30 / 77
亀裂
ある日の仕事終わり。
私は葉月くんに声をかけられた。
「栗山さん!お疲れ様!ちょっと、お願いがあるんだけれど良いかな?」
「あぁ、葉月くん。お疲れ様。何かしら?私に出来ることなら別に良いわよ」
「良かった!今度の日曜日にちょっと買い物に付き合ってほしくて。良いかな?」
「買い物?別に良いけれど……私より別の人に頼んだ方が良いんじゃない?」
「そんなことないよ!栗山さんの意見が聞きたいんだ!それじゃあ、今度の日曜日、昼の三時に駅前で待ち合わせってことでよろしく!」
「え、えぇ。分かったわ」
そう約束をして葉月くんと別れる。
その直後、誰かに抱き付かれた。
犯人は分かっているけれど。
「何々~?莉恵ったら浮気~?」
「なっ!?失礼ね!浮気なんてしてないわ!」
「え~?だって、葉月とデートするんでしょ?」
「で、デート!?いつ!?誰が!?」
「だから~莉恵が葉月と今度の日曜日デートするんでしょ?」
「なんでそうなるの!?私は今度の日曜日、葉月くんの買い物に付き合うだけよ!」
「二人きりで?」
「え?」
「二人きりでしょ?」
「え?聖来も誘われたんじゃないの?」
「あたしは誘われてませ~ん!ついでに葉月が誘ってたのは莉恵だけで~す!」
「えぇっ!?ど、どうしよう!?」
「まぁ、葉月とデートしてくれば?年下彼氏くんより良いかもよ?最近、その年下彼氏くんとはデートすらしてないんでしょ?」
「だめよ!確かに最近、大虎くんとはデートしてないけれど……」
大虎くんは基本、休みの日はレポートをやっているため私からデートしようとはどうしても言えなかった。
「そもそも、一緒に暮らしてるからってそういうの怠る彼氏ってどうかと思うんだよね。あたし」
「も、もしかして、聖来……大虎くんのこと、嫌い?」
「見た目はかなりタイプ!葉月に負けず劣らずって感じ!第一印象もかなり好印象だったけど莉恵の話聞いてるとないなーって思うわ」
「そ、そうかしら?」
「いくら大学生だからってそんな毎日毎日レポートなんかある訳ないでしょ!絶対なんか裏があるって!」
「そ、そんなことはないと思うけれど……」
「莉恵は信用しすぎ!若いんだよ!?まだまだ色んな子と遊びたいでしょう!男って生き物は!」
「そ、そんなことない……」
「そんなことないなんてことはない!」
「せ、聖来ぁ!なんでそんな不安にさせるのよ!」
「あたし、莉恵には幸せになってほしいから。正直、莉恵には年下彼氏くんより葉月の方が合ってると思う」
「え?」
「とにかく!日曜日の件は年下彼氏くんには内緒にしなさいよ?」
そう言われ落ち込みながら帰る。
家に入るといつもはない靴がすでにあった。
「(いつも帰りが遅い大虎くんがもう帰ってきている!)」
そう思った私は急いでリビングのドアを開ける。
「あ、莉恵さん。お帰り、お疲れ様。今日は早く終わったから俺がご飯作ってみようと思って!お風呂は沸いてるから先に入ってもいいよ?」
「う、ううん!私、大虎くんと一緒が良いから」
「……え?」
「え?」
大虎くんは何故か顔を赤くしていた。
けれど、私の反応を見てひとつ咳払いをしてから口を開く。
「んん……えっと?莉恵さん?今、自分が何を言ったか分かってないね?」
「私は何か問題のあることでも言ったの?」
「そうだね。解釈の仕方を間違えたらとんでもないことを言ったけど自覚なしか……」
大虎くんにそう言われ自分が言った言葉を思い返してみたけれどやっぱり分からない。
私が首を傾げると大虎くんはやれやれという感じで説明してくれた。
「俺は今、お風呂は沸いてるから先に入ってもいいよ?って言ったよね?」
「えぇ。そうだったわね」
「それに対して莉恵さんは俺と一緒がいいって言った訳だけど」
その言葉を聞いて私は顔を真っ赤に染める。
そして、慌てて否定した。
「ち、違っ!一緒に入りたいって意味じゃなくて……っ!一緒にいたいってことでっ!」
「……莉恵さんの反応で分かってるけど。そうハッキリ否定されると複雑。俺、莉恵さんの彼氏だよ?別に一緒に入ってもいいと思うけどなー」
彼氏という単語を聞いて思わず疑問が浮かび上がってしまう。
「(聖来とあんな話をしていたせいかしら?
彼氏ならデートくらいしてくれても良いでしょう?
なのに、いつもレポートがあるからって構ってくれないくせにこういうときにばっかり……
彼氏らしいことしてから言ってよ)」
「………………………から………よ」
「え?莉恵さん?」
「……何よ!いつもいつも構ってくれないくせに!こういうときだけ彼氏って言葉使って!少しは彼氏らしいことしてよ!」
「ちょ、何でそんなに怒ってるの?」
「だって、いつもレポートがあるからってデートもしてくれないじゃない!私とレポートどっちが大事なの!?」
言ってから後悔した。
慌てて顔を上げると大虎くんは思った通り少し怒っている顔をしている。
「……それ、本気で聞いてる?」
すぐに謝ろうとしているのに謝罪の言葉が出てこない。
やっと出てきた言葉は謝罪ではなかった。
「あ、当たり前でしょ!?いくら大学生だからってそんなに毎日レポートが出る訳ないじゃない!本当は浮気しているんじゃないの!?」
「(違う!
違うの!
こんなことが言いたかった訳じゃないのに!
何で、私、こんなこと!)」
けれど、出てしまった言葉はもう取り消すことはできない。
しばらく沈黙が続く。
大虎くんの言葉を待っていると大虎くんは何も言わず私を無視して料理の続きを始めた。
その行動に驚きと戸惑いを隠せない。
「(どうして……?
どうしていつもみたいに否定してくれないの?
浮気なんかしている訳ないでしょって。
ねぇ、どうして……)」
「……っ!どうして何も言わないのよ!?浮気しているってこと!?」
私がそう怒鳴っても大虎くんは私を無視して料理を続ける。
大虎くんの背中は、さっきより少しだけ遠く感じた。
ぐちゃぐちゃした感情が渦巻いて動けずにいると大虎くんの携帯が鳴る。
大虎くんは液晶画面を見ると怪訝そうな顔をしつつも料理を続けながら電話に出た。
「……もしもし?」
その行動にショックを受ける。
「(なんで?
私のことは無視するのに何で電話には出るの?
大虎くんなんか……
大虎くんなんか……
もう知らない!!)」
「……大虎くんの馬鹿!もう知らないわ!」
そう大きな声で言い放ち私は家を飛び出した。
私は葉月くんに声をかけられた。
「栗山さん!お疲れ様!ちょっと、お願いがあるんだけれど良いかな?」
「あぁ、葉月くん。お疲れ様。何かしら?私に出来ることなら別に良いわよ」
「良かった!今度の日曜日にちょっと買い物に付き合ってほしくて。良いかな?」
「買い物?別に良いけれど……私より別の人に頼んだ方が良いんじゃない?」
「そんなことないよ!栗山さんの意見が聞きたいんだ!それじゃあ、今度の日曜日、昼の三時に駅前で待ち合わせってことでよろしく!」
「え、えぇ。分かったわ」
そう約束をして葉月くんと別れる。
その直後、誰かに抱き付かれた。
犯人は分かっているけれど。
「何々~?莉恵ったら浮気~?」
「なっ!?失礼ね!浮気なんてしてないわ!」
「え~?だって、葉月とデートするんでしょ?」
「で、デート!?いつ!?誰が!?」
「だから~莉恵が葉月と今度の日曜日デートするんでしょ?」
「なんでそうなるの!?私は今度の日曜日、葉月くんの買い物に付き合うだけよ!」
「二人きりで?」
「え?」
「二人きりでしょ?」
「え?聖来も誘われたんじゃないの?」
「あたしは誘われてませ~ん!ついでに葉月が誘ってたのは莉恵だけで~す!」
「えぇっ!?ど、どうしよう!?」
「まぁ、葉月とデートしてくれば?年下彼氏くんより良いかもよ?最近、その年下彼氏くんとはデートすらしてないんでしょ?」
「だめよ!確かに最近、大虎くんとはデートしてないけれど……」
大虎くんは基本、休みの日はレポートをやっているため私からデートしようとはどうしても言えなかった。
「そもそも、一緒に暮らしてるからってそういうの怠る彼氏ってどうかと思うんだよね。あたし」
「も、もしかして、聖来……大虎くんのこと、嫌い?」
「見た目はかなりタイプ!葉月に負けず劣らずって感じ!第一印象もかなり好印象だったけど莉恵の話聞いてるとないなーって思うわ」
「そ、そうかしら?」
「いくら大学生だからってそんな毎日毎日レポートなんかある訳ないでしょ!絶対なんか裏があるって!」
「そ、そんなことはないと思うけれど……」
「莉恵は信用しすぎ!若いんだよ!?まだまだ色んな子と遊びたいでしょう!男って生き物は!」
「そ、そんなことない……」
「そんなことないなんてことはない!」
「せ、聖来ぁ!なんでそんな不安にさせるのよ!」
「あたし、莉恵には幸せになってほしいから。正直、莉恵には年下彼氏くんより葉月の方が合ってると思う」
「え?」
「とにかく!日曜日の件は年下彼氏くんには内緒にしなさいよ?」
そう言われ落ち込みながら帰る。
家に入るといつもはない靴がすでにあった。
「(いつも帰りが遅い大虎くんがもう帰ってきている!)」
そう思った私は急いでリビングのドアを開ける。
「あ、莉恵さん。お帰り、お疲れ様。今日は早く終わったから俺がご飯作ってみようと思って!お風呂は沸いてるから先に入ってもいいよ?」
「う、ううん!私、大虎くんと一緒が良いから」
「……え?」
「え?」
大虎くんは何故か顔を赤くしていた。
けれど、私の反応を見てひとつ咳払いをしてから口を開く。
「んん……えっと?莉恵さん?今、自分が何を言ったか分かってないね?」
「私は何か問題のあることでも言ったの?」
「そうだね。解釈の仕方を間違えたらとんでもないことを言ったけど自覚なしか……」
大虎くんにそう言われ自分が言った言葉を思い返してみたけれどやっぱり分からない。
私が首を傾げると大虎くんはやれやれという感じで説明してくれた。
「俺は今、お風呂は沸いてるから先に入ってもいいよ?って言ったよね?」
「えぇ。そうだったわね」
「それに対して莉恵さんは俺と一緒がいいって言った訳だけど」
その言葉を聞いて私は顔を真っ赤に染める。
そして、慌てて否定した。
「ち、違っ!一緒に入りたいって意味じゃなくて……っ!一緒にいたいってことでっ!」
「……莉恵さんの反応で分かってるけど。そうハッキリ否定されると複雑。俺、莉恵さんの彼氏だよ?別に一緒に入ってもいいと思うけどなー」
彼氏という単語を聞いて思わず疑問が浮かび上がってしまう。
「(聖来とあんな話をしていたせいかしら?
彼氏ならデートくらいしてくれても良いでしょう?
なのに、いつもレポートがあるからって構ってくれないくせにこういうときにばっかり……
彼氏らしいことしてから言ってよ)」
「………………………から………よ」
「え?莉恵さん?」
「……何よ!いつもいつも構ってくれないくせに!こういうときだけ彼氏って言葉使って!少しは彼氏らしいことしてよ!」
「ちょ、何でそんなに怒ってるの?」
「だって、いつもレポートがあるからってデートもしてくれないじゃない!私とレポートどっちが大事なの!?」
言ってから後悔した。
慌てて顔を上げると大虎くんは思った通り少し怒っている顔をしている。
「……それ、本気で聞いてる?」
すぐに謝ろうとしているのに謝罪の言葉が出てこない。
やっと出てきた言葉は謝罪ではなかった。
「あ、当たり前でしょ!?いくら大学生だからってそんなに毎日レポートが出る訳ないじゃない!本当は浮気しているんじゃないの!?」
「(違う!
違うの!
こんなことが言いたかった訳じゃないのに!
何で、私、こんなこと!)」
けれど、出てしまった言葉はもう取り消すことはできない。
しばらく沈黙が続く。
大虎くんの言葉を待っていると大虎くんは何も言わず私を無視して料理の続きを始めた。
その行動に驚きと戸惑いを隠せない。
「(どうして……?
どうしていつもみたいに否定してくれないの?
浮気なんかしている訳ないでしょって。
ねぇ、どうして……)」
「……っ!どうして何も言わないのよ!?浮気しているってこと!?」
私がそう怒鳴っても大虎くんは私を無視して料理を続ける。
大虎くんの背中は、さっきより少しだけ遠く感じた。
ぐちゃぐちゃした感情が渦巻いて動けずにいると大虎くんの携帯が鳴る。
大虎くんは液晶画面を見ると怪訝そうな顔をしつつも料理を続けながら電話に出た。
「……もしもし?」
その行動にショックを受ける。
「(なんで?
私のことは無視するのに何で電話には出るの?
大虎くんなんか……
大虎くんなんか……
もう知らない!!)」
「……大虎くんの馬鹿!もう知らないわ!」
そう大きな声で言い放ち私は家を飛び出した。
あなたにおすすめの小説
ソツのない彼氏とスキのない彼女
吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。
どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。
だけど…何故か気になってしまう。
気がつくと、彼女の姿を目で追っている。
***
社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。
爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。
そして、華やかな噂。
あまり得意なタイプではない。
どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。
フローライト
藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。
ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。
結婚するのか、それとも独身で過ごすのか?
「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」
そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。
写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。
「趣味はこうぶつ?」
釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった…
※他サイトにも掲載
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~
葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。
「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。
小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。
若くしてプロジェクトチームを任される彼は、
かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、
遠く、眩しい存在になっていた。
優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。
もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。
それでも——
8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。
これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。