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第13話 ついに目をつけられてしまったのか?
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その日、リーナは授業どころでは全くなかった。セドリックからの登校早々の強引なアプローチもそうだが、何より周囲の生徒たちからの嫉妬や好奇の眼差しがずっと突き刺さっていたからだ。
もはや当初、思い描いていたモブ生活とは縁遠くなってしまったことに、リーナはずっとため息をついている。そして親友であったはずのレオナからは、嫉妬心丸出しの冷たい視線が送られたことが、リーナの心を更に打ちのめした。
(何でこうなったんだろう。私の予定では、王子の好感度上げはこんなはずではなかったのに・・・)
そして八方塞がりのリーナは、昼休みに更に窮地に陥ることになる。見覚えのある女子生徒たちに机を取り囲まれたリーナは「ちょっと来なさいよ」と呼び出されたのだ。
(この子たち、確かビクトリアの取り巻き・・・これは人目のない場所で、囲まれて罵詈雑言吐かれて、フルボッコにされるパターンかしら・・あー、言葉だけで済むかしら・・・ベタ恋では、みんな裏で口にするのも憚られることやってたわよ。もしかしたら、この学園から生きて帰れないかもしれないわ、精神的にね)
そんなリーナが逃げ場なく囲まれたまま連れてこられたのは、ピアノ室だった。
「入りなさい」
取り巻きに言われるまま扉を開けると、悪魔が・・・ではなく、悪魔のような黒いオーラを放つビクトリアが悠然と待っていた。
リーナはこれから処刑されるかのような暗く落ち込んだ気持ちのまま、足を踏み入れる。すると、すぐに扉が閉められた。
(閉じ込められた!ウソ・・・ビクトリアと二人きり・・)
無情にも閉じられた扉を恨めしげに見つめていたリーナに、ビクトリアの凄みのある声が届く。
「貴女、セドリック殿下とどういう関係?」
(嗚呼、やっぱりそうきましたか・・オルガあんなんだし、私が目をつけられたのか・・これは、いよいよ“貴女なんて王子に似合わないのよ”的なやつが待ってるのかしらね)
「聞こえなかったのかしら?セドリック殿下とどういう関係?」
(えっと、どうもこうもないんですが。数日前に会ったばっかりで、関係もクソもありません・・なんて通じないし)
返答をいいあぐねていると、ビクトリアは質問を変えてきた。
「質問を変えましょうか。セドリック殿下のことを、どう思ってるのかしら?」
(うわぁ、もっと答えづらい質問に・・何とも思っていませんなんて、信じてもらえないわよね。どうするの?どう答えるのが正解なの?)
答えの出ないリーナに「答えるまで、返さないわよ」と、ビクトリアはどこまでも落ち着き払って言う。帰れないのは困るとビクトリアの脅しに屈したリーナは、正直に答えることにした。誤魔化せば、後々困ることになると考えた結果だ。
「ビクトリア様!どうと聞かれましても、ただの我が国の王太子殿下であり、尊敬すべき対象としか申し上げられません。言葉を交わしたのも、つい先日偶然ぶつかった時に、謝罪しただけ・・・決して、皆さまが考えていらっしゃるようなことは、ございません!それに私のようなふつ~う伯爵家のふつ~うの娘が殿下のお目に止まったのでしたら、それは一時の気まぐれ、物珍しい珍獣としてでございます!」
少しぶっちゃけすぎたかと、一瞬不安になったリーナだったが、ビクトリアへ向ける眼差しに嘘偽りがないことを感じ取ったのか、彼女はため息をつくと「そう・・よく分かったわ。もう行っていいわよ」と言った。思いがけず、すんなりお許しがでたリーナは「えっ?よろしいんですか?」と聞き返す。聞き返すなど失礼な行為だったが、ビクトリアは気にする様子もなく「ええ、いいわよ。行きなさい」と言った為、リーナは逃げるようにピアノ室を後にした。
しかしこの日のイベントは、まだ続いていた。午後の授業を何とか終えたリーナが、オルガの元へ向かう。すると、向こうからそのオルガがやって来た。いつもなら周囲の目を気にして、定番の校舎裏で落ち合う二人だったが、ものすごい勢いで彼女は近付いてくる。
オルガはリーナの目の前まで来ると、何も言わずにはリーナの腕を掴み、引きずるようにいつもの場所へと連れて行く。そして到着すると同時に、質問を投げかけてきた。
「リーナもやっぱり貴族に染まっちゃったのか?」
リーナは、オルガからの疑義の眼差しの意味を考えるが、全くピンとこない。仕方なしにリーナが「えっと、私が何に染まったって言うの?」と聞くと、オルガはどうやら今朝のセドリックに連れ去られた事を言っているようだった。
「友達のいない俺の耳にも届くくらいだ。学園中が知ってるぞ」
「知ってるわ。昼休みに悪役令嬢ポジから呼び出し食らったわよ」
「平気か?」
オルガの心配に「ええ、だって王子とは本当に何でもないもの。みんなが勝手に勘違いしてるだけ」と答えるが、リーナの胸には一抹の不安が・・
『私との仲を公にしてから、浮気などされては困るからな』
セドリックの言葉のせいだが、それよりも今はオルガに神様と出会ったこと、魂を元に戻す方法が分かったこと、そして彼の魂がなぜ転移したのか・・を打ち明けようとリーナは決めていた。
「それよりオルガに謝らないといけないの。ごめんなさい!」
リーナはそう切り出すと、頭を深々と下げる。そして事情を話し始めようとしたリーナに、またしても邪魔が入る。
「何してるのかな?」
もはや当初、思い描いていたモブ生活とは縁遠くなってしまったことに、リーナはずっとため息をついている。そして親友であったはずのレオナからは、嫉妬心丸出しの冷たい視線が送られたことが、リーナの心を更に打ちのめした。
(何でこうなったんだろう。私の予定では、王子の好感度上げはこんなはずではなかったのに・・・)
そして八方塞がりのリーナは、昼休みに更に窮地に陥ることになる。見覚えのある女子生徒たちに机を取り囲まれたリーナは「ちょっと来なさいよ」と呼び出されたのだ。
(この子たち、確かビクトリアの取り巻き・・・これは人目のない場所で、囲まれて罵詈雑言吐かれて、フルボッコにされるパターンかしら・・あー、言葉だけで済むかしら・・・ベタ恋では、みんな裏で口にするのも憚られることやってたわよ。もしかしたら、この学園から生きて帰れないかもしれないわ、精神的にね)
そんなリーナが逃げ場なく囲まれたまま連れてこられたのは、ピアノ室だった。
「入りなさい」
取り巻きに言われるまま扉を開けると、悪魔が・・・ではなく、悪魔のような黒いオーラを放つビクトリアが悠然と待っていた。
リーナはこれから処刑されるかのような暗く落ち込んだ気持ちのまま、足を踏み入れる。すると、すぐに扉が閉められた。
(閉じ込められた!ウソ・・・ビクトリアと二人きり・・)
無情にも閉じられた扉を恨めしげに見つめていたリーナに、ビクトリアの凄みのある声が届く。
「貴女、セドリック殿下とどういう関係?」
(嗚呼、やっぱりそうきましたか・・オルガあんなんだし、私が目をつけられたのか・・これは、いよいよ“貴女なんて王子に似合わないのよ”的なやつが待ってるのかしらね)
「聞こえなかったのかしら?セドリック殿下とどういう関係?」
(えっと、どうもこうもないんですが。数日前に会ったばっかりで、関係もクソもありません・・なんて通じないし)
返答をいいあぐねていると、ビクトリアは質問を変えてきた。
「質問を変えましょうか。セドリック殿下のことを、どう思ってるのかしら?」
(うわぁ、もっと答えづらい質問に・・何とも思っていませんなんて、信じてもらえないわよね。どうするの?どう答えるのが正解なの?)
答えの出ないリーナに「答えるまで、返さないわよ」と、ビクトリアはどこまでも落ち着き払って言う。帰れないのは困るとビクトリアの脅しに屈したリーナは、正直に答えることにした。誤魔化せば、後々困ることになると考えた結果だ。
「ビクトリア様!どうと聞かれましても、ただの我が国の王太子殿下であり、尊敬すべき対象としか申し上げられません。言葉を交わしたのも、つい先日偶然ぶつかった時に、謝罪しただけ・・・決して、皆さまが考えていらっしゃるようなことは、ございません!それに私のようなふつ~う伯爵家のふつ~うの娘が殿下のお目に止まったのでしたら、それは一時の気まぐれ、物珍しい珍獣としてでございます!」
少しぶっちゃけすぎたかと、一瞬不安になったリーナだったが、ビクトリアへ向ける眼差しに嘘偽りがないことを感じ取ったのか、彼女はため息をつくと「そう・・よく分かったわ。もう行っていいわよ」と言った。思いがけず、すんなりお許しがでたリーナは「えっ?よろしいんですか?」と聞き返す。聞き返すなど失礼な行為だったが、ビクトリアは気にする様子もなく「ええ、いいわよ。行きなさい」と言った為、リーナは逃げるようにピアノ室を後にした。
しかしこの日のイベントは、まだ続いていた。午後の授業を何とか終えたリーナが、オルガの元へ向かう。すると、向こうからそのオルガがやって来た。いつもなら周囲の目を気にして、定番の校舎裏で落ち合う二人だったが、ものすごい勢いで彼女は近付いてくる。
オルガはリーナの目の前まで来ると、何も言わずにはリーナの腕を掴み、引きずるようにいつもの場所へと連れて行く。そして到着すると同時に、質問を投げかけてきた。
「リーナもやっぱり貴族に染まっちゃったのか?」
リーナは、オルガからの疑義の眼差しの意味を考えるが、全くピンとこない。仕方なしにリーナが「えっと、私が何に染まったって言うの?」と聞くと、オルガはどうやら今朝のセドリックに連れ去られた事を言っているようだった。
「友達のいない俺の耳にも届くくらいだ。学園中が知ってるぞ」
「知ってるわ。昼休みに悪役令嬢ポジから呼び出し食らったわよ」
「平気か?」
オルガの心配に「ええ、だって王子とは本当に何でもないもの。みんなが勝手に勘違いしてるだけ」と答えるが、リーナの胸には一抹の不安が・・
『私との仲を公にしてから、浮気などされては困るからな』
セドリックの言葉のせいだが、それよりも今はオルガに神様と出会ったこと、魂を元に戻す方法が分かったこと、そして彼の魂がなぜ転移したのか・・を打ち明けようとリーナは決めていた。
「それよりオルガに謝らないといけないの。ごめんなさい!」
リーナはそう切り出すと、頭を深々と下げる。そして事情を話し始めようとしたリーナに、またしても邪魔が入る。
「何してるのかな?」
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