特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第10章 -青龍の住む島、龍の巣編Ⅰ-

†第10章† -20話-[エピローグⅠ]

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「あのシュティーナという魔神族・・・。
 他のステルシャトーに比べると掴み所のない印象を受けました」
「初めて会った時もあんな感じで飄々ひょうひょうとしていたけど、
 手を抜いているというか何を考えているのかわからないというのは分かる」

 コールで指示をした通りにゼノウ達は再度走り回り、
 島中の龍の状況を確認して来てくれた。
 結果から言えば奇跡的にあの放射には1体も巻き込まれていなかったのだが、
 放射の行われた範囲は海に届くまで被害が広がっており、
 地表は凸凹が無くなってフラットに削り取られ、
 表面も地面では無く薄いのに極めて固い氷に覆われていた。

「フロスト・ドラゴン、メグイヌオール。
 ブルー・ドラゴンの容体はどうですか?」
『弱ってはいるが命に別状は無い』
『あれほどにオベリスクを刺されて別状がないのです?』
『流石は龍族の長ということでしょうか?』

 俺達は一旦それぞれの生存を確認した後に、
 どこぞへと吹き飛ばしたブルー・ドラゴンの元へと集まっていた。
 戦後処理を進める俺達とは別に、
 フロスト・ドラゴンと成り行きのアイス・ドラゴンメグイヌオールがブルー・ドラゴンの元へ集まり、
 大きな身体を調べ回っていた。

 一区切り付いた俺達は、
 精霊達も伴ってブルー・ドラゴンの容体を確認し、
 その答えにノイが驚きクーが疑問を自分に投げかける。

「これは聞いて良いのかわかりませんが、
 魔神族の言っていた[竜玉りゅうぎょく]というのは守られたのですか?」
竜玉りゅうぎょくは守られた。其方そなたらには感謝する』
『アクアの竜玉りゅうぎょくとは違うんだよねぇ~?』
『肯定。水の幼精が使っていた魔法ではなく、
 我ら水竜の長を継ぐ者が代々受け継いできた秘宝。
 それが[竜玉りゅうぎょく]』

 まぁ、なんで魔神族がそれを求めたのかについては知る由もないし、
 シュティーナの話し振りからステルシャトーは勝手に龍の島に来ていたっぽいからな。
 出来れば竜玉りゅうぎょくの守りも固めたいところではあるが、
 俺達には割く戦力が無い。

「ブルー・ドラゴンの意識は戻りそうですか?」
『不明。魔力欠乏とまではいかないのだが、
 それでもここまで減らした事がない為不明だ』
「・・・おい、アニマ。何か意識を取り戻す知恵はないか?」

 元の予定の件もあるのだがこのまま離れるのも後味悪いしで、
 ひとまずアニマに解決策を聞いてみると、
 俺から分離して姿を見せてくれる。

『・・・単純に魔力不足なのですから、
 他の龍に行っていた治療法でいい、です!
 ただし、濃度が薄いと意味を持たないのが竜玉りゅうぎょく持ちの厄介なところ、です!』
「アイス・ドラゴンやフロスト・ドラゴンに行った方法と同じでも、
 排出魔力濃度によるという事ですか・・・」
「アルシェ様、大きめの魔石であればゼノウ様方が見繕ってきて下さっております」
「じゃあ、それで良さそうですね」
『ソウハチとアルシェとアクア姉さまが揃えばどうとでもなりますわー!』

 戦闘中は黙って回復魔法を内々に使用して喋る事の無いアニマが、
 久々に姿を現し竜玉りゅうぎょく持ちの龍について解説してくれた。
 それを受けたアルシェの呟きにメリーが報告を重ね、
 マリエルが疲れから特に考える事も無く納得の言葉を発し、
 ニルが脳天気な発言を最後に締めくくる。

「やるなら最大値でやった方がいいかな」
「そうですね。どうしますか?」
『アルのアクエリアスをシンクロでブーストすればいいんじゃない~?』
『まぁ、無難な方法がそうなります、です!』

 どうするかと聞いてきたアルシェの顔色は悪い。
 なかなかハードな一日になったし、
 高濃度魔力に若干当てられて体調を崩している可能性もある。
 それでもアクアの提案したやり方がおそらくアニマが肯定したように無難なのだろう。

「大丈夫か?」
「頑張ります♪」

 頭を撫でながら聞いてみれば多少持ち直した面持ちでやると言って来た。
 せめて、辛くないように制御力の多くをこちらで負担するようにとアクアに念話で伝えると自分も撫ででくれと頭を擦りつけてきた。

『えへへ~、頑張るねぇ~♪』

 撫でればほれこの通り。
 甘い娘で助かるぜ。

「「『《シンクロ!》』」」
「《アクエリアス》セット:魔石!」

 発動したアクエリアスはアルシェを中心に間欠泉のような湧き方を見せ、
 込められた魔力量の高さから広範囲に発動したことで、
 周囲にいた者達も湧き出たアクエリアスの水に触れる事となった。

「傷が・・・癒えた?」
「上級魔法[アクエリアス]は広範囲回復魔法だもの」
「どうやって息が出来るのか不思議よねぇ」

 この場に一堂に会していた本作戦のメンバーは、
 口々にアクエリアスの効果に驚き褒め称える。
 魔法使いであるゼノウPTのフランザはまだ要求ステータスが足りないのだが、
 セーバーPTのアネスは要求ステータスは満たしていても魔導書を手にしてはいなかった。

 アクエリアスはメリーが手に持つ大きな魔石に吸い込まれ始めると、
 視界を覆っていた水引いていき、
 やがては全てが魔石の中へと収まり魔石全体をほんのりと光らせる。

「物がデカすぎるから今までよりも時間が掛かるだろう。
 その間にアルシェはマリエルとメリーと・・・ゼノウ達を連れて城に戻っていろ。
 頼めるか?」
「了解した」
「「「(コクン)」」」
「三人もそれでいいな」
「了解で~す」
「かしこまりました」
「わかりました。どのくらいで戻られますか?」

 ブルー・ドラゴンこいつが意識を戻して話をしてみないと、
 現状とか魔神族とか田舎者の長に色々と伝えて今後の方向性とかも検討しておかないと俺が離れる事も出来ない。

「下手したら2~3日はこのまま残る。
 戦力もセーバー達とポシェントも残すからいざとなれば囮にしてゲートを開く事も考えている」
「おい、扱いが雑だぞ」
「戻った後に一旦物資を送りますから、
 ゲートはそのままにしておいて下さい。
 お兄さんのお世話にクーちゃんも残るんでしょう?」
『はい、アルシェ様』
「では、テントなどの必要な物はこちらで用意致します。
 クーデルカ、ご主人様方はお任せ致しますよ」
『はい、侍女長』

 途中でセーバーのいつものクレームが入った気がしたけれど、
 そんな事は気にせずアルシェとの会話を進める。
 俺とアクアだけであれば寒くも無いんだが、
 他の精霊やメンバーはその限りでは無い。
 出来る限り寒さ対策をしておかないと、
 戦闘もないから身体はどんどんと冷えていってしまうからな。

「アクアは魔石の制御。
 ニルはアルシェの護衛に付いていけ。
 ノイは中央の隙間を修繕して風の侵入を防いでくれ。
 クーは俺とゲートで荷物の受け取り。
 セーバー達とポシェントはノイの護衛で中央に入ってくれ」
『あい!』
『かしこまり~ですわ~!』
『仕方が無いです』
『かしこまりました』
「はいはい、了解だ。
 お前等、今日はここで野宿になるから隙間は残さないように調査進めるぞ」
『了解した』


 * * * * *
『これで補修は完了です』
『幸い上からの風は入ってこないままのようですわ~』
「隙間風は塞いだうえでテントと厚着をして夜を過ごすのか・・・」
「セーバーは筋肉も厚いしまだマシですよ。
 俺やディテウスはもう勘弁して欲しいくらいに手が震えていますよ」

 宗八そうはちの指示通りにノイを連れて龍の巣中央。
 魔神族との戦場となってしまったが為に、
 地面は凸凹と窪んでいるところがあれば氷が盛り上がっているところもあり、
 その光景が戦闘の激しさを物語っている場所を、
 セーバーPTの男性メンバー三人は修繕を進めていた。

『龍は魔力だけでいいのですよね?』
『食事は不要。其方達だけで良い』

 この後は寝る為の場所を確保する為に、
 平らに整えた場所にノイが壁と屋根を岩で用意すれば次に中にテントを張るなど、
 まだまだやる事は多い。

 女性陣は宗八そうはちの契約精霊の一人であるクーデルカと共に晩ご飯の準備を進めていた。
 その準備が整い今から調理を開始するというところで、
 念のため再三の確認となる龍の食事を心配するクーデルカに、
 フロスト・ドラゴンの1体が答える。

『わかりました。
 では分担してお夕食の調理に取りかかろうと思います。
 お二方共よろしくお願いします』
「はいは~い。頑張りましょうね」
「二人ともがんばれ~♪」
『モエア様もお願いします・・・』

 魔法使いアネスは調理の心得があるのかやる気を見せているのに対し、
 今回の戦いで勇戦を見せた弓使いモエアは、
 食材の干し肉を口に加えながら何故か応援を口にしていて、
 それをジト眼のクーデルカが呆れ口調で再度のお願いをした。

 その頃、宗八そうはちはというと、
 契約精霊のアクアーリィと共に魔法剣で龍の巣一体の魔力回復に務めつつ、
 もう1体のフロスト・ドラゴンを窓口にして、
 自分たちが何故この島に来たのかなどの詳細を説明していた。

「というわけで、俺の魔力を使って魔石を精製して欲しいんです」
『納得。話は理解した。
 しかし、其方そなたは未だに高濃度を練り出すことが出来ない身と思うがどうだ?』
「確かに今回の戦いでも契約精霊や魔石の欠片を利用していましたが、
 いずれ扱えるようになります」

 ならなければ魔神族とまともに戦えないと、
 どんな因果は今回の戦闘の中ではっきり分かったのだ。
 出来ないわけにはいかない。

『我々龍がどのように魔石を精製するかは知っているか?』
「魔力を糧にし、内部で凝固。魔石として排出すると伺っています」
『肯定。だが、人が言う品質とは糧にする魔力濃度で決まる。
 其方そなたの使っていた魔法剣とやらの魔力では、
 其方そなたが希望する魔石は精製出来ん』
「精霊石の欠片を通す事で不純物が混ざる・・・という事ですか?」
『肯定。希望の魔石ならば込められるだけの魔力で一旦低品質を精製し、
 それに魔法を込め濃度を上げた魔力でさらに品質を高めた魔石を作るといった行程が必要』

 フロスト・ドラゴンの話からすれば、
 俺達が当初目的としていた内容である、
 魔法剣で濃度を高めた魔力から魔石を精製してもらうだけで、
 高濃度魔力が扱えると思っていたのだが、
 残念な事に繰り返し精錬を行わなければ希望に値する魔石は出来ないらしい。

『それってさぁ~、時間掛かるよねぇ~?』
『肯定。大きさは我やブルー・ドラゴンフリューアネイシアであれば割と自由を利かせる事は可能。
 しかし、濃度については時間が掛かる』
「ご協力はいただけるのですか?」
『助力を頂いて何も返礼をしないとはいかぬ。
 我らの排出物を所望するならやぶさかでは無い』

 排出物という言い方は止めて頂きたい。

「協力に感謝します。
 ただ、ずっとこちらに居るわけにもいきません」
『あと二週間くらいでまた魔神族と戦わないといけないの~』
『・・・ひとまずこちらでも手を考えておく。
 ひとまずは我が精製するつもりであるが、
 明日の朝までは自身の回復を優先しなければ精製をする事が出来ぬ』
「魔力が満タン状態の時に吸収した魔力を魔石とするのですね?」
『肯定』

 それなら精製開始が明日になるのも仕方が無いか。
 本当に数日はこの場から動く事が出来ないかも知れない。
 セリア先生との合流も近いから、
 出来ればあっちの移動距離も稼いでおきたいし、
 教国で聖女クレアや勇者メリオ達と相談もしておきたい。

 調べ事も訓練もあれやこれや色々とやっておきたい事が多すぎて、
 正直じっと待つなんで勿体ないのだが、
 焦れていても詮無い事か?
 どうせなら教国の図書室で休日を過ごしたいと思っていたんだけどなぁ・・・。


 * * * * *
「「「うっま・・・」」」
「当たり前だろ。うちの次女が味付けしてるんだぞ」
『むふ~ん!』
『もう・・・お父さまもお姉さまも褒めすぎです///』
『そんなに照れるほど褒めたです?』

 ノイが岩の隆起させて確保した就寝部分の外側でたき火を囲んで、
 クーと女性陣で作り上げた料理の品々を堪能し始めた直後にセーバーを筆頭に男性三名から声が漏れる。

「モエアさんはほとんど参加していないとして、
 アネスさんがほとんど作業を担当してんですよね?」
「そぉねぇ。クーデルカちゃんは刃物を握れないし、
 モエアは役に立たないし確かにほとんどは私がしたんだけど、
 味付けだけはクーデルカちゃんは担当したのよ」
『クーデルカはすごいですわね~』
『ありがとうございます、リュースィさん』

 マリエルの軽い報告ではすごく助けられたと聞いていたが、
 弓使いのモエアは戦闘以外はからっきしらしい。
 俺の隣に座るクーデルカは周囲の年上からお褒めの言葉を頂きとても嬉しそうで良かった。

「小さいのに香草の扱いがとても上手で、
 お肉や柔らかくなって味付けがしっかりするし、
 野菜も新鮮な感触が残ったままの料理に仕上がるし、
 刃物さえ扱えるようになればすぐに私なんて超えて行っちゃうレベルよ」
「英才教育を行っているとか聞いてたけど、正直やり過ぎじゃないのか?」
「クーの侍女としての師匠はメリーだからな。
 その辺の匙加減さじかげんも任せてる」
「魔法攻撃役に後方支援役に防御役・・・、あぁ近接攻撃役も居ましたね。
 クランリーダーの精霊も役割分担出来ていてすごいですね」
「進化をさせる際に運用を考えざるを得ない部分もあったんだ。
 ズズズー。うん、いつもの味だ」

 いつもこの味なのか。
 そんな目でみてくるセーバーPTを他所に俺達は平然とした顔で食事を進める。
 羨んだところで俺達ではどうしようもないのは事実で、
 結局のところPTメンバーの誰かが覚えない限りコンスタントにこの味を食す事は叶わないのだから。

 その点うちはメリーとクーの二人がこの味を出せるので、
 アルシェと俺で別行動をし尚且つ別々の場所で食事をする事になっても美味い飯にありつける。
 これは戦場では大変に士気を保つには役立つ。

 まぁこの世界に来るまでは飯を食わねば戦は出来ぬと言葉では理解をしていても、
 実際に身体で理解したのは戦闘でボロボロになるまで活動したりと肉体を虐め始めてからだしな。

『お風呂はこちら~』
「風呂も入れるのか」
「まぁ、ドラム缶風呂だけどな。
 普段はここまで配慮しないで水風呂なんだぞ、感謝しろよ」
『先に女性を入れますので亜空間を開きます。
 アネスさんとモエアさんはPTを解消して二人だけのPTになってください』

 覗き防止もいつもの作業だ。
 水はアクアが用意し、湯を沸かすところまでは面倒をみて、
 以降はクーの[安全地帯セーフティーフィールド]で対処する。

「ディテウスは残念そうだな」
「あ、いえ、そんなことはありませんよ」

 ふーん。女に強く興味の出るお年頃なのね。
 俺の様に興味はあっても長年に渡り表に出さない訓練を行えば、
 周囲の女性からは枯れているとか浮き世離れしているとか言われ始めしまうからな。
 ほどほどに興味を示すと良い。

「フロスト・ドラゴン、夜の番はどうしたらいいか意見はありますか?」
『ブルー・ドラゴンの件もあり我らは交代で番をする。
 ついでに其方達の番も担おう』
「ありがとうございます。ではお願いします」

 龍へと向けていた身体をぐるりと反転させ男性陣の元へと戻り、
 Vサインを持って楽が出来ることを伝えると、
 なんだか失礼な事に微妙な顔をしておられる。

「どした?」
「・・・なんでもない」
「・・・右に同じく」
「・・・これくらいにならないとクランリーダーは務まらないんですねぇ」
『マスターですからね。こんなもんです』

 目の前に立つ三人はため息交じりに何でも無いと口にし、
 肩口にトカゲ姿で掴まるノイに到ってはよくわからない事を口走っている。

「楽が出来るんだしいいじゃん?
 使える者は親でも使えって言うだろ?」
「聞いた事ねぇな」
「さいでっか」

 これは俺の世界の言葉だったか・・・。
 なんだかんだで1年過ごしながらこの世界の知識を詰めていくと、
 どちらがどちらの情報だったか分からなくなるときがあるんだよなぁ。

「明日も一日暇はあるし、予定を考えておいた方がいいぞ」

 そんなこんなで龍の巣の夜は過ぎていった・・・。


 * * * * *
 翌日。
 フロスト・ドラゴンの1体が身体を最も小さくすると、
 肩の上に乗せられるくらいの大きさとなり、
 実際に頭の上には前足と頭、そして肩には後ろ足を乗っける肩車スタイルで過ごす事となった。

『そこは!アクア達の場所だぞぉ~!』
『『そうだ!そうだ!』』
『他人に奪われて良い場所では無い~!』
『『そうだ!そうだ!』』

 小さくなってからすぐに乗り始めたのだが、
 その姿を発見した姉妹がアクアを筆頭にデモ活動を始め、
 正直面倒だわ五月蠅いだわ落ち着いて考えをまとめる事も出来やしない。

 べつにお前達の特等席でも無いってのに・・・。
 いつも高いところを目指した結果頭や肩を定位置にしていただけだろうが。

「とりあえず、原石になる魔石を作る為にはこうしなきゃならないんだよ!
 ソレが出来れば以降は肩車をする必要はないんだから、
 お前等暇ならその辺で遊んでろ!」
『ぶ~!ますたーのアホ~!』
「なんだと!?」
『散開~!』
『『わー!』』

 張り詰めた戦場の空気から解放されたからか、
 アクアの空気感に中てられてクーだけじゃなくノイにも悪影響が出ている気がする・・・。

「おい、宗八そうはち
 俺達は遊んでるってわけにもいかないしどうすりゃ良い?」

 子供達を散らしたら、
 今度はセーバーが仲間の元を離れて俺に指示を仰ぎに来た。
 正直に言えば一晩経って魔神族からの追撃がなかったし、
 彼らもゼノウ達に続いて帰らせてもいいかなと考えていた。
 しかし、せめてブルー・ドラゴンとの対話が終わるまでは護衛として残って頂きたくもあった。

「メンバーのしたい事とかは?」
「今のところは訓練くらいかな・・・。
 ゼノウPTに比べると魔法関連は劣っているし、
 昨夜お前が説明した通りなら今のままだと俺達は足手まといにしかならない」

 昨夜夕食を食べながら今回の戦闘で判明したことをセーバー達には伝えていた。
 魔神族に効果を見せたのは魔石の欠片を利用した高濃度魔力攻撃。
 いま扱えているのは全て魔石の欠片ありきではあるのだが、
 今後は研究も重ねて発動できる幅を増やしていく算段である事までは語った。

 彼らはリーダーであるセーバー以外、
 無精との契約しか行っていない上に魔法剣の指導も受けていない。
 魔法の濃度を劇的に上げるスキルも持ち合わせていない為、
 戦力として数えるにはまた下方修正されてしまった形であった。

「まずは方向性があるに越した事は無い。
 ゼノウPTで言えば、ゼノウは闇に、ライナーは雷に、フランザは氷に、
 トワインは満遍なくといった特色を選んでいる」
「属性はバラけた方が良いのか?」
「今後、魔神族関連の作戦が無ければ風の国で諜報員として動いてもらおうと考えているから、
 国の専属PTとしてって事なら広告塔にも出来るし風一辺倒でもかまわない」
「確かにそうなれば風の国の冒険者と名乗るに相応しくはなるわな。
 わかった、ちょっと相談してくる」

 そう言ってセーバーは仲間の元へと戻っていく。
 バラければ汎用性は高まるが突破力が失われ、
 属性を一色にすれば突破力が高まる代わりに汎用性が失われる。
 運用についてはどちらにしろ人手不足なうえ、
 魔神族の情報もオベリスクの情報も瘴気の情報も何もかもがまだまだ足りないので、
 どっちが正解なんて今の段階で分かる物では無い。
 だというのに、動き始めなければいざという時に役に立たなくなってしまう。

「異世界って考える事多過ぎだな・・・」
『《お魚さんソード!》』
『《虚空暗器こくうあんき!》』

 考えるのが面倒になってきた矢先、
 先ほど追っ払った娘達の詠唱が聞こえそちらに視線を移すと、
 小さな魚が刀身となったヘンテコな剣を握り構えるアクアの正面に、
 漆黒の双剣を構えたクーデルカが対峙し合っており、
 その中心付近にノイがちょこんと体育座りで座っていた。

 ブルー・ドラゴンが目覚めるまで俺も暇なので、
 ノイが居るところまで移動して後ろから声を掛けてみた。

『やああああ~!』
『はあああああ!』
「二人は何を始めたんだ?」
『あ、マスター。自分達が扱える得物が用意出来たから模擬戦を始めたんです』
「ふぅ~ん」

 肩にはフロスト・ドラゴンが乗っかっている為、
 ノイをすくい上げると胡座あぐらの上に乗っける。
 魔法での模擬戦であれば大なり小なり毎日行っていることなので、
 目が惹かれるものではなかったのだが、
 ああやって武器を手に近接戦闘の模擬戦をするというのは初めての試みであった。

 キンキンキンと一丁前の音はするものの、
 動き自体はそこまで速い物ではなくどちらかといえば模擬戦よりは動き一つ一つを確認しながら行う組み手のようだ。

『体格差もありますし、魔法の攻撃性からもアクアが勝ってしまうです』
「クーはそろそろ加階かかい出来ると思うから追いつくのはすぐさ。
 ノイなら聖壁の欠片モノリスで全部防げるだろ」
『そうですね、負けないですけど勝てもしないです』
「その間に俺達が倒す準備を進めるんだからそれでいいんだよ」
『役割は理解してるです』

 淡々とした口調で答えるノイの頭を撫でるが、
 アクアやクーのように素直では無い娘なので、
 ただただリアクションはせずに撫でられ続けている。

「アクアは考える事が苦手だからか、
 とりあえず必要とされている戦力として自分を磨く事を選んだか・・・」

 アクアの持つお魚さんソードは身体に合った小ささをしているものの、
 柄の部分は両手持ちが出来る長さに仕上がっており、
 力を入れるべき場面では両手持ち。
 捌きなどでの様子見は片手持ち。
 攻勢に出るときは片手持ち+魔法による射撃という三パターンの戦闘方法を選んだ。

 まぁ今はまだ子供の遊びレベルのチャンバラでも、
 今後身体が成長すれば見違えるに違いない。
 だが、親心から言えば、
 そちらに労力を割くのもありがたいが、
 自分の道を早めに選んでももらいたいところだ。

『ますたー、なんか違う感じがする~』
『クーの動きにもアドバイスがあればお願いします』

 しばらくノイと一緒に眺めていたら、
 自分たちではわからない感覚のズレや意見を聞きにポテポテと愛らしい足音が聞こえてきそうな歩みで俺達の元へとやってきた。

「アクアのGUNーKATANAガンカタナ?ガンブレード?のスタイル時、
 魔法を使うイメージがまだ全然出来ていないな」
『ますたーは最終的には制御力で魔法を使いたいんだよね~?
 制御力は練習してたけどイメージはよくわかってなかった~』
「多分いまの位階程度じゃ俺が持つイメージ通りの魔法は使えないと思うけど、
 威力は無くとも見た目だけならそれっぽくはなるかもな」
『じゃあシンクロで教えて~』
「はいはい」

「『シンクロ』」
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