12 / 49
建国記念日
しおりを挟む
翌日の俺の朝は酷いものだった。
仕事が見つからず、貯めていたお金を切り崩して生きて行くしかない。
でも、生活に余裕があったわけではないから貯まっているお金も家賃が払えないほど少ない。
街の人達は建国記念日でお祭り騒ぎになっている。
俺とは住んでいる世界が違うみたいに温度差がある。
上層部の店は、建国記念日でほとんどの店は閉まっている。
出店屋台の店主に働きたいとはさすがに言えない。
お祭りの楽しい雰囲気をぶち壊したくはない。
下層部は毎年建国記念日になるとピリピリしている。
上層部だけが呼ばれて祝うのが許せないのか、お祭りの日は怒号と物を壊す音が響き渡る。
だから配達所もその日は表では建国記念日だからと言って休みになる。
店を開けたら何をされるか想像に容易い。
仕事探しは明日からしか出来ない、今日は大人しくしていよう。
帰って休む事も考えたが、明日どうすればいいのか先が暗くて休めない。
気分転換に建国記念日のお祭りに顔を出した。
大勢の人達の笑い声や幸せそうな声が聞こえる。
一日だけでも現実逃避したかったが、ほんの少しだけ俺の気分が晴れてきた。
ずっと、学校に仕事にと忙しくて身体を休ませる事を思い付かなかった。
頭も昨日より余計に酷くなって痛い。
身体もまだ殴られたところが痛くて上手く腕が動かない。
気分転換も出来たし、帰ろうと後ろを振り返った。
すると、何処からか楽器を演奏をする派手な音が聞こえてきた。
何処からか周りを見渡してみると、さっきまでお祭りを楽しんでいた人達が一斉にこちらにやってきた。
肩がぶつかり、痛みで声を上げそうになるのを片手で口を押さえる。
何処か避難出来る場所を探して、人の群れから抜け出した。
観光地になっている展望台、今日は特に人が多い。
それでも、下で人の群れに押し潰されるよりかはマシだ。
階段を上って、展望台まで行くとやはり人が大勢いて歩くのも一苦労だ。
音楽も激しくなり、パレードの始まりを知らせる。
落ち着くまでここでジッとしていよう。
下の人達はより良い場所を探して常に移動している。
ここは誰も動かないから安心だ。
展望台の隅の方が少し空いているのが見えて、誰にも気付かれないように移動する。
まさかまだ見える場所があったなんて気付かなかった。
隅だけ手すりがなくて危ないからここで見る人はいないのだろう。
落ちないように気を付けながらパレードを眺める。
街の人達が歓声を上げていて、盛り上がってきた。
騎士団長の名前を呼ぶ女性達の声も聞こえてくる。
アルフリード、竜として生まれ…その圧倒的力で竜王となった人物。
それでも人間を守るために味方をしていると、魔物達は裏切り者だと思う者もいる。
今はアルフリードに手も足も出ないが、魔物は人間に寄生して少しずつ力を付けている。
敵は恋のライバルだけではない、ゲームのメインキャラクターは大変だな。
離れて見ている俺は、ゲームから離れたプレイヤーの視点のようだ。
「…あるくん」
ズキッと頭が痛くなり、よろけそうになったが足に力を入れて倒れる事はなかった。
危ない、落ちたらまず無傷では助からない。
落ちた場所を間違えれば、最悪死んでしまう。
まだアルフリードは来ていないけど、元恋人と似ているんだ…見ない方がいい。
展望台の真ん中に移動しようと足を後ろに向けようとした。
その時、新しく入ってきた人達がはしゃぎながら俺の身体を押した。
手すりがあると思ったのだろう、俺の身体は宙に投げ出されていた。
なんでいつも上手くいかないんだろう。
俺がもっと強かったらイジメにも立ち向かって、仕事がクビにならなかった。
展望台が遠ざかっていくのを他人事のように見つめていた。
耳に響く人の声が一瞬だけ聞こえなくなった。
誰かが俺の名前を呼んでいた、俺の名前を呼ぶのは家族しかいなかった。
だからきっと家族だ、父が国に帰ってきたのかな。
同じ国に住んでるんだから、実家にも時々家に帰らないとな。
「ゆうと」と言われた言葉を最後に俺の意識はなくなった。
違う、その名前は…この世界では誰も知らないはずだ。
ーーーーー
ーーー
ー
「優斗、今度海に行こうか」
「海?」
「海に行きたいと言っていたから」
昔病院で話していた会話をずっと覚えててくれたんだ。
テレビでしか見た事がなかったから、いつか本物の海を見てみたいと行った事がある。
退院してからも、行く機会がなかなかなくてそのままだった。
有流くんと行く海はきっと楽しいものなんだろうな。
どうせなら花火が見える場所がいいと二人で話しながら楽しみにしていた。
その約束は、結局別れてしまったから叶わなかった。
俺と有流くんはゲームでのキャラクターと容姿が似ていた。
それだけではなく、名前もそっくりだった。
俺が生まれ変わったキャラクターがユートだとは思わなかった。
有流くんは一部だけど名前が似ていた。
俺が似た容姿と名前のキャラクターに生まれた。
もしかして、有流くんもそうなのではないのかと考える事がある。
でもそれはきっと俺がただ俺が会いたいからの願望だ。
実際に会ってどうするんだ、あの時とは違う。
ここはゲームの世界でヒロインが誰を好きになるのか分からない。
でも、アルフリードはヒロインが別の人を好きになっても一途に想い続けていた。
誰に好意を寄せられても、一生独身を貫く勢いだった。
愛に一途な彼の幸せを応援したいが、また俺は自分が傷付く道を選んでしまう。
どうやっても、俺はリーナと同じくヒロインに勝つ事は出来ない。
それに前世の俺だと知っても、俺の事を好きではなかった有流くんにとって邪魔な存在でしかない。
男と付き合っていたなんて忘れたい事実なんだと思う。
もういないんだ、俺も優斗ではなくユートなんだ。
名前を呼ばれた気がしたのはきっと俺の空耳だ。
意識が朦朧とした中で見た幻想。
何も知らなかったあの頃には戻れない。
仕事が見つからず、貯めていたお金を切り崩して生きて行くしかない。
でも、生活に余裕があったわけではないから貯まっているお金も家賃が払えないほど少ない。
街の人達は建国記念日でお祭り騒ぎになっている。
俺とは住んでいる世界が違うみたいに温度差がある。
上層部の店は、建国記念日でほとんどの店は閉まっている。
出店屋台の店主に働きたいとはさすがに言えない。
お祭りの楽しい雰囲気をぶち壊したくはない。
下層部は毎年建国記念日になるとピリピリしている。
上層部だけが呼ばれて祝うのが許せないのか、お祭りの日は怒号と物を壊す音が響き渡る。
だから配達所もその日は表では建国記念日だからと言って休みになる。
店を開けたら何をされるか想像に容易い。
仕事探しは明日からしか出来ない、今日は大人しくしていよう。
帰って休む事も考えたが、明日どうすればいいのか先が暗くて休めない。
気分転換に建国記念日のお祭りに顔を出した。
大勢の人達の笑い声や幸せそうな声が聞こえる。
一日だけでも現実逃避したかったが、ほんの少しだけ俺の気分が晴れてきた。
ずっと、学校に仕事にと忙しくて身体を休ませる事を思い付かなかった。
頭も昨日より余計に酷くなって痛い。
身体もまだ殴られたところが痛くて上手く腕が動かない。
気分転換も出来たし、帰ろうと後ろを振り返った。
すると、何処からか楽器を演奏をする派手な音が聞こえてきた。
何処からか周りを見渡してみると、さっきまでお祭りを楽しんでいた人達が一斉にこちらにやってきた。
肩がぶつかり、痛みで声を上げそうになるのを片手で口を押さえる。
何処か避難出来る場所を探して、人の群れから抜け出した。
観光地になっている展望台、今日は特に人が多い。
それでも、下で人の群れに押し潰されるよりかはマシだ。
階段を上って、展望台まで行くとやはり人が大勢いて歩くのも一苦労だ。
音楽も激しくなり、パレードの始まりを知らせる。
落ち着くまでここでジッとしていよう。
下の人達はより良い場所を探して常に移動している。
ここは誰も動かないから安心だ。
展望台の隅の方が少し空いているのが見えて、誰にも気付かれないように移動する。
まさかまだ見える場所があったなんて気付かなかった。
隅だけ手すりがなくて危ないからここで見る人はいないのだろう。
落ちないように気を付けながらパレードを眺める。
街の人達が歓声を上げていて、盛り上がってきた。
騎士団長の名前を呼ぶ女性達の声も聞こえてくる。
アルフリード、竜として生まれ…その圧倒的力で竜王となった人物。
それでも人間を守るために味方をしていると、魔物達は裏切り者だと思う者もいる。
今はアルフリードに手も足も出ないが、魔物は人間に寄生して少しずつ力を付けている。
敵は恋のライバルだけではない、ゲームのメインキャラクターは大変だな。
離れて見ている俺は、ゲームから離れたプレイヤーの視点のようだ。
「…あるくん」
ズキッと頭が痛くなり、よろけそうになったが足に力を入れて倒れる事はなかった。
危ない、落ちたらまず無傷では助からない。
落ちた場所を間違えれば、最悪死んでしまう。
まだアルフリードは来ていないけど、元恋人と似ているんだ…見ない方がいい。
展望台の真ん中に移動しようと足を後ろに向けようとした。
その時、新しく入ってきた人達がはしゃぎながら俺の身体を押した。
手すりがあると思ったのだろう、俺の身体は宙に投げ出されていた。
なんでいつも上手くいかないんだろう。
俺がもっと強かったらイジメにも立ち向かって、仕事がクビにならなかった。
展望台が遠ざかっていくのを他人事のように見つめていた。
耳に響く人の声が一瞬だけ聞こえなくなった。
誰かが俺の名前を呼んでいた、俺の名前を呼ぶのは家族しかいなかった。
だからきっと家族だ、父が国に帰ってきたのかな。
同じ国に住んでるんだから、実家にも時々家に帰らないとな。
「ゆうと」と言われた言葉を最後に俺の意識はなくなった。
違う、その名前は…この世界では誰も知らないはずだ。
ーーーーー
ーーー
ー
「優斗、今度海に行こうか」
「海?」
「海に行きたいと言っていたから」
昔病院で話していた会話をずっと覚えててくれたんだ。
テレビでしか見た事がなかったから、いつか本物の海を見てみたいと行った事がある。
退院してからも、行く機会がなかなかなくてそのままだった。
有流くんと行く海はきっと楽しいものなんだろうな。
どうせなら花火が見える場所がいいと二人で話しながら楽しみにしていた。
その約束は、結局別れてしまったから叶わなかった。
俺と有流くんはゲームでのキャラクターと容姿が似ていた。
それだけではなく、名前もそっくりだった。
俺が生まれ変わったキャラクターがユートだとは思わなかった。
有流くんは一部だけど名前が似ていた。
俺が似た容姿と名前のキャラクターに生まれた。
もしかして、有流くんもそうなのではないのかと考える事がある。
でもそれはきっと俺がただ俺が会いたいからの願望だ。
実際に会ってどうするんだ、あの時とは違う。
ここはゲームの世界でヒロインが誰を好きになるのか分からない。
でも、アルフリードはヒロインが別の人を好きになっても一途に想い続けていた。
誰に好意を寄せられても、一生独身を貫く勢いだった。
愛に一途な彼の幸せを応援したいが、また俺は自分が傷付く道を選んでしまう。
どうやっても、俺はリーナと同じくヒロインに勝つ事は出来ない。
それに前世の俺だと知っても、俺の事を好きではなかった有流くんにとって邪魔な存在でしかない。
男と付き合っていたなんて忘れたい事実なんだと思う。
もういないんだ、俺も優斗ではなくユートなんだ。
名前を呼ばれた気がしたのはきっと俺の空耳だ。
意識が朦朧とした中で見た幻想。
何も知らなかったあの頃には戻れない。
269
あなたにおすすめの小説
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
【書籍化決定】カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!
野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ
平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、
どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。
数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。
きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、
生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。
「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」
それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて――
★リブレ様にて紙書籍・電子書籍化が決定しました!
応援してくださった皆様のおかげです! 本当にありがとうございます!
発売日などの詳細は、決まり次第、作者のXや近況ボードなどでご報告させていただきますのでお待ちいただければ幸いです。
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる