ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子

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頭のおかしなナルシスト

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私はミリーナ様と自分に隠蔽を掛けて食堂を離れました。今は1階のロビーでレオナルド様たちを待っています。来る途中で隠蔽を解きましたから、ミリーナ様とおしゃべりしながらソファに座っていますが、お互いに緊張を隠しきれません。暫くすると、レオナルド様とランスロット様が1階に降りてきました。私はすぐにレオナルド様に駆け寄りました。

「レオ、先ほどは暴走してしまいごめんなさい」

レオナルド様は、ぽんぽんと私の頭を撫でてくましたが、私のしたことはこの学園にあっても不敬罪に問われる可能性があるほどなのです。

「大丈夫だよ。お茶会室に移動しようか」

私とミリーナ様の滞在する階にだけお茶会室と称される客間が存在します。ミリーナ様とふたりの時には良く利用しています。簡易の給湯室があるだけですが、お菓子を持ち寄っておしゃべりに興じるのです。今回はそこで4人で夕食を摂ることにしました。今日はもうセアベルテナータ殿下と遭遇したくはありません。

「わたくしの作ったもので申し訳ないのですが・・・・」

今日のメニューは、ビーフシチューをメインにシーザーサラダ、ピザ、パン、デザートはイチゴのムースとフライドポテトです。

「うわっ!旨そう」

「いい匂いですわね」

「とうとうロッテの料理まで・・・・」

ちょっとムスッとしているレオナルド様は放っておいて、私はさっさと料理を並べました。不機嫌ながらもちゃんとレオナルド様も手伝ってくれます。

「こんな凝った料理を作れるなんて、ロッテはおうちの料理人に習いましたの?」

「え、ええ。まあ・・・・」

いいえ、優秀な家政婦さんと主婦たち過去世に師事しました。独学の部分も大いにありますが。

「食べようぜ?」

ランスロット様に促されて、私たちは一先ずお腹を満たすことにしました。

「なあ。ロッテはなんであんな大規模な浄化なんてしてんだ?」

話題はやっぱり、それ、ですよね・・・・。

「ランス、その話はあんまりこの場にふさわしくないから、後でな。それより、セアベルテナータ殿下のこと」

「あれは、馬鹿なのか?それとも惚けてるのか?」

「わたくしたちが消えた後、何がありましたの?」

「それなぁ」

ランスロット様とレオナルド様は、私たちが去った後のことをこと細かく教えてくれました。どうやら、私たちのことは幻とされたようですし、私の愚行も無かったことになったらしいです。確かに、話を聞く限り、ランスロット様の疑問は尤もです。

「そんな方が国王だなんて、その国、大丈夫ですの?」

ミリーナ様の懸念も分かります。

「大丈夫でしょ。側近は分かってたし、なにより、あの国は部族長の権限が強いからね。どれだけ愚王がたっても周りが支えるさ。国王の一番の仕事は、魔力の強い子をたくさんもうけることだから、最高相性をできるだけ多く探すんだよ」

「産まれた子が各部族の誰かと婚姻することで国として成り立ってるからな、あの国は」

「迷惑この上ないです・・・・」

そんな話をして食事を終えた私たちは、食後のお茶を飲みながら私の愚行へと話が流れました。

「で、ロッテのあの悲鳴はなんだったんですの?」

言わないといけませんか?できるなら、思い出したくも口にしたくもありません。

「私が話すよ。ロッテは口にしたくもないでしょう?」

こくんと頷いて、レオナルド様にお任せすることにしました。私のことを良く分かっています。

「ロッテはね、セアベルテナータ殿下をジャイアントコックローチと見間違えたんだ」

「グフォ。・・・・確かに似てるな。あの林檎色の髪といいシルエットといい」

「大きさ的にもちょっと小さいですけど、有りですわね」

「ロッテはそれが天敵でね。以前フォンテーヌ公爵領で巣を見つけたとき、地形が変わるほど攻撃しちゃったんだ。森の奥深くだったから、そんなに周りに影響はなかったんだけど、小山がひとつ消えて湖になった。3000体程いたジャイアントコックローチも跡形もなく消え去ったよ」

「は?」「え?」

そうなんですよ。あの時は、初めてそれ・・を見て、おぞましさとその大きさと数の多さに、気が付いたら地形が変わってたんです。自分でもあれはやり過ぎたと反省しています。

「だから、ジャイアントコックローチを見つけたら、私を呼ぶように言い聞かせてあるんだ」

「はあ~。確かにジャイアントコックローチは、1体見たら100体いると思え。5体見たら巣があると思えだからな」

「そうですわね。でも、繁殖力が強いだけで1体1体はそれほど強くはないですわよ」

「どうもね、ロッテはあのシルエットというか、存在自体がダメなんだ」

「そういうの、いるよな。それで、あの浄化なんだ」

「わたくし、セアベルテナータ殿下のことはもうそれ・・にしか見えないんですの。ですから出来るだけお会いしたくないというか・・・・」

近づいてきたらまた悲鳴をあげてしまうかもしれません。そう思うとへにょんと眉が下がってしまいます。思い出すのも嫌なのです。

「そうだよねぇ。またやっちゃいそうだよね。どうしようか?」

「レオから離れません」

レオナルド様は鼻歌でも歌いそうなくらいご機嫌で、私をぎゅうしてきました。そんな私たちをランスロット様とミリーナ様のなんとも形容しがたい複雑な顔で見ていますが、それしかないでしょう?





翌日から私はレオナルド様と常に一緒にいます。というか、それ自体いつものことですから、クラスの誰も気にしません。昨日、食堂にいたマイカル様とドミニク様のお話から、セアベルテナータ殿下は極度のナルシストだと判明しました。私のあげた悲鳴も自分への賛美に摺り変わっているとのことです。

その日1日、件の殿下を避け続け、遭遇は回避できたのですが、寮に帰る前に寄ったカフェで遭遇してしまいました。

「ああ、我の妃たち。昨日の幻は私を恋い焦がれるそなたたちの想い故のものであったのか。さあ、我の手を取り、共に我の国へ参ろうではないか」

何これ?
どんな嫌がらせ?

レオナルド様が咄嗟に結界を張って私を引き寄せてくれたので、セアベルテナータ殿下の全貌を見ることは阻止できました。が、昨日とは違い授業後の大勢生徒があつまる公衆の面前カフェで、大声で叫ぶお芝居するこのセアベルテナータ殿下ナルシストを誰か止めてください。

「殿下、まず、妃殿たちに自己紹介されては?」

「うむ。そうだな。我はグリフォル族連合王国の王太子セアベルテナータ・グリフォルだ。そなたたちの夫になる。特別にセアと呼ぶことを許そう。そなたたちのことは、ミリー、ロッテと呼んでつかわすぞ?」

「「「「・・・・」」」」

「わたくしたちは愛称で呼ぶほどの仲ではございませんし、殿下の国に参るつもりもございません。御前失礼いたします」

ミリーナ様がキリッとした態度ではっきりとお断りを入れてくれました。私もうんうんとレオナルド様の陰から頷いて、同意を示します。そして、さっとその場から離脱しました。後ろの方から「我の妃たちは謙虚だなぁ。はははははは」と話の通じていないことがわかる台詞が聞こえてきました。

もう、いやぁ。
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