5 / 23
呼び出しと買い物と
しおりを挟む
さっくりと終わったと思われたこの依頼の問題だが、後日、彼女の家が画策した詐欺だと判明した。私たち魔法陣描きに魔石の入れ替えを指摘して、賠償責任を負わせるつもりだったようだ。具体的には、依頼の受付と納品の検品を彼女が行い、魔石の入れ替えを突き付ける予定だったらしい。ギルドで入れる特別な刻印は、彼女が故意に入れていなかった。私の事件から、彼女が受領した依頼を全て見直して発覚した。この時点で、すでにいくつかの依頼がギルド員にされていて、すべて、彼女が依頼の受付を担当していたことも分かっている。受付のミリアから直接、依頼の斡旋をする予定のものが、手違いでボードに張り出されていたとはいえ、ナーサリーに受け付けてもらい、刻印を施してもらえた私は、非常に運がよかったと言える。これには、領主も「恩を仇で返された」と激怒して、重犯罪者として裁かれた。魔法ギルドの信用に関わるのだから、各所から妥当と判断されたそうだ。
ちょっとほっとした。
腐敗の森で大繁殖中のラフランシアは、まだ討伐中だが、魔法ギルドの方は、職員の教育の変更や体制の見直しも終わり、だいぶ落ち着いてきた。そんな中、私は、「ギルド長から呼び出されているよ」と、納品を受け取るナーサリーから告げられた。
「それは・・・・。関わりたくないんだけど」
「無下には出来ないのは、分かるだろう?」
私を見たギルド長の第一声は、「明日、領主のところに行くぞ」だった。あの事件について、直接会って謝罪し、報償を与えたいと、領主直々にギルド経由で呼び出しがあったそうなのだ。
「被害に遭ったのは私だけじゃないし」
「だが、気付いて知らせてくれたのは、サイカだけだったからな。被害が出る前でよかったよ」
「そりゃ、他は新人だったから気付かなかっただけで、ちゃんとベテランの人が受けてたら、もっと早く気付けてたと思う」
「成人したてのお前も新人だ。ベテランが受けるほどの依頼じゃないってのもミソだったんだよなぁ。それにな、防毒と灯りの魔法陣の提供にも感謝しているそうだ。収束にはまだ時間が掛かるが、戦況は上々らしい。兎に角、明日、晴れ着を着て、ギルドに10時に来い」
「防毒と灯りの魔法陣は、ギルドに卸しただけだし。不良在庫を処分出来たから、別に感謝されることでもないし。晴れ着なんて持ってないし」
「今から買いに行け。ナーサリーをつけてやる」
私は、領主様に会うのが嫌でごちゃごちゃと御託を並べてみたものの、領主様の館を訪ねるのは決定事項。ギルド長と副ギルド長が一緒に来るのだけが救いか。
「私は、今から旅に出ます。いつ帰るか分かりません、とお伝えください」
「そんなこと言えるか!」
本当に権力者とは関わり合いたくないんだけどなぁ。あまりゴネてギルド長たちの心証を悪くするのもよくない。
「分かりました。ナーサリーをお借りします」
私は仕方なく、ナーサリーと晴れ着を購入しに行くことになった。そして・・・・。
「え?それ?!ちょっと、選ぶ気ある?普段着てる服と変わらないじゃない!」
ナーサリーが案内してくれた洋服屋で私が選び出した服は、不評を買ってしまった。普通に白いレースの襟付きの紺のシンプルな踝丈のワンピース。清楚系で落ち着いてて無難だと思ったが、この世界の貴族を訪問するには相応しくないらしい。
「こっちかこっち。これもいいわね」
「領主様のご邸宅へご訪問でしたら、こちらやこちらもお薦めいたしますよ」
ナーサリーと店員が選んだのは、私から見るとドレスに近い。私の若草色の髪が映えるようにと、黄色やオレンジや萌黄色や薄紫色などの明るい色で、長さは、踵が隠れるくらいある。全体的にヒラヒラしていて、刺繍が至る所に施してあった。形は何とかワンピースの体を成しているだけマシ?
「え″っ。こんなヒラヒラフワフワしたのでいいの?」
晴れ着といえば、シンプルなワンピースに揃いの上着を想定していた私としては、かなり敷居が高い。
「何言ってるの!晴れ着なんだから、布を重ねて清楚に上品に可愛くしなきゃ!ほら、試着して」
数着の服と共に試着室に放り込まれた私は、店員さんに手伝ってもらいながら、着せ替え人形のごとく次々と服を替えられた。
「これにしましょう。これなら、長く着られるわ。靴はこれで、鞄はこっち。次は、アクセサリーね!さっ、行くわよ」
アクセサリーまで?!
「必要ないって!」
「何寝ぼけたこといってるの?領主様のところに行くのよ?!必要最低限の格好をしないと恥をかくのはサイカと我が魔法ギルドよ?」
必要最低限にアクセサリーも含まれるの?本当に?!
「とにかく、ネックレスくらいはしなさい。ピアスはいつも着けてるその真珠で許してあげるわ」
結局、ナーサリーには敵わず、真珠の一粒ネックレスを購入することになった。そこに、真珠をあしらった髪留めも付け加えられた。普段着けるには少し仰々しいかもしれないデザインだが、服を選ばないと言う理由で無理やり納得した。翌日、ナーサリーに従っておいてよかったと、ギルド長たちの格好を見て感謝することになる。
ちょっとほっとした。
腐敗の森で大繁殖中のラフランシアは、まだ討伐中だが、魔法ギルドの方は、職員の教育の変更や体制の見直しも終わり、だいぶ落ち着いてきた。そんな中、私は、「ギルド長から呼び出されているよ」と、納品を受け取るナーサリーから告げられた。
「それは・・・・。関わりたくないんだけど」
「無下には出来ないのは、分かるだろう?」
私を見たギルド長の第一声は、「明日、領主のところに行くぞ」だった。あの事件について、直接会って謝罪し、報償を与えたいと、領主直々にギルド経由で呼び出しがあったそうなのだ。
「被害に遭ったのは私だけじゃないし」
「だが、気付いて知らせてくれたのは、サイカだけだったからな。被害が出る前でよかったよ」
「そりゃ、他は新人だったから気付かなかっただけで、ちゃんとベテランの人が受けてたら、もっと早く気付けてたと思う」
「成人したてのお前も新人だ。ベテランが受けるほどの依頼じゃないってのもミソだったんだよなぁ。それにな、防毒と灯りの魔法陣の提供にも感謝しているそうだ。収束にはまだ時間が掛かるが、戦況は上々らしい。兎に角、明日、晴れ着を着て、ギルドに10時に来い」
「防毒と灯りの魔法陣は、ギルドに卸しただけだし。不良在庫を処分出来たから、別に感謝されることでもないし。晴れ着なんて持ってないし」
「今から買いに行け。ナーサリーをつけてやる」
私は、領主様に会うのが嫌でごちゃごちゃと御託を並べてみたものの、領主様の館を訪ねるのは決定事項。ギルド長と副ギルド長が一緒に来るのだけが救いか。
「私は、今から旅に出ます。いつ帰るか分かりません、とお伝えください」
「そんなこと言えるか!」
本当に権力者とは関わり合いたくないんだけどなぁ。あまりゴネてギルド長たちの心証を悪くするのもよくない。
「分かりました。ナーサリーをお借りします」
私は仕方なく、ナーサリーと晴れ着を購入しに行くことになった。そして・・・・。
「え?それ?!ちょっと、選ぶ気ある?普段着てる服と変わらないじゃない!」
ナーサリーが案内してくれた洋服屋で私が選び出した服は、不評を買ってしまった。普通に白いレースの襟付きの紺のシンプルな踝丈のワンピース。清楚系で落ち着いてて無難だと思ったが、この世界の貴族を訪問するには相応しくないらしい。
「こっちかこっち。これもいいわね」
「領主様のご邸宅へご訪問でしたら、こちらやこちらもお薦めいたしますよ」
ナーサリーと店員が選んだのは、私から見るとドレスに近い。私の若草色の髪が映えるようにと、黄色やオレンジや萌黄色や薄紫色などの明るい色で、長さは、踵が隠れるくらいある。全体的にヒラヒラしていて、刺繍が至る所に施してあった。形は何とかワンピースの体を成しているだけマシ?
「え″っ。こんなヒラヒラフワフワしたのでいいの?」
晴れ着といえば、シンプルなワンピースに揃いの上着を想定していた私としては、かなり敷居が高い。
「何言ってるの!晴れ着なんだから、布を重ねて清楚に上品に可愛くしなきゃ!ほら、試着して」
数着の服と共に試着室に放り込まれた私は、店員さんに手伝ってもらいながら、着せ替え人形のごとく次々と服を替えられた。
「これにしましょう。これなら、長く着られるわ。靴はこれで、鞄はこっち。次は、アクセサリーね!さっ、行くわよ」
アクセサリーまで?!
「必要ないって!」
「何寝ぼけたこといってるの?領主様のところに行くのよ?!必要最低限の格好をしないと恥をかくのはサイカと我が魔法ギルドよ?」
必要最低限にアクセサリーも含まれるの?本当に?!
「とにかく、ネックレスくらいはしなさい。ピアスはいつも着けてるその真珠で許してあげるわ」
結局、ナーサリーには敵わず、真珠の一粒ネックレスを購入することになった。そこに、真珠をあしらった髪留めも付け加えられた。普段着けるには少し仰々しいかもしれないデザインだが、服を選ばないと言う理由で無理やり納得した。翌日、ナーサリーに従っておいてよかったと、ギルド長たちの格好を見て感謝することになる。
10
あなたにおすすめの小説
異世界召喚されました。親友は第一王子に惚れられて、ぽっちゃりな私は聖女として精霊王とイケメン達に愛される!?〜聖女の座は親友に譲ります〜
あいみ
恋愛
ーーーグランロッド国に召喚されてしまった|心音《ことね》と|友愛《ゆあ》。
イケメン王子カイザーに見初められた友愛は王宮で贅沢三昧。
一方心音は、一人寂しく部屋に閉じ込められる!?
天と地ほどの差の扱い。無下にされ笑われ蔑まれた心音はなんと精霊王シェイドの加護を受けていると判明。
だがしかし。カイザーは美しく可憐な友愛こそが本物の聖女だと言い張る。
心音は聖女の座に興味はなくシェイドの力をフル活用して、異世界で始まるのはぐうたら生活。
ぽっちゃり女子×イケメン多数
悪女×クズ男
物語が今……始まる
無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!
カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。
でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。
大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。
今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。
異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。
ダーク
「…美味そうだな…」ジュル…
都子「あっ…ありがとうございます!」
(えっ…作った料理の事だよね…)
元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが…
これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。
★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい
ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26)
鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。
狭い個室にはメイド服がかかっている。
とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。
「この顔……どこか見覚えが……」
幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。
名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー)
没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。
原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。
「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」
幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。
病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。
エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18)
全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。
タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。
airria
恋愛
勝手に召喚され
「お前が番候補?」と鼻で笑われ
神獣の前に一応引っ立てられたら
番認定されて
人化した神獣から溺愛されてるけど
全力で逃げ出したい私の話。
コメディ多めのゆるいストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる