私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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デート③

声がした方を向くとそこにはやっぱり大虎くんがいた。
 
「お前……っ!」
 
「莉恵さん、ごめんね?永江さんと買い物に行くって信じられなくて莉恵さんが家を出てからずっと後をつけてた。本当に永江さんとの待ち合わせなら大人しく帰ったんだけど……待ち合わせしてたのは葉月さんだし永江さんが来る気配もないしこの間の喧嘩で浮気云々言ってたのは誰だったかなー?って、ちょっと思ってたんだけどさっきの会話聞いてすっごい納得。本当、鈍感もここまでくると手に負えない」
 
「た、大虎くん……?もしかして、怒っている……?」
 
「え?怒ってないと思ってるの?」
 
大虎くんはニコニコ笑っている。
物凄く怒っていることが分かった。
 
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!本当に!浮気とかじゃないの!聖来にもデートって言われていたんだけど!約束しちゃったから行かざるを得なくて!」
 
「うん、ごめん。今は言い訳なんか聞く気ないから少し静かにしてて?それより、俺は葉月さんと話したいんだよね」
 
「はっ!俺と何を話すことがあるんだ?」
 
「簡単な話ですよ。今すぐその汚い手を莉恵さんから離れてこの場から去れってことです。わざわざ言わせるなんて葉月さんは出来る人って聞いてたんですけど案外頭悪いんですか?」
 
「……喧嘩売っているのかな?」
 
「先に売ってきたのはそっちでしょ?買ってほしいなら買いますよ」
 
「……君、生意気ってよく言われないかな?」
 
「それが何か?俺、気が長い方じゃないんでとっとと手放してどっか行ってくれないですかね?」
 
「まさかこの身長差で勝てると思っているのか?二十cmくらいの差があるぞ?」
 
「そうですね。初めて会ったときも背高いなって思いました。でも、たかが身長差くらいで勝った気でいる奴には負けません」
 
大虎くんはニコニコ笑ったまま答える。
葉月くんは少しイライラしているみたいだった。
私は一生懸命抵抗しているけれどやっぱり、振り払えない。
 
「っていうか、葉月さんって一番自分が可愛いと思ってるタイプですよね?自分が傷つかなければいいみたいな。そんなタチ悪い性格してたらそりゃあ、彼女もできませんよね。できたとしても逃げられてそう」
 
「っ……お前、俺を侮辱するのもいい加減にしろよ」
 
「あ。もしかして、図星でした?ちょっと本当のこと言われたからって侮辱とか……心狭いんですね」
 
大虎くんのその言葉に葉月くんが怒る。
葉月くんは私から手を離して大虎くんに殴りかかった。
 
「そのクソガキがっ!」
 
けれど、大虎くんは難なく避ける。
葉月くんが前のめりになったところで大虎くんが首の後ろを思い切りチョップした。
そのまま、倒れ込む葉月くん。
大虎くんは葉月くんを冷たく見据えると立ったままの私に笑顔で駆け寄ってきた。
 
「さてと、邪魔者は気絶させたし今のうちに帰ろっか」
 
そう言って大虎くんは私に手を差し伸べる。
もう怒っていないと思った私はその手を取ると痛いくらい握り締められた。
私は思わず声を上げる。
 
「ちょ、た、大虎くん!?痛いんだけど!」
 
すると大虎くんは笑顔で答えた。
 
「誰がいつ許したなんて言ったの?俺、怒ってるんだけど」
 
「!!」
 
その言葉に覚悟を決める。
 
「(まぁ、そうよね……
許してくれている訳ないわよね!!)」
 
握られている手は痛いまま、帰宅。
家に入るとすぐにリビングまで引っ張られソファーに押し倒される。
大虎くんは私の両手首を押さえるとニコニコ笑いながら口を開いた。
 
「それじゃあ、言い訳を聞こうか。なんで、俺に嘘まで吐いてアイツとデートしに行ったのかな?」
 
「だ、だから!浮気とかじゃないの!約束したからには行かざるを得なくて!」
 
「この頭には断るって言葉がないのかな~?ん~?」
 
「い、痛い!頭ぐりぐりするの止めて!」
 
「あのさぁ……怒られてる自覚ある?止めてって言われて止める訳ないよね?怒ってるんだから」
 
「ご、ごめんなさい!確かに聖来からデートって言われてたけれど!もしかしたら、本当に買い物に付き合うだけかもしれないって思ったの!だから、行きました!」
 
「へぇ~?じゃあ、俺に嘘を吐く理由は?買い物に行くだけなら正直にアイツと買い物に行きますって言えばよかったんじゃないのかな~?」
 
「そ、それは!大虎くんがヤキモチを焼くと思って!でも、もうヤキモチを焼かせて意地悪されるのは懲り懲りなの!」
 
私がそう言うと大虎くんは私の上から退く。
 
「あぁ、そう。けどさ?アイツの言った通り、俺が後をつけてなくてあんな仲良さそうに歩いてるとこを見たら浮気かなって疑うよ?裏切られたって思うかもしれない。それで俺は莉恵さんと付き合い続けられると思う?別れてたかもしれないよ?そういうことは考えなかったってことだよね?」
 
「っ!」
 
その言葉にハッとして私は俯いた。
 
「(そうよね……
もし、私が大虎くんの立場だったら……
嘘を吐かれていたって言うショックと浮気されていたっていうショックですごく傷つくわ。
私は大虎くんにそういう思いをさせたんだ……)」
 
大虎くんは口には出さないけれど自分が年下だから私に辛い思いをさせていないかすごく悩んでいて。
 
「(それを見せないように頑張っている大虎くんを私は裏切ったんだ……)」
 
私は涙がこぼれそうになるのを必死で我慢した。
本当に泣きたいのは大虎くんの方だと思ったから。
すると大虎くんの手が私の頬に触れ顔を上げさせられる。
 
「……やっぱり、泣きそうな顔してる」
 
「っ!」
 
大虎くんは悲しそうな顔をして微笑んでいた。
その表情に我慢出来ず涙をこぼす。
 
「……なんで、莉恵さんが泣くの。泣き虫だなぁ」
 
そう言いながら私の涙を拭ってくれた。
 
「だ、だって!大虎くんが泣かないからっ!」
 
「今回は泣かないよ。一部始終全部見て聞いてるから」
 
「じ、じゃあ、どうしてそんな悲しそうな顔をしているの!?」
 
「え?莉恵さんの鈍感さを考えたら怒ってるのがばかばかしく思えただけだよ。どう頑張っても治らないだろうしそりゃあ、悲しくもなるよね」
 
「うぅ……ごめんなさい……」
 
「はいはい。今回はこれで終わり!あぁ、でも」
 
「?」
 
「今日は覚悟してね?」
 
「えっ!?」
 
大虎くんはいつもの意地悪な笑顔を私に向ける。
私はもう二度と大虎くんに嘘は吐かないと心に誓ったのだった。
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