私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

文字の大きさ
10 / 63

出会い

しおりを挟む
結局、彼に送ってもらうことになった。
 
「……ねぇ、結城くん」
 
「何?」
 
「元彼を気にしているのって殴られたから?」
 
「はぁ!?もしかして気づいてないの!?」
 
「え?何を?」
 
私がそう言ったら彼は頭を抱えて、何かぶつぶつ言い始める。
 
「確かに鈍感だとは聞いてたけど……ここまで?頭良さそうなのに何で勘は鋭くないんだよ……つーか、俺、気になってるって言ったよね?何で気づかないんだよ……」
 
「ゆ、結城くん?大丈夫?」
 
とりあえず、声をかけてみた。
すると結城くんは軽く私を睨みながら口を開く。
 
「莉恵さんって人から鈍感って言われない?」
 
「え?えぇ、言われるわね。でも、それがどうしたの?」
 
「つまりはそういうことだよ……」
 
「えぇ?全然分からないんだけど」
 
彼はため息を吐くとそれ以降何も喋らなくなった。

(私、何かした?
してないと思うんだけど……)

仕方がないので元彼と病院に行ったときの記憶を探る。
いくつか候補が出てきてさらに記憶を辿る。
そして、私は思い出した。
 
「あ、思い出した……」
 
「えっ!?」
 
「……もしかして、ゆうきちゃん?」
 
「うわぁ……思い出さなくてよかったのに……」
 
ある日、元彼と病院に行ったとき、敷地内の木の下で泣いている子がいて。
どうしたの?と声をかけた。
その子は怖いのが嫌だといっそ楽にしてほしいと泣いていて。
名前を聞いたらゆうきとだけ答えてくれた。
私は無理に頑張らなくて良いんだよ
と言って頭を撫でていたら元彼が戻って来たので
バイバイゆうきちゃん
と言って別れたのだ。
 
「今は短くなっているけど……ビルで会ったときよりもあのときの方が髪、長かったわね。それに普通名前を聞かれたら名字じゃなくて下の名前を答えるものよ?だから、女の子と間違えても仕方ないわよね?」
 
「あーっ!もう!それでいいから!もう思い出さないで!」
 
「ふふっ」
 
「(懐かしいなぁ……
そんなこともあったわ。
あ、でも……)」
 
「結城くんと会ったのはそれっきりよね?なのに、どうして私のこと覚えていたの?」
 
私がそう聞くと結城くんは少し考えながら口を開いた。
 
「……嬉しかったから。みんな、頑張れ頑張れとしか言わなくて……俺は頑張ってるのにこれ以上何を頑張ればいいんだって思って泣いてたら莉恵さんに声をかけられて。莉恵さんは無理に頑張らなくてもいいって言ってくれて……すごく気持ちが楽になったんだ。あぁ、頑張るの休んでいいんだって」
 
そう言った結城くんの顔は本当に嬉しそうで。
その笑顔に、またドキッとする。
もうすぐ私の家に着くのが寂しいと感じてまだ一緒にいたいと思った。
その寂しさを紛らわすために話をする。
 
「ねぇ、結城くん。どうやって私のこと知ったの?」
 
「え?あー……莉恵さんと話したのはそれっきりだったけど何度か来てたみたいだから写メ撮ってもらって看護師さんに聞いた」
 
「……ねぇ、それって隠し撮りって言うんじゃない?」
 
「……撮ったの俺じゃないし。ちゃんと正面向いててカメラ目線だから隠し撮りでも盗撮でもないよ……たぶん」
 
「ふふっ、冗談よ。そう言えば一回だけ看護師さんに写真撮らせてって頼まれたことあったわ」
 
「うん。その看護師さんと一番仲良かったから。その人に莉恵さんの名前とか年齢も教えてもらった」
 
「そうだったのね」
 
気づけばもうすぐ私の家だった。
 
「あ、私の家もうすぐ近くなの。だから、ここで大丈夫よ」
 
「……そっか。家に入ったらすぐ鍵閉めてチェーンかけてね」
 
「結城くんったら心配性ね」
 
「あのおっさんが捕まるまでは絶対!莉恵さんの家知ってるんだから」
 
「……そうね。分かった。言われた通りにする」
 
「うん。あとさ……」
 
いきなり結城くんは俯くと何か考えているみたいで気になって尋ねる。
 
「ん?何?」
 
「連絡先、教えて。看護師さんもさすがにそこまでは聞けなかったみたいだから。それに……」
 
結城くんは何か決心がついたみたいで顔を上げると言葉を続けた。
 
「もっと莉恵さんと話したいし会いたい」
 
その言葉が嬉しくて。
私は微笑んだ。
 
「……分かったわ。連絡先、交換しましょう」
 
そう言って連絡先を交換した。
結城くんはすごく嬉しそうで。
見ているこっちまで嬉しくなる。
 
「ありがと!莉恵さん!何かあったらすぐ連絡して。飛んでくから」
 
そう言って結局私は家の前まで送ってもらった。
その日からほぼ毎日のように結城くんとメールや電話をする。
色んな話をして元彼と別れた原因も結城くんにはあっさり話せた。
結城くんはあまり自分のことを話さないけれど趣味とか誕生日は教えてくれて。
週一回は会う約束をして一緒に出かけた。
結城くんは会う度に何故か一度は頭を抱え何かぶつぶつ言っていたけれど。
そして、明日はちょうど再会して一ヶ月になる。
いつものように結城くんと出かける約束をしていて今は着ていく服を選んでいるのだった。
 
「(あぁ、早く明日にならないかな……)」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

危険な台風

詩織
恋愛
確かに台風が接近するとは聞いていた。 けど電車も止まり、停電までって、そこまでになるとは。 残業で、会社に居た私はここに居るしかなく...

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

『愛が切なくて』- すれ違うほど哀しくて  

設楽理沙
恋愛
砂央里と斎藤、こじれてしまった糸(すれ違い)がほどけていく様子を描いています。 ◆都合上、[言う、云う]混合しています。うっかりミスではありません。   ご了承ください。 斉藤准一 税理士事務所勤務35才 斎藤紀子    娘 7才  毒妻:  斉藤淳子  専業主婦   33才 金遣いが荒い 高橋砂央里  会社員    27才    山本隆行  オートバックス社員 25才    西野秀行   薬剤師   22才  岡田とま子  主婦    54才   深田睦子  見合い相手  22才 ――――――――――――――――――――――― ❧イラストはAI生成画像自作 2025.3.3 再☑済み😇

先輩、お久しぶりです

吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社 秘書課 × 藤井昂良 大手不動産会社 経営企画本部 『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。 もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』 大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。 誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。 もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。 ――それも同じ会社で働いていた!? 音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。 打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

嘘つき同士は真実の恋をする。

濘-NEI-
恋愛
都内郊外のリゾートホテルでソムリエとして働く瑞穂はワイン以上にゲームが大好き。 中でもオンラインゲーム〈グラズヘイム〉が大好きで、ロッソの名前でログインし、オフの時間と給料の全てを注ぎ込むほどのヘビーユーザー。 ある日ゲーム仲間とのオンライン飲み会で、親から結婚を急かされている話を愚痴ったところ、ギルマスのタラントの友人で、ゲームの中でもハイランカーのエルバに恋人役を頼めば良いと話が盛り上がり、話は急展開。 そしてエルバと直接会うことになった瑞穂だったが、エルバの意外な正体を知ることに⁉︎ Rシーンは※ ヒーロー視点は◇をつけてあります。 ★この作品はエブリスタさんでも公開しています

処理中です...