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ヤキモチ③
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私は呆然としながら立ち尽くす。
「(結城くんはすぐ謝ってくれたし八つ当たりだから忘れてと言っていたけれど……)」
私には非がないのかと聞かれればそんなはずはない。
私の言葉で結城くんを不愉快にさせたことは確かで。
「(謝りたいけれど何が原因か全く分からない。
だけど、やっぱりこのままは嫌。
謝らなくちゃ!)」
そう思い結城くんの部屋に行きノックをする。
するとドアは開かないけれど返事だけは聞こえた。
「……何?」
「あ、あのね!謝りたくて……ごめんなさい!私のせいで不愉快な思いをさせて……」
「……莉恵さんは悪くないから気にしなくていいよ」
「そんなことないわ!私の言葉で結城くんが不愉快になった事実は変えられないもの!」
結城くんは何も言わなかったけれど私は続ける。
「正直、私のどの言葉のせいで結城くんが不愉快になったのかは分からないんだけど……それでも、このままは嫌なの!なんとなく、これが原因で別れそうな気がして……私、結城くんと別れたくない!だから、許してくれるまで何度でも謝る!ごめんなさい!」
私がそう言うと椅子が動く音がした。
結城くんがドアの前まで来たことに気づいたけれど、ドアは開かない。
そのまま、ドスッという音がしたと同時に結城くんの声もした。
「……ドアを開けずにそのままで聞いて」
「わ、分かったわ」
「……俺、自分が思ってたよりもガキで……平静でいようって頑張ってたんだけどやっぱり無理だった」
私は結城くんが何を言っているのか分からず思わず首を傾げる。
当然、結城くんには見えていないのだけれど結城くんは続けた。
「やっぱり、莉恵さんの口から他の男の名前出るのは嫌だ。何よりその男のことを楽しそうにすごいとか話されるのはすごく悔しくなる。歳の差とか経験の差とかで俺がその男より劣ってるのは当たり前だって頭では理解できてるんだ。それでも、莉恵さんには俺が一番頼りになってカッコいいってすごいって思われたい。そんなのは無理って分かってる。俺はどう頑張っても仕事で莉恵さんをリードとかできないし愚痴とか悩みしか聞いてあげられない。それなのに、俺のくだらないプライドで莉恵さんを傷つけて本当に情けないと思ってる。ごめん」
「ゆ、結城くん?私、別に結城くんが劣っているなんて思ってないわよ?結城くんは私の話をどんな話だろうとちゃんと聞いてくれるもの。私はそれだけでも十分嬉しいんだから」
「……ありがと。でも、俺、葉月って人に腹立てちゃうし、そんなにいうならその人と付き合えよとか思っちゃったし……それでもっと腹立って、不愉快とか言っちゃったし……こんなみっともない姿も感情も莉恵さんに見せたくない」
「みっともなくなんかないわ!それってヤキモチを焼いてくれたってことでしょう?ごめんね……私、勝手に結城くんはヤキモチを焼いてくれないって思い込んでいたわ。だから無神経に葉月くんの話をしていたの。それに私、嫌な女だわ。結城くんは辛かったのに私は結城くんがヤキモチを焼いてくれて嬉しいって思っちゃったの。だから、私はどんな姿の結城くんでも見たい」
そう言って私は許可も得ずにドアを開ける。
ドアの先では涙を流しながら驚いた顔をしている結城くんがいた。
初めて見る結城くんの泣き顔に私の心は締め付けられる。
「(泣かせるほど追い詰めちゃったんだ……)」
そう思ったら自然と結城くんをギュッと抱き締めた。
「り、莉恵さんっ!?」
恥ずかしいのか照れているのか分からないけれど離れようともがく結城くんをさらに抱き締める。
「ごめんね……」
私がそう言うと結城くんは大人しくなった。
そして、結城くんはおずおずと私の腰に腕を回すとそのまま顔を私の胸に埋めさせながらギューッと抱きつく。
少しくすぐったかったけれど私は我慢して結城くんの頭を優しく撫でた。
どれくらい時間が経ったのか分からないけれど突然、結城くんが頭を左右に振りグリグリしてくる。
私はくすぐったくて思わず声をあげた。
「ちょっ……結城くん!くすぐったいっ!」
それでも結城くんは止めてくれなくて私は結城くんに押し倒される。
結城くんはやっと顔を上げると少し恥ずかしそうに口を開いた。
「……お願い、があるんだけど」
「なあに?」
「俺のこと、下の名前で呼んで」
「大虎くん?」
「うん……あと、今日のことは本当に冗談抜きで忘れて。絶対誰にも話さないで。自分でも驚くくらい情けないしカッコ悪いし恥ずかしいから。もし、忘れないで誰かに話したら俺、恥ずか死ぬ。死因、恥ずか死になるから」
その言葉に思わず笑う。
「ふふっ」
「……何で笑うの」
顔を真っ赤にして言う結城くん。
こんな顔の彼は滅多に見られない。
私は微笑みながら答えを口にした。
「嫌。大虎くんのヤキモチ記念日だもの」
結城くんは一瞬驚いた顔をするもすぐにいつも通りの意地悪な笑みを浮かべる。
「……へぇ……?そう言う意地悪言っちゃうんだ?」
そう言ったと同時に両手首を押さえつけられた。
「ちょ、ゆ、結城くん……?」
「大虎、でしょ?意地悪な莉恵さんには恥ずかしいお仕置きで今日の記憶の上塗りしよっか」
ニコニコ笑いながらそう言う結城くんに背筋が凍る。
「ご、ごめんなさい!私が悪かったから!もう意地悪なこと言わないわ!」
「だーめ。もう遅いよ。明日、辛いかもだけど仕事頑張ってね?」
「き、きゃあぁぁぁぁあっ!!!!」
結局、抗う気力なく身を委ねるしかない私。
何度も弄ばれ何度も啼き続ける中、いきなり結城くんが耳元でありがとうと囁く。
何のことかさっぱり分からなかったけれど私はもう二度と結城くんにヤキモチを妬かせるものかと心に決めたのだった。
「(結城くんはすぐ謝ってくれたし八つ当たりだから忘れてと言っていたけれど……)」
私には非がないのかと聞かれればそんなはずはない。
私の言葉で結城くんを不愉快にさせたことは確かで。
「(謝りたいけれど何が原因か全く分からない。
だけど、やっぱりこのままは嫌。
謝らなくちゃ!)」
そう思い結城くんの部屋に行きノックをする。
するとドアは開かないけれど返事だけは聞こえた。
「……何?」
「あ、あのね!謝りたくて……ごめんなさい!私のせいで不愉快な思いをさせて……」
「……莉恵さんは悪くないから気にしなくていいよ」
「そんなことないわ!私の言葉で結城くんが不愉快になった事実は変えられないもの!」
結城くんは何も言わなかったけれど私は続ける。
「正直、私のどの言葉のせいで結城くんが不愉快になったのかは分からないんだけど……それでも、このままは嫌なの!なんとなく、これが原因で別れそうな気がして……私、結城くんと別れたくない!だから、許してくれるまで何度でも謝る!ごめんなさい!」
私がそう言うと椅子が動く音がした。
結城くんがドアの前まで来たことに気づいたけれど、ドアは開かない。
そのまま、ドスッという音がしたと同時に結城くんの声もした。
「……ドアを開けずにそのままで聞いて」
「わ、分かったわ」
「……俺、自分が思ってたよりもガキで……平静でいようって頑張ってたんだけどやっぱり無理だった」
私は結城くんが何を言っているのか分からず思わず首を傾げる。
当然、結城くんには見えていないのだけれど結城くんは続けた。
「やっぱり、莉恵さんの口から他の男の名前出るのは嫌だ。何よりその男のことを楽しそうにすごいとか話されるのはすごく悔しくなる。歳の差とか経験の差とかで俺がその男より劣ってるのは当たり前だって頭では理解できてるんだ。それでも、莉恵さんには俺が一番頼りになってカッコいいってすごいって思われたい。そんなのは無理って分かってる。俺はどう頑張っても仕事で莉恵さんをリードとかできないし愚痴とか悩みしか聞いてあげられない。それなのに、俺のくだらないプライドで莉恵さんを傷つけて本当に情けないと思ってる。ごめん」
「ゆ、結城くん?私、別に結城くんが劣っているなんて思ってないわよ?結城くんは私の話をどんな話だろうとちゃんと聞いてくれるもの。私はそれだけでも十分嬉しいんだから」
「……ありがと。でも、俺、葉月って人に腹立てちゃうし、そんなにいうならその人と付き合えよとか思っちゃったし……それでもっと腹立って、不愉快とか言っちゃったし……こんなみっともない姿も感情も莉恵さんに見せたくない」
「みっともなくなんかないわ!それってヤキモチを焼いてくれたってことでしょう?ごめんね……私、勝手に結城くんはヤキモチを焼いてくれないって思い込んでいたわ。だから無神経に葉月くんの話をしていたの。それに私、嫌な女だわ。結城くんは辛かったのに私は結城くんがヤキモチを焼いてくれて嬉しいって思っちゃったの。だから、私はどんな姿の結城くんでも見たい」
そう言って私は許可も得ずにドアを開ける。
ドアの先では涙を流しながら驚いた顔をしている結城くんがいた。
初めて見る結城くんの泣き顔に私の心は締め付けられる。
「(泣かせるほど追い詰めちゃったんだ……)」
そう思ったら自然と結城くんをギュッと抱き締めた。
「り、莉恵さんっ!?」
恥ずかしいのか照れているのか分からないけれど離れようともがく結城くんをさらに抱き締める。
「ごめんね……」
私がそう言うと結城くんは大人しくなった。
そして、結城くんはおずおずと私の腰に腕を回すとそのまま顔を私の胸に埋めさせながらギューッと抱きつく。
少しくすぐったかったけれど私は我慢して結城くんの頭を優しく撫でた。
どれくらい時間が経ったのか分からないけれど突然、結城くんが頭を左右に振りグリグリしてくる。
私はくすぐったくて思わず声をあげた。
「ちょっ……結城くん!くすぐったいっ!」
それでも結城くんは止めてくれなくて私は結城くんに押し倒される。
結城くんはやっと顔を上げると少し恥ずかしそうに口を開いた。
「……お願い、があるんだけど」
「なあに?」
「俺のこと、下の名前で呼んで」
「大虎くん?」
「うん……あと、今日のことは本当に冗談抜きで忘れて。絶対誰にも話さないで。自分でも驚くくらい情けないしカッコ悪いし恥ずかしいから。もし、忘れないで誰かに話したら俺、恥ずか死ぬ。死因、恥ずか死になるから」
その言葉に思わず笑う。
「ふふっ」
「……何で笑うの」
顔を真っ赤にして言う結城くん。
こんな顔の彼は滅多に見られない。
私は微笑みながら答えを口にした。
「嫌。大虎くんのヤキモチ記念日だもの」
結城くんは一瞬驚いた顔をするもすぐにいつも通りの意地悪な笑みを浮かべる。
「……へぇ……?そう言う意地悪言っちゃうんだ?」
そう言ったと同時に両手首を押さえつけられた。
「ちょ、ゆ、結城くん……?」
「大虎、でしょ?意地悪な莉恵さんには恥ずかしいお仕置きで今日の記憶の上塗りしよっか」
ニコニコ笑いながらそう言う結城くんに背筋が凍る。
「ご、ごめんなさい!私が悪かったから!もう意地悪なこと言わないわ!」
「だーめ。もう遅いよ。明日、辛いかもだけど仕事頑張ってね?」
「き、きゃあぁぁぁぁあっ!!!!」
結局、抗う気力なく身を委ねるしかない私。
何度も弄ばれ何度も啼き続ける中、いきなり結城くんが耳元でありがとうと囁く。
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