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第14話 好感度上げが簡単すぎるんですが?
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「何してるのかな?」
顔を上げると、校舎の陰からセドリックが姿を現した。壁に手を付き、長い足を交差させリーナたちを見つめている。その姿は、夕方のオレンジ色の日差しに照らされ、憂いを帯びている。それはまるで、イケメン効果アップの照明を浴びているようだ。グリーンの瞳は、真っ直ぐにリーナに向けられていた。
「悪いけど、彼女は私のだから」
オルガ相手に謎の牽制をされ、セドリックに引きづられて行くリーナ。
(何でみんな私を誘拐するように連れ出すのよ・・私は王子の所有物じゃないし・・・)
呆気にとられるオルガに助けを求める視線を送るが、全くの無駄だった。敢えなく捕獲されたリーナは、再び見覚えのある部屋へやって来る。扉が閉ざされ、二人きりになると、リーナの耳にあの鐘の音が・・・
“リンゴーン”
(また鐘。朝から何なの?もしかして、特殊能力備えちゃったのかしら?)
リーナが度々、耳に届く不思議な現象に首を傾げていると、今度は鐘の音ではなくセドリックの声が届く。
「最近、彼女とよく一緒にいるようだな」
リーナは「はい」と短く答えると、目を伏せる。セドリックと目を合わせると、今朝のことが頭に蘇る気がした。
「君たちの雰囲気が変わったことに、関係があるのか?」
この言葉にリーナの身体がビクッと反応する。
「幼い頃から知っているが、オルガ嬢も大分変わってしまった。何とかしろと、公爵に泣きつかれたが、何をどうしろと言うのだ、全く・・・」
(『それ転生です!転移です!』と言えたら、この人の疑問を解決できるのだろうか・・・)
リーナは、そんな考えが頭に浮かんだが、そんな事を言ったら、さらに興味を持たれかねないと、浮かんだばかりの考えに蓋をした。
「さっきは、何を話していた?」
「女の子同士の会話を知りたいなど、随分と野暮なことをなさるのですね」
リーナは王子の好感度のこともそうだったが、朝の二の舞いになっては敵わぬと、セドリックの動きに警戒している。そんな気配を察したのか彼は「クックッ」と楽しげな笑いを漏らし、言った。
「いい心掛けだ。男と二人きりでは、警戒しなくてはならん。以前の君なら、警戒などという言葉とは無縁だったからな」
“リンゴーンリンゴーン”
再び鐘の音が・・・
そしてセドリックがリーナへ一歩近付くと、彼女は一方的下がり、二人の距離が縮まることはない。そして、ここでも鐘の音がする。
セドリックからフッと自嘲気味の笑いが漏れると、「今朝は、大分怖がらせてしまったようだな」と聞こえてきた。
前世では結婚目前の彼氏もいたリーナは、それなりにそっち方面の経験もあった為、今朝のようなイチャイチャにはさほど驚いていなかった。しかし、何せ相手は目も眩むようなイケメン。しかも朝の彼は、王子の仮面を外した獣だった。生憎、獣イケメン耐性はない。そっちのほうがリーナの心を乱したのだが、当然リーナ・リーベルトは純潔。あくまでも控えめでしとやかでなくてはならない。
「怖がっているわけでは・・ただ、朝のような事は、困ります」
“リンゴーンリンゴーンリンゴーン”
(また・・これはおそらく・・・)
リーナの頭に朝から鳴る鐘の音の正体が浮かぶ。
『好感度センサー』
リーナはセドリックの彼女に対する好感度が上がると、鐘が鳴ると結論付ける。そして案外、好感度上げのハードルが低いことにも気付いた。
(これは思ったより、早くオルガを元に戻せるかもしれないわ)
リーナの心に芽吹いた希望は、彼女のやる気を引き出した。
「怖がっているわけではないのだな?」
「はい・・ただ、朝も申し上げたとおり、私はただの伯爵令嬢。殿下には皆が認める公爵家の御令嬢の皆様がおられます故、気まぐれで声をかけられても困ります」
「気まぐれなどではない。一目惚れだと言っただろう」
「一目惚れなど、それこそやがて覚める夢でございます」
「私のこの気持ちを、まやかしだと言うのか?」
「まやかしでなければ、何だと言うのでしょう」
こんな会話を繰り広げている間もずっとリーナの耳には、鳴り響く鐘の音が届いていた。
(王子チョロい・・・王子の仮面を被らせておけば、造作もない。三十路手前の経験値捨てたもんじゃないわ)
内心ほくそ笑んでいるリーナにセドリックは、不敵な笑みを浮かべるが、その前にリーナは頭を下げ逃げ出した。
「とにかく今日は両親が待っておりますので、帰らなければなりません。失礼致します」
その後ろ姿を見ながらセドリックは、楽しそうに口角を上げると呟いた。
「フッ・・・逃さないからな」
顔を上げると、校舎の陰からセドリックが姿を現した。壁に手を付き、長い足を交差させリーナたちを見つめている。その姿は、夕方のオレンジ色の日差しに照らされ、憂いを帯びている。それはまるで、イケメン効果アップの照明を浴びているようだ。グリーンの瞳は、真っ直ぐにリーナに向けられていた。
「悪いけど、彼女は私のだから」
オルガ相手に謎の牽制をされ、セドリックに引きづられて行くリーナ。
(何でみんな私を誘拐するように連れ出すのよ・・私は王子の所有物じゃないし・・・)
呆気にとられるオルガに助けを求める視線を送るが、全くの無駄だった。敢えなく捕獲されたリーナは、再び見覚えのある部屋へやって来る。扉が閉ざされ、二人きりになると、リーナの耳にあの鐘の音が・・・
“リンゴーン”
(また鐘。朝から何なの?もしかして、特殊能力備えちゃったのかしら?)
リーナが度々、耳に届く不思議な現象に首を傾げていると、今度は鐘の音ではなくセドリックの声が届く。
「最近、彼女とよく一緒にいるようだな」
リーナは「はい」と短く答えると、目を伏せる。セドリックと目を合わせると、今朝のことが頭に蘇る気がした。
「君たちの雰囲気が変わったことに、関係があるのか?」
この言葉にリーナの身体がビクッと反応する。
「幼い頃から知っているが、オルガ嬢も大分変わってしまった。何とかしろと、公爵に泣きつかれたが、何をどうしろと言うのだ、全く・・・」
(『それ転生です!転移です!』と言えたら、この人の疑問を解決できるのだろうか・・・)
リーナは、そんな考えが頭に浮かんだが、そんな事を言ったら、さらに興味を持たれかねないと、浮かんだばかりの考えに蓋をした。
「さっきは、何を話していた?」
「女の子同士の会話を知りたいなど、随分と野暮なことをなさるのですね」
リーナは王子の好感度のこともそうだったが、朝の二の舞いになっては敵わぬと、セドリックの動きに警戒している。そんな気配を察したのか彼は「クックッ」と楽しげな笑いを漏らし、言った。
「いい心掛けだ。男と二人きりでは、警戒しなくてはならん。以前の君なら、警戒などという言葉とは無縁だったからな」
“リンゴーンリンゴーン”
再び鐘の音が・・・
そしてセドリックがリーナへ一歩近付くと、彼女は一方的下がり、二人の距離が縮まることはない。そして、ここでも鐘の音がする。
セドリックからフッと自嘲気味の笑いが漏れると、「今朝は、大分怖がらせてしまったようだな」と聞こえてきた。
前世では結婚目前の彼氏もいたリーナは、それなりにそっち方面の経験もあった為、今朝のようなイチャイチャにはさほど驚いていなかった。しかし、何せ相手は目も眩むようなイケメン。しかも朝の彼は、王子の仮面を外した獣だった。生憎、獣イケメン耐性はない。そっちのほうがリーナの心を乱したのだが、当然リーナ・リーベルトは純潔。あくまでも控えめでしとやかでなくてはならない。
「怖がっているわけでは・・ただ、朝のような事は、困ります」
“リンゴーンリンゴーンリンゴーン”
(また・・これはおそらく・・・)
リーナの頭に朝から鳴る鐘の音の正体が浮かぶ。
『好感度センサー』
リーナはセドリックの彼女に対する好感度が上がると、鐘が鳴ると結論付ける。そして案外、好感度上げのハードルが低いことにも気付いた。
(これは思ったより、早くオルガを元に戻せるかもしれないわ)
リーナの心に芽吹いた希望は、彼女のやる気を引き出した。
「怖がっているわけではないのだな?」
「はい・・ただ、朝も申し上げたとおり、私はただの伯爵令嬢。殿下には皆が認める公爵家の御令嬢の皆様がおられます故、気まぐれで声をかけられても困ります」
「気まぐれなどではない。一目惚れだと言っただろう」
「一目惚れなど、それこそやがて覚める夢でございます」
「私のこの気持ちを、まやかしだと言うのか?」
「まやかしでなければ、何だと言うのでしょう」
こんな会話を繰り広げている間もずっとリーナの耳には、鳴り響く鐘の音が届いていた。
(王子チョロい・・・王子の仮面を被らせておけば、造作もない。三十路手前の経験値捨てたもんじゃないわ)
内心ほくそ笑んでいるリーナにセドリックは、不敵な笑みを浮かべるが、その前にリーナは頭を下げ逃げ出した。
「とにかく今日は両親が待っておりますので、帰らなければなりません。失礼致します」
その後ろ姿を見ながらセドリックは、楽しそうに口角を上げると呟いた。
「フッ・・・逃さないからな」
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