特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -61話-[剣聖の軌跡①]

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 ソニューザやトーヴィルを先頭に下山を始めるエルダードワーフに混ざって、
 俺の足場の悪い岩場をゆっくり降りていく。

「いやいや、ちょっと待ってお二人さん」
「なんだ?」
「登って来るのに結構時間が掛かってたけど、
 今から下山ってどのくらい掛かるのさ」
「2時間くらいかな?」
「だな」

 春先だからまだまだ陽が沈むのは結構早い。
 時間帯で言えばすでに16時を超えて、ここから一気に暗くなる事は自明の理。
 頼りになるメンバーが揃っているとはいえ子供たちを知らぬ土地でさらに2時間も待たせては、
 合流する頃には真っ暗闇になっている事を考えると出来れば急いで下山し合流したい。
 上半身裸のおっさんも居るしね。

「下山時間が惜しいから魔法で子供たちの元へ送っていい?」
「子供たちはヤマノサチと一緒だったな。どの辺りに居るんだ?」
「村の近くだけどまぁ20分以内に帰ることが出来るよ」
「俺たちはあまり魔法に詳しくはないからな、とりあえず危険が無いならいいんじゃないか?
 信用しないわけじゃないが、流石に発動させる際に俺たちは離れておくぞ?」

 出会ったばかりでそこまで信用しろとはさすがに言わないさ。
 俺は肩を竦める事でご自由にと答え集団から少し離れた場所へ向かい、
 鳥居マークをささっと描きあげて鍵となる剣を呼び出す。

「《来よ、ガルヴォルン》《解錠アンロック》」

 ガチャっとな。

「おら、繋がったぞ。さっさと飯の準備してくれや」

 ゲート向こうは周囲とは別の景色が浮かんでおり、
 それこそ暗くなってきた空と違って明かりが目立つようになっている彼らの村が少し遠くに見えるくらいだ。
 その手前には向こうからこちらを覗き込むタルテューフォのアホ面と、
 ヤマノサチたる彼女から香る芳醇で美味しそうな良い匂いが出迎えてくれた結果、
 全員お腹が合唱することで笑いが起こり俺たちは村への帰路に着いたのだった。


 * * * * *
「改めてこちらが漂着したところを助けられたのに恩を仇で返した、セプテマ=ティターン=テリマーズ氏です」
「この度は迷惑をおかけして申し訳なかった。
 自分に出来る事であれば何でも償わせていただく所存だ」

 俺の紹介に深く頭を下げて代表のソニューザも含めたエルダードワーフの面々に謝罪をする剣聖けんせい

「で、エルダードワーフの村長代理で幼馴染彼女も居る、ソニューザです」
「出会って一日で人の色恋に口出しするとロクな目に合わないぞ。
 詳しい事情は夜ご飯を食べながらにしましょう、セプテマさん」
「ありがたく」

 武士然とした態度で殊勝といえよう礼をしつつ弱った身体も理解したうえで飯はいただく。
 今回のセプテマ氏の[しくじり]がどの様なシナリオだったのか、
 それを聞いたうえで彼らがどのような断罪を下すのか……。
 そこに多少絡んだとはいえ部外者の俺が口を出すわけにもいかない。

 そんな仲介人業務を挟んだのが村の外で、今は村に全員を引き連れて戻ってきている。
 まぁ被害は収穫物の品質低下などに留まったし、
 自警団の連中も軽い怪我を負う程度だったから酷い事にはならないだろう。
 その後、剣聖けんせいを拾って帰れば使える手駒が増えるんだからここは黙って見守っておこう。

「ご飯が出来ましたよ」
「あ、手伝います。
 タルも自分の大皿くらい手伝え」
「はぁーい」

 料理を作ってくれたのはソニューザのお母さん。
 現村長は体が弱っているので別の家でゆっくりしつつソニューザへ村長譲渡の準備を進めていたらしい。
 今は村長が療養している別宅にお邪魔している立場なので、
 お母さんとヘルパーさんが作ってくれた夕飯のご相伴に預かる為、
 出来るお手伝いは率先して行うべきなのだ。

 俺たちとは別に用意されたお詫び飯がテンコ盛りになった大皿を嬉々として運ぶタルとすれ違いながら、
 お母さんから手渡される料理を受け取ってはリビングに運ぶ手順を繰り返す。

「外から来訪された方々を歓迎する。
 我らエルダードワーフの振舞える全力を持って用意した料理の品々。たんと召し上がれ」
「ありがとうございます。ありがたくいただきます」
『『『『「いただきます!」』』』』

 初顔合わせをした村長はソニューザの説明だけで俺たちを暖かく迎えてくれ、
 食事の音頭でもタルやセプテマ氏にも友好的な対応をしてくれる心の広さを持っていた。
 手を合わせて俺と共に食事を始める声を重ねるのは、
 タルとノイとアニマに加えて村に戻って加階をさっと済ませたフラムとベルも受肉した為食事を楽しめるようになったのだ。

「美味しいか?」
『んん~!これが食事!美味しいですうううう!』
『ばっちぐー』

 俺の言葉が末っ子’sに宛てられた物だと察したノイとタルはそのまま舌鼓したつづみを打ち、
 末っ子達は初めての食事にテンションが上がって興奮気味に感想を各々口にした。

「ヤマノサチ殿、我らの料理はお気に召しましたかな?」
「うん!美味しいんだよ!
 味も濃すぎず好みの薄味なんだよ!」
「そうですか。それは良かった」

 村を始めて訪問した際の不手際を事前にソニューザに説精されていた村長と奥さんは、
 タルの感想に嬉しそうに相好を崩しホッと息を付いている。

 タルテューフォの種族[ヤマノサチ]は、
 山の奥地で草や木の実やキノコなどのそれこそ[山の幸]を毎日食べている為か、
 あまり濃い味の食べ物は美味しく食べられないとフォレストトーレで事後処理している間に聞いていた。
 また、体臭も人間や普通の魔物とは違って何とも言えない美味しい芳香が漂うので、
 俺には今嗅いでいる香りがタルから匂うのか料理から匂うのかちょっと判断が付かない。

「さて、それではそろそろ話も伺い始めましょうか」

 ソニューザのその言葉を皮切りに俺たちも口へ運ぶ食事量を抑え、
 話に耳を傾ける準備を進める。
 会話を振られたセプテマ氏は食事を完全に止めて、
 姿勢を正すと再度頭を深く下げた後に口を開き始めた。

「私が村で保護され精霊と共に村を出てからの話になりますが……」
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