特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -62話-[剣聖の軌跡②]

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「私が村で保護され精霊と共に村を出てからの話になりますが……」

 語り始めたセプテマ氏の導入部は俺にとってはどうでもいい話だったから、
 タルだけに用意されていた特別な料理に手を伸ばして一口勝手に分けてもらう。
 タルの不満そうな顔をさらっと無視して味を楽しむ。うん、美味い!

「住処はファレーノ、契約精霊に用意してもらい更なる研鑽を積むために修行を始めました」

 俺の美味しそうな様子を見て子供たちが雛鳥の様に口を開けてこちらを見つめていた為、
 タルに更なる催促を促すために熱視線を送り始める。
 その俺を真似して子供たちもタルに視線を送り始めると、
 流石にタルも独り占めに罪悪感が出たのか空き皿に1人分を装って代表して俺に渡してくれた。
 ただ、顔つきはやはり不満げだけど…。

 野生生物たる魔物である彼女は、
 自身で獲得した獲物は家族であろうと決して分ける事を良しとしない。
 餌への執着は熊と並ぶと睨んでいる。
 一度渡されたご飯は急いで掻き込んで取られないようにする癖が未だに抜けていないのはその証左だ。

 今回は自分の力で得たご飯ではないうえに、
 特別扱いで大盛大皿で食べている横で小皿で食べている自分より幼い子供の視線は流石に気が咎めたのかな?
 受け取った小皿を一度置いてから感謝の言葉と共に頭を撫でてご機嫌伺いを立てておこう。

「ありがとう」
「もうあげないんだよ!」

 もう、貰えない食事を子供たちに分けて残った物を頂く。
 これも薬草を使っているのか良い香りと味だな。美味しい。

「修行の合間にドワーフの方々が見回っていない島の見回りを巡回するようになりました。
 自己満足ですが、快く住まわせていただけた恩返しのつもりで始めた事でしたが、
 魔物がそこまで多くなく管理がされている様子だったので基本的な食事は釣りで繋いでいました。
 幸い人慣れしていない魚ばかりだったので、木で作った釣り竿でも簡単に釣ることが出来ましたし……」

 へぇ。今度休日にクーを連れて釣りをしに来ようかな。
 影を編んで盾や仲間の受け止めに使用する[編盾あみたて]を投げ網に利用する手段をこの間の休日に披露してくれたのは記憶に新しい。

「住処は同じ場所なので1日で行動できる範囲を探りつつ、
 見回り範囲を広げる日々を続けて1年と半年ほどでしょうか…。
 空間にヒビのような物が浮かぶのを見かけるようになりました」
「ヒビ?我々の見回り範囲ではそのような報告は聞いていませんが……」
「意識していなければ本当に気づかないレベルのヒビです。
 私自身も偶々見つけたことで意識してその後も時々ですが見かけるようになりました」

 どこかで聞いた話だなと思ったけど、
 亜空間が発生し始めた頃合いだったのかな?
 ポルタフォールの水源にあった亜空間はカティナが塞いでくれたが、
 その際に聞いた話では小さな亀裂などは原因があればそれなりの頻度で発生するけれど、
 ほとんどは誰かが気付く前に自然に治癒されてしまうらしい。

「ですが害は特になく翌日には消えていましたし、
 頻度としても数週間で見かけたり2カ月見ない時もありましたが、
 そのヒビは徐々に大きく広がっていきました」

 エルダードワーフの皆様がセプテマ氏の話に耳を傾け、食事の手は止まる。
 響くのは暖を取る焚火の音と俺たちがかまわず食べる食器の音だけ。
 彼らにとってはシリアスな展開に戦々恐々な語りなのかもしれないけれど、
 残念ながら俺たちにとっては悲しいかな、割かし日常と言っても良いシリアス内容なのだ。
 食事を堪能しながらちゃんと話を聞いて理解するなんぞ朝飯前よ。

「確か季節が二廻りした頃だったか…。
 予想はしていましたが空間の欠片が落ちている日がついに来たのです。
 空間の向こうからは瘴気が漏れて来ているとファレーノから聞かされましたが、
 私は欠片にも向こうの空間にも触る事が出来なかったので見守ることしか出来ませんでした」
「では、その瘴気が原因で?」
「いえ、漏れ出る量は少なかったんです。
 ファレーノ曰く、この程度ならば空気に溶けて悪影響は発生しないと。
 確かにすぐに薄まって空間も巻き戻しのように勝手に修復されました」

 指で欠片を摘まむようにして欠片の大きさを俺たちに伝えてくれるセプテマ氏。
 合いの手は全てソニューザや村長ご家族に任せっぱなしで話が進む。
 飯も進む。

「以降は徐々に徐々に落ちる欠片の数も漏れてくる瘴気の量も増え、
 数か月もすればこのくらいの球体の姿をした瘴気の精霊が転がり落ちてきました。
 その時はファレーノの判断も無害。どちらにしろ私に彼らをどうにかする力はありませんでした」
「おそらく貴方が放置したその精霊を我々も複数体確認している。
 今は百に近い数に膨れ上がっていますよ」
「何ですって!? 今はどこに居るんですか!?」
「どこって……宗八そうはちはそこに行ったんだろ?」

 そうだった。俺が移動させたんだった。
 でも、いま口にいっぱい入ってて喋れんのよ。

『パパの代わりに喋ります!
 セプテマ氏とファレーノと戦った場所から少し離れた位置に移動させました。
 無精の瘴気版って感じでしたし同じく無害と判断したので放置してますよ』
「アレは成長するのだ!」

 幼い故にあまり食べられないので早々に食事を終え、
 俺の膝で食休みをしていたベルに念話で俺の意思を伝えて代わりに喋ってもらう裏技を使用。
 この意外な展開にセプテマ氏はツッコミも入れずに注意喚起を焦りの浮かぶ声音で発してきたが…。

『でしょうね。
 1歳児くらいの瘴気精霊になるって事で間違いないですか?』
「その通りだ!あれに成長すれば急に攻撃的になって体を乗っ取られるのだぞ!」
『それを対処して救い出した人が目の前に居るでしょうが。そう!ベル達の自慢のパパです!』
「んぐっ。ベル、流石に恥ずかしいからやめなさい。
 セプテマ氏も落ち着いてください、浄化をちょちょいとすれば全部終わりますんで。
 それより話を進めてください。お母さん、フラクル粥をおかわり貰えます?」
「…あ、あぁ、はいはい」

 うちの子供は時々親父を自慢げに語る癖があるな。
 アクアとクーの悪影響を受けている事は絶対だろう。
 セプテマ氏の迫真のガタッ!と声に危機感を煽られたソニューザ一家だが、
 話を聞いても落ち着いている俺とのギャップに混乱をさせてしまったらしい。
 ちなみにフラクルとはこっちの世界のトウモロコシだよ。

「危ないなら明日浄化しますよ。
 それより何かと戦ってしばらくはエルダードワーフ達に被害が出ないように立ち回っていたのでしょう?
 俺はそこが知りたいので先をお願いします。あ、ありがとうございます」

 粥が来た事で話を聞く準備が整った。
 さぁ、何が起こって剣聖けんせいがあんな状況になっちゃったのか話してくれ。
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