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衝撃の式から場所を移動し、屋敷の庭が披露宴会場だ。式に参加できなかった人たちも愛し子と縁を結ぶべく満員大入り。ガイウスに隠されるようにエスコートされ、私たちも会場の隅でお腹を満たした。ここでは、料理長の新メニューはお披露目しない。領民も参加できる領主の就任式も兼ねた領地の式で出すと聞いた。
「それにしても、お前の家族、全くお前に見向きもしないな」
「すべてにおいてリルアイゼに劣る私に割く時間はないんだよ」
お兄様が気にかけてくれるからそれだけで充分だ。ガイウスは私の頭をポンポンと撫でてくれた。ここにも私を受け入れてくれる人がいた。それだけでほっこりと幸せになれる。
「お前、家族に本気を見せたことないだろ?その年で完璧に擬態して個性を埋没させるなんて、余程優秀なやつにしかできない」
はっと、ガイウスを見た。意地悪そうに笑っている。なんか、色々とバレてませんか、私?
「意外か?」
そりゃね。
「調薬を見てれば分かるさ」
「そんなもの?」
「お姉様♪お久しぶりですわね」
私とガイウスの会話を打った切って、リルアイゼが声をかけてきた。自慢するかのように婚約者である第3王子殿下を伴っている。
「リルアイゼ・・・・」
「フィル様。ご紹介いたしますわ。わたくしの双子の姉ですの。あまり似ておりませんが、間違いなく双子ですわ」
「ほお。お前が出来損ないの片割れか。確かに、全く似てないな。リルが愛し子でよかったぞ。あり得ないが、こんなのが愛し子だったらと思うと寒気がするな。精々、リルの足を引っ張ることだけはするなよ?」
この妹にして、この婚約者あり!実にお似合いです!よかったぁ。愛し子だって名乗らなくて。やっぱりさ、愛し子なんて貧乏くじだよね。ガイウスが後ろから私を支えてくれているが、心配無用だ。
「心配なさらずとも、お姉様には何も出来ませんわ。私と違って、教養どころか魔力も魔法の素養も才能も平民程度ですもの」
「ふん。それこそ問題だろう。教養くらい人並みに身に付けてもらわねば、学園でリルが笑われることになる」
「フィル様。心配してくださるのですか。リル、嬉しい。フィル様がわたくしのことを守ってくださるのでしょう?ですが、お姉様は誰も守ってくださいませんわ。肩身の狭い思いをするかと思うと今から胸が潰れそうですわ」
「リルは優しいのだなぁ。このような姉でも気にかけるとは、流石俺の婚約者だ」
「まあ、フィル様ったら」
私とガイウスは二人の怒濤のやり取りに呆気にとられて言葉を挟むことすらできずにいた。そして、ふたりはコントのようなやり取りに満足したのか、さっさと会場の中心に戻っていった。えっと、どうしろと?
「あれが、愛し子か?なんとも・・・・。よくあれで女神の愛し子だなんて名乗ってられるな」
あ、うん。あれが本当に愛し子ならね。私でもそう思う。ガイウスの言葉に私は笑うしかなかった。
さて、今日もガイウスの工房にお邪魔しています。暫くここに泊めてもらえないか交渉しようかと思っている。その理由はお兄様にある。私はお兄様たちが王都に滞在するための離れに居候している。だから、新婚のお兄様たちの邪魔はダメ、というのは建前で、もう、イチャイチャイチャイチャと、一日中漂う甘々な空気にお腹が一杯なのだよ。
「フハハハハハハククク」
笑い事じゃない。朝から夜まで見せられる私の身になってみろ!王都じゃあ、出掛けるにも色々と面倒なんだ。今日ここに来るにもお兄様がつけた護衛と一緒に来た。彼は送り届けると屋敷に引き返したから今はいない。
「むう。居たたまれないんだよ!」
「泊めてやるからそう膨れるなって。フフフククク」
「本当?」
「ああ。ライナスにちゃんと言っとけよ?心配するからな。2階の客間を使え」
「はーい♪」
ガイウスからはあっさりと許可がおりた。大変だったのはお兄様の方だった。「男と同棲なんてけしからん!」と言い、ガイウスに詰め寄る始末だ。私まだ12歳だから!同棲というより、保護の方がしっくり来る。そのお兄様は呆れたプルメアお姉様に説得され、回収されていった。
「お前が絡むとライナスは途端にポンコツだな」
「・・・・」
私もそう思ったから返す言葉もない。そっと目を逸らした。ガイウスの工房は2階が住居になっている。ここに来る度に2階のキッチンでお昼ご飯を作っていたからちょっとは知っていたが、お風呂まで完備されてるとは思わなかった。平民の家にお風呂はまずない。工房の奥に最新式の魔道具が備え付けられていた。我が家の年代物とはわけが違う。浄化機能付きで水を変える必要はない上、水は常に一定の量が張られており溢れて大惨事などということもない。そして、浴槽のみならず洗い場も掃除不要の親切設計だった。
「なんか、お風呂だけはこだわりを感じる」
「お!気付いたか♪風呂は大事だろ?鍛冶の後に入る風呂は格別だ。本当はなぁ、薬草風呂にしたかったんだがなぁ」
「ここまでこだわったなら、その薬草風呂にすればよかったんじゃない?」
「毎回薬草をセットするのが面倒」
そこは手動なのか・・・・。じゃ、ガイウスには向いてないね。
「それならさ、ポーションかオイルをちょっとだけ入れてみたら?」
「ああ、それな。浄化機能があるから無駄だった」
なんて、高性能な機能なんだ!
「残念だったね」
それからお兄様たちが領地に帰るまでの短い期間を私はガイウスの家でまったりと過ごした。
「それにしても、お前の家族、全くお前に見向きもしないな」
「すべてにおいてリルアイゼに劣る私に割く時間はないんだよ」
お兄様が気にかけてくれるからそれだけで充分だ。ガイウスは私の頭をポンポンと撫でてくれた。ここにも私を受け入れてくれる人がいた。それだけでほっこりと幸せになれる。
「お前、家族に本気を見せたことないだろ?その年で完璧に擬態して個性を埋没させるなんて、余程優秀なやつにしかできない」
はっと、ガイウスを見た。意地悪そうに笑っている。なんか、色々とバレてませんか、私?
「意外か?」
そりゃね。
「調薬を見てれば分かるさ」
「そんなもの?」
「お姉様♪お久しぶりですわね」
私とガイウスの会話を打った切って、リルアイゼが声をかけてきた。自慢するかのように婚約者である第3王子殿下を伴っている。
「リルアイゼ・・・・」
「フィル様。ご紹介いたしますわ。わたくしの双子の姉ですの。あまり似ておりませんが、間違いなく双子ですわ」
「ほお。お前が出来損ないの片割れか。確かに、全く似てないな。リルが愛し子でよかったぞ。あり得ないが、こんなのが愛し子だったらと思うと寒気がするな。精々、リルの足を引っ張ることだけはするなよ?」
この妹にして、この婚約者あり!実にお似合いです!よかったぁ。愛し子だって名乗らなくて。やっぱりさ、愛し子なんて貧乏くじだよね。ガイウスが後ろから私を支えてくれているが、心配無用だ。
「心配なさらずとも、お姉様には何も出来ませんわ。私と違って、教養どころか魔力も魔法の素養も才能も平民程度ですもの」
「ふん。それこそ問題だろう。教養くらい人並みに身に付けてもらわねば、学園でリルが笑われることになる」
「フィル様。心配してくださるのですか。リル、嬉しい。フィル様がわたくしのことを守ってくださるのでしょう?ですが、お姉様は誰も守ってくださいませんわ。肩身の狭い思いをするかと思うと今から胸が潰れそうですわ」
「リルは優しいのだなぁ。このような姉でも気にかけるとは、流石俺の婚約者だ」
「まあ、フィル様ったら」
私とガイウスは二人の怒濤のやり取りに呆気にとられて言葉を挟むことすらできずにいた。そして、ふたりはコントのようなやり取りに満足したのか、さっさと会場の中心に戻っていった。えっと、どうしろと?
「あれが、愛し子か?なんとも・・・・。よくあれで女神の愛し子だなんて名乗ってられるな」
あ、うん。あれが本当に愛し子ならね。私でもそう思う。ガイウスの言葉に私は笑うしかなかった。
さて、今日もガイウスの工房にお邪魔しています。暫くここに泊めてもらえないか交渉しようかと思っている。その理由はお兄様にある。私はお兄様たちが王都に滞在するための離れに居候している。だから、新婚のお兄様たちの邪魔はダメ、というのは建前で、もう、イチャイチャイチャイチャと、一日中漂う甘々な空気にお腹が一杯なのだよ。
「フハハハハハハククク」
笑い事じゃない。朝から夜まで見せられる私の身になってみろ!王都じゃあ、出掛けるにも色々と面倒なんだ。今日ここに来るにもお兄様がつけた護衛と一緒に来た。彼は送り届けると屋敷に引き返したから今はいない。
「むう。居たたまれないんだよ!」
「泊めてやるからそう膨れるなって。フフフククク」
「本当?」
「ああ。ライナスにちゃんと言っとけよ?心配するからな。2階の客間を使え」
「はーい♪」
ガイウスからはあっさりと許可がおりた。大変だったのはお兄様の方だった。「男と同棲なんてけしからん!」と言い、ガイウスに詰め寄る始末だ。私まだ12歳だから!同棲というより、保護の方がしっくり来る。そのお兄様は呆れたプルメアお姉様に説得され、回収されていった。
「お前が絡むとライナスは途端にポンコツだな」
「・・・・」
私もそう思ったから返す言葉もない。そっと目を逸らした。ガイウスの工房は2階が住居になっている。ここに来る度に2階のキッチンでお昼ご飯を作っていたからちょっとは知っていたが、お風呂まで完備されてるとは思わなかった。平民の家にお風呂はまずない。工房の奥に最新式の魔道具が備え付けられていた。我が家の年代物とはわけが違う。浄化機能付きで水を変える必要はない上、水は常に一定の量が張られており溢れて大惨事などということもない。そして、浴槽のみならず洗い場も掃除不要の親切設計だった。
「なんか、お風呂だけはこだわりを感じる」
「お!気付いたか♪風呂は大事だろ?鍛冶の後に入る風呂は格別だ。本当はなぁ、薬草風呂にしたかったんだがなぁ」
「ここまでこだわったなら、その薬草風呂にすればよかったんじゃない?」
「毎回薬草をセットするのが面倒」
そこは手動なのか・・・・。じゃ、ガイウスには向いてないね。
「それならさ、ポーションかオイルをちょっとだけ入れてみたら?」
「ああ、それな。浄化機能があるから無駄だった」
なんて、高性能な機能なんだ!
「残念だったね」
それからお兄様たちが領地に帰るまでの短い期間を私はガイウスの家でまったりと過ごした。
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