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第16章 -勇者 VS 魔王-
†第16章† -03話-[群像依頼-グランド・クエスト-]
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「お待たせ致しました」
再び宗八達が姿を現した頃合いには、子犬の様に震えていた冒険者たちは落ち着きを取り戻していた。
予定通り正気にいち早く戻ったクランメンバーが中心となって声を掛け励まし合い仲間を正気に戻した様だ。
「皆様落ち着かれた様なのでさっそくですが、我々から皆様に受けていただきたい依頼をお伝えいたします」
流石にこの我々というのが宗八達七精の門を指すのではなく、国やギルドが主導となっている依頼であることに冒険者は理解していた。そして、彼らが矢面に立って自分達に語る意味も納得していた。
「これは——群像依頼です」
グランドとは自分達の生存圏を、大地を守るという意味合いがある。
群像依頼といっても規模は小~大と幅広く、基本的に魔物群暴走などの大軍を相手に各々が戦場で活躍しとにかく敵の数を減らして沈静化させる依頼の事を指す。負ければ村や町が襲われ生存圏を失う事からグランド・クエストと呼ばれている。
「誰もが主役。誰もが人生を賭し命の輝きを持って人々を守らなければ未来が無くなる」
ただし、今回の規模は最凶最悪だ。
「仕事内容は、最後のアレがいずれこの世界に現れ本格的な攻勢に出た際。破滅軍が有する瘴気モンスター、禍津核モンスターなどの雑兵の相手を貴方達冒険者にお願いしたい。我々は神格ヲ簒奪セシ禍津大蛇と魔神族の相手をする。決着が着くまでの間人々を守ってあげて欲しい」
つまり露払いの依頼というわけだが、本来S級やA級クランにそのレベルの依頼は来ない。どちらかと言えばメインの大物を相手取る事が多く、その他B級以下の冒険者にその依頼は設けられている。でなければ、命の危険も多大なものとなりランクアップに必要な貢献度にも響くからだ。命あっての物種。露払いとはいえ一日中戦いに明け暮れれば十分な戦果と言える。
それを高ランク冒険者である自分達に依頼が来た。
「質問させてもらっていいっすか?」
狂狼の猛りの盟主レグルスが挙手して真剣な表情で宗八を見つめている。
「どうぞ」
「依頼はいい。だが、いつ実行される依頼なのかで準備に取り掛かるンでその辺りの目星は付いてるンすか?」
至極真面目な質問だ。彼が質問せずとも別のクランから質問が飛んでいた事だろう。
「目星は全く付いていない」
宗八の馬鹿にしていると受け取られかねない回答にざわつく会場。その中で盟主や頭の回るメンバーは先の宗八の説明内容から状況を察した。
「現状、実際に観てもらった様にオベリスクの設置や魔神族が介入して大事件に発展する事案は発生している。しかし、隣接する世界で相対したというのにすぐさま乗り込んで来ないのには理由があると考えている。例えば世界樹の出現。そもそも神格ヲ簒奪セシ禍津大蛇の目的は世界樹に貯蔵されている神力なので、それまでの間は顕現はしないと考えています」
話に割り込む者はいない。宗八は続けて語る。
「世界樹の出現条件は人類が三分の一まで減少する事。我々が抵抗すれば抵抗するほど顕現は遅れ、その間に魔神族の世界と繋がれば討伐して敵戦力を落としていく。やがて世界樹が出現するか、痺れを切らして顕現するかのタイミングが貴方方の依頼が実行に移されるタイミングとなります。納得出来ましたか?」
レグルスは首肯し納得に至った。
「つまり、俺達も水無月さんと同様に子孫も含めた戦力の保持をする必要があるって事ですよね?」
「その通りです」
宗八は先ほどの説明の中でこう言っていた。「我々が敵対している存在との闘争が終わるまでは協力者同士で情報の共有は認める」と。いつ始まりいつ終わるかもわからない戦いに身を委ねる事を提示されている。
しかも、敵が敵だ。自分達冒険者の前に大人数の兵士も鍛錬ダンジョンで鍛えて尚冒険者も戦力として計算していると言う事は、それだけ人手が足りないと言う事を指す。魔物群暴走という一部地域だけの話ではなく世界中で発生する魔物群から人類を守れという本当に世界を守る為の群像依頼。
「……やるしか無いンすよね?」
「その通りです」
余りに話が大きすぎるし重すぎる。
察した冒険者の面々も不安そうな表情を浮かべる理由は、自分達だけの話ではないからだ。自分を担保に受けるならやってやる!と言う気概はある。だが、子孫も巻き込むとなると話は変わる。本来冒険者は好き好んでやる職業ではない。安住の地を得て手に職を持つ一般人の生活が出来るならそちらの方が危険も無く安全な幸せを送る事が出来る。
自分達が冒険者という職を選んだのは、知人の冒険譚に憧れたり絵本の勇者に憧れたり幼い頃の憧憬が源となり戦いばかりの世界に足を踏み入れたのだ。楽しいばかりではなく仲間を失う怖さも理解しているからこそ子孫に戦いを強制する契約には尻込みしてしまったのだ。
「……皆様のご不安は手に取る様に分かります。我々とて子孫にまでこんな戦いを強いる事を是としているわけではない。それでも世界を守らなければ全てが無に帰すからこそ覚悟を決めている。負ければナユタの世界やアルダーゼの世界の様に人類が生きていける世界ではなくなるのだから……」
宗八の言葉に顔を上げた冒険者に悲痛な表情が浮かんでいる。
そうだ、自分達は観たのだ。負ければ家族も知人も子供の未来も何もかもが失われてしまう。戦わなければ生き残れない。水無月宗八が率いる七精の門のメンバーを順々に見回すが、誰一人として降りるつもりが無く盟主に続くとばかりに大した事でも無い様な表情を浮かべている。浮かべられるだけの修羅場を実体験で潜り抜けたのだ、当然だろう。
「それに因縁があるのは自分達で子孫は義務で戦う羽目になるのだから、出来れば決着は自分達で付けたいとも思っています。今後も異世界へ渡った先で神格ヲ簒奪セシ禍津大蛇と相対する機会があれば討伐する心積もりではいますが、その際に嫌がらせでこの世界に魔物が溢れる可能性はある。その際も皆さまには力を貸していただきたい。これなら少しは気休めになるでしょうか?」
確かにいつ訪れるやもしれない襲撃に備えるよりは自分達を担保出来る方が何倍も気は軽くなる。
確約の話ではない事は承知の上だが、彼らは本気で自分達の代で終わらせる事を願い行動するだろう。その行動が結果に結び付けば良し、外れたとしても誰が最前線で今日まで魔神族を退けて来た彼らを罵れるだろうか……。
各クランの盟主の瞳に力が宿る。覚悟は決まった。
立ち上がり振り返れば隣や背後に控える仲間達と視線が絡み合う。あるクランは「伯父貴!やるんだろ!だったら最後まで一緒だよ!」と身内でもある盟主の男に寄り添い、またあるクランは「お前はやるんだろ。当然副盟主が支えなくてどうする」と男気をアピールし、またあるクランは「やってやるっスよ!」と気合の大声と共に立ち上がり盟主に従う意思を見せた。
クランとしての参加ではなくPTとして参加していた冒険者たちも仲間と視線を合わせて互いの気持ちを確認した後に頷きあって覚悟を決めた。
「覚悟は決まった様ですね……」
隣で冒険者の動向を見守っていたアルカンシェの呟きが聞こえた。
宗八の眼からしても先ほどまでの表情とは打って変わって、真っ直ぐにこちらを見返していると感じた。
「それでは、我々が依頼する群像依頼を受注される方は起立を願います」
申し訳ないがどれだけ言い訳をしたところで参加は強制だ。
それでも受注という体裁を取るのは彼らが納得し積極的に聖戦に参加しやすくする意味合いがある。心の持ち様で戦闘へのモチベーションも大きく変わり、嫌々戦っていれば禍津魔物群暴走が始まった時点で敵の多さに心にヒビが入るだろう。そしていつまでも終わらない戦いに疲弊し早い段階で心が折れ、必要に駆られて身体を動かすだけの人形となり、人助けの為に一瞬戻った心が不慮の事故を起こし戦力を失っていく。
宗八の言葉に一斉に立ち上がる各クランと冒険者PT。皆が良い覚悟を浮かべていた。
この覚悟さえ決まっていれば宗八達が戦いを終わらせるまで、と希望を持ち落ち着いて戦局を見る余裕が生まれる。咄嗟の判断に焦りが減り不慮の事故は未然に防がれ仲間がフォローに入る事も可能で戦力を失う機会も減るはずだ。
冒険者を見守り続けていたギルドマスターの意見を草案にして国と協力をして群像依頼を発令出来る下地を整え、仲間が一分模擬戦で力の差を魅せつけ七精の門のファンを増やし、現実を見せて一度は絶望しても七精の門が居るという希望を残して気休めとはいえ甘言を発する。
ネックであったF級冒険者水無月宗八の存在も狂狼の猛りのおかげで払拭された。
「申し訳ない。しかし、ありがとうございます。あえて言葉を選べば……聖戦。それがいつ始まるかはわかりませんが、始まれば確実に世界蹂躙の為に魔物が世界に溢れます。兵士は当然拠点や避難補助に動く事を優先せざるを得ませんが、皆様が時間を稼ぎ民草にその武威を、戦う背中を見せる事で彼らは「大丈夫なのだ」「こんな事件は一時的な事だ」「守ってもらえるなら少しの事は我慢しよう」そう思ってもらえます。それは各地で行われる避難指示にも有効な影響を与え混乱を抑え被害を少なく出来ます。避難場所でも民草のストレスを減らし貴方達は希望となるのです!」
英雄願望は冒険者ならば誰しも罹患する病気だ。
民草の発注する討伐依頼で感謝はされるがその他大勢の冒険者と十把一絡げな視線に不満があるかと言えば無いと言うだろう。当然だ。現実に英雄などと呼ばれる強い人は居ないし多くの人を危険に晒す強力な魔物も発生しない。駆け上がる階段すら無いのだから満足出来るに決まっている。
しかし、突如降って湧いた英雄へと繋がる階段が現れた。普段自己顕示欲が薄い冒険者だったとしても眼が変わるのは仕方のない。宗八の煽りに全員が爛々と輝く。
「ただし、聖戦で死んでしまえば生き残った仲間に比べて一段劣った冒険者として見られるでしょう。だからこそ、今は力を蓄えてください。この後、精霊との契約を皆様に施しますので精霊と仲良くなってください。質の高い模擬戦を希望するなら私達が協力しましょう。群像依頼に参加する他の冒険者との模擬戦も参考になるでしょう。とにかく貪欲に生き残る為……いえ、世界を守りつつ生き残る為にっ!」
宗八が見せた精霊纏は記憶に新しい。その後も模擬戦、そして破滅と戦う姿が冒険者の脳裏に浮かぶ。
あの強さに近づける手段を宗八は秘密にするのではなく、世界を守り生き残る為に開示するという。その大盤振る舞いについに冒険者の中に口角が上がる者が現れ始めた。
「さぁ!行動を開始しましょうっ!英雄になる為に!世界を守る為に!未来の為にっ!」
指導者もかくや。両手を広げて最後に語り掛けた宗八のメッセージに冒険者たちが吠える。
「「「「「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」」
これで後方を任せられる戦力を得る事が出来た。宗八は満足そうに笑顔を浮かべ、アルカンシェは手で口を隠しては居たが同様に満足そうな笑みを浮かべながら鍛錬ダンジョン修了式兼群像依頼受注式は計画通りに終わりを迎えた。
再び宗八達が姿を現した頃合いには、子犬の様に震えていた冒険者たちは落ち着きを取り戻していた。
予定通り正気にいち早く戻ったクランメンバーが中心となって声を掛け励まし合い仲間を正気に戻した様だ。
「皆様落ち着かれた様なのでさっそくですが、我々から皆様に受けていただきたい依頼をお伝えいたします」
流石にこの我々というのが宗八達七精の門を指すのではなく、国やギルドが主導となっている依頼であることに冒険者は理解していた。そして、彼らが矢面に立って自分達に語る意味も納得していた。
「これは——群像依頼です」
グランドとは自分達の生存圏を、大地を守るという意味合いがある。
群像依頼といっても規模は小~大と幅広く、基本的に魔物群暴走などの大軍を相手に各々が戦場で活躍しとにかく敵の数を減らして沈静化させる依頼の事を指す。負ければ村や町が襲われ生存圏を失う事からグランド・クエストと呼ばれている。
「誰もが主役。誰もが人生を賭し命の輝きを持って人々を守らなければ未来が無くなる」
ただし、今回の規模は最凶最悪だ。
「仕事内容は、最後のアレがいずれこの世界に現れ本格的な攻勢に出た際。破滅軍が有する瘴気モンスター、禍津核モンスターなどの雑兵の相手を貴方達冒険者にお願いしたい。我々は神格ヲ簒奪セシ禍津大蛇と魔神族の相手をする。決着が着くまでの間人々を守ってあげて欲しい」
つまり露払いの依頼というわけだが、本来S級やA級クランにそのレベルの依頼は来ない。どちらかと言えばメインの大物を相手取る事が多く、その他B級以下の冒険者にその依頼は設けられている。でなければ、命の危険も多大なものとなりランクアップに必要な貢献度にも響くからだ。命あっての物種。露払いとはいえ一日中戦いに明け暮れれば十分な戦果と言える。
それを高ランク冒険者である自分達に依頼が来た。
「質問させてもらっていいっすか?」
狂狼の猛りの盟主レグルスが挙手して真剣な表情で宗八を見つめている。
「どうぞ」
「依頼はいい。だが、いつ実行される依頼なのかで準備に取り掛かるンでその辺りの目星は付いてるンすか?」
至極真面目な質問だ。彼が質問せずとも別のクランから質問が飛んでいた事だろう。
「目星は全く付いていない」
宗八の馬鹿にしていると受け取られかねない回答にざわつく会場。その中で盟主や頭の回るメンバーは先の宗八の説明内容から状況を察した。
「現状、実際に観てもらった様にオベリスクの設置や魔神族が介入して大事件に発展する事案は発生している。しかし、隣接する世界で相対したというのにすぐさま乗り込んで来ないのには理由があると考えている。例えば世界樹の出現。そもそも神格ヲ簒奪セシ禍津大蛇の目的は世界樹に貯蔵されている神力なので、それまでの間は顕現はしないと考えています」
話に割り込む者はいない。宗八は続けて語る。
「世界樹の出現条件は人類が三分の一まで減少する事。我々が抵抗すれば抵抗するほど顕現は遅れ、その間に魔神族の世界と繋がれば討伐して敵戦力を落としていく。やがて世界樹が出現するか、痺れを切らして顕現するかのタイミングが貴方方の依頼が実行に移されるタイミングとなります。納得出来ましたか?」
レグルスは首肯し納得に至った。
「つまり、俺達も水無月さんと同様に子孫も含めた戦力の保持をする必要があるって事ですよね?」
「その通りです」
宗八は先ほどの説明の中でこう言っていた。「我々が敵対している存在との闘争が終わるまでは協力者同士で情報の共有は認める」と。いつ始まりいつ終わるかもわからない戦いに身を委ねる事を提示されている。
しかも、敵が敵だ。自分達冒険者の前に大人数の兵士も鍛錬ダンジョンで鍛えて尚冒険者も戦力として計算していると言う事は、それだけ人手が足りないと言う事を指す。魔物群暴走という一部地域だけの話ではなく世界中で発生する魔物群から人類を守れという本当に世界を守る為の群像依頼。
「……やるしか無いンすよね?」
「その通りです」
余りに話が大きすぎるし重すぎる。
察した冒険者の面々も不安そうな表情を浮かべる理由は、自分達だけの話ではないからだ。自分を担保に受けるならやってやる!と言う気概はある。だが、子孫も巻き込むとなると話は変わる。本来冒険者は好き好んでやる職業ではない。安住の地を得て手に職を持つ一般人の生活が出来るならそちらの方が危険も無く安全な幸せを送る事が出来る。
自分達が冒険者という職を選んだのは、知人の冒険譚に憧れたり絵本の勇者に憧れたり幼い頃の憧憬が源となり戦いばかりの世界に足を踏み入れたのだ。楽しいばかりではなく仲間を失う怖さも理解しているからこそ子孫に戦いを強制する契約には尻込みしてしまったのだ。
「……皆様のご不安は手に取る様に分かります。我々とて子孫にまでこんな戦いを強いる事を是としているわけではない。それでも世界を守らなければ全てが無に帰すからこそ覚悟を決めている。負ければナユタの世界やアルダーゼの世界の様に人類が生きていける世界ではなくなるのだから……」
宗八の言葉に顔を上げた冒険者に悲痛な表情が浮かんでいる。
そうだ、自分達は観たのだ。負ければ家族も知人も子供の未来も何もかもが失われてしまう。戦わなければ生き残れない。水無月宗八が率いる七精の門のメンバーを順々に見回すが、誰一人として降りるつもりが無く盟主に続くとばかりに大した事でも無い様な表情を浮かべている。浮かべられるだけの修羅場を実体験で潜り抜けたのだ、当然だろう。
「それに因縁があるのは自分達で子孫は義務で戦う羽目になるのだから、出来れば決着は自分達で付けたいとも思っています。今後も異世界へ渡った先で神格ヲ簒奪セシ禍津大蛇と相対する機会があれば討伐する心積もりではいますが、その際に嫌がらせでこの世界に魔物が溢れる可能性はある。その際も皆さまには力を貸していただきたい。これなら少しは気休めになるでしょうか?」
確かにいつ訪れるやもしれない襲撃に備えるよりは自分達を担保出来る方が何倍も気は軽くなる。
確約の話ではない事は承知の上だが、彼らは本気で自分達の代で終わらせる事を願い行動するだろう。その行動が結果に結び付けば良し、外れたとしても誰が最前線で今日まで魔神族を退けて来た彼らを罵れるだろうか……。
各クランの盟主の瞳に力が宿る。覚悟は決まった。
立ち上がり振り返れば隣や背後に控える仲間達と視線が絡み合う。あるクランは「伯父貴!やるんだろ!だったら最後まで一緒だよ!」と身内でもある盟主の男に寄り添い、またあるクランは「お前はやるんだろ。当然副盟主が支えなくてどうする」と男気をアピールし、またあるクランは「やってやるっスよ!」と気合の大声と共に立ち上がり盟主に従う意思を見せた。
クランとしての参加ではなくPTとして参加していた冒険者たちも仲間と視線を合わせて互いの気持ちを確認した後に頷きあって覚悟を決めた。
「覚悟は決まった様ですね……」
隣で冒険者の動向を見守っていたアルカンシェの呟きが聞こえた。
宗八の眼からしても先ほどまでの表情とは打って変わって、真っ直ぐにこちらを見返していると感じた。
「それでは、我々が依頼する群像依頼を受注される方は起立を願います」
申し訳ないがどれだけ言い訳をしたところで参加は強制だ。
それでも受注という体裁を取るのは彼らが納得し積極的に聖戦に参加しやすくする意味合いがある。心の持ち様で戦闘へのモチベーションも大きく変わり、嫌々戦っていれば禍津魔物群暴走が始まった時点で敵の多さに心にヒビが入るだろう。そしていつまでも終わらない戦いに疲弊し早い段階で心が折れ、必要に駆られて身体を動かすだけの人形となり、人助けの為に一瞬戻った心が不慮の事故を起こし戦力を失っていく。
宗八の言葉に一斉に立ち上がる各クランと冒険者PT。皆が良い覚悟を浮かべていた。
この覚悟さえ決まっていれば宗八達が戦いを終わらせるまで、と希望を持ち落ち着いて戦局を見る余裕が生まれる。咄嗟の判断に焦りが減り不慮の事故は未然に防がれ仲間がフォローに入る事も可能で戦力を失う機会も減るはずだ。
冒険者を見守り続けていたギルドマスターの意見を草案にして国と協力をして群像依頼を発令出来る下地を整え、仲間が一分模擬戦で力の差を魅せつけ七精の門のファンを増やし、現実を見せて一度は絶望しても七精の門が居るという希望を残して気休めとはいえ甘言を発する。
ネックであったF級冒険者水無月宗八の存在も狂狼の猛りのおかげで払拭された。
「申し訳ない。しかし、ありがとうございます。あえて言葉を選べば……聖戦。それがいつ始まるかはわかりませんが、始まれば確実に世界蹂躙の為に魔物が世界に溢れます。兵士は当然拠点や避難補助に動く事を優先せざるを得ませんが、皆様が時間を稼ぎ民草にその武威を、戦う背中を見せる事で彼らは「大丈夫なのだ」「こんな事件は一時的な事だ」「守ってもらえるなら少しの事は我慢しよう」そう思ってもらえます。それは各地で行われる避難指示にも有効な影響を与え混乱を抑え被害を少なく出来ます。避難場所でも民草のストレスを減らし貴方達は希望となるのです!」
英雄願望は冒険者ならば誰しも罹患する病気だ。
民草の発注する討伐依頼で感謝はされるがその他大勢の冒険者と十把一絡げな視線に不満があるかと言えば無いと言うだろう。当然だ。現実に英雄などと呼ばれる強い人は居ないし多くの人を危険に晒す強力な魔物も発生しない。駆け上がる階段すら無いのだから満足出来るに決まっている。
しかし、突如降って湧いた英雄へと繋がる階段が現れた。普段自己顕示欲が薄い冒険者だったとしても眼が変わるのは仕方のない。宗八の煽りに全員が爛々と輝く。
「ただし、聖戦で死んでしまえば生き残った仲間に比べて一段劣った冒険者として見られるでしょう。だからこそ、今は力を蓄えてください。この後、精霊との契約を皆様に施しますので精霊と仲良くなってください。質の高い模擬戦を希望するなら私達が協力しましょう。群像依頼に参加する他の冒険者との模擬戦も参考になるでしょう。とにかく貪欲に生き残る為……いえ、世界を守りつつ生き残る為にっ!」
宗八が見せた精霊纏は記憶に新しい。その後も模擬戦、そして破滅と戦う姿が冒険者の脳裏に浮かぶ。
あの強さに近づける手段を宗八は秘密にするのではなく、世界を守り生き残る為に開示するという。その大盤振る舞いについに冒険者の中に口角が上がる者が現れ始めた。
「さぁ!行動を開始しましょうっ!英雄になる為に!世界を守る為に!未来の為にっ!」
指導者もかくや。両手を広げて最後に語り掛けた宗八のメッセージに冒険者たちが吠える。
「「「「「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」」
これで後方を任せられる戦力を得る事が出来た。宗八は満足そうに笑顔を浮かべ、アルカンシェは手で口を隠しては居たが同様に満足そうな笑みを浮かべながら鍛錬ダンジョン修了式兼群像依頼受注式は計画通りに終わりを迎えた。
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