特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -85話-[黄竜と魔石と新たな武器と⑯]

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「『《シンクロ》』」

 第二長女ノイも一時的に呼び寄せてまずは第一長女アクアと一緒に魔力の提供を始める事にした。
 一応個性もあるらしいハイリア七本の根を前に差し出した手から魔力を漏らして反応をみると、二~三本は反応を見せて手を挙げるように伸びてくる。反応の悪い根は逆にチンアナゴみたいに地面から数センチのみ残して埋まってしまう。

「この場合どうするんだ?」
精樹界エレジュアで決めるようですの。殴り合いか話し合いかは気分ですわね』

 精霊樹の固有世界[精樹界エレジュア]の解説がほとんど無いから全くイメージが湧かないけど、これ。
 てめぇで勝手に想像しやがれって奴だ。
 きっとコロポックルみたいな疑似肉体のハイリア達がなんやかんやあって勝ち抜いた奴がこの誇らしく伸びて左右に揺れる根の奴なんだろうな。
 そして、力無く萎れてしまった根が負け犬なんだろうな。どんまいどんまい!まだ六属性あるから切り替えて行こっ!

『握ってくださればハイリアが勝手に吸い上げていきますわ。
 上の娘さん達の時は大丈夫かと思いますが下の子の時はマナポーションを用意しておいた方が宜しいですわよ』
『お父様、マナポーションの用意は出来ています』
「ありがとう。あとでもらうな」

 本来ポーション系はダンジョン内とかで使用するものなのだが、俺たちはあまり潜らない上に戦闘をしても飲んでいる暇があまりないので在庫がかなり余っている。消費期限も一応あるらしいので使用タイミングがあれば推奨して新しいポーションに交換したい管理者クーから一種の圧を感じて頭を撫でる。
 時々愚痴を溢すのだ。お父様の為に用意したポーションなのに訓練途中のゼノウ達ばかりが使用している、と。
 お父様、今日は飲んじゃうぞ~!

「じゃあ握ります」
『優しく握ってあげてくださいまし』

 ファウナに言われた通り優しく差し伸べられた根を握ると見た目に反してギュンギュンと遠慮なく魔力が吸われて行く感覚に襲われた。
 この後続く六連続魔力吸引に備えてアクアの魔力分から吸わせているけど予想以上に短時間で減っていくのが分かり、少しアクアが心配になり疲れなどが出ていないか顔に掛かる髪を触り顔色を確認すると大丈夫とでも言う様に笑顔で返してくれた。
 そのまま一分ほど経つ頃には体感で総合MPの六割は持って行かれたように思う。
 アクアはけろっとした様子だけど一番MPがあるアクアでこれなら末っ子’sとアニマは足りないから二本はマナポーションを飲む必要があるかもしれない。

「お兄さん、見てください。
 グランハイリアの一部が青色に薄っすら光っていますよ」
「あのハイリアはあの様な形で取り込まれているという事か。面白い結果だ。
 これは研究者共がまたさらに騒がしくなるな」

 アルシェ達が言う様にグランハイリアの地面に近い部分ははっきりと大きい面積で光っており、上に行くに従って幹のところどころが青く発光していることからも捻じれながら一本の樹へと成長していることがわかる。

『次はボクです』
「『《シンクロ》』」

 続けて第二長女ノイがアクアと交代してシンクロを行い、勝ち残った根に魔力を捧げる。
 この作業を次女クー、三女ニル、四女アニマ、五女ベル、長男フラムと行い、すべてが終わった頃には俺のお腹はマナポーションでチャプチャプ。少々我慢がツライレベルで膀胱が攻防戦を繰り広げる事を犠牲に無事七属性をそれぞれの根に与える事が出来た。
 事が進むにつれて増加する人の気配や発光する色を増やすグランハイリアの存在感に見物人も傍に居るアルシェ達も言葉が少なくなった状況に、疲労感で身体が怠くなったのを感じつつ俺も皆に合わせてグランハイリアを見上げた。


『——始まりますわ……。
 きっと、七属性武器なんてこの先造り出される事はまず無い、貴重な。
 一瞬でも見逃すと末代まで後悔するほどの御業ですわ……』
「……」
『……』


 観光名所でもあるグランハイリアは街の中心部に聳え立っている。
 そのグランハイリアが日中にも関わらず誰もが目を引かれる程に光っていた。それも七色に。
 人も、精霊も、竜さえもその日その時は[大樹の街ハルカナム]に居た全員が手を止め足を止め、街の中心に身体を向けてその光景に見入っていた。

 メキメキメキッ……!
 まず樹頂に近い枝が七本順々に音を立てながら自然と折れていく様が目に入った。
 雲にも届く高い樹なので折れる音なんて雑踏の中であれば聞こえないだろうが、落ち葉が突然多く降ってくれば全員が息を殺して見守る中で微かに聞こえた音が枝が折れる音だと理解するには容易であった。
 中心部から遠いエリアの住民であれば折れる光景も目に入ったかもしれない。

 折れた枝は各属性の色を保ったまま落下を始めた。
 その光景に街中で少数ながら悲鳴が上がったが落ちる途中で枝は発光量を増して見ていられない程に輝いた瞬間、細かな光の粒となってグランハイリアへと吸い込まれて行った。おそらく精霊樹の固有世界[精樹界エレジュア]へと送られたのだろう。

 ここからどのくらいで完成するのだろうか。ファウナはすぐに出来ると事前説明の時に口にしていた。
 尚も発光を続けるグランハイリアを見上げているとグランハイリアへと吸い込まれた七色の光の粒が今度はグランハイリアから少しずつ放出され始め周囲七箇所の空中でゆっくり、確実に、何かの形を形成していく。

 何がグランハイリアに起こっているのかわからない街人達が痺れを切らして小声ながら光の粒が形成する物を予想する声が微かに耳に届く。俺は武器を所望しているけれど七種類のパーツを組み合わせて一つの武器を完成させるつもりなのか、それとも七属性に武器をそれぞれで造るつもりなのか期待半分不安半分な気持ちでその神秘的な光景を目に焼き付け続けた。

「剣……か?」

 グランハイリアを一周するように等間隔で光が集まり形成を進める中で俺の視界で一番近い光が剣の形を取り始めたように見えた。
 その形成が進むにつれてグランハイリアの各属性色の発光が収まっていき、逆に形成される何かは輝きを増していく。
 見える範囲の別の属性光にも視線を向けるが形はそれぞれ違うらしい。う~ん、全属性武器が欲しいんだけどなぁ。
 魔力を捧げてから一五分程経つ頃にはグランハイリアの発光はほとんどわからなくなり周囲に浮かぶ七色の光が幹を強く照らしている中、輝きが強すぎて最終的にどんな形の剣になったのかマジでわからない。

『そろそろ完成しそうですの。
 少し下がって完成の時を見守りましょう』

 ファウナの指示に従ってグランハイリアから離れると、ほぼ真上にあった真っ白い光がその輝きを失いながらゆっくりと俺たちの前に降って来る。
 光量が直視できる程に失せていた為その姿を確認することが出来た俺の感想は綺麗な騎士剣という一言に尽きた。
 素材は精霊樹だから木剣と分かっているけれど、無属性を大量に吸った木材で完成したその騎士剣は純白でどこか女性的な美しささえ想起させる。ゲーム的なイメージだとセイブザクイーンみたいだと思った。

 騎士剣は俺の前で止まると再度輝き光輪を発生させてから俺の手に収まる。
 それはまるで「待たせた」とでも言う様に見える光景であった。

「見たこともない純白の剣ですね」
「筆舌に尽くし難い程に美しい剣だな」
『他もすぐに<万彩カリスティア>の手元に向かってきますわ。
 グランハイリアからはその剣をそのまま掲げていて欲しいそうですの』

 手元に収まった騎士剣をファウナの言葉に再び従い掲げながら観察する。
 アルシェの言う様に一片の穢れも無い純白でラフィートの言う様に何と言い表せばいいのか言葉が浮かばない程に美しい剣だ。
 ただ気になるのは俺の知る騎士剣に比べるとサイズが少々大きい様で、柄は三十センチ程度と長く、鍔も剣幅に比べて大き目だし、剣身に至っては二メートルに届いているのではないだろうか?

『来ましたわ』

 ファウナの掛け声を切っ掛けにアクアの蒼天そうてんの輝きを持つ武器が飛んでくるのが見えた。
 その武器は騎士剣ではなくまた別の形をしていたがしっかりと姿を捉える前に騎士剣へと突っ込んできて二度目の光輪が蒼天そうてん色も伴って広がる。光輪の眩しさに思わず瞳を閉じ、開いた時には蒼天そうてん色の武器は騎士剣と合体していた。

「合体しちゃいました…。どういう武器何でしょうか…」
「まさか……合体剣なのか?」

 合体剣。それはロマン武器である。
 合体剣。使いこなせればカッコいい武器である。
 合体剣。これ片手剣に収まらねぇじゃねぇか!

 蒼天そうてん色の武器が合体してから続け様にノイの聖壁せいへき色、クーの闇光あんこう色、ニルの翠雷すいらい色、ベルの星光せいこう色、フラムの朱焔しゅえん色の武器が飛んできては光輪と共に合体していく。その都度少しずつ剣身は伸びていき、最終的には三メートルには届かなかったけれど十分に極大剣のサイズになってしまった。

『これにて風精ファウナとグランハイリアからの恩返しとさせていただきますわ<万彩カリスティア>』
「予想外に大きい剣になってしまったけどありがたく頂戴する」
『勘違いしておられる様なのでお伝えしますけれど、その剣は片手剣のカテゴリですわ。
 グランハイリアが受け取った魔力から情報を獲得して普段の得物として使えるように設定したようですわ。
 それと分解も出来るようになっておりますわ』

 完成した合体剣を改めて眺めてみると、木剣で各武器はそれぞれ特色が付いていたのに合体したあとは純白を基調にしていくつか走る細いラインは七色に発光している。
 確かに剣を掲げてから今の極大剣に至るまでに重さはほとんど変わっていないと感じているのでファウナの言い分は正しいのだろう。
 皆にさらに下がってもらい素振りもしてみるがこれも問題なく普段の動きを実現することが出来て、改めてこの極大剣が片手剣の扱いなのだと実感した。

「人目もあるし今回は受け取りだけにして落ち着いた頃に色々と試すとしよう」

 そう周囲へ伝えていつも通り宝物庫ほうもつこに武器を収納を始めると、長すぎる所為で剣身までしか収まらずつばと柄はそのまま現実世界に残ってしまった。とりあえず腰にうまく位置調整して誤魔化すとファウナとラフィートに再度頭を下げる。

「この度の報酬、確かに受け取りました。
 ちなみにこの剣に名前はあるのか?」
『いいえ、ございませんの。使用者は<万彩カリスティア>だけなのですから貴方が付けてあげると剣も喜びますわ』
「そうだな。どれほどの業物かは知れないがこの世に一本しかない貴様専用の武器なのだ。名付けも貴様がすべきだろう」

 武器の名前かぁ。
 精霊樹[グランハイリア]を構成する七本のハイリアが自らを素材として造り上げた合体剣。
 握ってみて分かるが、これは七属性を使用できる精霊使いの為の。俺の為の武器だ。
 光の加減で年輪が光る美しくも俺の二つ名の様に色んな色を映し出す全体像を眺めながら思考を巡らす。

 精霊樹。グランハイリア。万彩カリスティア。万華鏡。グランドリオン……。

「勇者の剣、聖剣にあやかって精霊剣で精剣。
 さまざまな色や模様を見ることができる美しいフォルムと造形。万華鏡からカレイド。
 元となったグランハイリアを素材にした生きた木剣。親の名を引き継いでハイリア。
 この剣の名前は、——精剣[カレイドハイリア]だ」
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