特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第14章 -勇者side火の国ヴリドエンデ編-

†第14章† -13話-[王宮大混乱]

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 王都に叫び声が響き渡る中。王城内は完全なるパニックに陥っていた。
 昼頃に監視役から勇者PTが協力者と合流をして操作を開始したとの報告を受けた時は、よもやアスペラルダの姫君が関わっているとは露知らずだったので驚きはあったもののすぐに勇者達と別れたとの追加報告を確認してドラウグド国王は安堵した。

「つまりアルカンシェ王女は猪獅子ヤマノサチをテイムしたという事なのか?」
「事実はわかりませんし合流方法も宿から一緒に出て来たので謎です。少なくとも入国した記録はありません。彼の姫君の武勇は我が国にまで届いていますので不思議な縁でも出来たのかもしれませんね」

 この時、宰相との会話を盗み聞いている馬鹿が居るとは露にも思っていなかった。
 その者が三男ハカヌマの取り巻きであり、契約の存在や詳しい話を理解しないままアルカンシェ王女が城下町に来ているという話をその足ですぐに馬鹿息子に伝えてしまった事が多くの者の不幸の始まりだった。そう刻を置かずして突如、目の前の人物との会話がままならなくなった。文官が普段持ち歩いている紙とペンでなんとか意思疎通を始めた矢先に聞こえた声はとても清涼で気品に満ちた女性の声だ。当然協力は他言無用という契約をしている以上名乗りは無かったが、自分の名と馬鹿息子の名が出てくれば自ずとなのかはわかるというもの。

「(アルカンシェ王女にハカヌマが接触したのか!? 見張りは何をやっている!?)」
「(すぐ部屋へ確認に向かわせます。我らは契約違反に対してどのように収めるかを早急に考えなければなりません)」

 ドラウグド=ユグノースは自身が賢いとは思っていない。
 宰相を筆頭に王妃や文官達が居なければ国政もままならない。どちらかと言えば会議よりも将軍たちと話している時の方が楽しいとはっきり理解している。だからこそ息子たちの教育には先生を招致してしっかりと教育には力を入れていた。長男は王太子になるほど賢く育ち次男は未来の将軍と周りから言われるほど武に秀でてくれた。ひとまず国王としての仕事である世継ぎは確保できた事で安堵し、次なる問題の魔族との小競り合いと国政に力を入れた事で少し子育てから目を離したつもりであった。

「ぎゃ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」

 アルカンシェ王女に接触したハカヌマはどうやら協力者の何者かに連れて行かれ、多少の会話を挟んだのちに聞こえて来たのは息子の絶叫であった。皆が悲鳴に身体を一瞬振るわせて驚き以降は耳を覆って聞いていられない程に拷問を受けていると分かる。国王は頭を抱えて自分が致命的に何をミスしたのかと考えながらハカヌマの捜索に人手を出すように指示を下す。
 子育てに失敗し、軌道修正に失敗し、謹慎を申し付けた事で軽く考え王族を含めて罰を許可する契約をしてしまい、仕舞には勝手に町に繰り出してハカヌマは罰を受けている。それも拷問紛いの罵りと骨を砕く音付きでだ。これは息子が悪いのか?それとも子育てに失敗した自分が悪いのか?

「迷惑を掛けられた皆様の溜飲を下げて王族への不満を解消するのに使われている。陛下の許可の元、な。可哀そうな馬鹿。妹の様に女に生まれていればどこぞに出荷されて価値を見出されたというのに……なっ!」
「や”め”……あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」

 ハカヌマの存在そのものを否定し続け、望まれての行為だと吹き込まれ、俺の指示であると告げる。
 都度骨が折れる生々しい音が聞こえ続ける。ハカヌマの片割れ、俺にとっての天使に対しても出荷などと下品な言葉で貶める。彼の者はそれほどに我が王家に恨みがあるのか?
 やがて、ハカヌマの悲鳴も限界が近いのかどんどんと弱くなって来た。これ以上嬲られれば息子が死んでしまう! そう危惧した次の瞬間には回復魔法を掛けられハカヌマは死の淵から蘇らされるのだ。延々と終わらない地獄の様な時間をやり過ごしようやっと彼の者は終わりを告げる。

「さあ、体力も満タンだ。喋れるだろう? お前の声は王都の皆様に届いているぞ。言う事があるだろう?」
「う”…あ”あ”……。す”…みま”ぜん”…でじだ……。生ま”れで来で…す”み”ま…ぜんでじだ……。ごれ”が…これがら…ば……お、王家…王家の”名を”汚ざぬ”様……にじま”ず……」

 満身創痍。その一言に尽きるほどに。普段のハカヌマとは似ても似つかない叫び過ぎてボロボロの声音と疲れから紡がれるハカヌマの言葉が王都全域に響き渡る。普段の言動や行動を知っていた宰相や王太子ですら沈痛な表情で瞳を強く閉じて早く終わる事を願っている。
 やっと終わった。やっとだ……。時計を見ても5分程度の出来事なのに数時間は悲鳴を聞き続けたかのような疲れがある。

「はい、良く言えました。では、治療をしますね馬鹿ヌマ王子。これを飲んでください」

 彼の者がハカヌマに治療を施す様だ。
 骨折など肉体内部の怪我に関してはユレイアルド神聖教のシスターで無ければ回復出来ない。加えて今回の様な惨状であれば聖女でなければ回復出来ないだろうと簡単に想像出来てしまう。それだけに彼の者はその手の治癒の手段を所持しているのかと怪訝いぶかしげる中、薬か何かをハカヌマに飲ませた。
 ——途端。


「ぁぁ…ぁぁあああ……あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”!!!!!父”上”!!!父”上”え”え”え”え”え”!!!!!!!ごめ”ん”な”ざい”!!ごめ”ん”な”ざい”ごめ”ん”な”ざい”ごめ”ん”な”ざい”!!!!!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!」


 今までの比ではない程の悲鳴。そして俺に助けを求める言葉が絶叫と共に耳に届く。
 これには耐えきれず俺もついに耳を両手で覆ってハカヌマの悲鳴をこれ以上まともに聴かない様に強く強く耳に手を押し付けた。瞳を瞑り最後の悲鳴が終わるのを待っていればいつの間にか世界に音が戻っていた。宰相と王太子の声掛けに気付き瞳を開け耳を開放する。

「王よ。聞こえておりますか?」
「あ、あぁ。聞こえている……。状況を説明せよ……」
「ハカヌマ様の治療を施したあとは取り巻きをしていた貴族と兵士に名乗りを上げさせた後にどこか折る音が11回聞こえたのを最後に音が戻りました。今は命令系統の整理とハカヌマ様達の居場所の捜索を継続しているところです」
「そうか……、引き続き頼む……」

 皆一様に疲れた様子だったが宰相を筆頭にすでに動き出していた。
 やがてハカヌマの居場所が判明し王太子と兵士を向かわせた所、影に触れる事の出来ない黒い短剣がそれぞれに刺さっており治療をする為に移動をする事がままならない状況であったり、医師と治療院のシスターを現地に向かわせたり、野次馬から彼らを守る為に奔走したり、マリアベルが双子の兄の悲鳴を聞いて恐怖で気が狂い掛けたりと色々な影響を及ぼした。黒い短剣は夕方になって影の形が変わった事でハカヌマ達全員を動かせる様になったから良かったものの、このまま数日同じ状況だった場合は衰弱死していてもおかしくなかったと医師から聞かされ冷や汗を掻いた。

 監視役や情報収集に長けている者たちは何者かに自由を奪われていた様で情報が集まるのに苦労した。
 どうやら同じような魔法で音が無くなった時間の間だけ身動きを制限されていたらしい。あんな魔法を複数人が使えて隠密に長ける者の位置も把握する? アスペラルダはどれほどの人材を確保しているのか……。
 城に担ぎ込まれたハカヌマの姿は酷いものだった。不治の病で数年ベッドで生活していたのかと見紛う程にやつれた顔に栄養失調者特有のガリガリの身体。朝までは普通の青年の身体だっただけに医者も何をされたのかわからないと頭を抱えていた。状態としては栄養失調との事なのですぐさま療養の準備に取り掛かった。
 取り巻きをしていた者たちも糞尿に塗れた下半身に利き腕を粉砕された状態で城に担ぎ込まれたが同伴したシスターの話では聖女で無ければ完治は難しいとの事。逆にハカヌマが完治している事の方が驚愕だと言われた。

 俺は改めて勇者の協力者の可能性がある者全てに接触することを禁じ、監視の目も厳選して少なくすることで対処した。
 消極的な決断だがこれ以上竜の尾を踏むわけにも行かない。命があっただけでも感謝すべきなのかもしれない……。そう考えてアスペラルダにも何も言えず早く勇者が事件を解決して協力者が火の国から居なくなる事を祈るばかりであった。
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