特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第16章 -勇者 VS 魔王-

†第16章† -02話-[冒険譚ハイライト]

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 七精剣しちせいけんカレイドハイリア、精霊の呼吸エレメンタルブレス神の心臓ディバインハート、魔法を封印した上でA級冒険者を複数人含むクランを圧倒した。ステータス差を知っている宗八そうはち達からすればでも当然の結果なので、名乗り上げてくれた[狂狼の猛りマーダーウルフルズ]には大人げない事をしたと思っている。
 とはいえ、疑われていた[水無月宗八みなづきそうはち]という人物のF級と言うイメージを払拭するには役に立った。
狂狼の猛りマーダーウルフルズの皆さんは大丈夫ですか?」
 高ステータスになった事で軽傷に収まった狂狼の猛りマーダーウルフルズのメンバーには光精ベルトロープとサーニャ&契約精霊フローライトが対処してササっと治してしまい、気絶していた面々には気付け薬での無理矢理意識を戻した。
「あ、はい……大丈夫ですンで気にしないでください……」
 そこには盛大に牙を砕かれた犬っころが居た。威勢の良かった君たちの方が魅力的だったぞ。
「お時間いただきありがとうございました。少し寄り道してしまいましたが、改めて鍛錬ダンジョンについての今後の説明になります」
 宗八そうはちは観客席を見回し予定にあった話を語る。

「ダンジョンに潜り、モンスターを狩り、称号を得て、ステータスを上げる。これは強くなるうえでの正当な手順です。普通に冒険者が一から今の皆さまくらいまで鍛えるのであれば、それこそ人生の大半を使い潰さなければなりません。サポートの無い生活、強制的に消費される莫大な移動時間、非効率なダンジョン周回……」
 冒険者の受け入れを始めてから三ヶ月程度でこの上がり幅だ。宗八そうはちの言葉を裏返せば、サポートがあり移動時間を一瞬で終え効率的なダンジョン構成に限定した効率の良い周回。その事実を改めて認識した冒険者たちは宗八そうはちの言葉に耳を傾ける。
「しかし、そこまでして得た強さはこの世界の脅威に対しては過剰な強さだ。強くなる仮定は楽しいものですが、文字通り敵の居なくなった後の人生は虚しい時間が死ぬまで続く。今回の協力は異例中の異例」
 地上に生息する魔物やダンジョンのモンスターは最大でもランク10までしか居ない。それ以上の突然変異の様な個体が現れても半世紀もしくは1世紀に有るか無いかの話であり、いずれも当時の戦力だけで討伐出来ている。過剰戦力は人を孤独にするのだ。
「なので、我々が敵対している存在との闘争が終わるまでは協力者同士で情報の共有は認めますが、戦いが終われば今の高ステータスは生きるのに不要な代物なので失伝させる。これはお願いではなく命令と思ってください」
 宗八そうはちの迫力に息を飲む。
 この知識を持つ者が全員善人ならば何の問題も無い。だが、そんな夢物語はあり得ない。確実に悪人にいつかその知識が回り未曾有鵜の被害が出るだろう。今度も数世紀に渡り眼は世界中にばら撒くけれど見逃す可能性を少なくする為にはこの時点で終わりを決めておく必要がある。
 そんな中で勇気を出して地鬼の聖剣グノームブレイバーの盟主セルゴートが挙手をする。
「同じダンジョンに潜り続ける向上心の無い冒険者は早々に気付くと思う。その際はどうするのだ?」
「偶々見つけたとして周回効率の最悪なダンジョンをいくつも攻略する奴はそうそう出ないでしょう。移動時間も馬鹿にならない。伸ばしたとしても精々が200~300。その程度なら見逃すが、意図的にその話を流布する冒険者が現れれば。——私の子孫が潰します」
 子孫まで出して永い刻を見定めて話す宗八そうはちの覚悟に冒険者たちはこの日何度目かの目を見張る。冒険者は今を生きる。
 この瞬間、水無月みなづき宗八そうはちという存在が自分達と同じ、いち冒険者とは誰もが乖離させた。本気なのだ。先にも見せた強さだけではなくこの世界の在り様にも気を遣う。それはまつりごとに携わる責任を認識し、自分の強さも世界の異物であると認知している強き者。

「他にご意見が無い様ですので、ここからは我らが破滅と相対した記録をハイライトでお送りいたします。その記録はショックも大きいかと思います。皆様の声は全て制限させていただきますのでお好きに騒いでいただいて構いません」
 先の戦闘から継続して纏ったままの子供達に指示を出すと、風精ニルチッイに視線を向けるだけで観客席の空気振動が制限され、闇精クーデルカが[よるとばり]を発動し、火精フラムキエを起点に子供達が協力した幻が全員を包み込んだ。
「落ち着いてください。これより-劇場版-アルカンシェ冒険譚 ~総集編~の上映を開始します。全て幻による再現となりますので見えなくとも隣には先ほどまでいた仲間が同様に座っています。不安であれば手を繋ぐなりの対策はしていただいて構いませんが暴れれば周りに座る仲間に被害が及ぶ事を理解した上で落ち着いて幻に身を委ねてください」
 宗八そうはちの言葉に既に仲間が視認出来なくなって声も届かない冒険者たちは隣に座る仲間に腕を伸ばして手を握るまでいかずとも肩にや腕や膝に手を置き一人ではないと認識して安心感を得始める。
「それではどうぞ、お楽しみくださいませ……」
 やがて冒険者の真っ暗だった視界に映し出された風景は、アスペラルダの闘技場に試作品と言われる禍津核まがつかくが投下されたシーンから上映が始まった。

 * * * * *
 水の国アスペラルダ、風の国フォレストトーレまでは新米精霊使いが王女アルカンシェと共に仲間を増やしながら強くなっていく冒険譚であったが、途中途中で登場するオベリスクという物体や魔神族という人知を超えた敵対存在が不穏な空気を漂わせる。
 冒険者は魔族や魔王以外の脅威の存在を理解した。
 次にアスペラルダに戻った宗八そうはち達は青竜の巣へ赴き、霹靂へきれきのナユタ、苛刻かこくのシュティーナ、滅消めっしょうのマティアス、隷霊れいれいのマグニに続きやがてアルカンシェの宿敵となる氷垢ひょうくのステルシャトーとの戦闘シーンとなった。
 全て幻で再現された戦場に当事者視点で放り込まれた冒険者たちは、召喚術を駆使して一人で宗八そうはち達全員を相手取る戦闘能力に脅威を感じた。もしも自分達が戦ったなら……。考えても考えても普通の冒険者である彼らには空を飛ぶことも亜空間に干渉する事も素早く移動する手段も無い事が出来ない。そこがネックとなりA級S級に関わらずどうしても倒せるイメージが浮かばない。冒険者は魔神族の脅威を理解した。

 続いて、再びフォレストトーレに戦場は戻り奪還作戦で叢風むらかぜのメルケルスが登場する。
 廃都を囲む様に各地で戦闘が行われる。そこには鍛錬ダンジョンに参加した複数のクランも参戦しており、当時を振り返れば周知された敵情報が何故か事前に揃っていたり夜に空が明るくなったり等不思議な事が多くあった。映像が進めばそれらの背景には全て宗八そうはち達が関わっていたのだと察した。
 キュクレウス=ヌイを討伐した後に切り替わった風景は土の国アーグエングリンにある黄竜の巣。そして、異世界に乗り込み魔神族ナユタとの激闘。キュクレウス=ヌイですら現実味の無い脅威であったのに人型の魔神族ナユタ、そして真の力を解放して巨大となった半雷神ナユタと宗八そうはちの死闘には、言葉通りの意味で付いていけなかった。
 あんな戦場に参加すれば一瞬で死んでしまう。人型のままであれば仲間と共に戦い様はある。だが……これは人にはどうしようもない。災害だ……。
 だというのに。ギリギリとは言え、避けたり防御したりでまともな被弾をしない宗八そうはちの手札の多さも常軌を逸していた。彼の強さの源が精霊達に支えられている事を冒険者たちは理解した。

 やがて、宗八そうはち達の冒険譚は最新の戦い。火の国ヴリドエンデで発生した異世界への入り口と通り抜け神族アルダーゼとの戦いに入った。
 しかし、今度の敵は魔神族ではなく神族。ここまでの冒険譚と幻の中で行われる宗八そうはち達の会話から今回の闘いの目的が世界樹の破壊であると認識して再現された幻は進み、クランメンバーの激闘と魔神族の介入。
 そして。——神格ヲ簒奪セシ禍津大蛇ウロボロスの登場。
 あぁ、これだ……。
 ここまでの冒険譚で宗八そうはち達の戦闘力の高さは理解していた。それなのに彼らが恐れる存在。
 最後まで戦場に残った水無月宗八みなづきそうはちが逃げ帰る形で戦いは終わりを迎え、同時に冒険者に掛けられた魔法も解除されて意識が現実に戻って来る。
「皆様、お疲れさまでした」
 幻とはいえ精神に多大な疲労を及ぼす程の経験をした冒険者たちは一様にボーッとしていた。
 宗八そうはちの声で数人がやっと正気に戻るが、大半は未だに身体の震えと脳が拒絶する思考とでまだ話を聞く状態ではない。
「少し休憩を挟んだのちに我々から皆様への依頼をお伝えして、この度の鍛錬ダンジョンの件は修了となります」
 時間を開けて、冒険者たちが正気を取り戻した頃合いに宗八そうはち達は再び姿を現して依頼内容を口にした。
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