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第23話 なぜヒロインが断罪されてるの?
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リーナが食堂に戻ってくると、先程の騒動などなかったかのように皆、楽しそうに食事を楽しんでいた。
しかし入り口にセドリックとその腕に抱えられたリーナを見ると、皆一様に驚きの表情を浮かべる。いい加減下ろしてほしいリーナだったが、セドリックの腕から固辞する意思を感じ取り、大人しく抱かれていた。
そうしてセドリックは、迷うことなく奥へと足を進める。その先にいるのは、先程レオナに指示した自分として彼が名前を上げた人物だった。たくさんの生徒たちに囲まれた中心にいるのは、オルガだ。
セドリックとリーナの姿を見たオルガは、穏やかな表情を崩さずに立ち上がると、挨拶をする。
「セドリック殿下、ご機嫌麗しゅうございます。何やらそちらの御令嬢がお困りのようですわよ。皆の前で抱き上げるなどそれ相応のお相手にと望まれてのことかと思いますが、随分と強引ですのね、殿下は・・・」
オルガの奥歯に物が挟まったような遠回しな言い方にセドリックは、「強引で何が悪い。私もリーナも望んでいることだ」とブレることのない答えを返す。
(確かに嫌ではないけど、望んではいないと思う・・私が望んでいると、いつ口にしたかしら・・・?)
リーナがそんなことを考えていると、オルガは僅かに眉を上げる。
「そうですか、それは大変失礼いたしました。では、私のような者はこの場から早々に退散いたしますわ。相思相愛のお二人の邪魔などしたくありませんもの」
そう言って立ち去ろうとするオルガにセドリックは、「まあ、そう急ぐな。まだ話は終わっていないぞ」と言うと、チラッと後ろに目をやる。するといつの間にか、王子の側近たちに拘束されたレオナが立っていた。その顔は、相変わらず青い。
「この者がリーナを階段から突き落とした」
「まあ!それは大変!そんなことがこの学園で起こるなんて、風紀が乱れたものねぇ。皆さん、怖いわねえ」
自分の味方である取り巻きたちに声をかける様は、随分とわざとらしい。しかしそのわざとらしいセリフにも、周囲からは「本当ですわ」「怖いわ」とオルガに同調する声が上がる。
「彼女が独断で事に及ぶとは考えにくい。よって誰かの指示だと私は考えるが、イースターブルック嬢はどう思う?」
イースターブルックとは、オルガの公爵家の家名だ。幼い頃からの知り合いのはずのセドリックの口から“オルガ嬢”でなく、“イースターブルック嬢”という言葉が出たことにリーナは内心驚いた。ベタ恋では、愛おしそうに毎回“オルガ”と呼んでいたからだ。
これはリーナが転生する前から、ベタ恋のようなヒロインとヒーローという二人の関係はなかったのではないかと、リーナに思わせた。
「そんな酷い方がいるなんて、考えたくもありませんが、もしいるのでしたらそれ相応の対処が必要かと思いますわ。でも本当に怪我をされなくて良かったですわ。まさかあんな魔力のこもった石に守られるなんて、誰が想像するかしらね」
その言葉に、レオナは息をするのを忘れた。
(えっ・・・!?)
何故なら、リーナが突き落とされた現場には、レオナ以外誰もいなかったはずだからだ。なのに、どうしてオルガはリーナが石によって助けられた事実を知っているのか・・・
「ボロが出たようだな」
セドリックはそう告げると、ニヤリと笑みを浮かべた。
(やっぱりオルガが私を突き落とすよう、レオナに命令したのね。でもレオナにはビクトリアの取り巻き。何でオルガの指示に従ったのかしら?)
「ボロとは、殿下もお人が悪い。私はこの者から聞いたのですよ」
オルガがそうシラを切って指を指したのは、取り巻きの中の一人だった。突然、目撃者に仕立て上げられた少女は「えっ!!??あっ、はい!」と話を合わせる。そしてその少女を見たリーナに違和感が・・・
(あれ?この人、ビクトリアの取り巻きじゃなかったかしら?・・・・そう!絶対にそう!だってビクトリアの呼び出しを伝えに来た人たちの中にいたもの)
すると今度は、別の人物がこの対決に参戦する。
「あら、私の大事な友人を巻き込もうなんて、ひどいじゃないの」
そう言って堂々と現れたのは、ビクトリアだった。
しかし入り口にセドリックとその腕に抱えられたリーナを見ると、皆一様に驚きの表情を浮かべる。いい加減下ろしてほしいリーナだったが、セドリックの腕から固辞する意思を感じ取り、大人しく抱かれていた。
そうしてセドリックは、迷うことなく奥へと足を進める。その先にいるのは、先程レオナに指示した自分として彼が名前を上げた人物だった。たくさんの生徒たちに囲まれた中心にいるのは、オルガだ。
セドリックとリーナの姿を見たオルガは、穏やかな表情を崩さずに立ち上がると、挨拶をする。
「セドリック殿下、ご機嫌麗しゅうございます。何やらそちらの御令嬢がお困りのようですわよ。皆の前で抱き上げるなどそれ相応のお相手にと望まれてのことかと思いますが、随分と強引ですのね、殿下は・・・」
オルガの奥歯に物が挟まったような遠回しな言い方にセドリックは、「強引で何が悪い。私もリーナも望んでいることだ」とブレることのない答えを返す。
(確かに嫌ではないけど、望んではいないと思う・・私が望んでいると、いつ口にしたかしら・・・?)
リーナがそんなことを考えていると、オルガは僅かに眉を上げる。
「そうですか、それは大変失礼いたしました。では、私のような者はこの場から早々に退散いたしますわ。相思相愛のお二人の邪魔などしたくありませんもの」
そう言って立ち去ろうとするオルガにセドリックは、「まあ、そう急ぐな。まだ話は終わっていないぞ」と言うと、チラッと後ろに目をやる。するといつの間にか、王子の側近たちに拘束されたレオナが立っていた。その顔は、相変わらず青い。
「この者がリーナを階段から突き落とした」
「まあ!それは大変!そんなことがこの学園で起こるなんて、風紀が乱れたものねぇ。皆さん、怖いわねえ」
自分の味方である取り巻きたちに声をかける様は、随分とわざとらしい。しかしそのわざとらしいセリフにも、周囲からは「本当ですわ」「怖いわ」とオルガに同調する声が上がる。
「彼女が独断で事に及ぶとは考えにくい。よって誰かの指示だと私は考えるが、イースターブルック嬢はどう思う?」
イースターブルックとは、オルガの公爵家の家名だ。幼い頃からの知り合いのはずのセドリックの口から“オルガ嬢”でなく、“イースターブルック嬢”という言葉が出たことにリーナは内心驚いた。ベタ恋では、愛おしそうに毎回“オルガ”と呼んでいたからだ。
これはリーナが転生する前から、ベタ恋のようなヒロインとヒーローという二人の関係はなかったのではないかと、リーナに思わせた。
「そんな酷い方がいるなんて、考えたくもありませんが、もしいるのでしたらそれ相応の対処が必要かと思いますわ。でも本当に怪我をされなくて良かったですわ。まさかあんな魔力のこもった石に守られるなんて、誰が想像するかしらね」
その言葉に、レオナは息をするのを忘れた。
(えっ・・・!?)
何故なら、リーナが突き落とされた現場には、レオナ以外誰もいなかったはずだからだ。なのに、どうしてオルガはリーナが石によって助けられた事実を知っているのか・・・
「ボロが出たようだな」
セドリックはそう告げると、ニヤリと笑みを浮かべた。
(やっぱりオルガが私を突き落とすよう、レオナに命令したのね。でもレオナにはビクトリアの取り巻き。何でオルガの指示に従ったのかしら?)
「ボロとは、殿下もお人が悪い。私はこの者から聞いたのですよ」
オルガがそうシラを切って指を指したのは、取り巻きの中の一人だった。突然、目撃者に仕立て上げられた少女は「えっ!!??あっ、はい!」と話を合わせる。そしてその少女を見たリーナに違和感が・・・
(あれ?この人、ビクトリアの取り巻きじゃなかったかしら?・・・・そう!絶対にそう!だってビクトリアの呼び出しを伝えに来た人たちの中にいたもの)
すると今度は、別の人物がこの対決に参戦する。
「あら、私の大事な友人を巻き込もうなんて、ひどいじゃないの」
そう言って堂々と現れたのは、ビクトリアだった。
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