特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
326 / 458
閑話休題 -|霹靂《へきれき》のナユタ討伐祝い休暇-

閑話休題 -95話-[再会+対策+事後報告③]

しおりを挟む
 翌日。アルシェとトワインとディテウスの3人を連れて再びハルカナムへとやって来た。
 3人には改めて目的を説明済みでアクアを通して武器の構想はアルシェにもきちんと伝わっている。
 街の外へゲートでやって来た後は普通に門番にギルドカードで身分証明してから街へと入ったが、門番も俺の訪問が多い事からかアルシェが一般人に紛れて身分を明かして来ても表情に出さず俺を一瞥してから通してくれた。

 雑談にフォレストトーレの現状や復興進行度合いなどを3人に説明しつつ、その足は街中をまっすぐにグランハイリアへ向けて進められた。その中で皆が不思議に思い口にした疑問は「朝の時間帯にしては人が多すぎる」という点だった。
 仕事の為に動き出している人は当然多いだろう時間帯にやって来たとはいえグループでテラスでお茶を飲みながら雑談して居たり、長椅子にぎゅうぎゅうに座って井戸端会議するおばちゃん達や眺めの良い場所に集まる子供達。老若男女全員が何かをしているわけではないのにとにかく家の外に出ている状況に俺達は混乱しながらグランハイリアへと辿り着いた。

『今日も朝からいらっしゃいませ。歓迎しますわ』
「お久しぶりですファウナ様。本日はお姿を拝めることが出来て嬉しいです」

 グランハイリアの前に立つと待ち受けていたかの様に木精ファウナは姿を現した。
 アルシェ達は約一か月振りの再会を喜びつつアルシェの主導の元改めて二人をファウナに紹介している。

「こちら、お兄さんが力を入れて教育している精霊使いです」
『あらあら。確かトワインと……ディテウスと言ったかしら? トワインが無精・水精・闇精、ディテウスが無精のみという事はトワインの方が兄弟子と見て良いのでしょうか?』
「はい。改めてトワイン=パウエルと申します。
 水無月宗八みなづきそうはちに師事して師と同じく七精霊使いを目指しております。よろしくお願いします」
「お、同じく水無月宗八みなづきそうはちに師事しておりますディテウス=マレマールと申します。よろしくお願いします」

 トワインと出会ったのはフォレストトーレ国領に入ってすぐの町[マリーブパリア]だった。
 去年の土の月80日前後だから俺の世界で言う秋の末。冬の初旬頃だな。あれから半年ほど経った時点で三属性の精霊と契約出来ているのはかなり順調と見て良い。
 ディテウスと出会ったのはトワイン達と一旦分かれて1カ月以内の道中だったかな。
 弟子として育て始めたのは最近の事だし無精のみの契約は仕方のない事だ。ただ、セーバーPTの中ではまだ十代という事もあってかどんどんと技術や魔力制御を身に付けていく為、すぐに活躍のし始めるだろうと考えている。

『うふふ、こちらこそよろしくお願いいたしますわ。
 早速アルカンシェの武器創成を行いましょうか。その間にお弟子さんの素質などを見させていただきますわ』

 訪問目的をはっきりと理解しているファウナは早々にグループを2つに分けた。
 一つがアルシェと俺達の武器創成グループ。もう一つがファウナと弟子達の今後に期待グループ。
 おそらく俺達の考えているよりも精霊樹の武器というのはハードルが高い一品なのだろう。レベルなりステータスなり、もしくは称号関連も条件があるのかもしれない。その辺りを見て判断する為に木精ファウナが測ってくれるのだ。
 俺達とアルシェがグランハイリアへ近付くと足元から根が一本、地表に顔を出した。

「俺の時にも見ただろうけど、これにイメージを持ちながら魔力を込めれば武器を創ってくれる。
 あと今回は新たな試みで魔糸も合成してもらうから手に持ちながらやってみてくれ」
「わかりました。——ふぅ。行きますよ、アクアちゃん」
『一緒に頑張ろ~♪』

「『《シンクロ!》』」

 一方その頃。ファウナは<万彩カリスティア>の弟子を名乗る二人の手を握り意識を集中させていた。
 彼女の脳裏には二人のステータス、並びに経歴や精霊との親和性などが浮かんでは消え浮かんでは消え……。まさしく精霊樹の武器を託すに相応しい力量があるかどうかを見極める為に隅々まで覗いて行く。
 精霊樹グランハイリアを材料に用いた武器は言ってしまえば成長する武器である。意思がある。故にファウナと精霊樹それぞれが認めた相手でなければ武器を創ったところで握る事すら出来ない。

『ありがとうございましたわ。お二人共鍛錬は十二分に行ってきた事が良く分かりましたわ。
 まずはトワイン。レベルは合格点、精霊との親和性も<万彩カリスティア>の下でしっかりジョブレベルと魔法制御共に育っていましたわ。ただ、<万彩カリスティア>の様に七属性の亜人の加護と精霊が揃っていないので同じレベルの物は与えられませんわ。無属性の武器で今は十分でしょう』
「ありがとうございます!」
『続けてディテウス。レベルは今一歩届いていません。ステータスもALL100が最低ラインですので余らせているジェムで不足分は早めに補っておいてくださいな。精霊との親和性も<万彩カリスティア>への師事が最近な事もあってまだジョブレベルが育っていませんわね。魔法制御も同じく集中力が足りていない。迷いは捨て、師事するならば彼を追う人々の姿をきちんと見なさい。貴方に足りない覚悟を皆持っています。貴方にはまだ精霊樹の武器は早いですわね』
「はい…っ!精進致します!」

 風魔法[エコー]でこの時の会話を俺は盗み聞いていた。
 ファウナが判断するとは聞いていたけどここまで方向性を定めてくれる様なアドバイスをくれるとは思っていなかった。
 現状考え得る限り最も強力な精霊樹製の武器はただの人間には扱えない。精霊と縁のある樹が材料になるので必然的に魔法の扱いにも精通しておく必要はあるので、そうなってくると職業は精霊使いほぼ一択だ。おそらく勇者もエクスカリバーとの繋がりがあるから扱えるとは思うけどそれは後々に予定している。

 ともかくトワインが無属性限定でも精霊樹の武器を手に出来るなら嬉しい限りだ。武器と属性が一致するわけでは無いので本来の力は出せずとも全属性を扱うことが出来るわけだから今まで同様の戦闘方法を出力を上げて行えるようになるわけだ。
 ディテウスは残念だけど1カ月や2カ月では認められなかったらしい。最終的に手にして欲しい七属性武器がカレイドハイリアと同ランクの武器なら最大でINTとMENは300超えなければならない。不足分は休暇中にでも敵を倒しまくって称号ボーナスを得るしかないだろう。

 やがてアルシェとアクアの魔力を得たグランハイリアの幹が蒼天そうてん色へと輝き始めると共にハルカナムの住民たちも盛り上がり始めた。どうやらファウナとラフィートが催しとしてグランハイリアが輝く事を事前に周知していたらしい。
 フォレストトーレは金を回して外貨を稼がないと旧王都復興も遅々として進まないし、こういう多くの人の目に付く機会を活かすならご自由にという感じ。さりげに近づき過ぎない様に兵士も配置してあったのは後で気が付いた。

 メキメキメキッ……!

『アルカンシェの武器創りが始まりますわよ』
「私の……ハイリア武器……」
『わくわく~♪』

 俺の時と同じく樹頂に近い枝が音を立てながら自然と折れていく様が目に入る。
 落ち葉が降ってくる中で微かに聞こえた枝が折れる音。折れた枝は蒼天そうてん色の光量を増しながら落下を始め、光量が限界に達した時。細かな光の粒となってグランハイリアへと吸い込まれて行った。
 精樹界エレジュアへと素材の枝が吸収されてから数分待てば今度はグランハイリアから光の粒子が噴き出て中空に武器の形を形成していく。

 光が集まり形成を進める中で光は槍に近い形を取り始めた。実際には槍剣そうけんになるわけだが……。
 その形成が進むにつれてグランハイリアの蒼天そうてん色の発光は失われて行き、逆に形成される槍剣そうけんは輝きを増していく。幹の発光が収まるにつれて槍剣そうけんの輝くは強まる。すでに手で光を遮らないと眩しくて見ていられないくらいだ。

『さあ、アルカンシェ。そろそろ完成しそうですわ。受け取る準備は出来ていて?』
「はい、今すぐにでも。いつでも受け取る準備は万端です」

 ファウナの言葉にアルシェは興奮を抑えながら応えた。
 ほぼ真上にあった蒼白い光がその輝きを失いながらゆっくりとアルシェの前に降って来る。光量は直視出来る程に失せており、アルシェは「さあ受け取れ!」と言わんばかりに目の前にやって来た槍剣そうけんをその手に握る。
 素材は精霊樹。属性は水氷。純白に蒼天そうてんを混ぜた神聖で神秘的な色合いをした槍剣そうけん。その美しさも相まって俺達は誰もが見惚れるほどで、誰も声を発することを忘れていたほどだ。

 アルシェが槍剣そうけんを手にした段階で槍剣そうけんの発光は治まっていた。
 アクアもすぐ側で感無量な様子のアルシェを満足げに眺めてニヤニヤしていた。

「アルシェ。おめでとう」
『ありがとうございます!大切に使わせてもらいますね!』
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...