特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
351 / 450
第14章 -勇者side火の国ヴリドエンデ編-

†第14章† -14.6話-[一方その頃。|水無月《みなづき》編⑥]

しおりを挟む
 魔石の精製はある程度までは下位竜と中位竜でも竜工的に行う事が出来るのだが高濃度魔石となると[竜玉りゅうぎょく]を受け継いだ上位竜の竜王、またの名を竜長が行う必要がある。今のところ魔石が欲しい人間の魔力を竜が吸収して専用魔石を精製し、その魔石の中で高濃度になった魔力からさらに竜が魔石を精製を繰り返すことで最終的な超高濃度魔石が完成する。

 青竜フリューネは現在クランメンバーでもあるフランザ=エフィメールの魔石精製を行っており、黄竜グリーズ白竜ディーの二竜は俺の魔石を精製してくれている最中だ。一応連絡は取れるように角に装備出来るように彫金された[揺蕩う唄ウィルフラタ]をそれぞれが付けているので完成したら取りに行く事になっている。しかし、黄竜グリーズはともかく白竜ディーが意外と人間臭くて息抜きしたいとか聖女クレアに会いたいから連れってってとかで呼び出される事もある。

『魔石精製の希望者は<万彩カリスティア>とマリエルですね?』
「「よろしくお願いします」」

 魔石精製にはそれなりに時間が掛かり、竜が吸収できる魔力量と魔石化する効率技術も影響するので最後の仕上げだけを緑竜クァイアオーグナに行ってもらう事となった。それまではひとまず風竜ウインドが行い翆煇竜エメラルドが繋いで魔石を精製してくれるとの事で、さっそく選ばれた風竜ウインドに魔力を注ぎつつ緑竜クァイアオーグナとセリア先生を交えて雑談タイムへと移行した。

『顔合わせだけは終わりました、ここからは一人称などは気にせず話をしましょう。そういえば青の事を略称で呼んでいると伺いました。事実ですか?』
「私は青の守り人になったので対等の証として敬称を付けずにフリューネと呼んでいますが、アルシェやマリエルなど他のメンバーは敬称を付けて呼んでいますね」
「お兄さんは青竜だけでなく黄竜と白竜からも略称を許可されているのです」
「グリーズ様とディー様ですね」

 竜玉りゅうぎょくを受け継いだ上位竜の彼らは特に互いに害を成そうという意志は無いが他の中位や下位の竜が少々排他的で遺物が紛れた様な視線を送って来る。その辺りの機微は理解されているのか緑竜クァイアオーグナもフリューネには寛容で話に入らず俺の傍で眠り始めた彼に敵意も剥けずに母親の様な寛容さで対話を続ける。

『では、私のことも略称で構いません。そうですね……、クイナとでも名乗りましょうか。敬称については黄も白も許しているのであれば同じように呼んでください』
「クイナですね。今後はそのように致します」
「クイナ様、ありがとうございます」
「ありがとうございます!」

 その後程なくしてアクアとニルが暇を訴え始めたのでマリエルに御守を頼んで緑竜の島を探索に出掛けさせた。
 アクアたっての願いでアニマも強制連行されていったが姉妹とコミュニケーションが取れる点と知らない土地を好き勝手に歩く冒険心から各々楽し気に遺跡を後にした。

「今回は顔合わせということもあり俺とマリエルだけの魔石精製をお願いしましたが、今後新しい人間の魔石精製をお願いする予定ですので引き続き協力をお願いいたします」
『頭を上げよ。青と接しているなら分かるだろうが魔石精製は大したことではない。自然に吸収し排泄される我ら竜が生きる上で行われる普通の事である。何ならその辺の魔石も持って行くと良い』

 当然、竜の魔石は人間で言うウンコだ。空気中には自然魔力マギウスヴィスルという誰の魔力にも染まっていない魔力が含まれているので竜達はそれを普段の食事として吸収し、やがて小さな魔石として排出する。それらは長い期間ずっと繰り替えされて来た行為なのでその辺に山となって小さな魔石が積みあがっている。竜達もこの魔石をどうこうする予定も無ければアイデアもないので、青竜の島と黄竜の巣と白竜の島に積まれていた小さな魔石は時間を見つけて適当に集めて各国に融通している。いずれその魔石を使った魔道具が多く世に出回る様になったら必要になるであろうとかなんとか言い含めてゴミ掃除に協力してもらっている。

「それではいくらか見繕って出向する度に頂戴いたします」


 * * * * *
 一方その頃、マリエルと子供達は1匹の翆煇竜エメラルドの案内に従ってずんずんと島の奥地へと足を踏み込んでいた。
 周囲が暴風と厚い雲に覆われているにしては息苦しくもなく、植物なども普通に生えている。まぁ時々見たこともない植物があるのでマリエルだけは採取をしてはインベントリに放り込んでいた。子供たちは仲良く手を繋いで竜の背に乗って辺りを見回し会話に華を咲かせていた。

「ん? なんだか魔物の気配がしますね。この島って竜以外に魔物も生息しているんですか?」
『魔物はいない。が、ダンジョンがあるから時々大量のモンスターが出てくる事はある』
「ダンジョン!? こんな島に出来るモノなんですか!?」
『ダンジョンは魔力溜りが影響して異世界の一部が切り取られ融合したモノとされている。この島は一定の周期で同じ航路を取っている。故にグランハイリアから自然魔力マギウスヴィスルが吹き上がるタイミングでこの島はほぼ上空にあるからこそ魔力に不足しないのだ』

 マリエルも宗八そうはちから伝え聞いている程度だがこの世界の魔力事情に精通している。
 冒険者がダンジョンで戦闘して消費したHPやMPはダンジョンに吸収された後にエネルギーへと変換されて敵や宝箱の再リポップに利用される。ダンジョン外ではHPはともかくMPに関して生物が使用したり死亡した場合、地中へと吸収され濾過されたうえで自然魔力マギウスヴィスルの流れに合流する。これは星の中を巡る血管のような物で物体を透過して星という身体を常に巡っている。
 その自然魔力マギウスヴィスルが一定周期で決まった場所から噴き出るタイミングがある。それはマリエルの故郷ネシンフラ島と隣接している港町アクアポッツォであったり、グランハイリアがある大樹の街ハルカナムであったりだが、竜達は噴き出るスポットを探し出して巣を作っていると聞いている。

『良くこんな島都合よく見つけたよねぇ~』
『浮かんでいる技術も謎ですわー!』
『おおかた遺跡に残された魔法陣が生きているだけでしょう。航路に関しては知りませんが自然魔力マギウスヴィスルが影響して魔法陣の魔力が切れる前に補充されているのでしょうね』
「お、アニマちゃんが隊長が喜びそうな話をしてる。あとで報告しないと……」

 マリエルは心のメモにアニマの言葉を刻み付けた。
 翆煇竜エメラルドの案内で魔物の気配がする方向に向かうと地下へと続く遺跡の残骸の周囲をウロウロしているモンスターの姿が見えて来た。明らかに魔物群暴走スタンピードの前兆だったがいつもの事なのか翆煇竜エメラルドは焦る事もなく息吹ブレスを吐いて地表に出ていたモンスターは全て根絶やしにされた。ダンジョンランクは定かではないけれど安全の為に子供達と共に現時点での調査はしない方がいいと判断したマリエルは親の目を盗んでダンジョンを攻略する事を夢見る子供達に残酷な提案をする。

「あ、ダンジョンには入らないからね。脅威度合が分からないし隊長に怒られるのは私だから」
『『え~~~!!?』』
『姉様達……それはそうですよ。二人はともかくわたくしぁ戦力にならないんですよ?』
「報告はするからこの後合流した時におねだりするしかないね」

 その場でマリエルとアニマから諭されたイケイケ姉妹は頭を垂れて落ち込みはしたがすぐに切り替えておねだりに全力を出す決意を固めた。そのままダンジョンはスルーしてそこまで大きくもない島を一周してから宗八そうはち達の元へ戻ってさっそく子供達がダンジョン攻略をおねだりする幼い声が遺跡の中に響いた。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
 お人好しで動物好きな最上悠は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏も、寿命から静かに息を引き取ろうとする。 「助けたいなら異世界に来てくれない」と少し残念な神様と出会う。  転移先では半ば強引に、死にかけていた犬を助けたことで、能力を失いそのひっそりとスローライフを送ることになってしまうが  迷い込んだ、訪問者次々とやってきて異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...