私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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旅行①

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無事に一週間の夏季休暇を手に入れて温泉旅行に行くことにした。
大虎くんは私に黙ってバイトをしていたらしく旅行費は全部出すと言ってくれたんだけれど……
 
「お願いだから割り勘にしましょう!?ね!?」
 
「莉恵さんの誕生日ちゃんと祝えなかったからその代わりって言ってるじゃん。何のために莉恵さんと一緒にいる時間減らしてまでバイトしてたと思ってるの」
 
「うぅ……じゃあ、せめて交通費だけでも出させて!」
 
「なんでそんなに出したがるかなぁ?遅い誕生日プレゼントだと思って気にせず受け取ってよ」
 
「それは無理!そもそも、旅行のプラン決めたあとに全額払うって言い出すなんて酷いわ!」
 
「えー?でも、交通費も含めて二人合わせても五万くらいだよ?」
 
「それでも嫌なの!」
 
「……もう分かったよ。じゃあ、交通費だけね?それ以外は出させないから」
 
「うぅ……分かったわ……あ!でも!車で行くとか無しよ!?瀬羽さんに送り迎えを頼まないでね!!」
 
「……流石に頼まないよ。俺は莉恵さんと二人きりで旅行したいだけだしね」
 
そう優しく微笑まれて思わず顔を赤く染める。
そんな隙を見せたせいで宿代も新幹線代も結局全て大虎くんが先払いしてしまった。
 
「も、もう!大虎くん!」
 
「いやいや、新幹線チケットも一緒に取った方が安くなるから一緒に予約しただけだよ。交通費はあとでちゃんともらうから」
 
ポカポカ大虎くんを叩いていた手を止めて顔を上げる。
 
「本当?」
 
「本当。こんなことでいつまでも言い合いたくないし。それより、早く旅行の準備しよ」
 
「うん!」
 
そして、旅行日当日。
大虎くんと新幹線に乗って京都へ。
 
「あぁ、楽しみ!京都なんて中学生の修学旅行以来!」
 
「そっか。俺も楽しみ」
 
「大虎くんは修学旅行どこに行ったの?」
 
「んー……行ってないかも。体調崩して休んでたかな」
 
「そうなの?」
 
「うん。高校最後のときは泰仁たちが俺のために卒業旅行の計画立ててくれたんだけど結局、入院したから行けなかった」
 
「そっか……じゃあ、この旅行はめいっぱい楽しみましょう!」
 
「うん」
 
京都に着き思わずはしゃぐ私。
そんな私の手を引いて宿を目指す大虎くん。
私があっちに行きたい、こっちに行きたいと言えば大虎くんはあとでねとか荷物置いてからねと返してくる。
宿の送迎車に乗ってからも私はずっとそわそわしていた。
無事にチェックインを済ませて部屋に案内される。
部屋はとても綺麗で窓から見える景色もとても素敵だった。
 
「大虎くん!大虎くん!見て見て!すっごく綺麗なの!」
 
荷物を置いてはしゃぐ私に仲居さんから軽く宿の説明を受けていた大虎くん。
仲居さんは私の様子を見てニコニコ微笑んでいる。
大虎くんも楽しそうな顔をして見ていた気がして余計に恥ずかしくなった。
 
「……以上になります。何かご質問はありますか?」
 
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
 
「かしこまりました。では、何かありましたら内線よりお問い合わせ下さい。どうぞごゆっくりお過ごし下さいませ」
 
そう言って仲居さんが頭を下げて出ていく。
それを見届けて大虎くんが吹き出した。
 
「ふっ……あははっ!莉恵さん!もう少し落ち着きなよ!景色も旅行も逃げないよ?」
 
「そ、そうなんだけど!つい……ごめんなさい、恥ずかしかったわよね?」
 
「いや?俺は全然。楽しそうで何よりだよ。じゃあ、荷物も置いたし出かけますか」
 
「うん!私、舞妓さんを探したいわ!」
 
「いっそ、舞妓になれば?体験あったでしょ?」
 
「舞妓さんは見たいの!なりたい訳じゃないの!」
 
「あーはいはい。分かりました」
 
「あ!でも!大虎くんは新選組の衣装着てね?」
 
「え?なんで?」
 
「絶対に似合うから!!」
 
「そ、そう……それは明日にしようか。今日は散歩がてらの舞妓さん探しね」
 
「じゃあ、早く行きましょう!」
 
「はいはい」
 
そう言って再び外に出る。
色々なお店を回って舞妓さんにも会えて一緒に写真を撮ってもらえた。
夕食前に温泉に入りたいと言うと大虎くんはあっさりと了承してくれて宿に戻る。
部屋に戻って温泉に入る準備をしていると大虎くんが私を呼んだ。
 
「莉恵さん、ちょっと」
 
「なあに?」
 
呼ばれた先に行くとなんと客室露天風呂付きの宿だったらしく露天風呂があった。
 
「え?ちょっと待って!私、客室露天風呂付きなんて希望言った?プランにそんなこと書いてあった?」
 
「ううん。言ってないし書いてない。俺、知らない人と同じお湯に入れないからこっちにした」
 
「こっちにしたって……じゃあ、値段は?」
 
「そりゃあ、ちょっとは上がっちゃうよね。でも、ほら、俺の都合だし」
 
「……お願いだからこういうのは先に言って……大虎くんは潔癖症だったかしら?」
 
「あはは……ごめんね?別に潔癖症って訳じゃないんだけど……仮に俺が部屋の風呂で済ますから温泉は行かないって言うと莉恵さんも温泉行かないって言い出しそうだし……それに莉恵さんもこっちの方がゆっくりくつろげるし喜ぶかなって思ったんだけど……だめだった?」
 
「……ううん。そうね、大虎くんが入らないって言ったら確かに私も我慢しちゃうと思うわ。だから、大虎くんの都合であっても私のことも考えてくれて嬉しい。ありがとう」
 
「……どういたしまして。なんか、いつもと違うからか照れる」
 
そう言う大虎くんの顔は少し赤い。
私は思わず微笑んだ。
 
「(あれ?
けれど、お部屋に露天風呂があるってことは……?
大虎くんなら一緒に入るって言いそうじゃない……?)」
 
そう思い何となく構える。
 
「とにかく、莉恵さん、お先にどうぞ。ここ最近、仕事も大変だったでしょ?だから、ゆっくりくつろいで疲れを取ってきなよ」
 
「え?あ、うん。ありがとう。そ、それじゃあ、お言葉に甘えて先に入るわね?」
 
「うん。どうぞ」
 
予想と違って戸惑いを隠せずにいると大虎くんが首を傾げた。
 
「どうしたの?」
 
「あ、ううん!何でもないわ」
 
「(そ、そうよね!
一緒に入るなんて言う訳ないわよね!!
私ったら何考えているんだろう……)」
 
まるで自分が期待していたようで恥ずかしい。
お言葉に甘えて先に露天風呂に入った。
景色も綺麗で思わず見とれてしまう。
露天風呂にゆっくり浸かり疲れを取る。
 
「(はぁ……
幸せ……
やっぱり、疲れを癒すなら温泉よねぇ……)」
 
一時間ほど入って用意されていた浴衣に着替えて髪を上に束ねてから部屋に戻った。
 
「お待たせ。大虎くんも入ってきたら?」
 
「んー……そうしようかな」
 
大虎くんはノートパソコンを持って来ていたみたいでそれを閉じると立ち上がる。
 
「それじゃあ、入ってくるね」
 
「えぇ、ごゆっくり」
 
そう言って大虎くんが見えなくなってから気になって思わずノートパソコンを開いた。
画面はパスワード入力画面になる。
 
「(うーん……
そうよねぇ……
そりゃあ、パスワードつけるわよねぇ……)」
 
私は悩みながら大虎くんの誕生日を入力してみるが開かない。
 
「やっぱり違うわよねぇ……」
 
自分の誕生日なんて単純なパスワードなんか使わないか……
大虎くんに限って。
試しに私の誕生日も入力してみたがやっぱり開かなかった。
 
「うーん……あ!そうだわ!」
 
私はパッと閃いてその数字を入力する。
 
「……あれ……これでもないの?」
 
私たちの記念日を入力してみたけれど開かない。
少しショックを受けながらも考え続けた。
 
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