〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜

hanakuro

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第15話 いくら何でも早すぎませんか?

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翌日からセドリックの好感度アップも意外に簡単だと気付いたリーナの学園へ向かう足は軽かった。

相変わらず、オルガやセドリックのことで周囲からの様々な思惑の視線が突き刺さったが、すでにそれにも慣れていた。

(私って、こんなに図太かったかしら・・)

OL時代のリーナは、上司や先輩からの視線を意識しているところがあった。周囲と波風立てずにしようと、気を使っていた。故にモブキャラ転生後も“ビバ!モブ生活”と喜んでいた。

しかし今では唯一の友とは疎遠になり、変わり者と皆に思われているオルガと親しくし、セドリックとの噂の対象になっても、仕方ないと諦めていた。冬馬を転移させてしまった責任もあったが、何より転生前の本来のリーナ・リーベルトとして築いていた関係の記憶がないことが大きかった。

(あの頃の私は、どこへ行ったのかしらね)

リーナはそう考えながら、教室へと向かって行った。

しかし、この日もまたリーナは、周囲に振り回されることになる。昨日に続き、今日もまた昼休みにビクトリアの取り巻きに囲まれたのだ。

案の定、連れて行かれたのはビクトリアの元だった。今日は何の質問をされるのかとリーナが身構えていると、ビクトリアは突然、扉から出て行き代わりにセドリックが入って来た。そして無情にも、外からガチャっと鍵の掛けられた音がする。

突然、ビクトリアに売られたリーナは、訳がわからずに開かない扉を見つめていた。

(何で?何でビクトリアが、セドリックと一緒に私を閉じ込めるわけ?貴女、王子狙いでしょう?ヒロインと王子を巡って、争うのよね?なのに、何で私なんかと二人っきりにするのよ!?何かあったら、どうするのよ)

無言で立ち尽くすリーナにセドリックの声が掛けられる。

「昨日は逃げられてしまったからな。多少、卑怯な手を使った自覚はあるが、君のこととなると余裕がないんだ」

振り返りセドリックと向き合うリーナに真っ直ぐなグリーンの瞳が注がれる。

「えっとあの・・」

後ずさりし、背に当たるドアノブを後ろ手で回すが、当然回らない。

「ああ、やっとその表情が見られたな」

満足そうな笑みを浮かべ、一歩また一歩とリーナへ近づいてくるセドリックは、王子の仮面を外した獣になっていた。

“リンゴーンリンゴーンリンゴーン・・”

けたたましく鐘の音が鳴る中、「君の怯えた表情は、私をゾクゾクさせる」とセドリックの恐ろしいセリフが紡がれる。

そして、ついにリーナのすぐ側までやってきたセドリックは、彼女の頬に手を当てると、ふわりと微笑んだ。まるで彫刻のような彼の顔に見惚れそうになった瞬間、気付くと彼の腕の中にいた。

(どうして?・・)

抱きしめられている状況を理解するまで時間がかかった。しかし、それは理解してもなお、現実味のないものだった。ベタ恋では、この役はオルガのものであり、それに嫉妬するビクトリアのはずだった。それなのに、しがないモブの自分がヒーローの腕に抱きしめられている。

「君の瞳も声も身体も、私のものだ。誰に触れさせるつもりはないぞ。こうして皆の前で見せつけてやるのも、一興だな」

甘く自信に満ち溢れた声で囁かれるセリフは、鳴り止まぬ鐘の音と混ざり、リーナの混乱を増す。そして、そのまま抱き上げられたリーナはピアノの上に座らされると、セドリックに腰と頭を押さえられ逃げ道を塞がれ、唇も塞がれた。

「んっ・・ふぅ・・」

口づけの合間に漏れる吐息はなまめかしく、リーナの脳まで痺れさせた。

(ぁ・・ヤバい・・・こんなキスするなんて卑怯よ・・)

長く深いキスの後、ようやく解放されたリーナは、くたりと力なくセドリックの腕に身体を預ける。瞳を潤ませ頬を染めたリーナを愛しそうに見つめながら、セドリックは「これは、私のものだという印だ」と言って、リーナの制服の胸元を強引にあらわにすると、白い肌に小さな赤い花びらを散らせた。

チュッとなまめかしい音をさせ、胸元から顔を上げたセドリックは、満足げな笑みを浮かべている。その表情があまりに色っぽくて、リーナの顔はさらに真っ赤に染まった。

(うぅ~~~っ!恥ずかしすぎる!!!まさか年下の王子に翻弄されるなんて・・・)

そんなリーナの様子を面白そうに見下ろしていたセドリックだったが、ふと何か気付いたように視線を動かした。

そこには相変わらず、うっすらとした少年姿の神様がいた。

慌ててセドリックを突き飛ばそうとしたリーナだったが、思いの外彼の腕が強く抱きしめられる腕が強まってしまった。

『おめでとうございます。好感度カンストしましたので、約束どおり願いを叶えましょう』

こんな状況でなければ、諸手もろてを挙げて喜ぶセリフが聞こえてきたが、リーナは花を散らされた胸元を隠すのに必死でそれどころではなかった。

そしてうるさいくらいに聞こえていた鐘の音は、いつの間にか止んでいた。
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