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第10章 -青龍の住む島、龍の巣編Ⅰ-
†第10章† -06話-[修行の成果と龍命救助]
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『アルゥ~、もうひとつ広くなったよぉ~』
「そのようですね。
では、私たちも進み始めましょうか。アクアちゃん」
『お~!』
メリーとクーちゃんがアイス・ドラゴンの元へと駆けて行ってから少しの時間で、
さらにオベリスクの効果範囲が無効化されたのをアクアちゃんと私は感じ取り、
後を追うように進み始めることを決めました。
「ポシェントさん。
その細波のランスはすぐに使用可能なのですか?」
『振るって空気を混ぜ込めば勝手に鳴り始める代物だ。
ただ、回し続けるから戦闘に参加が出来なくなる』
「わかりました。
戦闘は今のところ必要ありませんから、
私たちの5mほど先を歩きながら鳴らし続けてもらえますか?」
『ふん、わかった』
この方の「ふん」は「うん」とかの頷きと同じようですね。
こうやって素直に従ってくれるところを見ると、
悪い印象は持たれていないようで安心しました。
お母様が選出したのですから性格に難ありな人物は寄越さないとは思っていても、
精霊関係でお母様が動くところを初めて見たので内心ドキドキです。
信じてますからね、お母様!
私たちの前に進み出たポシェントは、
ご自分でも言われていた通りにランスを横向きの8の字に描き始めると、
ザザァーーン・・・ザザァーーン・・・と砂浜を思い起こさせる海辺の音が耳に届き始めました。
「これが細波のランスの効果・・・。
ニルちゃんの風精の遁走曲と干渉も起こしていませんし、
問題はなさそうですね」
『なんだか落ち着くねぇ~。
これならアイス・ドラゴンもあんまり暴れないんじゃ無いかなぁ~?』
「そうだといいんですけど・・・。
ひとまずは効果があると信じて私たちは手頃な魔石を探しましょうかっ!」
ポシェントは演奏をしながらもこちらの動きをみて足を進めているようで、
本当に私の指示した通りの5m先を忠実に守っている。
真面目ですねぇ・・・。
『あっ!ねぇねぇアルゥ~!これ違うかなぁ~?』
「え?どれですか?」
アニマル形態からニュートラル形態へと戻っていたアクアちゃんは、
私と一定の距離を保ちながら[アクアライド]で周囲の地面を見て回っていました。
そんなアクアちゃんが私を呼び始めたので、
探していた場所を離れてアクアちゃんがしゃがみ込んでいる手元を覗き込む。
「どう・・・なんでしょうか・・。
私たちが実際に手にした事のある魔石に比べると色が濃いとは思いますけど・・・」
『魔石かどうかは魔法を込めてみればわかると思うけどぉ~・・・』
「明らかに砕けた痕がありますからね、この欠片ではどの程度期待できるか・・・。
とりあえず試してみましょう。 《アイシクルエッジ》セット:魔石」
足下に一瞬広がる私の氷がパキンッ!粉々に砕けると、
欠片それぞれが魔力へと姿を変えて私が手にする魔石の欠片へと吸い込まれていく様子を見守ります。
親指と人差し指で摘まんだまま魔力の増幅を待つと、
予想よりも容量があるようで4秒くらいしてから魔力がいっぱいになったので排出制御を開始しました。
「ドラゴンの魔力容量についてポシェントは何か知っていますか?」
『いや、知らない。そもそも今回の命令が無ければ、
このような危険地帯に足を踏み入れることはなかったくらいだ』
『(使えないねぇ~)』
「(アクアちゃん、そんな言い方はダメですよ。
お兄さんに怒られてもいいんですか?)」
『(うぅ・・ごめ~ん・・・)』
アクアちゃんの暴言の根元には、
お兄さんが日頃考えられることが反映されているはずです。
身内や味方に関してはそんな事を考えもしないと思いますけど、
敵視されていたり益にならないと判断した人物には結構辛辣ですから、
そういった面から今のアクアちゃんの言葉は怒られることでしょう。
ポシェントは味方で、
知らないことを素直に答えただけですからね。
私たちだって知識を持っていないのに、
助っ人が知らないからと文句を言っては恥知らずという者ですからね。
「せめてもう少し大きくて余裕のある魔石を探しましょう」
『あいさ~!』
その後もドラゴンが活動していたらしい痕跡のある場所を探してみましたが、
ドラゴンは魔石を重要視していないらしく、
この辺で生産された魔石はほぼ全て踏み砕かれた状態で散見され、
ほどほどの大きさでヒビも入っていない不備が無い魔石の捜索は難航してしまいました・・・。
「ひとまず、見つけられた13個を届けましょう、アクアちゃん」
『うぅ~ん、そうだよねぇ・・・。
ちょっとシンクロしててもその数の排出はキツいもんねぇ~・・』
見つかった魔石は全部で13個。
それらに魔法を込めていつもの影倉庫に落とし込んでいたものの、
メリー達の方で回収されると対象との距離が開きすぎて、
最悪制御不能となってしまい魔力暴走で魔石が砕けてしまう。
流石に制御力を鍛えたり、魔法槍に慣れてきたとはいえ、
常に手元にある状態での話なので、
遠距離になるとアクアちゃんとシンクロを行って制御力を上げたとしても単純な魔法とは違う為、精々2個くらいしか遠距離制御は行えない。
「お兄さん達もほどほどで戻ってくるはずですから、
そしたら楽になりますよ。
ポシェント!メリーとクーちゃんに合流します!」
『了解だ』
お兄さんは島中央手前にあるオベリスクを半周だけマリエルと共に壊すと言っていた。
残りはゼノウとセーバー達に任せると言っていたので既に連絡は終わらせているのかな?
ひとまず、お兄さんとマリエルが戻れば魔法付与も尚更楽になりますし、
メリーが息のあるアイス・ドラゴンの選別をしているので、
あちらまで私たちが移動すれば、
槍や剣ほどの大きさではない13個程度の魔力制御などどうとでもなりますしね。
* * * * *
『マリエル、ソウハチが二人で半周掃除すればいいと言っていますわー!』
「えぇ?言うの遅いですよ隊長ぉー!?
もう少し過ぎちゃってますよぉー・・・」
『あー、優秀過ぎて生きるのが辛いですわー!』
「ニルちゃんは次にその台詞を言うときは、棒読みを直しておいた方がいいよ」
丁度7本目のオベリスクを破壊して休憩がてら次の標的を探している間に、
ニルちゃんに隊長からの念話が入ったらしい。
二人ってのは私と隊長の事だろうから、
もう私のノルマは達成してるってことでいいんだよね?
「じゃあ、すぐ姫様の元に戻りますって伝えておいてくれる?」
『かしこまりーですわー!』
そういえば姫様の元から出発するときに隊長が少し心配そうにこっちを見ていたような・・。
あれかな?妖精族としての影響を気にしてたのかな?
オベリスクは7本破壊だから、
それなりの時間をオベリスク効果範囲で過ごしたことになる。
ちょっと戻る前に自分なりに身体の不調がないかと体を動かしてみたり、
瞑想状態で魔力の流れについても調べてみたけど問題はないと思う。
「ニルちゃん的には?」
『問題はないと思いますわー!
行動中は魔力を厚めにして常にマリエルを覆っていましたから、
消失したのは全て魔力だけの負担ですわー!』
確かに体力の消耗よりも精神的なだるさの方が大きい気がする。
今はニルちゃんとシンクロしているからまだ気がする程度だけど、
たぶん切った途端に顕著な形で疲れが出るんだろうなぁ。
戻った後は顔に出さないようにしないと、
また前に出させてもらえなくなっちゃうかもしれないから気をつけよう!
「ならさっさと戻って姫様の作業を手伝いましょうか」
『魔法付与で魔石に込めているはずですわー!。
アクア姉様と一緒とは言え限度がありますものねー!』
「じゃあ、しゅっぱーつ!!」
『おー!ですわー!』
効果の続く[エリアルジャンプ]で中空へと飛び上がり、
空中を跳ね駆けるマリエルとニルのタッグは、
さほど時間も掛けずにアルシェ達が居る中央へと戻ってきた。
しかし、そこに既に戻っていた宗八ノイのタッグの姿を発見する。
「げぇ・・・、
隊長達が先に戻ってきてるじゃないですかぁ~」
「げぇじゃねぇよアホ。
メリーとクーが生きてるのと死んでるのを選別してるから、
とりあえずマリエルは魔石を5個ほど見つけて来い」
さっそく隊長からの次のご指示が飛んできた。
たぶん手にしている青い石がドラゴンが精製するという魔石なんだろうな。
それだけ言うと隊長は踵を反してどこかへと行ってしまった。
「いってらっしゃい隊長。お元気で」
「何を馬鹿言ってるの、マリエル?
おかえりなさい、お兄さんから話は聞いた?」
「あっ!ただいま戻りました姫様!
魔石を5個取って来いと言われましたけど・・・どういうことですか?」
「ここに住むドラゴンが精製する魔石は水氷系となっていますから、
込められる魔法も自ずと水氷属性の魔法となります。
魔法を込めて魔力を排出するのは魔法剣と同じですけれど、
それらをドラゴンの口に含ませてから排出をするので、
制御出来る範囲で5個と指示されたのでしょう」
姫様の噛み砕いた話を聞いてようやく魔石を探して来る必要性を認識した。
あいかわらず隊長は言葉が足りないというか・・・、
姫様や契約精霊じゃないと隊長の言っている意味を把握できないんだってば・・・。
「私とアクアちゃん、そしてお兄さん達はシンクロして制御力を統合しますけど、
マリエルとニルちゃんは個別に対処してください」
「私たちも一緒にシンクロした方が効率が良くないですか?」
「効率は良くなるけれどその起点となるお兄さんの負担が大きくなるから、
個人で動き回れて魔法剣も使えて、
排出も出来るマリエル達を別対応に当てる事にしたみたい。
中心部の状況もわからないのに疲れるわけにはいかないでしょう?」
むむむ・・・そう言われると反論できない。
あと、姫様が私に出来ることを羅列したお陰か、
褒められたように感じられて上手く誤魔化される自分が恨めしい・・・。
じゃあ隊長は自分たち用の魔石を探しに行ったから、
私も自分で込める用の魔石を探して来ないと行けないのか。
『お話は終わりましたのー?』
『そろそろ魔力が溜まりきるよぉ~』
「はぁ・・では、また行って参ります。姫様」
「気をつけてね。
お兄さんも予定数よりは多く集めてくるようですから、
マリエルも言われた数より集めてきてくださいね」
あぁ・・・ノルマが増えていくぅ~・・・。
でも隊長に加えて姫様からの命令だし、
アイス・ドラゴンの数に合わせるだけじゃなくて先の事も見据えての指示なんだと思う。
「見つけたのは影に落としてもいいんですか?」
「えぇ。こちらに私とアクアちゃんがいるし、
既にお兄さん達とはシンクロ済みなので制御できる範囲は広がっているから、
二人が集めてくれた魔石でアイス・ドラゴンに配ります」
「りょーかいしました!マリエル=ネシンフラ、行って参ります!」
姫様は私の言葉に頷きだけで返事をなされて、
次の魔石に魔法を込め始めました。
「小さすぎずヒビの入っていない物でないとお兄さんに怒られますからね」
「は、はいっ!!」
最後に大事な釘を刺してくる辺り、
隊長に影響を受けたのか、
それとも私が知らないうちに王族として成長されたのか・・・。
う~ん・・・どっちもかな?
* * * * *
「進捗はどうだ?」
〔先ほどお互いに合流して内陸に一緒に移動したところだ〕
〔範囲を考えて1㎞ほど内側に移動しているが、これでいいか?〕
「あぁ、大丈夫だ。そのまま来た方向に再度回って中央に戻っては、
また同じようにそれぞれが半周を繰り返してくれ」
魔石を多めに集めてきた俺とノイは、
ひとまずアイス・ドラゴンの処置を進める為にアルシェ達とシンクロを維持したままゼノウとセーバーにコールしていた。
「ただ、余裕が出ればちゃんとオベリスクの調査は後々にするから、
今は大まかな範囲なんかはお前らに任せる」
〔それはオベリスクの配置によっては、という事か?〕
「そういうこと。
出来れば早めに合流しておいてほしいから、
アイス・ドラゴンに接触した場合は優先して小さいのを調べてくれ」
〔小さいのってのはどのくらいの大きさを指してるのかわからないんだが・・〕
「女性陣の身長より体高が低ければ小さいと考えてくれ」
〔・・・では、あれで小さいのか・・・〕
〔・・・ドラゴン半端ねぇな・・・〕
何だ?内陸に入ってからすでに視界に入っているのだろうか?
アイス・ドラゴンの生態についてメリー達が動き回った結果、
どうやら15体程度でひとつのグループとして生活しており、
それが島の大きさを考えて20~30あるのではないかという話だ。
ということは多くても450体のアイス・ドラゴンがこの島には居ることになるけど、
それって多いのだろうか?
詳しくは聞いていないけれど、
アイス・ドラゴンの上位種であるブルー・ドラゴンは、
世界に一頭しかいないとナデージュ王妃から伺っているから、
もしかしたらここ以外にアイス・ドラゴンの巣ってないのかな?
もしも本当に無ければレッドブックに確実に載る絶滅危惧種となってしまう。
そもそも龍って繁殖力が低いと相場が決まっているし・・・、
っていやいや。この考えはどうせ回答はないのだし止めよう。
とにかく生きている個体だけでも助けないといけない。
「クーの影倉庫をクラン用に拡張したから、
小さい個体であれば影に落としてくれ。
こっちで引き上げて回復させる」
〔調べ方はどうやればいい?〕
「体を男で持ち上げて女性でお腹に耳を当ててくれ。
体温と呼吸の確認をしてみれば生きているかどうかわかる」
〔小さいのはなんとかなっても大きいのは無理だぞ〕
「メリーの報告からもっとも小さい個体以外は息があるらしい。
大きいのは事が終わってから回復させればいいから放置して大丈夫だ」
〔それならなんとかなるか・・・〕
ドラゴンは1体1体がすごく重いので、
クーの影倉庫に落とせる数も多くは無いけど、
どっちにしろ落とすのも一苦労だろうからその間にこっちが引き上げれば問題はない。
「そっちの問題点は細波のランスが無いことで、
動けるアイス・ドラゴンが暴れる可能性があるって点だ」
〔暴れたらどうすりゃいいんだよ〕
「暴れる奴は元気なんだから逃げりゃいいんだよ。
あくまで死にそうな奴だけ影にさっさと落としてその場を離れてくれれば良い」
実際俺たちの目的にアイス・ドラゴンの救出があるにはあるが、
真の目的はブルー・ドラゴンの様子を確認し、
必要であれば助ける事で俺が求めている専用魔石を精製してもらうことだからな。
「ご主人様っ!」
メリーの叫びに近い声が発せられ声に反応してそちらへ視線を移すと、
この場のグループで最も大きい個体が起き上がって行く姿が見えた。
「すまんが後は任せる。
期待していた山が動いたらしい」
〔了解〕
〔そっちも気をつけろよ〕
少し離れた位置からも見えるソレを見上げつつ、
互いに健闘を祈って通話を終わらせる。
にしてもデカイ。
ビルで言えば5階くらいかな? 15mってところか?
その場にいたメンバーも全員集まって、
少し離れた位置から見守っているところへ俺も刺激しないようにと歩いて近寄っていく。
「なんで目を開けないんだ?」
「おそらく警戒して敵対しようとしている意思と、
ポシェントの細波のランスによる鎮静の効果が鬩ぎ合っているのではないかと・・・」
俺の誰に向けたものでもない独り言に、
アルシェが予想出来る得るうちの最も高い可能性を口にする。
う~ん実際よくわからんな・・・。
近づいてじっと見れば瞼がピクピク動いているのがわかるけど、
あの瞳が開いたからと言って、
流石に俺も龍の瞳から心情や性格とかを読む事が出来るとか思えないな。
「メリー、魔石は飲ませたのか?」
「いえ。一番離れていましたし、
個体としても明らかに規格が違いましたので、
最後に近づいた途端に瞳が開いて起き上がり始めましたから・・・」
「マジか・・・、それで起き上がれるって相当だぞ・・・」
「一応しばらく足留めするついでにと魔力を排出していましたから、
もしかしたらそれを吸収していたのかもしれません」
「まぁ、オベリスクは破壊したからこれ以上の消失はないでしょうけど、
ちょっと早過ぎですよね」
確かに蒼剣の制御をアクアに任せて、
この場の地面に剣は刺したままにしていたし、
アルシェとマリエルも同じく排出をしながら作業に従事していた。
それにしたってそれらを吸収したからって動けるようになるまで回復するだろうか?
これは生来のドラゴンの生命力の賜物ではないだろうか。
「他のドラゴンは動けないのか?」
『起き上がろうとする個体は居ましたが満足に動けない個体ばかりです』
「ふーん、ならいいか・・・。
全員周辺警戒に移行、ポシェントは演奏を中止してください」
「お兄さん、相対するのですか?」
んなわけないだろ。
俺たちは戦いに来たわけじゃないし、
そもそも本来アイス・ドラゴンに用はないんだぞ。
「いまのままだと話が出来るかもわからんし、
何より自分の意識を乱されたままだと対話以前の問題なんだから、
時間を無駄にしないためにもアイス・ドラゴンの意向を示してもらわにゃならん」
「わかりました、他が暴れ始めたらこちらで抑えます」
『では、効果を切りますよ』
「お願いします」
さて、どうなるかな。
他の奴が魔力が排出される魔石を口に含んだまま動けないなら、
コイツとどれほどの差があるのだろうか。
こういう時にゲームみたいにHPが目に見えれば考えることも少なくて楽なのにと思うな。
『マスター、ちゃんと集中してるですか?』
「瞼はしっかりと重くなって来てるから大丈夫だよ。任せろ」
『それもおかしな集中の仕方だと思うですよ』
黙らっしゃい。
俺の人生はこれで大体上手くいってるんだから、
多分これが俺に合った方法なんだよ。
まぁ、集中が長引くと本当に眠くなっちゃうのが玉に瑕だけどな。
* * * * *
全員が引くのに合わせて蒼剣を地面から引き抜き前に出る。
対象との距離は5mもない。
奴が前屈みになるだけで丸呑みされそうな威圧感を感じる。
再び蒼剣を地面に刺して魔力の排出を開始すると、
数歩後ろに下がって敵意がないというアピールをする。
視線をアイス・ドラゴンの顔へと上げていくと、
彼?は周囲をゆっくりと周囲を見回しながら仲間を視界に押さえて、
安否確認と状況把握をしているように見えるので、
しばらくそれが終わるのを待ちながら視線を外さずに見守った。
「終わったかな?」
『聖壁の欠片はいつでも出せるです・・・』
「ヤバそうだったら頼むな」
大きな瞳が一度静かに閉じると息を整え終えたかのように、
開いた瞳は初めから俺に向いていた。
敵意は・・・無いと思うけど警戒心は強そうだ・・・。
まぁ、周囲にアイス・ドラゴンの幼龍の死体と、
ぐったりと弱った同胞達が多くいる中、
人間数人が精霊と共に警戒をしている様が見えているわけだしな。
だが、こちらも時間が惜しい。
早めに中心へ進む為にも協力までは行かずとも、
アイス・ドラゴンの邪魔だけは避けたいところなのだ。
「初めまして、アイス・ドラゴン。
私はアスペラルダ王国の水無月宗八と申します!
私の言葉はわかりますでしょうかっ!」
出来る限り大きな声で挨拶と名乗りを上げ、
アイス・ドラゴンの動向を伺う。
ナデージュ王妃の話を考えるに、
精霊との交流もなかった龍が人間の言語を理解できるのかと疑問はあるのだが、
ひとまずは対話を試みるのは悪いことでは無いだろう。
『・・・・・』
何か反応を示して頂けないだろうか・・・。
拒否の攻撃でも、首を傾げるでもいいのでアクションを起こしてもらわないと、
俺も次の手札を切って良いのかわからんのよ。
「我々はブルー・ドラゴンに用があり精霊の力を借りて島に来ました!
しかし、眷属の貴方方が今の有り様なのであれば、
ブルー・ドラゴンも似た状況ではないでしょうかっ!?」
『・・・・・』
「ご自分達の様態を認識出来るのであれば、
ブルー・ドラゴンの救援に我々はすぐに向かいたい!
今の貴方方であれば話をせずとも無視して進むことも出来るのです!」
『・・・・・』
あ~!!仲間に死んでる奴もいるってのに、
時間がないってのがわからんのかっ!!
自分の感情の波形が大きく揺すぶられ始めるのがわかり、
俺は感情のままに龍へと怒声をあげた。
「うんもすんも言えんのかっ!聞こえてんだろっ!
アイス・ドラゴンはデカイだけの脳足りんかっ!」
『あ・・・んんん・・・、すこ・・んん・・・・』
あ?すこ?は?何コイツ、今俺に告白してきた?
俺の事すこすこのすこんぶマジ卍なの?
俺の怒声にようやくアクションを返してきたアイス・ドラゴンは、
首を少し後ろに引きながら頭を振っている。
まるで嫌々している子供のような仕草だ・・・。
それからも『ん・・・んん・・・』と繰り返し、
唸り声なのか若干苦しげに聞こえる声を漏らし続けるアイス・ドラゴン。
何がしたいのかわからん・・・。
もう無視して中心に向かいたいと本気で思い始めたところにアルシェが近づいてきた。
「お兄さん、よろしいですか?」
「んあ?」
『ますたー、お怒りだぁ~・・・ひゃっ!』
この状況で戯れ言を吐くアクアを睨みつけ黙らせる。
アルシェはそんなアクアに一度視線を移して微笑むと、
俺の瞳をしっかりと見据えながら口を開いた。
「メリーとクーちゃんとも話し合ったのですが、
もしかしたら長期間喋らず居たので喉が開いていないのではないでしょうか?」
「喉が開いていない?」
「はい。お母様も仰っていましたが、
龍はほとんど寝て過ごしているとのことですし、
それに加えてオベリスクの影響が重なり体が弱っているのかもしれません。
つまり、病み上がりの状態に近いのではと・・・」
確かに病気の時などは基本的に寝て回復させるから、
起きたときなどに粘膜が喉に絡んでいることがよくある。
そう考えて視線をアルシェからアイス・ドラゴンへと戻すと、
奴はまだ『んん・・・ん!・・んんん・・・』とか言っている。
「一度、私に任せてもらっても良いでしょうか」
「・・・ふぅ、任せる」
「ありがとうございます」
逼迫している状況に頭に血が上って冷静さを欠いたとはいえ、
まさか本当にそんな人間みたいな事が起こってるのだろうか?
流石に伝説の生き物が喉に痰を詰まらせて唸る事があるとは想像しがた過ぎるだろう・・・。
「《アクエリアス》セット:魔石!」
アルシェは俺の前に進み出ると同時に大きめの魔石を取り出して魔法を詠唱する。
それも普段詠唱しない上級魔法の[アクエリアス]をだ。
アルシェの魔法が発動し、
彼女の足下から特大の間欠泉のように水が噴き出し、
アルシェの一瞬飲み込みはするが、
すぐに手にしている魔石の中に吸い込まれてその姿を完全に消してしまった。
上級魔法を込めた魔石は大きくはあったが、
すぐに魔力が増幅され満タンとなったらしい。
蒼い高濃度魔力の排出が始まった。
「アイス・ドラゴン!
こちらを飲み込まずとも口に含んで下さいませんでしょうか!
魔力を多く失った体の調子も少々戻るかと思います!」
『んんっ!・・・い・・んん・・いた・・・んんっ!!』
うるせぇ、さっさと口に入れろ。
俺のイライラと警戒をよそに、
姫に従属するドラゴンのような光景が目の前で繰り広げられ、
アイス・ドラゴンは身を屈めてアルシェが掲げる魔石を器用に口先で咥えると、
そのまま上を見上げて口の中に放り込んだ。
アルシェは役目が終わったとでもいうように、
ソソッと後ろに下がってきて俺の裾を握ってきた。
その指先からは体の震えが伝わってきて、
アルシェもあの巨体を前に恐怖心を覚えたみたいだ。
「ありがとうな、アルシェ。
とりあえず頭は冷えた」
「いえ、お兄さんの手助けをするのが私の役目ですから」
頑張ってくれたアルシェに感謝を伝えながら頭を撫でると、
微笑みながら大和撫子のような事を言ってくれる。
『んんん・・・あ・・あああ・・・んんうん、すまない。
待たせた事、謝罪する。
ブルー・ドラゴンが気掛かりは我々も同じ気持ちではあるが・・んん、
まずは・・・ん!話を聞かせてもらいたい』
ようやっと喋り始めたアイス・ドラゴンは、
初手謝罪から懸念と対話を求めてきた。
後方で魔力回復に当たっている個体は峠を越えたようだし、
事情だけは説明して自分たちのグループを守る動きをしてもらわねばならない。
ってか、ドラゴンって人間の言葉喋れるんだな。
「そのようですね。
では、私たちも進み始めましょうか。アクアちゃん」
『お~!』
メリーとクーちゃんがアイス・ドラゴンの元へと駆けて行ってから少しの時間で、
さらにオベリスクの効果範囲が無効化されたのをアクアちゃんと私は感じ取り、
後を追うように進み始めることを決めました。
「ポシェントさん。
その細波のランスはすぐに使用可能なのですか?」
『振るって空気を混ぜ込めば勝手に鳴り始める代物だ。
ただ、回し続けるから戦闘に参加が出来なくなる』
「わかりました。
戦闘は今のところ必要ありませんから、
私たちの5mほど先を歩きながら鳴らし続けてもらえますか?」
『ふん、わかった』
この方の「ふん」は「うん」とかの頷きと同じようですね。
こうやって素直に従ってくれるところを見ると、
悪い印象は持たれていないようで安心しました。
お母様が選出したのですから性格に難ありな人物は寄越さないとは思っていても、
精霊関係でお母様が動くところを初めて見たので内心ドキドキです。
信じてますからね、お母様!
私たちの前に進み出たポシェントは、
ご自分でも言われていた通りにランスを横向きの8の字に描き始めると、
ザザァーーン・・・ザザァーーン・・・と砂浜を思い起こさせる海辺の音が耳に届き始めました。
「これが細波のランスの効果・・・。
ニルちゃんの風精の遁走曲と干渉も起こしていませんし、
問題はなさそうですね」
『なんだか落ち着くねぇ~。
これならアイス・ドラゴンもあんまり暴れないんじゃ無いかなぁ~?』
「そうだといいんですけど・・・。
ひとまずは効果があると信じて私たちは手頃な魔石を探しましょうかっ!」
ポシェントは演奏をしながらもこちらの動きをみて足を進めているようで、
本当に私の指示した通りの5m先を忠実に守っている。
真面目ですねぇ・・・。
『あっ!ねぇねぇアルゥ~!これ違うかなぁ~?』
「え?どれですか?」
アニマル形態からニュートラル形態へと戻っていたアクアちゃんは、
私と一定の距離を保ちながら[アクアライド]で周囲の地面を見て回っていました。
そんなアクアちゃんが私を呼び始めたので、
探していた場所を離れてアクアちゃんがしゃがみ込んでいる手元を覗き込む。
「どう・・・なんでしょうか・・。
私たちが実際に手にした事のある魔石に比べると色が濃いとは思いますけど・・・」
『魔石かどうかは魔法を込めてみればわかると思うけどぉ~・・・』
「明らかに砕けた痕がありますからね、この欠片ではどの程度期待できるか・・・。
とりあえず試してみましょう。 《アイシクルエッジ》セット:魔石」
足下に一瞬広がる私の氷がパキンッ!粉々に砕けると、
欠片それぞれが魔力へと姿を変えて私が手にする魔石の欠片へと吸い込まれていく様子を見守ります。
親指と人差し指で摘まんだまま魔力の増幅を待つと、
予想よりも容量があるようで4秒くらいしてから魔力がいっぱいになったので排出制御を開始しました。
「ドラゴンの魔力容量についてポシェントは何か知っていますか?」
『いや、知らない。そもそも今回の命令が無ければ、
このような危険地帯に足を踏み入れることはなかったくらいだ』
『(使えないねぇ~)』
「(アクアちゃん、そんな言い方はダメですよ。
お兄さんに怒られてもいいんですか?)」
『(うぅ・・ごめ~ん・・・)』
アクアちゃんの暴言の根元には、
お兄さんが日頃考えられることが反映されているはずです。
身内や味方に関してはそんな事を考えもしないと思いますけど、
敵視されていたり益にならないと判断した人物には結構辛辣ですから、
そういった面から今のアクアちゃんの言葉は怒られることでしょう。
ポシェントは味方で、
知らないことを素直に答えただけですからね。
私たちだって知識を持っていないのに、
助っ人が知らないからと文句を言っては恥知らずという者ですからね。
「せめてもう少し大きくて余裕のある魔石を探しましょう」
『あいさ~!』
その後もドラゴンが活動していたらしい痕跡のある場所を探してみましたが、
ドラゴンは魔石を重要視していないらしく、
この辺で生産された魔石はほぼ全て踏み砕かれた状態で散見され、
ほどほどの大きさでヒビも入っていない不備が無い魔石の捜索は難航してしまいました・・・。
「ひとまず、見つけられた13個を届けましょう、アクアちゃん」
『うぅ~ん、そうだよねぇ・・・。
ちょっとシンクロしててもその数の排出はキツいもんねぇ~・・』
見つかった魔石は全部で13個。
それらに魔法を込めていつもの影倉庫に落とし込んでいたものの、
メリー達の方で回収されると対象との距離が開きすぎて、
最悪制御不能となってしまい魔力暴走で魔石が砕けてしまう。
流石に制御力を鍛えたり、魔法槍に慣れてきたとはいえ、
常に手元にある状態での話なので、
遠距離になるとアクアちゃんとシンクロを行って制御力を上げたとしても単純な魔法とは違う為、精々2個くらいしか遠距離制御は行えない。
「お兄さん達もほどほどで戻ってくるはずですから、
そしたら楽になりますよ。
ポシェント!メリーとクーちゃんに合流します!」
『了解だ』
お兄さんは島中央手前にあるオベリスクを半周だけマリエルと共に壊すと言っていた。
残りはゼノウとセーバー達に任せると言っていたので既に連絡は終わらせているのかな?
ひとまず、お兄さんとマリエルが戻れば魔法付与も尚更楽になりますし、
メリーが息のあるアイス・ドラゴンの選別をしているので、
あちらまで私たちが移動すれば、
槍や剣ほどの大きさではない13個程度の魔力制御などどうとでもなりますしね。
* * * * *
『マリエル、ソウハチが二人で半周掃除すればいいと言っていますわー!』
「えぇ?言うの遅いですよ隊長ぉー!?
もう少し過ぎちゃってますよぉー・・・」
『あー、優秀過ぎて生きるのが辛いですわー!』
「ニルちゃんは次にその台詞を言うときは、棒読みを直しておいた方がいいよ」
丁度7本目のオベリスクを破壊して休憩がてら次の標的を探している間に、
ニルちゃんに隊長からの念話が入ったらしい。
二人ってのは私と隊長の事だろうから、
もう私のノルマは達成してるってことでいいんだよね?
「じゃあ、すぐ姫様の元に戻りますって伝えておいてくれる?」
『かしこまりーですわー!』
そういえば姫様の元から出発するときに隊長が少し心配そうにこっちを見ていたような・・。
あれかな?妖精族としての影響を気にしてたのかな?
オベリスクは7本破壊だから、
それなりの時間をオベリスク効果範囲で過ごしたことになる。
ちょっと戻る前に自分なりに身体の不調がないかと体を動かしてみたり、
瞑想状態で魔力の流れについても調べてみたけど問題はないと思う。
「ニルちゃん的には?」
『問題はないと思いますわー!
行動中は魔力を厚めにして常にマリエルを覆っていましたから、
消失したのは全て魔力だけの負担ですわー!』
確かに体力の消耗よりも精神的なだるさの方が大きい気がする。
今はニルちゃんとシンクロしているからまだ気がする程度だけど、
たぶん切った途端に顕著な形で疲れが出るんだろうなぁ。
戻った後は顔に出さないようにしないと、
また前に出させてもらえなくなっちゃうかもしれないから気をつけよう!
「ならさっさと戻って姫様の作業を手伝いましょうか」
『魔法付与で魔石に込めているはずですわー!。
アクア姉様と一緒とは言え限度がありますものねー!』
「じゃあ、しゅっぱーつ!!」
『おー!ですわー!』
効果の続く[エリアルジャンプ]で中空へと飛び上がり、
空中を跳ね駆けるマリエルとニルのタッグは、
さほど時間も掛けずにアルシェ達が居る中央へと戻ってきた。
しかし、そこに既に戻っていた宗八ノイのタッグの姿を発見する。
「げぇ・・・、
隊長達が先に戻ってきてるじゃないですかぁ~」
「げぇじゃねぇよアホ。
メリーとクーが生きてるのと死んでるのを選別してるから、
とりあえずマリエルは魔石を5個ほど見つけて来い」
さっそく隊長からの次のご指示が飛んできた。
たぶん手にしている青い石がドラゴンが精製するという魔石なんだろうな。
それだけ言うと隊長は踵を反してどこかへと行ってしまった。
「いってらっしゃい隊長。お元気で」
「何を馬鹿言ってるの、マリエル?
おかえりなさい、お兄さんから話は聞いた?」
「あっ!ただいま戻りました姫様!
魔石を5個取って来いと言われましたけど・・・どういうことですか?」
「ここに住むドラゴンが精製する魔石は水氷系となっていますから、
込められる魔法も自ずと水氷属性の魔法となります。
魔法を込めて魔力を排出するのは魔法剣と同じですけれど、
それらをドラゴンの口に含ませてから排出をするので、
制御出来る範囲で5個と指示されたのでしょう」
姫様の噛み砕いた話を聞いてようやく魔石を探して来る必要性を認識した。
あいかわらず隊長は言葉が足りないというか・・・、
姫様や契約精霊じゃないと隊長の言っている意味を把握できないんだってば・・・。
「私とアクアちゃん、そしてお兄さん達はシンクロして制御力を統合しますけど、
マリエルとニルちゃんは個別に対処してください」
「私たちも一緒にシンクロした方が効率が良くないですか?」
「効率は良くなるけれどその起点となるお兄さんの負担が大きくなるから、
個人で動き回れて魔法剣も使えて、
排出も出来るマリエル達を別対応に当てる事にしたみたい。
中心部の状況もわからないのに疲れるわけにはいかないでしょう?」
むむむ・・・そう言われると反論できない。
あと、姫様が私に出来ることを羅列したお陰か、
褒められたように感じられて上手く誤魔化される自分が恨めしい・・・。
じゃあ隊長は自分たち用の魔石を探しに行ったから、
私も自分で込める用の魔石を探して来ないと行けないのか。
『お話は終わりましたのー?』
『そろそろ魔力が溜まりきるよぉ~』
「はぁ・・では、また行って参ります。姫様」
「気をつけてね。
お兄さんも予定数よりは多く集めてくるようですから、
マリエルも言われた数より集めてきてくださいね」
あぁ・・・ノルマが増えていくぅ~・・・。
でも隊長に加えて姫様からの命令だし、
アイス・ドラゴンの数に合わせるだけじゃなくて先の事も見据えての指示なんだと思う。
「見つけたのは影に落としてもいいんですか?」
「えぇ。こちらに私とアクアちゃんがいるし、
既にお兄さん達とはシンクロ済みなので制御できる範囲は広がっているから、
二人が集めてくれた魔石でアイス・ドラゴンに配ります」
「りょーかいしました!マリエル=ネシンフラ、行って参ります!」
姫様は私の言葉に頷きだけで返事をなされて、
次の魔石に魔法を込め始めました。
「小さすぎずヒビの入っていない物でないとお兄さんに怒られますからね」
「は、はいっ!!」
最後に大事な釘を刺してくる辺り、
隊長に影響を受けたのか、
それとも私が知らないうちに王族として成長されたのか・・・。
う~ん・・・どっちもかな?
* * * * *
「進捗はどうだ?」
〔先ほどお互いに合流して内陸に一緒に移動したところだ〕
〔範囲を考えて1㎞ほど内側に移動しているが、これでいいか?〕
「あぁ、大丈夫だ。そのまま来た方向に再度回って中央に戻っては、
また同じようにそれぞれが半周を繰り返してくれ」
魔石を多めに集めてきた俺とノイは、
ひとまずアイス・ドラゴンの処置を進める為にアルシェ達とシンクロを維持したままゼノウとセーバーにコールしていた。
「ただ、余裕が出ればちゃんとオベリスクの調査は後々にするから、
今は大まかな範囲なんかはお前らに任せる」
〔それはオベリスクの配置によっては、という事か?〕
「そういうこと。
出来れば早めに合流しておいてほしいから、
アイス・ドラゴンに接触した場合は優先して小さいのを調べてくれ」
〔小さいのってのはどのくらいの大きさを指してるのかわからないんだが・・〕
「女性陣の身長より体高が低ければ小さいと考えてくれ」
〔・・・では、あれで小さいのか・・・〕
〔・・・ドラゴン半端ねぇな・・・〕
何だ?内陸に入ってからすでに視界に入っているのだろうか?
アイス・ドラゴンの生態についてメリー達が動き回った結果、
どうやら15体程度でひとつのグループとして生活しており、
それが島の大きさを考えて20~30あるのではないかという話だ。
ということは多くても450体のアイス・ドラゴンがこの島には居ることになるけど、
それって多いのだろうか?
詳しくは聞いていないけれど、
アイス・ドラゴンの上位種であるブルー・ドラゴンは、
世界に一頭しかいないとナデージュ王妃から伺っているから、
もしかしたらここ以外にアイス・ドラゴンの巣ってないのかな?
もしも本当に無ければレッドブックに確実に載る絶滅危惧種となってしまう。
そもそも龍って繁殖力が低いと相場が決まっているし・・・、
っていやいや。この考えはどうせ回答はないのだし止めよう。
とにかく生きている個体だけでも助けないといけない。
「クーの影倉庫をクラン用に拡張したから、
小さい個体であれば影に落としてくれ。
こっちで引き上げて回復させる」
〔調べ方はどうやればいい?〕
「体を男で持ち上げて女性でお腹に耳を当ててくれ。
体温と呼吸の確認をしてみれば生きているかどうかわかる」
〔小さいのはなんとかなっても大きいのは無理だぞ〕
「メリーの報告からもっとも小さい個体以外は息があるらしい。
大きいのは事が終わってから回復させればいいから放置して大丈夫だ」
〔それならなんとかなるか・・・〕
ドラゴンは1体1体がすごく重いので、
クーの影倉庫に落とせる数も多くは無いけど、
どっちにしろ落とすのも一苦労だろうからその間にこっちが引き上げれば問題はない。
「そっちの問題点は細波のランスが無いことで、
動けるアイス・ドラゴンが暴れる可能性があるって点だ」
〔暴れたらどうすりゃいいんだよ〕
「暴れる奴は元気なんだから逃げりゃいいんだよ。
あくまで死にそうな奴だけ影にさっさと落としてその場を離れてくれれば良い」
実際俺たちの目的にアイス・ドラゴンの救出があるにはあるが、
真の目的はブルー・ドラゴンの様子を確認し、
必要であれば助ける事で俺が求めている専用魔石を精製してもらうことだからな。
「ご主人様っ!」
メリーの叫びに近い声が発せられ声に反応してそちらへ視線を移すと、
この場のグループで最も大きい個体が起き上がって行く姿が見えた。
「すまんが後は任せる。
期待していた山が動いたらしい」
〔了解〕
〔そっちも気をつけろよ〕
少し離れた位置からも見えるソレを見上げつつ、
互いに健闘を祈って通話を終わらせる。
にしてもデカイ。
ビルで言えば5階くらいかな? 15mってところか?
その場にいたメンバーも全員集まって、
少し離れた位置から見守っているところへ俺も刺激しないようにと歩いて近寄っていく。
「なんで目を開けないんだ?」
「おそらく警戒して敵対しようとしている意思と、
ポシェントの細波のランスによる鎮静の効果が鬩ぎ合っているのではないかと・・・」
俺の誰に向けたものでもない独り言に、
アルシェが予想出来る得るうちの最も高い可能性を口にする。
う~ん実際よくわからんな・・・。
近づいてじっと見れば瞼がピクピク動いているのがわかるけど、
あの瞳が開いたからと言って、
流石に俺も龍の瞳から心情や性格とかを読む事が出来るとか思えないな。
「メリー、魔石は飲ませたのか?」
「いえ。一番離れていましたし、
個体としても明らかに規格が違いましたので、
最後に近づいた途端に瞳が開いて起き上がり始めましたから・・・」
「マジか・・・、それで起き上がれるって相当だぞ・・・」
「一応しばらく足留めするついでにと魔力を排出していましたから、
もしかしたらそれを吸収していたのかもしれません」
「まぁ、オベリスクは破壊したからこれ以上の消失はないでしょうけど、
ちょっと早過ぎですよね」
確かに蒼剣の制御をアクアに任せて、
この場の地面に剣は刺したままにしていたし、
アルシェとマリエルも同じく排出をしながら作業に従事していた。
それにしたってそれらを吸収したからって動けるようになるまで回復するだろうか?
これは生来のドラゴンの生命力の賜物ではないだろうか。
「他のドラゴンは動けないのか?」
『起き上がろうとする個体は居ましたが満足に動けない個体ばかりです』
「ふーん、ならいいか・・・。
全員周辺警戒に移行、ポシェントは演奏を中止してください」
「お兄さん、相対するのですか?」
んなわけないだろ。
俺たちは戦いに来たわけじゃないし、
そもそも本来アイス・ドラゴンに用はないんだぞ。
「いまのままだと話が出来るかもわからんし、
何より自分の意識を乱されたままだと対話以前の問題なんだから、
時間を無駄にしないためにもアイス・ドラゴンの意向を示してもらわにゃならん」
「わかりました、他が暴れ始めたらこちらで抑えます」
『では、効果を切りますよ』
「お願いします」
さて、どうなるかな。
他の奴が魔力が排出される魔石を口に含んだまま動けないなら、
コイツとどれほどの差があるのだろうか。
こういう時にゲームみたいにHPが目に見えれば考えることも少なくて楽なのにと思うな。
『マスター、ちゃんと集中してるですか?』
「瞼はしっかりと重くなって来てるから大丈夫だよ。任せろ」
『それもおかしな集中の仕方だと思うですよ』
黙らっしゃい。
俺の人生はこれで大体上手くいってるんだから、
多分これが俺に合った方法なんだよ。
まぁ、集中が長引くと本当に眠くなっちゃうのが玉に瑕だけどな。
* * * * *
全員が引くのに合わせて蒼剣を地面から引き抜き前に出る。
対象との距離は5mもない。
奴が前屈みになるだけで丸呑みされそうな威圧感を感じる。
再び蒼剣を地面に刺して魔力の排出を開始すると、
数歩後ろに下がって敵意がないというアピールをする。
視線をアイス・ドラゴンの顔へと上げていくと、
彼?は周囲をゆっくりと周囲を見回しながら仲間を視界に押さえて、
安否確認と状況把握をしているように見えるので、
しばらくそれが終わるのを待ちながら視線を外さずに見守った。
「終わったかな?」
『聖壁の欠片はいつでも出せるです・・・』
「ヤバそうだったら頼むな」
大きな瞳が一度静かに閉じると息を整え終えたかのように、
開いた瞳は初めから俺に向いていた。
敵意は・・・無いと思うけど警戒心は強そうだ・・・。
まぁ、周囲にアイス・ドラゴンの幼龍の死体と、
ぐったりと弱った同胞達が多くいる中、
人間数人が精霊と共に警戒をしている様が見えているわけだしな。
だが、こちらも時間が惜しい。
早めに中心へ進む為にも協力までは行かずとも、
アイス・ドラゴンの邪魔だけは避けたいところなのだ。
「初めまして、アイス・ドラゴン。
私はアスペラルダ王国の水無月宗八と申します!
私の言葉はわかりますでしょうかっ!」
出来る限り大きな声で挨拶と名乗りを上げ、
アイス・ドラゴンの動向を伺う。
ナデージュ王妃の話を考えるに、
精霊との交流もなかった龍が人間の言語を理解できるのかと疑問はあるのだが、
ひとまずは対話を試みるのは悪いことでは無いだろう。
『・・・・・』
何か反応を示して頂けないだろうか・・・。
拒否の攻撃でも、首を傾げるでもいいのでアクションを起こしてもらわないと、
俺も次の手札を切って良いのかわからんのよ。
「我々はブルー・ドラゴンに用があり精霊の力を借りて島に来ました!
しかし、眷属の貴方方が今の有り様なのであれば、
ブルー・ドラゴンも似た状況ではないでしょうかっ!?」
『・・・・・』
「ご自分達の様態を認識出来るのであれば、
ブルー・ドラゴンの救援に我々はすぐに向かいたい!
今の貴方方であれば話をせずとも無視して進むことも出来るのです!」
『・・・・・』
あ~!!仲間に死んでる奴もいるってのに、
時間がないってのがわからんのかっ!!
自分の感情の波形が大きく揺すぶられ始めるのがわかり、
俺は感情のままに龍へと怒声をあげた。
「うんもすんも言えんのかっ!聞こえてんだろっ!
アイス・ドラゴンはデカイだけの脳足りんかっ!」
『あ・・・んんん・・・、すこ・・んん・・・・』
あ?すこ?は?何コイツ、今俺に告白してきた?
俺の事すこすこのすこんぶマジ卍なの?
俺の怒声にようやくアクションを返してきたアイス・ドラゴンは、
首を少し後ろに引きながら頭を振っている。
まるで嫌々している子供のような仕草だ・・・。
それからも『ん・・・んん・・・』と繰り返し、
唸り声なのか若干苦しげに聞こえる声を漏らし続けるアイス・ドラゴン。
何がしたいのかわからん・・・。
もう無視して中心に向かいたいと本気で思い始めたところにアルシェが近づいてきた。
「お兄さん、よろしいですか?」
「んあ?」
『ますたー、お怒りだぁ~・・・ひゃっ!』
この状況で戯れ言を吐くアクアを睨みつけ黙らせる。
アルシェはそんなアクアに一度視線を移して微笑むと、
俺の瞳をしっかりと見据えながら口を開いた。
「メリーとクーちゃんとも話し合ったのですが、
もしかしたら長期間喋らず居たので喉が開いていないのではないでしょうか?」
「喉が開いていない?」
「はい。お母様も仰っていましたが、
龍はほとんど寝て過ごしているとのことですし、
それに加えてオベリスクの影響が重なり体が弱っているのかもしれません。
つまり、病み上がりの状態に近いのではと・・・」
確かに病気の時などは基本的に寝て回復させるから、
起きたときなどに粘膜が喉に絡んでいることがよくある。
そう考えて視線をアルシェからアイス・ドラゴンへと戻すと、
奴はまだ『んん・・・ん!・・んんん・・・』とか言っている。
「一度、私に任せてもらっても良いでしょうか」
「・・・ふぅ、任せる」
「ありがとうございます」
逼迫している状況に頭に血が上って冷静さを欠いたとはいえ、
まさか本当にそんな人間みたいな事が起こってるのだろうか?
流石に伝説の生き物が喉に痰を詰まらせて唸る事があるとは想像しがた過ぎるだろう・・・。
「《アクエリアス》セット:魔石!」
アルシェは俺の前に進み出ると同時に大きめの魔石を取り出して魔法を詠唱する。
それも普段詠唱しない上級魔法の[アクエリアス]をだ。
アルシェの魔法が発動し、
彼女の足下から特大の間欠泉のように水が噴き出し、
アルシェの一瞬飲み込みはするが、
すぐに手にしている魔石の中に吸い込まれてその姿を完全に消してしまった。
上級魔法を込めた魔石は大きくはあったが、
すぐに魔力が増幅され満タンとなったらしい。
蒼い高濃度魔力の排出が始まった。
「アイス・ドラゴン!
こちらを飲み込まずとも口に含んで下さいませんでしょうか!
魔力を多く失った体の調子も少々戻るかと思います!」
『んんっ!・・・い・・んん・・いた・・・んんっ!!』
うるせぇ、さっさと口に入れろ。
俺のイライラと警戒をよそに、
姫に従属するドラゴンのような光景が目の前で繰り広げられ、
アイス・ドラゴンは身を屈めてアルシェが掲げる魔石を器用に口先で咥えると、
そのまま上を見上げて口の中に放り込んだ。
アルシェは役目が終わったとでもいうように、
ソソッと後ろに下がってきて俺の裾を握ってきた。
その指先からは体の震えが伝わってきて、
アルシェもあの巨体を前に恐怖心を覚えたみたいだ。
「ありがとうな、アルシェ。
とりあえず頭は冷えた」
「いえ、お兄さんの手助けをするのが私の役目ですから」
頑張ってくれたアルシェに感謝を伝えながら頭を撫でると、
微笑みながら大和撫子のような事を言ってくれる。
『んんん・・・あ・・あああ・・・んんうん、すまない。
待たせた事、謝罪する。
ブルー・ドラゴンが気掛かりは我々も同じ気持ちではあるが・・んん、
まずは・・・ん!話を聞かせてもらいたい』
ようやっと喋り始めたアイス・ドラゴンは、
初手謝罪から懸念と対話を求めてきた。
後方で魔力回復に当たっている個体は峠を越えたようだし、
事情だけは説明して自分たちのグループを守る動きをしてもらわねばならない。
ってか、ドラゴンって人間の言葉喋れるんだな。
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