私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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家宅捜査

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結城くんは知り合いに無理を言って呼び出してくれたらしい。
 
「おい!トラ!非番以外はいきなり電話かけてくんなって言ってんだろ!お陰でお偉いさんから目をつけられちまったよ!」
 
思っていたよりも早く到着したその人は、結城くんより背が高く、少し髪が短くて、茶色の混じった黒髪に茶色い目をした男だった。
 
「あのおっさんを捕まえられたのは俺の情報提供のおかげだろ?」
 
須川すがわな!おっさん見つけた、だけじゃ分かんねぇんだよ!つーか、お前、投げただろ!そんときに連絡しろよ!お前のこと、すげぇ恨んでたぞ!」
 
「ふーん?俺は正当防衛しただけだし」
 
「それ、過剰じゃないよな!?過剰防衛なら俺はお前を捕まえるぞ!」
 
「正当防衛だって。それより、そのおっさんの私物探してんだろ」
 
「あぁ、そういや、お前、心当たりがあるって言ってたな?」
 
「うん。その人が今日、取りに来てくれって言うからお前を呼んだ」
 
「はぁっ!?先に言えよ!いきなりここに来いとかふざけた呼び出しだと思ったら大手柄じゃん!で、どの人?」
 
二人のやり取りをただただ黙って聞いていると結城くんの知り合いと目が合う。
彼は気まずそうに口を開いた。
 
「……おい、まさか」
 
「そのまさかだけど?」
 
「……マジかよ。超やりづれぇ」
 
「えっと……?」
 
二人の会話の意味が理解出来なくて首を傾げた。
 
「あー、ども!俺、トラ……えーっと!結城大虎の友達で田原泰仁たはらやすひとって言います。えっと、須川の私物を回収させていただけるとのことで大丈夫でしょうか?」
 
「え、えぇ……」
 
「ご協力感謝いたします!では、家までご案内願いますか?」
 
さっきと喋り方が全然違うので少し唖然としつつも家まで案内する。
結城くんは少し悩んでいたみたいだけど一緒に行くとついてきてくれた。
 
「ここです、どうぞ」
 
「どうも。えっと、須川の私物はどちらに?」
 
「基本的にはそちら側を使うように言っていましたけど……私が仕事で家を空けている間は他も使っていたかもしれません」
 
「そうですか……それでは、念のため、栗山さんのクローゼットの中なども調べさせていただきたいのですが……女性警官をお呼びしても?」
 
「あ、えっと……自分で見るのは……だめでしょうか……?」
 
「あ!そうしましょう!本当はいけないんですけど今回は俺個人でやっていることなのでそれで大丈夫です!トラも怖いし!」
 
「え?」
 
「いいえ!何でもありません!では、栗山さんはご自分専用のものを見てください。自分のものではないものは俺に渡してくださいね。あとは俺とトラで見ますので」
 
「えっ?」
 
「は?」
 
私と結城くんがほぼ同時に驚きの声を上げる。
 
「え?嫌ですか?嫌ならトラには栗山さんを手伝っていただきますが?」
 
「えっ!?それはもっと困ります!」
 
「つーか、なんで俺が泰仁の手伝いをしなくちゃいけないんだよ」
 
「呼び出したんだからそれくらい手伝えよ……」
 
「嫌だよ。おっさんの使ってたものなんて触りたくもないね」
 
「あぁ、そうか。そうだよな。成り行きとは言え想い人の家に入れたんだもんな?目で物色するのに大忙しって訳か……そりゃあ、悪かったなぁ、邪魔して」
 
「……お前の一言二言多いところが嫌いだよ。あとで覚悟しとけよ」
 
「あ、いや、言葉が過ぎたことは謝る!だから、ここは穏便に済ませようぜ……?」
 
「はぁ……仕方ないな。莉恵さん、俺も手伝うけどいい?」
 
「え?あ、うん……」
 
二人の会話がどうにも理解出来ないけれど田原さんに言われた通り自分のものじゃないものを探し始めた。
そして、出てきたものに驚きを隠せない。
盗撮したと思われる卑猥なDVDの数々。
三時間ほど経過して田原さんが口を開く。
 
「思ってたよりも出てきたなー……栗山さん、ご協力感謝いたします!すごく助かりました。これで須川も大人しく自供してくれるでしょう。これからもトラをよろ……ぐふぅっ!」
 
田原さんがまだ喋っているのに結城くんがみぞおちに一発入れていた。
 
「おい、コラ、泰仁。これ以上、余計なことを言ってみろ?美琴みことにこの間美人な婦人警官と仲良さそうに食事してたことバラしてやるからな?」
 
美琴と言う女の名前を聞いて胸がズキッとする。
 
「お、まっ……俺じゃなかったら、公務執行妨害と暴行罪で逮捕されてたぞ……それに、その件はどうか内密にお願いします……俺、もう戻るから……何も言わないから。本当ごめんなさい。マジで怖いから。視線で人が殺せるなら俺もう死んでるから。なぁ、マジで許してくれって。今度の休み、なんか奢るからさ」
 
「……いいよ。今度の休みは美琴とどっか出かけるんだろ。その邪魔したら今度は俺が美琴に怒られるし。次はないと思えよ?」
 
「おう!じゃあ、俺は戻るよ。栗山さん、今日は本当にありがとうございました!」
 
「いえ。あ、そうだ。これもどうぞ。彼が使っていた携帯です」
 
「おぉ!ありがとうございます!本当助かります!それじゃあ、俺はこれで失礼します」
 
「あ!待ってください!田原さん!」
 
私が田原さんを止めるとなぜか結城くんも驚いた。
その理由はわからないまま、続ける。
 
「あの、一つだけ、お伺いしたいことがあるんですけど……」
 
「あ、はい。何でもどうぞ。答えられる範囲でなら答えます」
 
「どうして私の名前を?私、名乗ってなかったですよね?」
 
「え?あ、あー……そうでしたっけ?いや、答えは簡単なんすけど……どこまで話していいものか……」
 
「え?」
 
「俺が電話で呼び出したときに教えたんだ。ごめん、莉恵さん。そういえば許可取ってなかったよね」
 
「「え?」」
 
結城くんの言葉に驚いて声を出したら声が重なった気がした。
 
「あれ……?今、田原さんも驚きませんでした?」
 
「き、気のせいっす!あ、それと俺のことは他に警官がいなければどんな呼び方でもいいんで!それじゃあ、今日は本当にありがとうございました!失礼します!」
 
田原さんはそういうと出て行く。
 
「(私の気のせいだったのかなぁ……?)」
 
そう思っていたら結城くんが口を開く。
 
「莉恵さん、よかったね。これでもう大丈夫だよ」
 
「あ、うん。結城くんのおかげね。本当にありがとう」
 
「どういたしまして。それじゃあ、俺もそろそろお暇するよ」
 
「あ……うん」
 
私は少し寂しく思いながら結城くんを見送った。
結城くんが遠ざかるにつれて、話に出てきた美琴って子のことがすごく気になる。
 
「(一番仲の良い女の子なのかな……?
もしかして、彼女とか……?)」
 
そんなことを考えていたら急に後ろを振り返った結城くんと目が合った。
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