特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -51話-[黒い欠片と黒い何かと黒い誰か③]

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 ウォルベズは蜘蛛の姿を経由してから今のラクスアースマンへと加階したとの事。
 精霊が動物の姿を取る場合は基本的にオリジナルになるので種類とか細かくは分からないので、
 今まさに目の前で変身したウォルベズの姿は体高が俺の腰くらいの大きさの岩蜘蛛。

 ゴツゴツと頑丈な体と節足が8本。
 なのに歩いても足音や岩同士がぶつかる音もせずにタルテューフォの背に登っていく様子は、
 捕食しようとしているモンスターと襲われる哀れな少女にしか見えない。

「歩けるか?」
「軽くはないけど走るのに支障はないのだ」
『では、よろしく頼む』

 出来る限りタルの走行の邪魔にならない様になのか肩や胸元や腰を中心に足を絡めるウォルベズだが、
 健康優良児のタルテューフォは身長の割に胸部装甲が著しい成長をしているため、
 すげぇ強調されて流石に普段意識していない俺も目を逸らさずにはいられない。

「じゃ、じゃあ行くか。
 フリューネもよろしくな」
宗八そうはちを背に乗せることも少ないし今回の役得を楽しむことにするよ』

 役得とは何だろうか。
 まさかコイツ…俺に性的興奮を覚えていたりしないだろうな。
 姿形の違うドワーフも孕ます竜の仲間なのだから、
 ノンケでも構わずに食っちまうくらいはするんじゃないか?

『また失礼な事を考えてるね』
「考えてる。いって!」

 前回はダメージにならない程度の尻尾叩きだったのに、
 今回は余程心外だったのか思いっきり頭突きを鳩尾にかましてきやがった。
 そのまま傷心を癒やせと頭をすりすりしてくるので撫で繰り回してやればこの通り。

『グルルルルル♪』

 やっぱり…。
 気の向く気のままな気性、俺の肩とかに登ろうとして甘える時は擦り付いてくる。
 これは竜の姿をした猫なんだ。きっとそうだ。
 俺の元の世界の猫たちもやがては竜になるんだろう。
 俺がこっちに来る前で確か地球の余命は5世紀程度だったはずだし、
 竜はコロニーか火星で産まれそうだな。

「よっと。じゃあ出発しようか」
「おー!なのだー!」


 * * * * *
 ウォルベズの説明からいくつかの怪しい洞穴の場所を把握してから飛び出して数十分。
 5つの候補地を廻ってみたが特におかしい事象を確認するには至らなかった。
 ただし、見たことの無い黒い何かの欠片がところどころに落ちていて、
 それがウォルベズの案内した場所全てで必ず見つかるという気になる事象は発生していた。

『知らない石だ。というより、可能性が高いのは魔物の素材か?』
「あのさぁ…。指示されなかったとはいえ、
 あからさまにこれだけ落ちてるんだから先に調べたり出来たんじゃないの?」
『う”ぅ”…、面目ない……』
「本当に地形[だけ]は完璧に把握してたよな。
 これが何かわかってれば何が居るか警戒も出来るのになぁ~」
『すまない……』

 屈強なデカイ蜘蛛が落ち込んだ声を発しているというのに、
 表情も本人は申し訳ないという顔をしているのかもしれないが人間様にはわからんな。
 欠片の見た目は長時間放置された結果、
 元は鈍い輝きを持っていただろうに劣化が進んで角は丸みすら帯びている。

 ・色は黒。ってか紫っぽさもある。
 ・魔力的な流れは完全に失われている。
 ・魔物の死体や骨などは見当たらない。

 モンスターをハントするゲーム的に言えば、
 捨てられた巣に残った自然に剥がれた鱗を見つけた感じ。
 情報量も少なくて調べる意欲が全然沸いて来ねぇ。

「タルもわかんないか?」
「わかんない。匂いも全然残ってないよ」

 ってことは、やっぱりここに居た何かはすでに何年も前に離れているか…。
 でも妙に気になるしギルドの力を頼ってアインスさんに今度渡しておこう。
 そう考えて数個インベントリに放り込むと次はいよいよ精霊使いが潜む場所の調査に移る。

「オベリスクは見かけなかったけど、皆は体調不良は起こしてないか?」
『問題ない』
『大丈夫です』
『『良好~!』』
『特には変化はないね』

 俺はもちろん体調不良なんぞは感じていないが、
 ここに居るメンバーはそれぞれが人ではないから何か不調があれば警戒をする材料にもなる。
 元気に声を上げたのは精霊と竜。
 つまり予定通り1匹は体調不良に陥っているわけだ。

「タル……ステータス下がってる…」
「どの程度か把握出来てるか?」
「下がった事ないからわかんないけど、
 すっっごく下がってて元気が出ないよぉ~……」

 ここに着くまでに徐々に元気がなくなって来ていたのは気付いていたけど、
 負けず嫌いなタルテューフォは頑張って強がって、
 最後の候補地に向かう道中でウォルベズに押し潰されて限界を迎えてしまった。
 あの重そうなウォルベズに圧し掛かられても流石に怪我するような肉体強度をしてはいなくても力が入らず自力では抜け出すことが出来なかった。

 仕方ないので俺の袖を握ってとぼとぼ歩くタルテューフォを連れ立ってここまで辿り着いたわけだが、
 現状的には魔神族の介入の証拠や気配が何もない事だけが脳内で引っかかってる。
 まさか魔神族と魔王以外に脅威が発生しているとかだと、
 それは俺の仕事ではないので人生を台無しにすると理解した上で異世界からそれ用の勇者とか召喚したくなっちゃうわ。

 フラグタワー!

 内心で愚痴っただけなのにフラグ塔を建てた気がし無くも無く無くも無い。
 最近した悪いことなんて娘の頬とお尻をむしゃぶりつくして真っ赤にした程度なんだ。
 罰が上がるとしても精々が足の小指をどっかの角にぶつければ相殺される程度。
 そう、その程度だ。大丈夫。そういうのは勇者の仕事。

『あれだな』
「Wow…Oh, My Gad……」

 エルダードワーフに教えてもらった精霊使いの潜伏先の洞穴。
 その入口が一望できる丘の上に辿り着いた先で俺たちが見たものは、
 黒いウィルオウィスプみたいな黒いスライムみたいな謎の生き物が洞穴の入り口付近にざっと見100以上が群れになってゴロゴロしている姿だった。
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