私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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すれ違い

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葉月くんとの一件から一ヶ月近くが経った。
あれ以来、葉月くんとは必要最低限しか話していない。
聖来にも何か遭ったのかと聞かれたけれど分からないと答えた。
告白されて断ったら何故か文句を言われて一部始終全てを見ていた大虎くんに呆気なく気絶させられてそのまま放置して帰ったなんて言える訳がない。
大虎くんは夏休みに入ったらしいけれど特別講習とやらを受けるらしく変わらず大学に行っている。
帰りも遅い。
私も繁忙期に入り忙しい日々を送る。
今日も残業が確定していて憂鬱。
 
「はぁ……」
 
思わずため息を吐くと隣で作業をしていた聖来が顔を覗かせる。
 
「何~?ため息なんか吐いても残業は変わらないよ?」
 
「聖来……分かってはいるけれど……最近、すれ違ってばっかりなのよ」
 
「え、何?年下彼氏くんも忙しいの?大学生ってもう夏休みでしょ?」
 
「そう!大虎くんもそう言っていたのよ?なのに……特別講習受けるから帰り遅くなるって言ってお互い疲れていて帰り待たずに寝ちゃうから全然話していないのよ。ここ最近、こんなのばっかりだわ」
 
「やっぱり、年下と付き合うのって大変そうだね~あたしには無理だわ」
 
「聖来は最近どうなの?そういう話聞いてないけれど」
 
「あたし?あたしはいつも通り。別れては別の男と付き合っての繰り返し。プロポーズも何度かされたけど結婚したら仕事辞めろって言うんだもん。莉恵が辞めるまではあたしもこの仕事辞めるつもりないし全部断っちゃったの~」
 
「……世の女性が聞いたら羨ましいセリフね。専業主婦をやるつもりはないの?」
 
「なくはないけど……あたし、莉恵が大好きだからさ~莉恵と同じタイミングで莉恵と同じことをしたいんだよね」
 
「ふふっ、何それ?聖来が私と同じことをしていたことなんてこの仕事以外ないじゃない」
 
「まぁ、そうなんだけどさ!あたし、この仕事、莉恵がいるからやっていけてるんだよ~?」
 
「そうなの?ありがとう。私も聖来がいるからこの仕事続けられているわよ」
 
「ホント~?なら嬉しいなぁ!」
 
そんな話をしていると頭上から咳払いが聞こえた。
 
「ゴホンッ!栗山君、永江君。無駄話はいいから手を動かしたまえ。栗山君、私が頼んでおいた案件はどうなっているんだ?」
 
「あぁ、それなら先ほど、課長のパソコンに転送しておきました。他にもこちらの案件とこちら、あちらの案件とその他の案件、計七件ほど課長のパソコンに転送したので確認お願いします」
 
「栗山君……この私に口答えかね?そもそも、この私が話しているのに手を止めずに作業を続けているとはどういうことだ?私が話しているときは作業を止めろと言っているだろう!」
 
「課長?お説教も結構ですけれどそんなところに突っ立っているだけですと課長が確認しなければならない案件がどんどん溜まっていきますよ」
 
「くっ……栗山君には後で別の案件も数件やってもらうからな!」
 
そう言って課長は自分のデスクに戻っていく。
 
「ちょ、ちょっと莉恵~?喧嘩売ってどうするのよ?今、何件抱えてるの?」
 
「七件よ。たった今、二十七件になったけれど」
 
「はぁっ!?あの課長、莉恵をやたら目の敵にしてるよね。もしかして、何かしたの?」
 
「してないわよ。二人きりで食事に誘われたけど断っただけ」
 
「……原因、それでしょ。絶対。莉恵って本当に男運悪いよね」
 
「そ、そんなことないわ」
 
「ダメ男ホイホイって言うか……クズ男ホイホイ?」
 
「……聖来、手が止まっているわよ。あなたも結構な数の案件抱えているわよね」
 
「あはは……流石に莉恵よりは少ないけどね」
 
結局、その日は終電ギリギリまで残業をして五件しか片付かなかった。
渋々残りの仕事を持ち帰る。
 
「(はぁ……
大虎くんと付き合ってからは一度も仕事を持ち帰ったことがなかったのに……
大虎くんだから気を遣って絶対無理して手伝うとか言って起きているもの。
頑張って軽食とか作ってくれそうね。
大虎くん、料理だけは壊滅的に苦手だけれど)」
 
そんなことを考えながら電車に揺られ最寄り駅に着くと改札の前には見知った人物が立っていた。
私は急いで改札を抜け駆け寄る。
 
「大虎くん!」
 
「あ、お疲れ様。莉恵さん」
 
「ど、どうしたの!?もう日付が変わっているわよ!?」
 
「分かってる。だから、迎えに来たんだよ」
 
「え?でも……」
 
「何でもいいから帰るよ。もう、こんな遅くなるなら起こしてよ。迎えにくらい行くし」
 
「で、できないわよ!大虎くんだって講習で疲れているのに……」
 
私がそう言うと大虎くんはため息を吐いた。
 
「……あのさ、莉恵さんは俺に無理するなって言うけど俺も莉恵さんに無理してほしくないんだよ」
 
「で、でも、今、繁忙期で忙しいし……多少無理しないと仕事終わらないし……」
 
「分かってるつもりだけど。それでも、あんまり無理はしないでほしい。俺だって無理しないように気をつけてるんだから」
 
「……わ、分かったわ」
 
家に着くと大虎くんはすぐにお風呂を沸かしてくれる。
 
「莉恵さん、先にお風呂入って。ご飯はどうする?」
 
「あ、ありがとう。ご飯は……今日は要らないわ」
 
「えぇ?ちゃんと食べないとだめだよ。あ、そうだ。この間、泰仁が冷凍のパスタくれたんだけどそれ食べる?」
 
「冷凍のパスタ?」
 
「うん。ミートソースとか色々種類があるらしくて。それでカルボナーラくれたんだよね」
 
「そうなの……じゃあ、それを食べてみるわ」
 
「分かった」
 
私がお風呂から上がるとテーブルの上にはできたばかりなのか湯気が上がっているカルボナーラが用意されていて向かいに大虎くんが座っていた。
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