私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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初バレンタイン

今日はバレンタイン。
結城くんと付き合って初めて手作りチョコというものに挑戦してみた。
今までのバレンタインは市販の物を渡していたけれど今年は友人からのアドバイスで男はまず胃袋を掴むべき!と言われたので手作りに挑戦してみる。
普段から自炊はしているけれど、お菓子は作ったことがない。
まぁ、チョコなんて溶かして型に入れて固めるだけよね、なんて思っていた。
けれど、湯煎中にお湯がボウルに入るなどのアクシデント勃発で結果、かれこれ一週間大失敗の繰り返し。
ついにバレンタイン当日になってしまった。
 
「ど、どうしよう……結城くんとの待ち合わせに間に合わなくなっちゃう……でも、チョコはできてないし……」
 
そんなことを思っていたら結城くんから着信。
慌てて電話を取った。
 
「も、もしもし!?」
 
「『あ、莉恵さん?今、平気?っていうか何か慌ててる?』」
 
「う、ううん!何でもないの!それよりどうしたの?」
 
「『あー……うん、ちょっと、課題終わらなくて……約束の時間すぎそうだから迎えに行くよって連絡。もしかして、もう家出ちゃった?』」
 
「そ、そうなんだ!大丈夫、まだ家よ。だから、家で待っているわね。そんなに急がなくても良いわ」
 
「『うん。ごめんね、それじゃあ、またあとで』」
 
「うん。またね」
 
そう言って電話が切れる。
 
「よ、良かった!これでもうしばらくチョコが作れるわ!」
 
それからやっとチョコが完成した。
ハートの形をしていてホワイトチョコペンでLOVEと書いたベタすぎるチョコ。
今の私にはこれが精一杯。
綺麗にラッピングもしてもう一つプレゼントを買ってありその中身も確認する。
 
「よし!これで完璧!あれ?でも、そういえば、私、結城くんがチョコ好きか知らない……
もし、嫌いだったら?」
 
そんな不安が過ぎって思わず電話をかけ直す。
結城くんはすぐに電話に出てくれた。
 
「『もしもし?莉恵さん?ごめん、今、大学出るとこだからもう少し待ってて』」
 
「う、ううん!それは良いの!そうじゃなくて……あ、あのね、結城くん、チョコ……」
 
私が言いかけた時、電話の向こうから甲高い声が聞こえる。
 
「『あ!結城くーんっ!今日はバレンタインだからチョコあげる!本命だから!』」
 
「『あ!ちょっと!抜け駆けしないでよ!私が渡すんだから!』」
 
私が私が!と言う声しか耳に入らなくなった。
 
「(結城くん、モテるんだ……
そりゃあ、そうだよね……)」
 
なんて思っていたら結城くんの声が聞こえる。
 
「『ちょっとうるさい。黙って。それと全部要らないから。チョコ嫌いだし……』」
 
「(え?
今、チョコ嫌いって言った……?)」
 
「『ごめん、莉恵さん。うるさかったよね?それで何言おうとしてたの?』」
 
「あ、ううん。課題頑張ってねって言い忘れたと思って……」
 
「『わざわざ、それ言うためにかけ直してくれたの?ありがとう、嬉しい。すぐ行くから待っててね』」
 
「うん……それじゃあ、またあとで」
 
「『うん』」
 
そう言って電話を切った。
 
「(どうしよう……
結城くん、チョコ嫌いだったんだ……
せっかく作ったのに……)」
 
そんなことを考えていたらインターホンが鳴る。
 
「は、はーい!」
 
慌てて返事をしてインターホンのモニターを見ると結城くんが映っていた。
 
「(えっ!?
もう来たの!?)」
 
私は慌ててラッピングしたチョコを隠す。
 
「ご、ごめんね。こんなに早く来るとは思ってなくてまだ準備してないの。部屋に上がって待っていてくれる?」
 
「いや、いいよ。俺が早く莉恵さんに会いたかっただけだし。じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔するね」
 
そう言って結城くんが部屋に上がる。
私は寝室に行き着替えながら結城くんに聞いた。
 
「ところで、どうやってこんなに早く来たの?」
 
「タクシー捕まえて飛ばしてもらった。普通に来たら同じ大学の女たちがついてきそうだったしウザいったらないね」
 
「……バレンタインデーは好きじゃないの?」
 
「うーん……あんまり。チョコは大好きだけど本命とか言われるとちょっとね。今は莉恵さんがいるから特に」
 
「え?」
 
「え?」
 
「(あれ?
今、結城くんなんて言ったの?)」
 
「今、何て言ったの?」
 
「え?莉恵さんがいるから困るって」
 
「その前」
 
「本命とか言われると困る」
 
「もうちょっと前」
 
「バレンタインデーはあんまり好きじゃない」
 
「そのあと!」
 
「えぇ?チョコは大好き?」
 
「それ!結城くん、チョコ好きなの!?」
 
「え……普通に好きだけど。あんまり食べれなかったからかな?甘いもの全般大好き」
 
「だって、さっき、電話越しでチョコ嫌いって……!」
 
「あぁ、だって、男が甘いもの大好きってなんか恥ずかしいっていうか……もらうんだったら莉恵さんからしかもらう気なかったしそう言っておけば素直に引くかなーって」
 
「も、もう!なら、先に言ってよ!私、結城くんが嫌いなんだと思ってすっごく後悔したんだから!」
 
「え、ご、ごめん……?って、莉恵さん!泣かないでよ!」
 
「だ、だってぇ……一生懸命作ったのに……食べてもらえないと思ったんだもん~」
 
「え?手作りなの?何それ。仮に嫌いだとしても食べるし。もう泣かないでって。っていうか、そのチョコ今ちょうだい?」
 
「うん……」
 
私は目をこすりながらさっき隠したチョコを渡す。
 
「これ……」
 
「ありがとう。莉恵さん。嬉しい」
 
そう言ってチョコをしまおうとする結城くんを止めた。
 
「だめ!今、食べて!」
 
「えぇ?後の楽しみにしようと思ったのに……」
 
「だめ!今!」
 
「はいはい。分かったよ」
 
結城くんはそう言ってラッピングを外して箱を開ける。
そこにはハートの形をしていてホワイトチョコでLOVEと書かれたものが……
 
「あ!あーっ!やっぱり見ちゃだめ!」
 
「うわっ!?ちょっ、莉恵さん!?見えないし当たってるんだけど!!」
 
思わず後ろから自分の手で結城くんの目を覆い隠した。
 
「や、やっぱり、見ちゃだめ!恥ずかしい……」
 
「……じゃあ、見ないから食べさせて」
 
「み、見えちゃうでしょ!?」
 
「目、瞑ってるから」
 
「や、約束よ?」
 
私は恐る恐る手を外す。
 
「……莉恵さん」
 
「え?何?」
 
私が返事をすると結城くんはニコッと笑って私に振り返りチョコを持つ。
 
「っ!!!!」
 
「そんなに俺のこと大好き?」
 
「ゆ、結城くんの嘘つき!目、瞑っているって言ったじゃない!」
 
「約束した覚えはないな~」
 
「うぅ~っ!」
 
私はポカポカと結城くんを叩いた。
すると結城くんは私にチョコを銜えさせる。
 
「んっ?」
 
「はーい、そのまま、じっとしててね?何もしちゃだめだよ?」
 
そう言うと結城くんは反対側をパクッと食べ始めた。
何も出来ずにいる私をよそに結城くんは食べ進める。
最後は私の口の中に入った。
あ、甘い……と思った瞬間、結城くんの唇が当たる。
そして、私の唇を舐めると満足そうに口を開いた。
 
「ご馳走様。美味しかったよ。最後が特に」
 
その言葉に私は思わず顔を真っ赤に染める。
そして、再び結城くんをポカポカと殴るのであった。
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