特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -87話-[フォレストトーレ鎮魂式②]

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 —For LafitteSide

「はっ、はっ、はっ……」
「陛下!先行し過ぎですっ!もう少し速度を…っ……」

 悪いなブロセウス。国民だけでなく俺にとっても千載一遇のチャンスなんだっ!
 父王が愛し守って来た国を放蕩息子であった俺が今後舵取りをするのだ。志し半ばで倒れた父上に俺の想いをしっかりと伝え安心していただかなければ父上はこの地に縛られ続ける可能性があると宗八そうはちは語っていた。
 奪還作戦途中で教えてもらった父上の御霊は赤黒く染まっていたと、悪霊にしか見えなかったと聞いた。
 それに弟…アーノルド……っ!お前の栄えある未来、王として立った暁には王族に相応しくない俺がお前の力になりたいと考えていたというのにっ…!

「時間は有限なのだっ!貴様たちが今は無理をしてでも速度を上げよっ!」

 一時間。魔法を発動する宗八そうはちの精霊が幼く、また天候の操作制御が難しいこともあっての制限時間…。
 それに懸念事項として電子で構成された御霊は基本無表情であり声が聞こえない代わりに心の起伏を感じ取る事が出来るが多くの時間を確保しても御霊が成仏するラインがわからない事が挙げられた。他に今回は無理やりチャンネルを合わせているとかなんとか宗八そうはちは口上を並べていたが詳しくはわからなんだ。

「はっ…はっ…見えたっ!父上!アーノルド!」

 瓦礫が最も高く積み重なった王城が城下に入ってからずっと目に入っていたが目的の御霊がそこに居てくれるかに関しては一抹の不安があった。しかし、今確かに二人の御霊がおそらく玉座の間があったと思われる瓦礫の頂上に佇んでいる姿が視認出来たっ!
 大声で呼び掛けてみても宗八そうはちの言う通り無反応でこちらに視線を向ける事もなかった……。

「へ、陛下っ!瓦礫がいつ崩れるかもわかりませんっ!下から声を掛けるに留めてくださいっ!」
「馬鹿を言うな!想いを伝えるだけではない!その姿を目に焼け付ける為にも俺が傍に寄らずしてどうするっ!
 王都を落とされ国民に顔向けが出来ないほどの後悔をした俺に、さらに後悔を重ねろとでも言うのかっ!」

 城の中には姿絵も数点あったがこの惨状で無事とは思えない。
 何よりも二人の最後の姿は正に今、御霊の姿なのだ。これが正真正銘、看取りの時。
 時々瓦礫が崩れ兵士や侍女の御霊も労いの声を掛けつつ通り過ぎなんとか近くまで登った時、二人と程近い場所に勇者PTのヒューゴとフェリシアが佇んでいる事に気が付いた。
 声を掛けてみるか少し悩んだもののラフィートは勇者メリオ達が来ることを予測して、また自身がそれほど二人と打ち解けていなかった事も鑑みてあえて声は掛けず目的の父と弟と向き合う選択をした。

「はっ、はっ、はっ、すぅ………………はあ~~~っ。お久しぶりでございます、父上、アーノルド」

 先王と補佐をしていつも傍に控えていた弟の前で生前と同じ様に跪きご挨拶をすると無表情ながらも二人ともこちらに顔を向けてくれた事に涙腺が緩みそうになった。出来れば普段の穏やかな表情で迎えていただきたかった気持ちもあるけれど、反応を示してくださっただけでもありがたい。
 父上は以前の赤黒い姿から変わっており多少赤さは残っているものの危うさは段違いに柔らかい印象を受ける。

「此度の魔神族による瘴気を用いた王都陥落に付きまして、王都から離れ外からの視点を持ちながら力になれなかった事は慙愧に耐えません。また、父王と次期国王となられるはずであったアーノルド様に於かれましては国の先々に考えを巡らせより良き国づくりを予定していた事でしょう。今後の王国の行く末は暫定的に不肖の子、ラフィートが国王としてオルヘルム教皇に戴冠を頂きました事ご報告いたします」

 俺の報告を無表情で受けた二人にそれでも反応は見受けられなかった。
 言葉が聞こえていない以上それは当然なのだろう。しかし、いつもなら笑み呆れが混じりつつ返ってきた返事はなく、そんな父王の態度を窘める弟の声も聞こえない事に涙が溢れてくる。
 御霊を相手に言葉を、想いを伝える事のなんと難しくなんと歯がゆい事か…。目の前にいるのに……この距離が届かないのか……。

「……っ!?」

 その時、目端に映る父王と弟のつま先に動きがみられた。
 驚き視線を上げると顔だけを向けていた二人が体まで俺に向けてくださっていた。
 何かが届いたっ!想いの一部でもっ!誓いの一部でも良い!

「父上とっ……アー…ノルドのっ!政治方針は守りつつっ……復興をするだけでっ…俺の代は終わるでしょうっ!
 ですが、必ず……かな…らず……二人の意思はっ…後世に繋げ、……っ……民の為のまつりごとを…忘れぬよう……伝えていきますっ!もちろんっ!俺自身も……っ…王族として二人に劣るなりにっ……誠心誠意努めさせていただきますっ‼」


 * * * * *
 —For PurumerioSide

「メリオっ!あれってラフィート様ではないか?」
「だろうね。あれだけ兵士が固まって動く人物ならラフィートしかいないだろうさ」

 マクラインから声を掛けられる前から。それこそ彼が走り始めた光景を瞳に捉えてから俺たちも続いて駆け始めたのだし…。
 流石に俺たちはある意味[別れ]を済ませる時間があった。だからラフィートや被害者たち程の必死に駆られてもいないから邪魔にならない程度に身を小さくして街を駆け抜ける。
 涙も流した。懺悔もした。後悔を胸に先へ進む覚悟も決めた。
 そんな俺たちが何故ヒューゴとフェリシアを探して王都に入ったかと言うと、俺たちは彼らに言いたいこと伝えたい事を口にしていたけど彼らに届いていたかは当時御霊が視認出来ていなかったからわからない。つまり彼らの御霊が成仏しているかの確認の為にラフィートの後をこそこそ付いて行っている状態なのだ。

「この位置って凄く居心地が悪いね」
「仕方ないわよ、目的への必死さが違うんですもの。
 ラフィート陛下は国王とアーノルド王子殿下との再会と誓いの為に走っているのに対して彼らの邪魔にならないように走っている私達じゃ浮くのは仕方ないわ」

 前方には護衛が後に続くラフィート達が周囲には悲痛な顔で御霊に語り掛け涙を流す被害者や失意の表情で想い人の名前を呼ぶ方々が走り回っている状況の中でこんな気持ちで混じる事の居心地の悪さは最悪だ。
 その気持ちはミリエステにも感じ取れているらしく苦笑いはしつつも念の為周囲に目を配らせて二人の御霊を探している。
 フォレストトーレへの思い入れはそこまでは無い。何しろ[エクスカリバー]を手に入れる為に観光気分で寄り道しただけだったからな……。それでも此処で二人が死んでしまったから死んだ場所に残っている可能性が高い…と、……思う。

 やがて遠目からも王城跡の瓦礫に生前の王様とラフィートの弟の御霊が佇む姿が見えた。
 ラフィートも必死に瓦礫を登り始めたのを見てから俺たちは王城跡の周囲を回る事にして二人を探すと半周したところで座り込んでいる二人の御霊を発見した。

「どうして座っているんだ?」
「……、もしかしたら死んだことに気付いていないのかもしれない」
「気付いていない!?そんなことあるの?」

 俺だって詳しくは知らないけどあの姿は魔力が抜ける前に見た生前の最後の姿だ。
 今もフェリシアはきっと魔力全損の恐怖に震え、ヒューゴは己の弓を敵が意に返さない事に絶望しているのだろう。
 あの時は戦う事に必死で二人を気遣う余裕が俺にはなくて、ミリエステもマクラインも二人を鼓舞させる為に強い言葉を投げかけるしか出来なかった。このままでは良い結果には繋がらないという直感を頼りに俺たちも瓦礫を登って二人に近づく。

「フェリシア、ヒューゴ……」

 視線を合わせる為に三人で囲むようにしゃがみ込んで声を掛けると二人が反応を示して膝に隠していた顔を持ち上げる。
 その表情はいつもの自信に満ち溢れたものとは乖離した見たことも無い恐怖と絶望で埋め尽くされた……そんな表情だった。

「戦いは終わったよ…。俺たちの勝ちで、もう、終わったんだ……。
 二人にも危険な目に遭わせてしまって悪かった。もう大丈夫なんだ…、だから……」
「ヒューゴ。君は自分の弓を信じて疑わなかったな…、それでも瘴気被害者の救出の際に俺たちと同じく力不足を感じたんだろう?
 勇者の仲間という事も君が一番誇り、気負っていた様に今では思うよ……。だからこそ水無月みなづき殿の手を取らず鍛錬のみでメリオを助けようとしていたんだろう」
「フェリシア、貴女とは一度も意見が合わなかったわね…。同じ魔法使い、でも得意属性は正反対で性格も正反対。
 だから近い性格のヒューゴと力を合わせて自分達だけで成果を出そうとしてしまった……。私が水無月みなづきさんに頼る事を提案したから頑なになっちゃった?
 最後の貴女を埋め尽くした恐怖は同じ攻撃を受けていない私には分からないわ。でも、あの時、立ち上がって一緒に戦えていれば未来は違ったと思うの……」

 俺が早くも声が震えたのを見計らった様にマクラインとミリエステがそれぞれヒューゴとフェリシアに声を掛け始める。
 二人の話を聞きながらまた俺の頭は意味の無いことを考え始めた…。あの時どうするのが正解だったんだろうって、もっと戦闘を訓練を積んでいれば良かったのか?二人を説得して水無月みなづきさんの提案に乗っておくべきだった?
 二人を守れなかった俺も力不足だったし自衛出来なかった二人も力不足だった。いろんな事が積み重なって二人は死んだ。それを悔やんで悔やんで…何度悔やんでも後悔の答えはいつも出ない……。

 二人と話すことが出来れば良かったのになぁ…。
 姿が見える分俺たちの思いが伝わっているのか歯痒い気持ちが募る。
 でも、今日が最初で最後のチャンスなんだ。時間いっぱいを使ってでも二人には此処から離れてもらう為に色んな事を話してみよう。
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