 希少度 :普通
 要求ステ:STR/19 VIT/13

「作戦変更だアクア。
 これで消えちゃうだろうけど、またすぐに呼び出すからはぶてないでくれよ」
『しかたないねぇ~、すぐだからなぁ~』
「アレで一気に決着を着ける!アクア!」
「≪アイシクルエッジ!≫」

 俺が構えると同時にアルシェが地面を凍りつかせて、
 ダッシュを掛けて急速に接近してくる。
 やはり、残り3本は浮遊精霊が操作しているようだ。

『≪ほわいとふりーず≫せっと:ばすたーどそーど』

 魔法を唱え終えたアクアの核が砕け散り、
 アクアは浮遊精霊へと減階して姿を消す。
 [アイシクルエッジ]より強力な冷気が腰溜めに構えた俺の[バスタードソード]へ収束していく。

 アルシェも俺がやろうとしている事に気付いたようで、
 ダッシュの速度をさらに上げて近づいてくる。
 残った魔力もついでに注いで暴走しないように気を配る。

「勝負だ!アルシェ!!!!!」
「勝負ですっ!お兄さん!!!!!」

「氷竜一閃(ひょうりゅういっせん)っ!!」
「≪エレメンタルコントロール!≫シフト:ピラミッド!」

 俺とアクアの凝縮された冷気の一閃と、
 攻撃一点突破を突き詰めたアルシェの槍の穂先が激突した!!

 お互いのアドバンテージが逆転し、
 冷気を帯びた魔力の一閃と一点突きをした槍は少しの停滞を見せるが、
 次第に冷気に押され始める。
 穂先が少しずつ欠けて砕け始めると、
 3本槍がその都度穂先を向ける方向を調整してくれるが、
 アルシェ自身がどんどんと後ろへ押され後退を強制されていた。

(これがっ・・・お兄さんが考えていた新しいウェポンエンチャントですか。
 私たちの考えでは付与する魔法の制御も出来ないと実現は不可能だったのに、
 その制御をまさか精霊にまかせるなんて。
 まったく異世界人とは考え方が柔軟ですねっ!
 流石はお兄さんですっ!)

 そのまま一閃が消えるまで耐え続けたアルシェは、
 闘技場の端まで押し返されていた。
 腕も耐えるだけで限界を迎えて上がらない。
 でも充足感は今までのどの場面よりも感じられていた。

「ギブアップします」
「勝者!水無月宗八みなづきそうはち!!」

 こうして、俺達の模擬戦は終わりを告げた。
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