ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子

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衝撃的な出会い

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4人でお茶にしようと学園の個室があるカフェに寄ることになりました。そこで私が聞きそびれた話題をレオナルド様自ら振ってきました。

「さっきナンザルト先生が言っていたことだけど。セアベルテナータ殿下の最高相性の相手は、ロッテと・・ミリーだ」

「「は?」」

私とミリーナ様の口から間抜けな声が漏れてしまいました。ナンザルト先生とレオナルド様の様子からそうかなぁと思っていましたが、まさかミリーナ様も、とは。

「嘘だろ?マジかよぉ」

ランスロット様は天井を仰いでいます。

「間違いならよかったんだけどね」

レオナルド様の苦々しい表情から間違いではないと分かりました。ミリーナ様は青ざめた顔をしてランスロット様の制服を掴んでいます。ランスロット様の手がその手を取って包んでいました。私も同じくらい青い顔をしているのでしょう。レオナルド様が手を繋いで抱き寄せてくれていなければ、震えていたかもしれません。

「レオはそっちの訓練も受けたんだ?俺は適正がなかったからな」

「ああ。私とアレクはカイザール様にきっちり教え込まれたよ」

私とミリーナ様が何のことか分からず首を傾げていることに気付いたランスロット様が説明してくれました。つまり、高位貴族の子息は他人の魔力相性を見れるように訓練を受けるのだそうです。これにも適正がありますが、一度は必ず受けるのだとか。いずれ王族の相手を見つけることになるのですから、適正のある者は徹底的に叩き込まれるのだそうです。男性は大変ですね。

「で、どうする?」

ランスロット様の眼がギラリとレオナルド様を見据えています。

「会わせないのが一番だけど、同学年だからね。私の隣の部屋に入ったよ。昨日、挨拶に来たから分かったんだ」

「わたくし、嫌ですわよ?そんな何人も娶るような不誠実な方。ですが、その方が国王になると決まったわけではないでしょう?」

「いや。あの国は長子が家を継ぐ。セアベルテナータ殿下は立太子されてるから、何事もなければ国王だ。今回この学園に来たのも、ナンザルト先生が言っていた通りお相手探しだと思うよ」

「そんな・・・・」

レオナルド様の従妹のこともあるというのになんということでしょう。

「会わないというのは無理だ。だから、ロッテもミリーもひとりにならないこと。ロッテには私がついているつもりだけど、ランスもミリーと離れない方がいい。今年のカリキュラムはそれを踏まえて組めよ?」

「分かってる」

「でしたら、ロッテともカリキュラムを合わせたいですわね。淑女コースの授業はわたくしも取る予定ですの」

「うん。その方が安心できるかな」

ミリーナ様と一緒に授業を受けるのは嬉しいですが、なんだか、面倒なことになってきました。あの国の強引なやり方は有名です。どんな手を使ってくるか分かりません。私たちはお互いのカリキュラムを擦り合わせて私とミリーナ様がひとりにならないよう授業を組み上げました。



そして、その日の夕食を4人で摂るために食堂へと移動したその先で・・・・。私は天敵である赤い頭を持つ黒い物体と遭遇したのです。それは、私たちを視界に入れたのかこちらに寄ってくるではありませんか。

「bktgk%#>$\>igfv!!!いや~!!!来ないで~!!!」

無理無理無理無理!!!
なんで魔獣が食堂にいるのですか?
よりによって、ゴキだなんて。なんで誰も倒さないのですか?!!!

「レオ!レオ!!!」






食堂に入ってすぐ、セアベルテナータ殿下が私たちの方を見た。ランスは「あいつか」と呟いている。褐色の肌にビヤ樽体型の気障を絵に描いた傲慢な雰囲気を隠しもしない人物こそ私とランスの敵となる人物だ。セアベルテナータ殿下は、その細い目を見開いてロッテとミリーを凝視したかと思ったら、つかつかと私たちに歩みより、自己紹介もなく突然ロッテとミリーナ様の前で跪いた。

「ああ。我はなんと幸運なのか。このように美しい妃をふたり一度に見つけられるとは!」

セアベルテナータ殿下の演技めいた大袈裟な口上が始まった瞬間、ロッテが急にパニックに陥った。

「ロッテ?!」

すぐさまロッテを抱きかかえ、私たちの周りに消音付きの結界を張った。セアベルテナータ殿下にばかり注視していた私は隣にいたロッテの変化に気付くことができず、対応が遅れてしまった。ロッテは凄まじい魔力を放出して、周り一面に浄化の魔法を放っていた。食堂は建てたばかりのようにピカピカだ。幸いなことにまだ夕食には少し早い時間のため人が疎らにしかいない。

「ロッテ!結界を張ったからね?浄化の魔法は止めよう?」

「あ」

セアベルテナータ殿下もその側近の生徒たちも食堂にいる生徒も料理人も呆気にとられている。

「どうしたの?」

「ゴキ、ゴキが・・・・。だから、でも。攻撃魔法は禁止ですから、あの、綺麗にしようと・・・・」

「???ゴキ?ああ、ジャイアントコックローチのことね。何処に?」

「居ましたでしょう?そこに!ヒィ。まだ、まだ、い、いるぅぅぅ。やっぱり、火炎放射で焼ききらないとダメ???」

ちらっとセアベルテナータ殿下の方へと視線を向けたロッテが私にしがみつきながら、ブツブツと物騒なことを呟いている。なんとなく状況が分かってきた。ロッテが指差した場所には・・・・。憐れだな。確かに、林檎色の髪と黒の制服を着たあのシルエットはそう見えなくもない。

「ロッテ、よく見てごらん。あれは、ジャイアントコックローチではないよ?セアベルテナータ殿下だと思うんだけど?」

「よく見たくなんてありま・・・・え?セアベルテナータ殿下?」

ロッテは私の胸から顔をあげて私に確認するように見上げてきた。余程嫌だったのか、涙で潤んだ瞳からポロリと一粒零れ落ちる。私はそれを唇で受け止めて、更にロッテの目の周りにチュッチュッと緊張を和らげるように触れた。周りか「キャー」とか「貴様!!!」とか「「ハァ」」とか聞こえてくるが、全部無視だ。

「うん。たぶん?」

ロッテは恐る恐るといった感じでそちらを振り向いた。ロッテにとっては天敵とも言える魔獣だから見たくないのも仕方ない。嫌そうにじっと観察しているようだが、私の制服を掴む手は緩まない。

「あれ?本当に人間?良かったぁ。跡形もなく消し去るところでしたわ」

ほっとしたロッテがボソッと呟いた一言に私は消音付きの結界にして良かったと心からそう思った。すぐにロッテも落ち着きを取り戻し、私は周りの様子をそれとなく探った。

さて、この場をどうしたらいいものか?

食堂はシーンと静まり返っている。ロッテも人間を魔獣に間違えてしまった罪悪感からかおろおろと視線をさ迷わせ、口を閉じたり開いたりして、何と言葉を発すればいいか分からずにいる。そして、どれくらいそうしていたか。沈黙を破ったのは、セアベルテナータ殿下だった。

「ああ。我はなんと幸運なのか。このように美しい妃をふたり一度に見つけられるとは!」

え・・・・?

再び同じ台詞を一語一句違えることなく発した。それも、先程よりももっと気合いの入った大根役者さながらに、私にぴったりと寄り添うロッテとランスに腰を引き寄せられたミリーに堂々と言ってのけたその厚顔さには拍手を送りたい。どうやら、殿下自身は悲鳴をあげられた不名誉現実を無かったことにしたいらしい。ランスと目配せしあい、それに乗ることにした。

「セアベルテナータ殿下、その様なところに膝をつけて如何なされましたか?」

そっとロッテを背中に隠し、セアベルテナータ殿下と対峙した。ランスも同じことをしている。

「お初にお目にかかります。クロイバル侯爵子息ランスロットと申します。以後お見知りおきを」

ロッテとミリーが私たちの背後に隠れて見えなくなり、セアベルテナータ殿下は立ち上がった。

「ああ。挨拶が遅れたが、我はグリフォル族連合王国の第1王子にして王太子のセアベルテナータだ。お主たちの後ろにおる・・・・。居らぬな・・・・」

ロッテとミリーにはこの間に隠蔽の魔法で隠れてもらった。今頃、ロビーで私たちを待っているだろう。

「何か?」

白々しいと分かっていても、ここにいるのは私とランスだけということにしたい。これだけの目撃者がいてもだ。学園内とはいえ、ロッテの仕出かした騒ぎは、例え悲鳴をあげただけだとしても、他国の王家を愚弄したことになり、最悪、外交問題になりかねない。

「いや、いい。邪魔をしたな」

その意図に気付いたかどうかはともかく、殿下が引いてくれた。彼の側近たちはそれで済ませたくはないようだが。

「!殿下!」

「どうした?我は少し疲れているようだ。ここに我の妃となる相手がふたりいたような気がしたが、幻だったようだ」

「殿下!幻ではございません!居りましたよ。しかも、殿下に対し悲鳴をあげ、愚弄したではありませんか?」

「そのようなことがあったか?我のような麗しき王子に悲鳴をあげるなどあるわけなかろう。気でも触れたか?おおかた私の秀麗な姿にあてられて歓喜の声をあげたのだろう」

セアベルテナータ殿下の中では、先ほどのことは既に抹消され記憶にないらしい。あるいは、都合良く変換されたのだろう。

演技か、それとも本当に記憶にないのか?馬鹿なのか、策士なのか?私は食堂にいるAクラスの奴等に目配せした。頷いているから、この後のやり取りを後で教えてもらえるだろう。そして、私とランスは食堂を後にして、ふたりの待つロビーへと急いだ。
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