特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第14章 -勇者side火の国ヴリドエンデ編-

†第14章† -12.5話-[一方その頃。|水無月《みなづき》編④]

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 勇者メリオから影事件の対応にタルテューフォを貸して欲しいと打診されたその夜、俺はアルシェと相談していた。

「って事なんだけど、どう思う?」
「そんな約束をしたんですね、ふふふ。勇者様がその契約書面を得られなかったとしても貸し出すのですか?」
「その予定。ついでにみんなでヴリドエンデ王都で休み取ろうかなって思ってるんだけど……」
「まぁ♪良いじゃないですか♪みんな頑張ってくれていますし一応この数か月でお兄さんが求める程度の補強は出来ましたし」

 ナユタの世界での戦闘経験を踏まえて強化系を増し増しで挑んだ俺的にこのくらいのステータスが欲しいという基準はALL600程度。
 人型を相手にするならALL250もあれば良いけど、当時の俺やアルシェ達の平均で言えば300程度。最弱を相手にした結果から算出したそのステータスに近づく為に今までの旅の途中で設置したゲートを駆使して全員の強化期間を設けた。時にはダンジョンへ潜り時にはダンジョンに潜り、時にはダンジョンに潜って息抜きにフィールドに出て魔物の群れを狩った。つまりほとんどの期間ダンジョンを巡って全てのモンスターを300体屠りまくったのだ。全員が。おかげで俺に至ってはALL600を超えているので今なら完全体ナユタとも素で良い勝負が出来るくらいまで補強は出来たと言える。

「アルシェが良いならタルの仕事中は休暇にしようか。メリオも移動魔法は持っているし2~3日で全部討伐すると思うけど」
「それはもちろんノイちゃんも……ですよね? ちゃんと後でその分のサービスをしてあげないと拗ねちゃいますからね」
「それはわかってる。勇者の名声を押し上げる良い機会だけどノイやタルには関係の薄い話だし、俺がちゃんとフォローするよ」
「なら大丈夫でしょう、私は賛成します。私達は久し振りのデートを楽しみましょう♪」

 そんな訳でアルシェも賛成してくれた事もあり全員でメリオを経由して開いたゲートを通って休暇に入った。
 当然の様に俺の隣に収まったアルシェはメリオ達の前だというのに俺の腕にその細腕を絡めて胸の間に挟んでアピールを忘れない。流石はアルシェ。堂々としたものだ。火の国の夏となれば汗もすぐに浮かぶ為周囲を歩く人々の誰もが腕を組んで歩く事は無いけれど、俺達は精霊の加護の力で夏でも涼しく過ごせるので完全に浮いたバカップルの様相を呈していた。唯一の救いは子供達が一緒に行動している点だけだ。

 子供達やアルシェの興味が引かれた品々を冷やかしたり購入をしていると人垣の向こうから鎧を着こんだ団体が真っ直ぐこちらに歩いて来ているのが見えた。先頭を風を切る様に歩く人物はどうにも嫌な予感をさせる。まさかな。契約書もあるから自身の子供から目を離すはずはないと思うんだけど監視は何をしてるのか……。
 案の定道の端に避けたにも関わらず、先頭を歩いていた男は町民の格好に扮したアルシェの前で足を止めた。

「おや!もしやそこに居られるのはアスペラルダの至宝、アルカンシェ王女では無いか!」

 町の人々の視線は問題児からアルシェへと流れる。
 俺達の周りに居た人などは特に驚いて一歩飛び退いたほどに華美に着飾っていないアルシェはしっかりと町に溶け込んでいたのに、この馬鹿共がMPKの様に野次馬を引き連れてアルシェに話しかけた事でお忍びで観光していた事が露見してしまった。
 笑顔を張り付かせたままお怒りになるアルシェの内情など構わずに話しかけ続けるハカヌマ馬鹿王子殿下とそれを制御する気の無い取り巻き共。

「初対面ではあるが、この私。ハカヌマ=ユグノースが国を代表して案内して進ぜよう!」
「謹んでご遠慮致します」
「それでは私の行きつけの飲食店から……って何ぃいいいいいいい!?わ、わた!俺様が態々わざわざ足を運んでエスコートすると言ってやってるのに断るだとっ!?王女と言えど何様のつもりかっ!貴様が居るのは我が国、ヴリドエンデであるぞ!」
「こちらはお忍びで楽しんでいるのです。態々わざわざ不躾にも正体を明かし楽しみを邪魔する貴方様は王子であって、決してヴリドエンデの顔ではありません。まず国王と私達が謁見で挨拶した後ならともかく順序を誤っていますよバカヌマ殿下」

 ちょっと濁して言ったけど明らかにバカって言ったじゃん。
 背後に控える取り巻きと兵士は王子を前面に出しているからか大きな顔で俺達へ不穏な視線を送って来ているし、これはに抵触していますなぁ!
 一応護衛としてアルシェの前に身体を出していた俺は振り返りアイコンタクトで確認するとGOサインのウインクで返って来たので実行に移す。

『「《風精霊纏エレメンタライズ》」ですわー!』

 眼の前で風精ニルを纏ったにも関わらず馬鹿王子はアルシェに気を取られたままだ。しかし、周りに居た者達はその背後からその光景を見ていた為警戒を露わにし慌てて馬鹿王子の肩や腕に手を添えて警告を促そうとする。

「き、貴様ぁああああ!!!どれだけの……!…っ!………っ!」

 まずは馬鹿共の声をOFFにして混乱のまま地獄に落とす下拵えをしてっと……。
 次にアルシェの声を王城に届く様に調整っと……。もちろん空気中の振動数を制限しているだけなので息は出来るぞ。

「ドラウグド=ユグノース陛下との契約に則り、ハカヌマ=ユグノース殿下ならびに行動を共にする者たちへの制裁を開始致します。なお、これより王都での会話は出来なくなりますのでご注意ください。代わりに制裁中の音声を全て王都に流させていただきますので王都民の方々は心が向くままに溜飲を下げてくださいませ」
「《ノックアップバースト》」
「「「「「——…………っ………………………………っっ!!!!!」」」」」

 罪のない人々を巻き込まない様に馬鹿共だけを空の旅へと招待して打ち上げる。
 少しアルシェ達と話す為に高めに打ち上げたので短時間ではあるが高高度からの落下も楽しんでもらえるだろう。

「じゃあ、行ってくるな。煩わしかったら水で耳栓してもいいから」
「わかりました。近くでデザートでも食べながら皆と一緒に待っていますね」

 子供達の頭も当然撫でてから俺も彼らに追い付くために空へと上がる。
 上昇る俺と落下する馬鹿共が合流したタイミングで連続の蹴りで城下町の外まで飛ばす。もちろん救助が来る時間を考慮して町から少し離れたエリアを選んで蹴り飛ばした。諜報侍女が予想以上に有能で馬鹿共のレベルもしっかり調べてくれたので多少荒く扱ったところで簡単に死にはしない事は分かったうえで遠慮なく蹴らせてもらった。

 合計で12の土煙と轟音が辺りに響き動物たちが逃げて行く。
 土煙が晴れた先には蹴りと衝突で多大なダメージを受けて動けなくなった男たちが転がっているので全員に影縫かげぬいを施して動けなくしてやった。唯一馬鹿王子だけは仰向けにして声を開放した。これで悲鳴が全員に届きやすくなるだろう。

「ぐぅぅ……何が……。動けん……」
「おや!もしやそこに居られるのはヴリドエンデの忌み子、ハカヌマ王子殿下では無いか!いや、馬鹿ヌマ王子であったか?」
『(ぶふぅっ!止めてくださいましお父様、制御が乱れてしまいそうになりますわ!フフフフフ)』

 初手はやらかした出会いがしらの台詞と煽りを混ぜて紡いだらニルにめっちゃ受けた。
 ダメージが深刻なのか先ほどまでの元気はなく俺を睨むと冷静に周囲の仲間たちの状況を把握しようとしていた。

「貴様、何者だ……。俺様が誰なのかわかっていながらこの所業、許されない事だぞ……。すぐに解放せよ」
「許されない?誰に? 俺達は陛下からの依頼を受けた協力者でこのように証文もいただいてお前をぶちのめしても良いと許可を頂いているんだよ。逆に問おう、お前は今の状況を理解出来ているのか?」
「何をわけのわからん事を言っているのだ。父上が俺様を害すことに許可する訳が無かろうがっ!そのような戯言を誰が信じる!」
「おうおう可哀そうに。王太子や次男に比べて不出来なお前は信用されていないのだな。だから陛下からも契約を知る臣下からも事情を教えてもらえず馬鹿を成したんだな……。町民だけでなく臣下や陛下すらもこう思っているという裏付けかな? スペアはもういらないって、さ!」

 指先を踏み抜くとペキッと小気味良い音が複数回なった。

「ぎゃ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」
「あははははは。誰も期待しない取り巻きでさえもお前を防御壁や免罪符にしか考えていない。誰も助けに来ない。誰も動かない。じゃあお前は何の為に生まれて来たのか、な!」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」

 ぽーんと足を蹴飛ばした。今度はベキッというしっかりした音が聞こえて再び楽器は音を発した。
 言葉でなじりながら肉体も破壊していく。気絶したら気付け薬で意識を起こし、死にそうなら回復魔法も掛けてやる。しかし体力の回復や裂傷などが回復したところで骨折に関してはそのままになるのでずっっっっと痛みは続くのだ。

「お前が産まれたのは王太子や次男の評価を上げる為。お前が好きに生きれば生きるほど兄弟の価値は高まりお前というゴミが比例して価値が下がる。そして、こうし、て!」
「があ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」
「迷惑を掛けられた皆様の溜飲を下げて王族への不満を解消するのに使われている。陛下の許可の元、な。可哀そうな馬鹿。妹の様に女に生まれていればどこぞに出荷されて価値を見出されたというのに……なっ!」
「や”め”……あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」

 致命傷になりかねない首から上は無傷のまま四肢だけでなく肋骨なども丁寧に砕いた。
 ラフィートの時は手だけだったけどこいつは初めから評価が低すぎた。面倒事の臭いしかしない奴に情けを掛けると調子に乗るから徹底的に心も体も折っておかないと、な!

「ぎゃ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」
「あぁ、安心してくれ。仲間外れはしないよ。お仲間も馬鹿王子を同じ馬鹿仲間なんだから同じ状態にしてやるからな」

 ボロ雑巾になった王子の隣には残り11人のお仲間が転がって身動きが取れないでいる。
 しかし、目を閉じたり歯を食いしばって恐怖に耐えたり小便を漏らす輩に俺は優しくその様に声を掛けた。仲間外れは寂しいもんな。でも、流石にこれ以上折る所も無くなって来たし俺も飽きた。王都にこれを流し続けるのも逆に迷惑になるだろうからそろそろ最後にしないと……。

「さあ、体力も満タンだ。喋れるだろう? お前の声は王都の皆様に届いているぞ。言う事があるだろう?」
「う”…あ”あ”……。す”…みま”ぜん”…でじだ……。生ま”れで来で…す”み”ま…ぜんでじだ……。ごれ”が…これがら…ば……お、王家…王家の”名を”汚ざぬ”様……にじま”ず……」
「はい、良く言えました。では、治療をしますね馬鹿ヌマ王子。これを飲んでください」
「あ”あ”……ゴクン。ぁぁ…ぁぁあああ……あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!!!痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”痛”い”!!!!!父”上”!!!父”上”え”え”え”え”え”!!!!!!!ごめ”ん”な”ざい”!!ごめ”ん”な”ざい”ごめ”ん”な”ざい”ごめ”ん”な”ざい”!!!!!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!!!」

 総仕上げに文字魔法ワードマジックで「修復」の文字を飲ませてあげた。これで元通りの綺麗な体に回復できるよ。
 この音楽祭もクライマックスだ!今までの比ではない叫びに喉が裂け血が息を塞ぎつつも絶叫を奏で続ける馬鹿王子を手助けする為に喉に溜まる血を制御して取り除いてあげる。バキボキと元に位置に自動的に戻っては当人の痛みなど無視して行われる自動治療に耐えきれず最後には気絶してしまった馬鹿ヌマ王子への報復はこれでいいかな?

「次は誰かな? 一人ずつ声を出せる様にするから名乗ってくださいね」

 近い順に声を開放すると皆面白いように自分の情報を教えてくれた。名前も貴族の何男かどうかも。そして、自分達が主導して何を行い王子に護ってもらったのか等も自白させてそれらは全て王都に響き誰しもが知る情報となった。
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