特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -54話-[|瘴鬼《デーモン》と瘴気精霊①]

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 とりあえず、仮称で瘴鬼デーモンと名付けておこう。
 ここまで観察した限りでは腕が届く範囲内に[瘴気の腕]が発生するっぽく、
 浮遊は可能で海の上でも活動は出来そうだけど空を飛んだりは出来ない。
 代わりに身体能力で無理やり跳ねて戦闘をすることは可能。

「ふんっ!」

 巨腕が届く範囲は10mほど。
 伸ばした時点でバランスが悪くなる所為か、
 瘴鬼デーモンは別の攻撃方法で追撃を行うことは一切ない。
 その為、資料用に今まで見かけた小さな欠片ではなく大粒が欲しかったのでギリギリで攻撃を誘い、
 剣で爪部分を両断する事に成功した。

 瘴鬼デーモンも痛がるような素振りは見せず、
 それこそ気にした様子も無いから四肢という判定ではないのだろう。
 爪なら自然に伸びるし多少暴力的に採取しても良心に呵責は無い。
 落ちた爪は瘴気に変わって消える事もなく、
 人間の爪に戻ることも無かったから今は放置して後程回収することにしよう。

「《来よ!クラウソラス!》」

 二刀流はまだまだ実践投入できるわけでは無いけれど、
 魔法剣だけの為に一時的に出すのは、まぁ…致し方無しって感じ。
 というか、前までは要求ステータス不足で出来なかったから練習もしていなかったんだが、
 やっぱり慣れないから装備するにしても小盾程度が個人的には良いな。

「VAAAAAAAAAAAAAAッ!!」
「《星光せいこうかがやけ!星光天裂破せいこうてんれつはっ!》」

 本来の瘴鬼デーモンや精霊使いならもう少し賢い戦いが出来ただろうに、
 人間部分が残る中途半端な現状では[ヤマノサチ]より知能は低いと判断せざるを得ない。
 巨腕範囲ギリギリで焦らしてやればすぐに腕を伸ばしてきて、
 どうせ届かない巨腕を眺めつつその隙に魔法剣で浄化を試みる。

「GAッ!? AAAAAAAAAAアアアアアアアア………!!」

 天から光のカーテンが降り注ぎ、
 瘴鬼デーモンを包み込むと光の柱の中で彼は効いているような声を上げた。
 これで元に戻ればどれだけ楽か。ただ、やはり他の上位精霊とやらが出てこない事に違和感を覚える。

 獣じみた叫び声を響いた後に続いた声音に変化が起こり、
 襲い掛かり始めの人間味が戻っている。
 しかし、光の柱がその効果時間を過ぎてゆっくりと消え失せた先に居たのは特に見た目に変化のない瘴鬼デーモン

「足止め程度の効果しかないか。
 瘴気モンスターなら弱点になるから撃ってみたけど浄化されて人に戻るわけでもない……」
『でも、キョロキョロしてますよ。
 フィアーノ…さんでしたか。あの土精を探しているんじゃないですか?』

 フィアーノとやらは現在ステータスが激減しているタルテューフォを相手に互角の戦いをしている。
 いつの間にか相手のハンマーに対し、タルは両手斧を握って撃ち合っていた。
 上位精霊が造ったハンマー相手に負かされない武器を造り出すとは、流石は俺の愛娘よ。

「外側に変化があるのに浄化しても解除されないなら、
 何かが内側に寄生しているって事も考えられる。
 精霊なら精神生命体だし瘴気関連なら隷霊れいれいのマグニの片鱗は持ち合わせているかもな」
『肉体ではなく精神の浄化? どうする?』
「内部に寄生しているって事なら多くの場合、吐き出させる方法が一般的だな。
 最悪アクアを呼んで水をガブ飲みさせてから一気に尻から噴出を繰り返し体内を綺麗に掃除する」

 酒や毒と同じく薄めて出すを繰り返すこと[正常]に戻るかもしれない。
 まぁ施術する見た目が酷いからそこまでやりたくはない。娘にさせるという点も親としては嫌だ。
 とりあえず今できる手札は肉弾戦で腹を強打し続けて嘔吐させるしかない。
 しばらくキョロキョロと挙動不審だった瘴鬼デーモンも、
 再びこちらへ敵意を向けて突っ込んでくるのに合わせてこちらからも嘔吐させるために足を前に出す。

「ふっ!っらあああ!!」

 大振りで力任せな一撃を躱しつつ懐に入り込み、
 制御力で風を巻き込みながら上向きに腹部を殴打してみるも流石の重量に全く持ち上がらない。
 その隙に瘴鬼デーモンが多少無茶な体勢だろうに、
 足を蹴り上げ飛び膝蹴りを敢行してくるのを剣で防ぎつつその威力に乗って一回転ついでに肩口を蹴り落とす。

「《極地嵐脚ストームインパクト!》」

 ニルが一緒でなくとも精霊使いの熟練度が上がって個人運用出来るようになった蹴り技は、
 威力こそ落ちてはいるものの瘴鬼デーモンを仰向けに地面へ転がすことに成功した。

『《フレイムチェーンバインド!》』
『《ライトリングバインド!》』
「《エリアルジャンプ》」

 瘴鬼デーモンが転がった瞬間、すぐさま反応した子供たちがそれぞれバインドを発動して、
 拘束力不足を補い合いながら一時的に動きを封じてくれた隙に空へ自らを打ち上げる。

「《エアキックターン》」

 空高く舞い上がった俺は、
 空中で体勢を整えると風の足場を発動して瘴鬼デーモンに向けてさらに加速しつつ切り返し。

「《極地嵐脚ストームインパクトっ!》スイシーダ!」

 空から地面へ、瘴鬼デーモンに向かう俺は、
 己の身体を回転させて威力を高めた踵落としを瘴鬼デーモンの土手っ腹に叩きこんだ。
 少し地面が割れて瘴鬼デーモンの身体がめり込む程度の威力しか出なかったものの、
 効果はあったらしく瘴鬼デーモンは苦しそうに声を漏らし震えている。

「GAAAA…GUッ!! GAAAAAアアアアアアアア……っ!
 ウウウウウ…ウボッ! ぐぅぅ…あああああああああああっ!!!」

 徐々に獣じみた声から人の声に聞こえるようになっていく苦悶に満ちた声音を聞きながら、
 警戒を解くこともなくただただ見守り続ける。
 顔の部分は人間のままなので死ぬ間際に苦しむ表情ってのはこういうものなのかと目を逸らしたくなる気持ちを抑え、
 その後に続く状況の観察に努めるとついに限界を迎えたように天を仰いだ瘴鬼デーモンの口から何かが溢れ出した。

「おごっ!おぉ……っ!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」

 それは黒い気体に見えた為ただの瘴気かと思っていたけれど、
 ひと塊だったそれは瘴鬼デーモンから切り離されると3つに分かれ、
 それぞれが瘴鬼デーモンよりも小さい姿を取り始めた。

『ぬし様、瘴鬼デーモンの身体が少し萎んでいる様に見えますよ』
「おそらくアレが巣食って居たから体に影響が出たってところだろう。
 戦闘中に人の意思は感じなかったし防衛本能に似た行動だったのかもしれないな」

 ベルの報告通り確かに少々体が小さくなり、
 顔に出ていた影響も後退したのか角などは綺麗に消え去っていた。
 彼を助ける方法はこれが正解なのだろうと仮定するとして、
 どの程度今の彼は防衛本能に抗う事が出来るのだろうか?

下位瘴鬼レッサーデーモンなのか瘴気精霊なのか…。
 どちらにしろ4体相手は面倒だなぁ」
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