特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
257 / 450
閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -61話-[剣聖の軌跡①]

しおりを挟む
 ソニューザやトーヴィルを先頭に下山を始めるエルダードワーフに混ざって、
 俺の足場の悪い岩場をゆっくり降りていく。

「いやいや、ちょっと待ってお二人さん」
「なんだ?」
「登って来るのに結構時間が掛かってたけど、
 今から下山ってどのくらい掛かるのさ」
「2時間くらいかな?」
「だな」

 春先だからまだまだ陽が沈むのは結構早い。
 時間帯で言えばすでに16時を超えて、ここから一気に暗くなる事は自明の理。
 頼りになるメンバーが揃っているとはいえ子供たちを知らぬ土地でさらに2時間も待たせては、
 合流する頃には真っ暗闇になっている事を考えると出来れば急いで下山し合流したい。
 上半身裸のおっさんも居るしね。

「下山時間が惜しいから魔法で子供たちの元へ送っていい?」
「子供たちはヤマノサチと一緒だったな。どの辺りに居るんだ?」
「村の近くだけどまぁ20分以内に帰ることが出来るよ」
「俺たちはあまり魔法に詳しくはないからな、とりあえず危険が無いならいいんじゃないか?
 信用しないわけじゃないが、流石に発動させる際に俺たちは離れておくぞ?」

 出会ったばかりでそこまで信用しろとはさすがに言わないさ。
 俺は肩を竦める事でご自由にと答え集団から少し離れた場所へ向かい、
 鳥居マークをささっと描きあげて鍵となる剣を呼び出す。

「《来よ、ガルヴォルン》《解錠アンロック》」

 ガチャっとな。

「おら、繋がったぞ。さっさと飯の準備してくれや」

 ゲート向こうは周囲とは別の景色が浮かんでおり、
 それこそ暗くなってきた空と違って明かりが目立つようになっている彼らの村が少し遠くに見えるくらいだ。
 その手前には向こうからこちらを覗き込むタルテューフォのアホ面と、
 ヤマノサチたる彼女から香る芳醇で美味しそうな良い匂いが出迎えてくれた結果、
 全員お腹が合唱することで笑いが起こり俺たちは村への帰路に着いたのだった。


 * * * * *
「改めてこちらが漂着したところを助けられたのに恩を仇で返した、セプテマ=ティターン=テリマーズ氏です」
「この度は迷惑をおかけして申し訳なかった。
 自分に出来る事であれば何でも償わせていただく所存だ」

 俺の紹介に深く頭を下げて代表のソニューザも含めたエルダードワーフの面々に謝罪をする剣聖けんせい

「で、エルダードワーフの村長代理で幼馴染彼女も居る、ソニューザです」
「出会って一日で人の色恋に口出しするとロクな目に合わないぞ。
 詳しい事情は夜ご飯を食べながらにしましょう、セプテマさん」
「ありがたく」

 武士然とした態度で殊勝といえよう礼をしつつ弱った身体も理解したうえで飯はいただく。
 今回のセプテマ氏の[しくじり]がどの様なシナリオだったのか、
 それを聞いたうえで彼らがどのような断罪を下すのか……。
 そこに多少絡んだとはいえ部外者の俺が口を出すわけにもいかない。

 そんな仲介人業務を挟んだのが村の外で、今は村に全員を引き連れて戻ってきている。
 まぁ被害は収穫物の品質低下などに留まったし、
 自警団の連中も軽い怪我を負う程度だったから酷い事にはならないだろう。
 その後、剣聖けんせいを拾って帰れば使える手駒が増えるんだからここは黙って見守っておこう。

「ご飯が出来ましたよ」
「あ、手伝います。
 タルも自分の大皿くらい手伝え」
「はぁーい」

 料理を作ってくれたのはソニューザのお母さん。
 現村長は体が弱っているので別の家でゆっくりしつつソニューザへ村長譲渡の準備を進めていたらしい。
 今は村長が療養している別宅にお邪魔している立場なので、
 お母さんとヘルパーさんが作ってくれた夕飯のご相伴に預かる為、
 出来るお手伝いは率先して行うべきなのだ。

 俺たちとは別に用意されたお詫び飯がテンコ盛りになった大皿を嬉々として運ぶタルとすれ違いながら、
 お母さんから手渡される料理を受け取ってはリビングに運ぶ手順を繰り返す。

「外から来訪された方々を歓迎する。
 我らエルダードワーフの振舞える全力を持って用意した料理の品々。たんと召し上がれ」
「ありがとうございます。ありがたくいただきます」
『『『『「いただきます!」』』』』

 初顔合わせをした村長はソニューザの説明だけで俺たちを暖かく迎えてくれ、
 食事の音頭でもタルやセプテマ氏にも友好的な対応をしてくれる心の広さを持っていた。
 手を合わせて俺と共に食事を始める声を重ねるのは、
 タルとノイとアニマに加えて村に戻って加階をさっと済ませたフラムとベルも受肉した為食事を楽しめるようになったのだ。

「美味しいか?」
『んん~!これが食事!美味しいですうううう!』
『ばっちぐー』

 俺の言葉が末っ子’sに宛てられた物だと察したノイとタルはそのまま舌鼓したつづみを打ち、
 末っ子達は初めての食事にテンションが上がって興奮気味に感想を各々口にした。

「ヤマノサチ殿、我らの料理はお気に召しましたかな?」
「うん!美味しいんだよ!
 味も濃すぎず好みの薄味なんだよ!」
「そうですか。それは良かった」

 村を始めて訪問した際の不手際を事前にソニューザに説精されていた村長と奥さんは、
 タルの感想に嬉しそうに相好を崩しホッと息を付いている。

 タルテューフォの種族[ヤマノサチ]は、
 山の奥地で草や木の実やキノコなどのそれこそ[山の幸]を毎日食べている為か、
 あまり濃い味の食べ物は美味しく食べられないとフォレストトーレで事後処理している間に聞いていた。
 また、体臭も人間や普通の魔物とは違って何とも言えない美味しい芳香が漂うので、
 俺には今嗅いでいる香りがタルから匂うのか料理から匂うのかちょっと判断が付かない。

「さて、それではそろそろ話も伺い始めましょうか」

 ソニューザのその言葉を皮切りに俺たちも口へ運ぶ食事量を抑え、
 話に耳を傾ける準備を進める。
 会話を振られたセプテマ氏は食事を完全に止めて、
 姿勢を正すと再度頭を深く下げた後に口を開き始めた。

「私が村で保護され精霊と共に村を出てからの話になりますが……」
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...