25 / 91
第25回 置き去り
しおりを挟む学校ダンジョンへ入りたい。
その気持ちは自分の中で増していくばかりだったが、周りには規制線が張られ、俺のような一般人の身では中に入れてもらえない。当然、この状況で入れるのはスレイヤーだけだ。
そこで俺は、こっそり学校のグラウンドのほうから忍び込むことに。
「――なっ……」
俺は思い立ってすぐ、屈みこむようにして慎重に回り込んだわけなんだが、すぐに絶望することになった。警察官がずらっと列をなすように並んでいたからだ。
これは、あれか……。それだけ中へ入りたがっている一般人が多いんだろうな。ってことは、一般人からスレイヤーに成り上がった黒坂優菜の影響力が大きくて警察からもマークされてるってことだ。
確かに夢のある話に思えるかもしれないが、実際は裏切者と虐殺者のコラボが実現しただけだからな。
「おい、そこのお前!」
「あ……」
俺は巡回中らしき警官に見つかってしまった。
「す、すんません、ちょっと催しちゃって……」
「こんなところで小便なんぞするとはけしからん……と言いたいところだが、魂胆はわかっているぞ。どうせお前もダンジョンへ入りたいんだろう」
「……バ、バレちゃいましたか」
「当たり前だ」
「やっぱり、ダンジョンへ入りたい人って多いんですかね?」
「だからこそこうして巡回しとるんだよ」
「ですよね……」
「うむ。黒坂氏のような英雄になりたいという気持ち、わからんでもないがな、それは例外中の例外だ。元から突出した才能がなければ、決してああいう風にはならん。いくらガタイがいいからといって、ダンジョンに飛び込もうなどというバカな真似はやめることだ。本官も若い頃はな――」
「…………」
それから延々と警察による説教染みた長話が始まってしまった。自分も若かりし頃はお前みたいにガタイがよかったからスレイヤーを目指したが結局ダメだったみたいな退屈な話だ。
レベル0からレベル1にすらなれなかったやつに言われたくないし、あんな卑劣なやつのどこが英雄だと思いつつ俺は我慢して聞いたあと、渋々引き下がることに。
いっそ、何かにステータスポイントを振って強行突破してやろうかとも思うが、どうしても決断できない。一度姿を見られてるだけに、覆面とかしても俺だとバレそうだし、勝手に入れば当然逮捕されてしまうだろうから。
……いや、待てよ? 俺はすぐに考えを改めた。速度にステータスポイントを振れば、警察に姿を見られることなく中へ入れるんじゃないか。
「おおぉ……」
俺は残り19あるステータスポイントを試しに1つ、速度に振ってそこら辺を歩いてみたわけだが、全力で走っているのと同レベルだった。1振っただけでこれだ。じゃあ、残り18ポイントを思い切って全部速度に振ったら……。
「ちょっ……!?」
速いなんてレベルじゃなかった。なんていうか、それまでの景色を丸ごと一瞬で置き去りにするようなスピードなんだ。
これならモンスターからも逃げ切れるはずだし、中にいるパーティーメンバーも早く回収できる。まさに一石二鳥どころか三鳥、四鳥にもなりそうだな。
ん……?
俺は人間離れした桁外れなスピードを愉しみつつ、さあいつ侵入してやろうかと思っていたところで、視界に新しいウィンドウが現れ、そこに黄色いマーカーが表示されるのがわかった。
こ、これは……学校ダンジョンの中にあるものとは別だ。その外部、しかも俺の近くに野球帽の藤賀か、あるいは警備員の風間、どっちかがいるってことだ。
どうやら方向的に、そいつは野次馬たちから少し離れた場所にいるってことで、俺はほぼ一瞬で学校の表口のほうに戻ってみせると、周辺をざっと見回してみた。
――うーん、それらしき人物はいないように見えるが……って、あれは……。
俺が注目したのは、ニット帽を被りサングラスをかけた爺さんだ。マーカーの位置と一致してるし、白髪頭が覗いてるしで、あの老翁が風間昇で間違いない。
お、向こうもウィンドウが表示されてるらしく、周辺を見回している様子で、まもなく目が合った……と思ったら、ギョッとした様子で逃げられてしまった。
おいおい、なんで逃げるんだよ……。
だが、ステータスポイントを19も速度に振った俺のスピードなら、逃げられるはずがない。
そう思って、障害物にぶつからないように速度を若干緩めつつ追いかけ始めたんだが、すぐに違和感に気付いた。
全力を出していないとはいえ、この異常なスピードをもってしても追いつかないのだ。
ってことは、間違いない。風間はスレイヤーになっているということだ。
それならますます俺から逃げた意味がわからなくなるが、スピードは俺よりないのか徐々に距離が縮まってるし、なんとしても捕まえて事情を聞かねば……。
22
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる