〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜

hanakuro

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第12話 さすがに王子の皮をかぶった獣から逃げてもいいよね?

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“わたしのきさきにからないか”

このセリフが、まるで呪いの言葉のようにリーナの頭の中で渦を巻く。

「えっと、意味が・・」

ようやく紡ぎ出したリーナの言葉も、セドリックの返しにかき消される。

「君に一目惚れしたんだ」

『いえ、私はいちモブキャラ!妃なんてとんでもございません!殿下が、一目惚れするような絶世の美女でもありません!そんな事を仰るのは、おやめください!』

(って言いたい!ものすごく言いたい!・・・でもはっきり断ったら好感度がぁ。いっそ嫌な女演じる?ダメ!それも好感度が・・・・あぁ、どうするの!?初っ端から挫けそうよ・・・・・やっぱりここは言葉を濁すべきね)

リーナはそう決めると、なるべく心残りがあるように伏し目がちな表情をつくる。

「私は、しがない伯爵家の娘。それに私には幼い頃からのささやかな夢がございますの。政略結婚ではなく、一生を添い遂げる方とは、よく知ってから結ばれたいと・・・」

そんなセリフをセドリックへ送ると、同時にリーナの頬が勝手に染まる。これは決して意図したことではなく、こんな夢見る少女のようなセリフを自分が言ってる事に、彼女は恥ずかしさを覚えたのだ。

“リンゴーン”

また鐘の音が聞こえた。

しかし、相手も腐っても王子。簡単に引き下がるような相手ではない。

「それなら、今から知ってもらおうか」

セドリックが顔に浮かべる笑顔の種類が変わった気がしたリーナは、目を泳がせる。そして、彼女の中のアラームが鳴り響いた。

(危険!逃げろ!危険!逃げろ!)

「えっと・・それはどういう意っ」

リーナの言葉は、セドリックの口づけで遮られる。顎を持ち上げられ、唐突にそして強引に塞がれた唇から息が漏れた。

「んふっ・・」

セドリックの舌に強引に舌を絡め取られ、脳の奥までしびれるような感覚を覚える。

(なっんて強引・・彼氏からもこんな強引なキスされたこ・・・)

「・・ふ・・ぁ・・」

一生忘れられないくらい長く深く激しいリーナ・リーベルトにとってのファーストキスから解放されると、身体は何故かソファーに横になっていた。激しすぎる口づけで、背もたれに預けていた背中がずり落ちたことに気付かなかったのだ。

そしてリーナを見下ろすセドリックのグリーンの瞳が、ゆっくりと落ちてくる。リーナの耳元で「覚悟しろ」と囁かれると、リーナの全身が震える。

(これは流石にマズい流れでは・・・でも好感度のため我慢しないとダメ・・)

首筋を舌先で舐められると、勝手に身体がよじれ、「・・んぁっ・・・」と色気のある息が僅かに漏れた。

セドリックの手が彼女の胸の膨らみへとかかる。制服の上から揉みしだかれる胸は、やがて彼女の身体を覆う制服を乱す。乱れた制服の裾からリーナの脇腹に温もりが伝わってくる。セドリックが触れてきたのだ。

ここでリーナは、我に返る。

「ダメッ!!」

精一杯の力でセドリックを突き飛ばすと、自分の身体を守るように抱きしめた。

(好感度の為だからって、これはダメよ!イケメンだからって、何でも許されると思わないでよねっ!)

「申し訳ございません!でもこういうことは、やはり将来を誓いあった仲でないと、いけませんわ」

そう言い訳をしたリーナが恐る恐るセドリックを見ると、何故か彼は満足そうに微笑んでいた。そして彼の口から「合格だ」と理解できないセリフが出てきた。

“リンゴーンリンゴーンリンゴーン”

今度は、鐘の音が連続で鳴った。

(合格?・・・テストを受けたつもりはないけれど、何に対しての合格かしら?)

「私との仲を公にしてから、浮気などされては困るからな・・ああ、もう授業始まってるな。このまま、ここで過ごしても構わないが・・・」

こう言われたリーナは、慌てて立ち上がる。その顔は真っ赤だ。そんなリーナを楽しげに見つめるセドリックが、これまた楽しそうにリーナに言う。

「いいのか?制服も髪も乱れてるぞ。そんな姿でここから出ていったら、皆になんて思われるかな?直してやるから、座れ」

リーナが疑いの眼差しを向け、立ちすくんでいると「その髪を直してやるだけだ」と言葉を添える。それでようやくリーナは腰を下ろした。セドリックは言ったとおり、リーナの乱れたお団子ヘアを器用に直す。

ついさっき、襲われそうに・・いや、襲われていた相手に無防備な背中を見せている状況に、リーナの心臓はこれでもかというぐらい早くなる。そんな心を必死になだめながら、リーナは思ったことを素直に口にした。

「殿下、お上手ですね。男性はこういったことには、不慣れだと思っておりましたわ」

リーナが言い終わると同時にまたまた鐘の音が・・・

するとセドリックは、リーナがこの状況から逃げ出すダメ押しのセリフを口にする。

「夜の方も器用だぞ」

リーナは気付くと、廊下を小走りしていた。そして、顔を真っ赤にした彼女から呟きが聞こえる。

「王子の皮をかぶった獣・・・」

リーナの胸には不安しかなかった。
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