私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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旅行④

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何とか無事に予約時間前に貸衣装のお店に到着。
けれど、そこからが大変だった。
 
「もう!何で着てくれないの!?」
 
「だから!それはこっちのセリフだってば!何で俺ばっかり着なくちゃいけないの!?せっかく来たんだから莉恵さんも少しくらい着なよ!」
 
到着してすぐにサービスの説明をされて私は迷わず大虎くんに全ての衣装を希望。
それに間髪容れずに嫌だと拒否した大虎くん。
かれこれ三十分は言い合っている気がする。
幸か不幸かお客は私たちだけだったので店員さんは困り顔で行く末を見守ってくれていた。
 
「私が着たって似合わないもの!」
 
「俺はそう思わないの!そんなこと言うなら俺だって似合わないだろうから着たくない!」
 
「大虎くんは絶対に似合うわよ!私は似合わないけれど!」
 
「あー!もう!キリがない!二着!俺、二着しか着ないから!莉恵さんも二着着てもらうよ!」
 
「えっ!?何で……!」
 
私が言い返さないうちに大虎くんは店員さんにプランやらオプションやらを決めてしまう。
後は衣装を決めるだけだ。
 
「変更は聞き入れなくていいです。これで。絶対これで。莉恵さんはとっとと衣装選んで!」
 
「か、かしこまりました」
 
「うぅ……」
 
私もしぶしぶ大虎くんに着せる衣装を見る。
けれど、とても二つまで絞れない。
 
「さ、三着……」
 
「却下。二着」
 
大虎くんは私の横で私に着せる衣装を選んでいる。
 
「(うぅ……新選組は外せないし……その新選組も隊長服と局長服まであるし……坂本辰馬の衣装まであるし……大正浪漫風の衣装まであるし……)」
 
私が悩んでいると大虎くんが小さくため息を吐いた。
 
「そんなに悩んでるの?」
 
「う、うん!だから、四着に……」
 
「却下」
 
まだ喋っている最中なのに食い気味に却下される。
それに少し腹を立て思わず大虎くんに強い口調で問いかけた。
 
「じゃあ、大虎くんはもう私に着せる服、二着とも選んだのね?」
 
「うん」
 
「そ、そうなんだ」
 
てっきり、選んでいないと返ってくると思っていた私はちょっとだけ焦ってしまう。
チラッと大虎くんを見るとニコニコ笑っていた。
 
「……大虎くんはどれを選んだの?私もそれに合わせる」
 
「そうこなくちゃね!莉恵さんにはこの二着着てもらうね?」
 
そう言って指を差した服はお姫様と大正浪漫風の貴婦人みたいなドレスの服だった。
結局、私は外せなかった新選組の隊長服と大正浪漫風の服を選び着替えに行く。
私たちが着替え終わった頃にはお客も増えて大虎くんは予想通りどっちの衣装も似合っていたためか他のお客さんにも写真を撮らせて下さいとせがまれていた。
無事に撮影を終えて着替え、お店を出る。
大虎くんと手を繋ぎながら清水寺を目指した。
 
「それにしても、大虎くんやっぱりすごく似合っていたわね!写真撮らせて下さいって言われていたでしょう?」
 
「そうだね。全部断ったけど。莉恵さんも似合ってたよ?だから、二人だけの記念ね」
 
「うん!」
 
その後は清水寺を観光して宿に戻った。
宿に戻ってすぐにお風呂に入って夕食を食べてくつろぐ。
 
「はぁ~……明日には帰ると思うとちょっと憂鬱な気持ちだわ」
 
「楽しんでもらえた?」
 
「それはもちろん!」
 
「なら良かった。でも、今日、お酒飲みすぎじゃない?」
 
大虎くんはまた整理をしているのかパソコンを弄りながら言った。
 
「そう、ね……最後だと思ったらつい飲んじゃって……」
 
そのせいか体の火照りを感じる。
 
「はぁ……なんか、熱い」
 
そう言っておろしていた髪を一つに束ねて、少しだけ浴衣をはだけさせてうちわで扇いだ。
 
「……もう、水でも飲んで寝なよ」
 
「それは嫌!もう寝ちゃったら起きてお土産買ってあとは帰るだけじゃない!そんなのつまらないわ」
 
「……じゃあ、どうするの?俺、酔っ払いの相手なんて嫌だよ」
 
「失礼ね!酔ってはないわ!」
 
「半分、酔ってるようなもんだと思うけどね」
 
「もう!そんな意地悪言う大虎くんにはくすぐりの刑!」
 
そう言って大虎くんに飛びつきくすぐる。
 
「うわっ!?ちょ、莉恵さん!くすぐったい!ふ、あははっ!ちょ、やめて、ホント……」
 
「だめですー!これは私に意地悪した罰なんですー!」
 
「あははっ!ちょ、もうっ!莉恵さん!」
 
大虎くんは私の両手を掴んで動きを封じた。
 
「いやー!放して!」
 
「だーめ!またくすぐるつもりでしょ?それにすっごく良い眺めだし」
 
「え?」
 
私は慌てて今の自分の格好を見ると、少しだけはだけていたと思っていた浴衣は思った以上にはだけている。
思わず顔が赤くなった。
 
「た、大虎くんのエッチ!変態!放して!」
 
「何でも結構。自業自得でしょ。人がせっかく我慢してあげてるのに、こんなに煽ってくるなんて……そんなに可愛がってほしいの?」
 
その言葉にさらに顔を真っ赤に染める。
 
「(た、確かに期待していないかと言われれば嘘になるかもしれないけれど……!でも、決して煽ったつもりはないわ!!)」
 
私が必死に首を振って抵抗していると、いきなり体が持ち上がった。
 
「えっ!?ちょっ!?」
 
「ほら、ちゃんと俺につかまらないと落ちちゃうよ?」
 
「そ、そうじゃなくて!重いでしょ!?っていうかお姫様抱っこ!?」
 
「何?不満?」
 
「ち、違う!むしろ、憧れていたけれど……って、そうじゃないの!どこに連れて行くつもり!?」
 
「布団」
 
「ふ、布団!?な、何する気!?」
 
「え?一緒に寝るけど」
 
「えっ!?」
 
「何?」
 
「っ!た、大虎くんのエッチ!」
 
「え、添い寝してあげるって意味だったんだけど……」
 
「えっ!?」
 
慌てて顔を上げると、クスクス笑っている大虎くん。
そのまま、布団の上に降ろされる。
 
「それじゃあ、おやすみ」
 
「えっ!?一緒に寝るんじゃないの!?」
 
「え?添い寝してほしいの?」
 
「ち、違うけど!ふ、普通は何かするんじゃないのかなって!」
 
「?今回の旅行は莉恵さんの疲れを取るために来てるのに疲れさせてどうするの?本末転倒じゃん」
 
「で、でも……!恋人同士ならそれが普通じゃないかしら!?」
 
途中で自分がとんでもないことを言っていることに気づき、私は慌てて弁解する。
 
「ち、違うのよ?私がしたいとかじゃなくて……や、やっぱり酔っているみたい!ごめんなさい!忘れて……」
 
そこまで言って涙が一筋こぼれた。
 
「(旅行は確かに楽しかった。けれど、手を繋いでくれたくらいで、それ以上のことはしてくれなくて……それが、少し寂しかった)」
 
自分がどうしたいのか分からなくなり涙も止まる気配はない。
 
「ご、ごめんなさい!気にしないで!すぐに泣き止むから!」
 
私がそう言うと突然視界が暗くなる。
抱き締められていると気づくのに時間はかからなかった。
 
「た、大虎くん!?」
 
「……ごめんね。俺、勝手に莉恵さんのためとか思って莉恵さんの気持ち考えてなかった。だから、してほしいこと、ちゃんと言って?言ってくれないと分かんないよ」
 
大虎くんは私を抱き締めながらそう言ってくれたのでそっと腕を回して口を開く。
 
「……頭、撫でてほしい」
 
大虎くんは優しく頭を撫でてくれる。
 
「莉恵さん、いつもお疲れ様。疲れてるのに俺のために家のこと全部やってくれて本当にありがとう」
 
その言葉だけですごく嬉しくなった。
私はさらに力を込めて大虎くんにくっつく。
大虎くんもそれに応えるように私を抱き締めてくれて頭も撫で続けてくれた。
チラッと大虎くんを見上げると目が合い大虎くんはフッと笑うと私の頬にキスを落とす。
そのまま何度もどちらともなく唇にキスをした。
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