私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

文字の大きさ
15 / 63

誕生日

しおりを挟む
しばらくしてやっと顔の火照りがなくなった私はふと時計を見る。
するともう夜の七時を回っていた。
 
「も、もう!結城くんのせいで外デートできなくなったじゃない!」
 
「そんなに楽しみにしてたの?」
 
「それはそうよ!わざわざ有給まで取って休んだのに!」
 
「ごめんね?莉恵さんと一緒にいられるだけで嬉しいのに手作りチョコまでもらえて舞い上がっちゃって……今からでも外デートする?」
 
「もう良いわよ……私だって結城くんと一緒にいられるだけで嬉しいもの。あ!でも、夕飯は食べて行ってね?」
 
「え?莉恵さん、作ってくれるの?」
 
「えぇ!任せて!」
 
「……分かった。ご馳走になります」
 
「結城くん、好き嫌いある?」
 
「特にはないかな」
 
「じゃあ、好きな食べ物は?甘いもの以外で」
 
「うーん……入院食の方が多いからなぁ……あ。唐揚げ好きだよ」
 
「分かったわ!じゃあ、唐揚げ作るわね」
 
「うん。楽しみにしてる」
 
「そういえば、ご両親に連絡しなくて大丈夫?」
 
何気なく聞いたことだったのになかなか返事が返って来ない。
私は作業を止めずに呼びかける。
 
「結城くん?」
 
「え?あ、あぁ……それじゃあ、連絡入れてくるね」
 
結城くんはそう言って廊下に出た。
 
「(そういえば、結城くんの家のことどころか結城くんのことも何にも知らないな……
あまり自分のことは話してくれないし……)」
 
そんなことを考えながら下ごしらえを済ます。
連絡が終わったのか結城くんが戻ってきて私のところに来た。
 
「何か手伝えることはない?」
 
「大丈夫よ。座って待っていて」
 
「……うん、分かった」
 
結城くんは言われた通りに座る。
しばらくして唐揚げが完成。
お皿に盛りつけて結城くんのところへ持って行く。
 
「お待たせ。はい、唐揚げだよ」
 
「わぁ、美味しそう!」
 
「ふふっ、ありがとう。どうぞ、召し上がれ」
 
「うん!いただきます!」
 
そう言って結城くんはパクッと食べる。
熱かったのかハフハフしていた。
一つを食べ終えて口を開く。
 
「すっごく美味しい!莉恵さん、料理上手だね」
 
「そ、そう?これくらい普通よ?」
 
私がそういうと微笑んで謙虚だな~と言いながら食べ続ける。
結城くんは完食してくれた。
 
「ご馳走様でした」
 
「お粗末様でした」
 
私が使った食器を片付けていると、結城くんも手伝ってくれる。
 
「これくらいはやらせて。ね?」
 
「じゃあ、お願いするわ」
 
「うん」
 
片付けが終わり二人でくつろぐ。
そして、タイミングを見計らって結城くんにプレゼントを渡した。
 
「結城くん、これ……誕生日おめでとう」
 
「え?」
 
結城くんは驚いた顔をしながらもプレゼントを受け取る。
 
「……一回しか言ってないのに覚えててくれたんだ」
 
「えぇ、覚えやすかったし。忘れないわ」
 
「ありがとう、莉恵さん。こんなに嬉しい誕生日は初めてかも。あ、もしかして夕飯作ってくれたのも俺の誕生日だから?」
 
「ま、まぁ……そういうことになるけれど……結城くんが食べたいならいつでも食べさせてあげるわよ」
 
「本当?本当にすごく嬉しい。ねぇ、プレゼント、開けてもいい?」
 
「どうぞ。気に入るかは分からないけれど……」
 
「莉恵さんからのプレゼントなら何でも嬉しいよ?」
 
そう言いながらチョコ同様ラッピングを外していく。
誕生日プレゼントは悩みに悩んでこげ茶色の二つ折り財布にした。
中身を見た結城くんは嬉しそうに私を見る。
 
「ありがとう!莉恵さん!大事に使うね」
 
「喜んでもらえたみたいで良かった……」
 
「さっきも言ったけど、莉恵さんからのプレゼントなら何でも嬉しいよ?」
 
「田原さんの写真でも?」
 
「……何でそんなもの持ってるのか、から説明してもらうかな。泰仁に」
 
「そういうことじゃなくて!やっぱり何でも良くないじゃない!」
 
「莉恵さんが一生懸命考えてのプレゼントだったら受け取るよ。泰仁の写真でも。燃やす可能性が高いけど」
 
「もー!持っていないしもらう気もないけれど大げさなこと言わないでってことよ!」
 
「はーい」
 
「もう……」
 
ふと時計を見ると時間はもう夜の十時をすぎていた。
 
「あ、結城くん。時間は大丈夫?」
 
「うん。平気。今日は帰らないって言ってあるし」
 
「えっ!?」
 
「え?あ!い、いや……別に莉恵さんの家に泊まるとかじゃなくて……今日は元々家に帰るつもりなかったんだよね。泊まるところはあるし大丈夫!」
 
「……今日は特別よ。泊まってく?」
 
「……えっ!?いや!いいよ!美琴の家に行くし!」
 
「……じゃあ、言い方を変えるわ。まだ結城くんと一緒にいたいから泊まって行って」
 
「っ!!それ、反則でしょ……」
 
結城くんはそういうと顔を赤く染める。
 
「……だめ?」
 
「~~ッ!あぁ、もう!それ、覚悟できてるってことだよね?俺だって男なんだよ?手を出さないなんて保証はどこにもないからね?」
 
私は黙ってうなずくと結城くんはそれを合図にしたかのようにキスをした。
そのまま私を押し倒す。

翌日。
元々仕事が休みだった私とは違い今日も大学があった結城くんは見事に寝坊。
お友達からの電話で起こされていた。
怒鳴られているみたいだったけれど電話が終わったのか結城くんは私を呼ぶ。
 
「莉恵さーん……」
 
「なぁに?」
 
「コーヒーかなんかある?眠気覚ましの……」
 
結城くんは起きようと頑張っているみたいだけどうつ伏せのまま今にも寝そうな感じだった。
朝弱いんだなと思いつつ、私は結城くんを仰向けにする。
結城くんは眩しいのか腕で目元を隠し、んー……と声を上げた。
そんな結城くんに軽くキスをしたらいつの間にか首に腕が回されていて深くなる。
息が苦しくなって思わず布団を叩くと唇が離れた。
 
「おはよ、莉恵さん。ご馳走様」
 
「……目は覚めたの?」
 
「んー……まだだからもう一回しよ?」
 
その言葉に顔を赤くしてそっぽを向く。
 
「ばかっ!早く起きて行かないと間に合わないんじゃないの?」
 
「そうなんだよね。あと、しばらくは大学に泊まって補講とか受けるから会えないと思う。結構、冗談抜きで進級単位やばいんだよね。電話くらいならできると思うけど……ごめんね?」
 
「良いわよ。それより、単位落とす方が大変でしょう?頑張ってね」
 
「うん。ありがとう、頑張る」
 
「あぁ、でも……」
 
「え?何?」
 
「無理して頑張ることはないと思うわ」
 
「……うん、ありがとう。それじゃあ、行ってきます」
 
いつの間にか着替えていたらしく結城くんは軽く私にキスをすると大学に向かう。
それが名残惜しく感じるのだった。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

危険な台風

詩織
恋愛
確かに台風が接近するとは聞いていた。 けど電車も止まり、停電までって、そこまでになるとは。 残業で、会社に居た私はここに居るしかなく...

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

『愛が切なくて』- すれ違うほど哀しくて  

設楽理沙
恋愛
砂央里と斎藤、こじれてしまった糸(すれ違い)がほどけていく様子を描いています。 ◆都合上、[言う、云う]混合しています。うっかりミスではありません。   ご了承ください。 斉藤准一 税理士事務所勤務35才 斎藤紀子    娘 7才  毒妻:  斉藤淳子  専業主婦   33才 金遣いが荒い 高橋砂央里  会社員    27才    山本隆行  オートバックス社員 25才    西野秀行   薬剤師   22才  岡田とま子  主婦    54才   深田睦子  見合い相手  22才 ――――――――――――――――――――――― ❧イラストはAI生成画像自作 2025.3.3 再☑済み😇

先輩、お久しぶりです

吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社 秘書課 × 藤井昂良 大手不動産会社 経営企画本部 『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。 もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』 大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。 誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。 もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。 ――それも同じ会社で働いていた!? 音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。 打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

嘘つき同士は真実の恋をする。

濘-NEI-
恋愛
都内郊外のリゾートホテルでソムリエとして働く瑞穂はワイン以上にゲームが大好き。 中でもオンラインゲーム〈グラズヘイム〉が大好きで、ロッソの名前でログインし、オフの時間と給料の全てを注ぎ込むほどのヘビーユーザー。 ある日ゲーム仲間とのオンライン飲み会で、親から結婚を急かされている話を愚痴ったところ、ギルマスのタラントの友人で、ゲームの中でもハイランカーのエルバに恋人役を頼めば良いと話が盛り上がり、話は急展開。 そしてエルバと直接会うことになった瑞穂だったが、エルバの意外な正体を知ることに⁉︎ Rシーンは※ ヒーロー視点は◇をつけてあります。 ★この作品はエブリスタさんでも公開しています

処理中です...